Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 潮目が変わった

擦り寄るべからず 日本の外交

2022 MAY 26 0:00:20 am by 西 牟呂雄

 林外務大臣が訪韓した。尹大統領の就任式に出席し岸田総理の親書を渡したという。
 新大統領は対日関係の改善に意欲があるそうで、関係改善を図ると発言している、大いに結構な話だ。岸田総理は「日韓の間には難しい問題が存在するが、このまま放置はできない。国と国との約束は守ることを基本としながら、わが国の一貫した立場に基づいて取り組みを進めていきたい」とコメントした。
 だが、引っかかる。過去の経緯を慎重に見ていくとこのコメントが間違ったシグナルを送っていないか心配になる。即ち、日本が目下の問題に関して何らかの妥協をするのでは、という期待を持たせかねない。ボールは韓国が持っているのだ。それに対する対応がない限り、岸田総理の発言中の『このまま放置』するしかない。
 一方で尹大統領の安保認識は極めて正しく、北・中国の横暴を考えれば韓国がクアッドに近づいてくれるならこんなに心強いことはない。だがそれは前大統領のような従北メチャクチャ分裂政治からミリーミリ(軍事的)の合理的選択をしたという当然の判断であり、日韓二国間にある徴用工問題や慰安婦合意とは別の話で、総理の言葉を引けば『国と国との約束は守る』当たり前の話。新大統領が冷静な理論家であるならば何らかの対策を手土産にしてこなければならない。
 前大統領は相当にヤバいことを自覚して、法律まで変えて保身に走った。こういう卑劣さをアピールすれば、あの国のことだから勝手に熱くなって収拾がつかなくなるのは時間の問題。問題はその後なのだ。
 かの国の外交がなぜ合理的判断を欠くのかは簡単で、内政の分裂闘争に対日外交が巻き込まれるからだ。内政でいくらモメても構わない。そのトバッチリはもうたくさんだから、そんなことになってエネルギーを使うくらいなら『このまま放置』で一向に構わないのである。
 隣接国とは仲良くしなければ、などと言う政治家は金でも貰ったか弱みを握られているからで、現にロシアは隣国のウクライナに攻め込んだではないか。インドとパキスタンなんか凄まじい憎み合いだし、歴史的にはフランス・ドイツ、イラン・イラク、ベトナム・カンボジアと枚挙に暇がない。首脳会談も友好関係もナシでいいから合理的な利害関係だけで上等なのが隣国というものである。
 ところで林大臣は親の代からの宏池会。あの外交弱腰の代名詞となった宮沢派で、日中友好議員連盟の会長であった。宮沢内閣は悪名高い河野談話を発表し大いに国益を損なった。そもそも岸田総理が宏池会なのだから、本来バランスをとる必要があったのだが安部元総理の影響を嫌って林氏を外務大臣に持ってきたことでアメリカを怒らせたことは知る人ぞ知る。
 他方、韓国保守派の方も保守=親日でもなんでもなく、朴槿恵・李明博元大統領もヤバくなればすぐに反日を言い出した。次も同じに決まっている。尹大統領は頭も切れそうだし、サシで話したらさぞ見識の高いインテリだろう。保守派であることは、女性家族省の廃止を公約にし若い女性の票を失う覚悟で選挙に臨んだことでも筋金入りだ。
 ロシア人の項でも記したが、韓国人にも実に味のあるいい奴はいる、在日にもいる。アメリカだって勝手なことを言うし、日本人にもいやな根性悪はいる。個人の関係を超えて国家という組織は本質的に邪悪であり、我が国だって危ういことは危うい。
 それにしても、レーダー照射やそれに付随した醜いプロパガンダ、慰安婦合意の裏切り、徴用工の悪質な捏造は度を超えていた。『盗人猛々しい』と言うような下品な言葉を使うのも、まともな外交ではない。挙句の果てに天皇陛下についてまで『戦犯の息子』呼ばわり、
 それによって最悪になった関係がこの程度ならば別にホワイト国からはずされたところで韓国自身大して困っていそうにない。安全保障問題を除けば『このまま放置』でいい。
 現に林大臣が大統領の就任式出席のため訪韓中に竹島南方の日本EEZ内で、韓国側の調査船が無許可で活動してみせた(林大臣は情けないことに抗議もしていない)。案の定と言うべきか。
 目下、新大統領には中国の猛烈なアプローチがあるに違いない。それで天秤にかけられて日本が擦り寄っても何の得もないのは明白だ。いっそこう言えばいいのだ。 
『一緒に知恵を出そう、という表現もやめろ。日本から妥協できることはもうないのだ。そちらも折れるわけに行かないだろうからこのままにしよう。日本企業の資産売却をしたら更に制裁めいたことをせざるを得ない。良好な関係は目標ではなく、結果だ。防衛関係だけ秘密裏に話し合おう』とね。トコトン思い知らせなければ。

 バイデン大統領が来日した。そのパフォーマンスから推察するに、ロシアの侵攻にホトホト手を焼いているように思えた。言い方は悪いが日本がイニシアチヴを執れるチャンスなのだ。
 バイデン大統領には『半島の南に橋頭保が無くなったら困るだろう。我々がサポートするから南に告げ口外交はやめろ、日本の機嫌を取れ、と言ってくれ』と囁く。モディ首相には『ロシアとそこそこ付き合うのはいいが、今大儲けしてるのは大陸だぞ』と吹き込む。アルバジーニー首相には『散々いやがらせをされたでしょう。ソロモン諸島は貴国の喉元ですよ。ここはひとつお任せいただければアメリカも引き込んで一泡吹かせられます』とほのめかす。
 ついでに韓国保守派にも『この陣営に入りたければ他の3国に口をきいてやってもいいよ』と示唆する。さすれば対米従属などという工作員まがいの非難を受けることなくアジアの盟主のような顔ができる。当然大陸も北もぎゃあぎゃあ言うだろうが、それはいい政策の証である。 
 その昔さるバカ総理は『相手の嫌がることはしない』などとボケをかましたことがあるが、すり寄るよりもはるかに嫌がることをした方が国益を損なわない。日本を、怒らせると面倒だが、イザという時に頼りになる国にしていきたい。

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大統領の演説 どうでもいい五つの疑問

2022 MAY 10 0:00:15 am by 西 牟呂雄

 大統領は『戦争』も『勝利』も宣言できなかった。イリューシン80を飛ばすこともできなかった。西側に対する非難、自説の正当性を言い立てた。キーウでは核の入手が準備された、と根も葉もないことも言った。これが大国の大統領の演説か。北のあの国の我らのアイドルアナウンサー、李バアサン並みではないか。
 
 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 だが、避難するウクライナの方々はまるで旅行に行くようにこぎれいな服装なのが気になってしょうがない。我が国の忌まわしい沖縄決戦や東京大空襲の映像を見ると、焼け出されてボロボロになった痛ましい被災者が映っている。それに比べて、国境を越えて逃げる避難民に服装は普段すぎる。
 アゾフスタルで2カ月も籠城した市民の方、何とか脱出できたのは喜ばしいが、脱出できた人々もそんなに惨めな服装ではない。あの製鉄所の地下にはコイン・ランドリーやシャワー・ルームもあったのかな。
 いや、別に悪いことだとは言ってませんよ、ヤラセ映像とも疑っていません、不思議なだけです。

 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 義勇軍としてウクライナ入りした日本人がいるとかいないとか。他国からも参加した人も大勢いるはずだが、この人たちは今どこでどういうふうに戦っているのだろうか。犠牲者は出ていないのだろうか。
 ところで、義勇軍はボランティアと訳されるように給料は出ない。これに対して給料を貰えばマーセナリ、すなわち傭兵となる。目下のウクライナに傭兵を雇う余力はないかもしれないが、例えばロシアとの対峙を明確にしたイーロン・マスク氏あたりが秘密裏に資金を提供して民間軍事会社に戦闘を委託するようなことはあり得る。現にロシアはワグネルの部隊を有償で使っているが、実態はシリア人などの外人部隊で8千人が投入された。
 以前にウクライナ軍を指導していた米軍やNATOの精鋭は出国したのか気になる。どちらも大っぴらに支援しているのだからもしかして。

 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 実際の放送を見ていないのだが、ネットによれば『NATOはウクライナだけにやらせてないで何故ロシアと妥協しないのか』『市民が犠牲になるだけだから降伏したほうがいい』『成人男子に出国の自由を奪うのは許せない』等の発言で炎上したとか。
 こいつ何様だ。遠く離れた東洋の島国で勝手なことをほざくんじゃない。ロシアに対して一体どんな妥協をしろというのか。まさかウクライナを差し出せとでも言うのか。全面戦争に持って行きたいのか。
 ウクライナ軍は自分の独立を守るために自分の意思で戦っているのに降伏しろとは大きなお世話だ。
 一時は保守系政治家として安部・菅元総理とも近く石原慎太郎をもたらし込んだものの、一朝有事には人のせいにしてでも逃げ出すという、戦後民主教育の悪弊を地で行くようなタレント弁護士の馬脚を現した。看板の政策は何度民意にはかっても拒否されると、サッサと足を洗ってテレビで稼ぎまくるだけの男でしかないのがバレた以上、もう姿を消して大坂に引っ込んでおとなしくしてろ。
 それにしてもテレビ局はこんなカス野郎を何で使い続けるのか。このバカに賛同する視聴者はいるのか。

 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 核さえ持っていれば国際法違反だろうが国連決議だろうが、破ったところで痛くもかゆくもないのがハッキリした以上、例えば民間の財団や自治体が勝手に核爆弾を造って、あるいは闇市場から調達して日本や世界に独立を宣言したらどうなるのか。そういう潜水艦が独立する漫画があったが、僕だったら秘かに国後と竹島に運び込んで『我々は満州帝国の末裔である。万里の長城の外側を我等に返せ。さもなくばここで核を爆発させるぞ。なお日本国・ロシア・大韓民国とは関係がない』と宣言するがねえ。どうぞ、と言われたらそれまでだけど。
 いや、冗談ですよ、冗談。

 戦争は邪悪であり、ロシアは即刻撤退せよ。
 未だにモスクワに留まっている日本人と連絡を取っている。彼はCNNやBBCといった報道を見られる立場にあるが、ロシア寄りの発言が多い。ただし、電話どころかメール・スカイプ・ズームに至るまで盗聴されている可能性があり、めったなことは喋れないとも言われている。その彼が言うには、プーチン大統領の居場所を誰も知らないのだそうだ。秘密のシェルターがモスクワ郊外に複数あり、どこにいるのかは明らかにされず、どういうルートでクレムリンその他の公の場所に来るかもわからない。まるでゴーストのように突然姿を現すとか。
 そういう話を知ると、僕は想像力を掻き立てられる。あのミョーにむくんだプーチンは本物なのか。本人はとっくに死んでいて影武者が演じているのではないのか。マクロン大統領は『まるで別人だ』と言った。
 そしてその影武者はオルガリヒとかネオ・コンやらに操られて戦争が始まったのではないか。操っているのは誰だ。戦争でロシアの体力を奪い、一帯一路の政策での見込み植民地化して搾り取ろうとする習近平の陰謀か。中露まとめて経済制裁し世界秩序の外に封じ込めようとするネオコンの戦略か。はたまたロシアの戦力を西側に張り付けさせて、その間隙を突いて南樺太と千島列島の占領を目論む日本の秘密機関なのか。噂ではSMC(サウス・マリウポリ・コミットメント)なる秘密結社が暗躍しているらしい。

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今年のスノボの調子はどうか

2022 JAN 9 16:16:12 pm by 西 牟呂雄

 毎年のことであるが、恐る恐るスノボを滑ってみた。前期高齢者ともなると、去年はできたことができなくなっている場合には即ケガになる。

 ゲレンデはそれなりに混んでいて、みんなマスクをしている。僕は例の時代遅れスキー・ファッションでボードを履いた。はじめはそーっとそーっと斜面の感じを思い出しながら。シーズン最初はやはりスピード感がつかめず恐怖さえ感じる。
 やっとこさダウン・ヒルを下りてみると、やはりというか脚力の衰えは顕著で大腿部が痛い。コロナで出歩かなかったからと言いたいが、日頃から運動らしい運動はやっていないので単純に年のせいと思われる。もう全力疾走なんか何年もやっていない、ジョギングすらも。

 つらつら思うに、目下生身の体で体験できるスピードはスノボが最速だ。筋力の衰え(N= 実年齢ーピーク年)と反射神経の低下(N×潜在反射神経計数)を関数化し、さらに現役時代のテクニックを数値化したものを掛けた値をYとする。Yは、それを超えない限り転倒しないと仮定すると、各人の限界斜度およびそれに対する最適スピードが割り出せる。ワァッ!何でもないところで転倒した。いかんいかん、集中しなければ。緩斜面でコケるようになったら即引退だ。
 1時間もやったらもういけない。一息入れようとコーヒーを飲んだらやる気がなくなったので止めた。年寄りはあきらめが肝腎。
 あきらめは肝腎ではあるが、これからシーズンがいくつ迎えられるかとなると3シーズンが限界だろう。それは先のことではあるが、そう遠くもない。その年になってもゲレンデ恋しさにスキー場に来るのだろうか。
 そうだ!最近友達になったレイモンド君(推定1.5才)でも連れてこよう。スクールに入れてあげて遠くから熱いコーヒーを飲みながら見ているのもいいかもしれない。いや、ビールかな・・・。

 さてその時の僕はどんなファッションがいいのだろう。
 さすがにこれでは怪しすぎて誘拐犯に間違えられるか。

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酔った上の話

2021 JUL 10 13:13:46 pm by 西 牟呂雄

 宴もたけなわ、人は皆声が大きくなり笑い声が絶えない。皇族の一行が狩猟と称して近江の蒲生野までやってきた。今でいうピクニックである。毛氈を敷き山海の珍味が並べられ酒が振舞われた。
 斉明天皇崩御の後、白村江の戦いで負けて唐・新羅連合軍のまさかの対馬侵攻に備えざるを得ない不穏な世相であった。これを打開するために、中大兄皇子は都を近江大津宮へ遷都し、ようやく帝に即位した。この日はお祝いがてら臣下の者を連れての行幸だった。
 一人の大男が立ち上がって歌い出した。かなり酔っ払っており何を歌っているのか遠くからでは分からない。ところが、周りの男女(おそらくお付きの者達)の笑い声は大きくなる一方で、散らばっていた人々も集まり始めて人の輪が広がった。
 さる妙齢の女性が気を揉み出した。なぜなら今日の主催者であるツレの男の周りにいる人数を上回っている。ツレが気を悪くしないか、と踊っている酔っ払いに目をやった。するとその男もこちらを見ており視線が合った。男はニヤリと笑うと腰を振りながら更に歌う。周りは更に笑い転げる。こっけいな仕草と囃し立てる歓声に何やら猥雑な歌であることが見て取れた。そしてその間、男の視線の先に先程から気を揉んでいる女性がいることに人々も勘づいたようだった。その女は以前踊っている男の娘を産んでいたのだ。
 女はそっとしたためた紙を従者に託した。

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る

 男は渡された歌を見ると破顔一笑した。そして周りには見せずに思わせぶりのようにゆっくりと大杯に満たした酒を飲みほした。取り巻きはかたづを呑んで次の節を聞こうと身を乗り出している。たっぷりと間を取ってはやにわに大声で踊った。
 
紫の匂へる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも

 ドッと湧いた歓声にさすがに女の傍らで側近達と談笑していた宴の主も気が付いた。
「なんだあれは。我が弟ではないか。しょうもないあんなに酔っぱらって」
 主が歌の内容を耳に留めたのかは分からないが、謹厳な表情は変わることはなかった。
 主は即位したばかりの天智天皇。傍らにいたのは歌人として名高い額田王、現在天皇の寵愛を受けていた。弟こそ大海皇子、後に壬申の乱を起こした天武天皇である。
 京都、湧泉寺は歴代天皇の位牌がある寺であるが、実はその中には天武天皇とその系統の7人の天皇の位牌はない。まさか酔っ払った挙句のこの歌のやり取りでしくじったわけではないだろうが。

 「一家三后(いっかさんごう)おめでとうございます」声が響き渡ると宴席の一族の者達は一斉に「おめでとうございます」と唱和した。一家三后とは三人の娘が入内し、皆天皇の后である中宮に叙されるという離れ業のことである。
 御堂関白は一条天皇に長女の彰子を、次の三条天皇には次女の妍子を、更には三条天皇を退位に追い込み、彰子の生んだ後一条天皇を即位させそこに三女の威子を入れるというゴリ押しぶりだった。相当な無理があるため、威子は9歳も年上のバランスの悪さである。
 ともあれ当の御堂関白・藤原道長は上機嫌で酒も進んだ。煌々と火の粉を巻き上げる松明の明かり。着飾った女たちの踊り。すり寄って来る青公家どものオベンチャラ。これらすべてに酔い痴れた。夜は更けていき、意識も朦朧としてきた時におもむろに立ち上がった。
「麿は一つ歌を詠もう」
 呂律は回っていない上、体はよろよろと前後に揺れ動く。果たしてまともに詠めるものなのか。
この世をば~~~わが世とぞ思ふ~~~望月の~~~~(ゲップ)虧(かけ)たることも~~~~なしと思へば~~~~(オェッ)
 遠巻きにしている者達には何を言っていたのか分からない始末。しかし近くにいた藤原実資には良く聞こえた。なんという下手な歌か。思うが2回も入っている語呂の悪さ、悪趣味な傲慢さ。元々ポストの奪い合いで仲の悪かった実資は、不愉快極まる歌として日記に書き記した。
 御堂関白・藤原道長は翌日、二日酔いで目覚めた時には、夕べの振る舞いとともに詠んだ歌のことは微塵も覚えていなかったが、実資の日記により後の傲岸不遜な道長像が出来上がったと言える。
 御一条天皇は当時の11歳で20歳の威子を入内させられたが、29歳で崩御してしまう。すると威子も半年後に疱瘡で亡くなった。仲睦まじい夫婦であったことを祈るのみである。

 毀誉褒貶はあるものの、最後の将軍である徳川慶喜は頭の切れる才人だったことは間違いない。生まれた時代が悪すぎた。
 何しろ尊王攘夷運動の流れでさえもまっすぐに流れてはくれないのだ。尊王攘夷で散々暴れた長州が追っ払われると、一緒に追っ払った側の薩摩は国父として久光が前面に出てきて開国を主張する。公武合体論者だった前藩主斉彬が死んで藩政を取り仕切りだした。
 既に開港していた横浜は、一旦は鎖港の勅諭が出てしまっており、幕閣は外交交渉を始めていた。将軍後見の慶喜は既に開国論者になっていたため、鎖港などやりたくもない。貿易は大儲けだからだ。
 一方、長州を切った後に京都政界の主導権争いは雄藩の参与会議で合議する体制が久光主導で固まりつつあり、薩摩の島津久光、越前の松平春嶽、土佐の山内容堂、宇和島の伊達宗城に会津の松平容保と一橋慶喜が任命される。
 ところが、慶喜は前藩主斉彬とはあんなにケミストリーが合ったにもかかわらず、その弟の久光とは全く相容れなかった。斉彬は嫡男として江戸で育った開明派だったが鹿児島弁丸出しの久光はゴリゴリの保守派なのだ。そのため薩摩藩内でも深刻な対立によって血が流れ、西郷も遠島されたりする。ともあれ久光がデカい面をするのが気に障ってしょうがない。横浜問題はそのナイーブさからとんでもない方向に向かってしまう。
 将軍家茂が上奏を終えた後に、中川宮を通じて鎖港再考を伝えられると慶喜は本音とは逆に激高する。
 中川宮が手打ちとでも思ったか、慶喜以下、久光、松平春嶽、伊達宗城を招いた席には、茶碗5杯の冷酒を一気飲みし、わざと泥酔し乗り込んだ。確信犯だからたまらない。
 まずは佩刀をかざし、切るの切腹するのと脅し上げる(これは諸侯とは別に単独で行った時という説もある。深夜、帯刀して強硬訪問して絡み倒したと)。そして三人を『この3人は天下の大愚物・大奸物』とやらかす。挙句の果てに『宮は島津殿からいかほど用立てられたか』とまで言った。そしてベロベロになって春嶽に抱えられて退出したとか(演技説があるが酔っ払っていたに決まってる)。
 こんなに酔ってそこまで饒舌を奮えるものかと訝しむ向きもあるが、さにあらず。このテの酒乱は酒が進めば進むほど頭が冴えて来る気がして(本人だけ)、早口になるは攻撃的になるは。そして翌日は全く覚えていない。こういう人がいるのである、筆者がそうだ。筆者は慶喜程の切れ者ではないが、気持ちよく酔っ払った翌日、ひどい二日酔いでやれやれ楽しかったなぁとふやけていると『いやー、ゆうべは大暴れでしたね』などと言われ何度慌てたことか。今思い出しても致命的なしくじりは数えきれない。ついでに言えば大怪我に至ったことも何回かある、どうでもいいことだが。
 慶喜の場合は薩摩・宇和島はまあいいとして松平春嶽を不快にさせたのは致命的だった。福井は親藩だったのに距離を置くことになり、そのノリで御三家尾張まで離反させる結果を招いた。日本史の転換点となった酒乱ではないか。
 そういえば、目下大河ドラマで見事に慶喜を演じている草薙も夜中に裸で暴れて捕まっていた。

 時は下って戦後。抜群の秀才を以て鳴る内閣官房長官宮澤喜一。この人がまた酒乱だった。
 筆者はさる縁で、直接ではないがその酷さを聞いた。
「あのチンピラがよ、嵩にかかってオレを面接したんだぜ。十年も早いと思わねーか」
 チンピラとは当時の田中派幹部で幹事長職にあった小沢一郎である。
 この話を教えてくれた人と、あるおめでたい席で一緒だった時、宮沢官房長官(当時)の祝電が披露されたので『『随分な大物とお付き合いがあるんですね』と言うと、その人は『うん、あれはなー、オレが打ったんだ。ガハハ』とうそぶいた。唖然とする筆者に『一応、祝電打ちますよ、と伝えたんだけどベロベオに酔ってたから覚えてねーだろな』だそうだ。
 本人も自覚があったらしく、総理大臣になってからは禁酒したんだとか。
 中川昭一センセイも凄い会見をしてたっけ。

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不自由の勧め オリンピックが見たい

2021 JUN 26 0:00:34 am by 西 牟呂雄

 高校時代に読んだエーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』を思い出してみた。その本はもう手元には無いが、確か第一次世界大戦でコテンパンにやられたドイツ国民が一気に孤独や責任を自覚することなく『自由』になってしまい、個人の幸福を求めたがために後のナチズムへの傾倒を生んだ、といった内容が頭の片隅に残っている。
 なんでそんな記憶が甦ったかと言うと、1980年代のアメリカを震撼させた連続爆弾事件を起こしたユナボマーことセオドア・カジンスキーのことを調べていた時に、彼が『テクノロジーは人間を満たされないものにしてしまう。真の自由のため機械文明は破壊されなければならず、その後に人間は野生にかえるべきだ』と記述していることを知って、古い記憶に再会したのだ。
 セオドア・カジンスキーは数学の天才で、それはそれで面白い話なのだが本稿のお題ではない。因みに最近はこういった匿名性の高い連続犯罪を研究している。ゾディアック事件とか。
 で、『自由からの逃走』の話に戻るのだが、読んだ当時はチャランポランの塊のように何にも打ち込まずに暮らしていて不安に苛まれていたから、題名に惹かれて読んだのだった。
 前置きが長くなったが、その自由なる概念は束縛・規制からの解放というのが一般的だ。だが『自由』なる単語は江戸期には使われていなかったそうだ。明治期に西洋文明を受け入れるに当たり、フリーダム及びリバティに対する適当な訳語がなく、仏教語で自ら立つことを指す『自由』を当てたらしい。それまでは『思うがまま』とか言っていたとか。
 そして仏教語の自由とは、仏教学者の鈴木大拙によれば、自ずと本質が湧き上がって来ることを言い『松は竹にならず竹は松にならず、松は松として竹は竹として、自分が主人となって働くから、これが自由である』となる。福沢諭吉の言う『独立自尊』のようなものか。
 この解釈、非常に示唆的に腑に落ちた。
 と言うのも、近い将来のAIが生活の根幹をなす時代になった時点では、様々なことが合理的にAIの判断を仰ぐ或いは決定を委ねると予想しているからである。そのような社会のストレスは目下の知見では予想不可能だが、個人的にはイスラム教・キリスト教の一神教の社会の方が強く出るのではないかと見ている。AIは宗教的戒律を無視するからだ。
 その点、我が国は八百万の神様が至る所にいるから『あーそうか、AIさんの言うことはこっちの神様の言ってることと同じか』ですむ。
 自由という概念に対して、強烈な一神教の文化と東洋の文化では捉え方が違って当然だ。ここにヒンドゥー教を入れるとややこしくなるのでちょっと度外視する。
 AI時代でデジタル化が進み個人の自由が規制を受けた場合、社会のストレスがどう出るか、どう人々が対処するか。例えば一党独裁の中国は厳しい監視社会であるが、現地で法人を経営した経験から言うと、庶民感覚ではお上を胡麻化すことに必死だ。特に納税意識の低さには呆れるばかりだった。大体中国人の拝金主義と公徳心の無さ、更にキツい言葉を使うが残虐さは筋金入りで、これが儒教の国なのか、ひょっとしたらあんまり一般がひどいので孔子様が論語を唱えたが存命中は誰にも相手にされなかったのが実態ではないかと思える。
 また、ロシアは今では選挙もやっているが、一般のロシア人は政治家は元々悪い奴がやるものだと考えている。そう言ってはプーチンの悪口を言い募るのだが、投票ではプーチンに入れてしまう。『プーチンは悪いと言ったのになぜみんな投票してしまうのだ』と聞いた返事が面白かった。『プーチンに入れておかなければもっと悪い奴が出て来る。そしてそれでもものすごく悪い奴よりはいい』
 おまけにマフィアの夥しい犯罪もさることながら、国家が先頭に立ってガンガン”暗殺”をしているではないか。ただし、現地にいるとマフィアもGPUも視界に入ってくることはない。かつてのKGBの中佐クラスが交通の取り締まりをやっていると聞いた。
 この両国は宗教的には極めて緩く(ロシア正教は一般社会への影響は少ない)エマニエル・トッドの唱えた外婚制共同体家族(息子はすべて親元に残り、大家族を作る。親は子に対し権威的であり、兄弟は平等である社会)であり、実は共産主義との親和性が高い。
 こういう社会はAIが決定したことに対して、反射的にどうごまかすかを考えだすのでかえってストレスにならないと思われる。どちらも国民が全員暗い顔をしているわけではなかった。
 そして日本であるが、一般的に日本人はガバナビリティが高いと言われてはいる。一方で同調圧力が強いとも指摘される。SNSにおけるヘイト・スピーチ等のいじめ・嫌がらせはその悪い面が出た。こういうのは規制されてしかるべきだが、それに対するヒステリックな反対はない。この繰り返される緊急事態制限に対しても特にパニックになったりせず、落ち着いた対応ができているではないか。野党とマスコミは悲惨な報道を好むものの、それによって政局になったりはしていない。
 それに対してヤバいのは、アメリカで言えば共和党を支持する宗教右派という人達、或いはカトリック、イスラム原理主義者といった社会は、潜在的に強い反発力を持っているため暴力的になる可能性を秘めている。
 この1年、決め手のない『緊急事態宣言』の元、暴動を起こす訳でもなく、遅れ気味のワクチン接種に黙々と並ぶ。亡くなった方々の冥福を祈り、闘病中の人の身を案ずるの当然。しかし日本人、この程度でよく抑えていると言わざるを得ない。
 『基準を明確にして欲しい』『ワクチンが回らない』『もう我慢の限界です』『店をやっていけません』『いつになったら』気持ちはわかるが少し黙っててくれ。専門家は頼りにならないし、誰もどうなるのか分からないのが実情だろう。責任を取りたくないから安全係数の高い物言いになり、そしてこう言った声に対して、自粛警察がツベコベ言う。これが良くも悪くも八百万システムなのかとも思う。
 そして話が元にもどるが、この厄災によって奪われる自由(生活の困窮は困るが)に対するストレスは連続爆弾事件のユナボマーを生むには至らない。あと、どのくらいかかるかは不明だが、この程度の不自由は返って弛緩した大衆を引き締める。いまさらウロウロして街頭インタヴューに応じる輩が政府の悪口なぞもっての外、自分の身は自分で守れ。厄災には忍耐しかない。

 で、突然話が飛ぶが、東京オリンピックは無観客でやる方がいいに決まってる。実際に抽選に当たった人以外はテレビで勝手に盛り上がるのだから。何しろセッセと日本中から観戦しに集まるのはマズい。何なら『緊急事態宣言』を出したままでやればいい。下手に緩めりゃどうせ感染は拡大する。いっそ期間中に限り、法的には難しいロック・ダウンをやったっていいとさえ思う。
 ここで『人の命を犠牲にしてまで』といったエキセントリックな話はチョット横に置いて、総合的に考えてオリンピックはやるべきだと考えている。そして、選手も応援する人も、不自由を甘受してやればそれこそ日本にしかできないオリンピックになる。そうでなければ強権によって封じ込めた北京の冬のオリンピックが、コロナ後の最初のオリンピックになってしまう。メジャーを見ろ、テニスの国際大会を見ろ。
 そりゃあオリンピックをやれば水際で防ごうがワクチンを打とうが感染者は出る、増えるに決まっている。だが、国際的にみてもどの先進国よりも感染の低い日本なのだ。ワクチン接種の遅れは明らかに政府の対応の悪さだが、ここからが勝負だと私は思うんだが。

 蛇足ながら、この厄災はワクチンを2度打っておしまいにはならない。5波6波、年が明けても気を付けて暮らさなければならないのだ。一部の業種の人には気の毒だが元に戻ることはない。毎年変異株に怯える状況が続く。中国だって油断はできないぞ。
 更に蛇足であるが、ここまで書いてきて非常事態宣言が終わった時点の弛緩振りにあきれた。同時に某知事は過労により入院・静養。
 僕は二つの感想を持った。一つはこの人は真のリーダーではなかった。通常このテのストレスに対しては女性の方が強いはずだと思っていたのだが、潰れてしまったのか。もう一つは、この人の場合、どのタイミングで倒れて見せて、いつ復活するのが選挙に有利なジャンヌ・ダルクを演じられるか、を計算しているように見えてしょうがない(失礼!個人の意見です)。
 ここまで書いて投稿しようとしたところ、驚くべきニュースが飛び込んできた。宮内庁長官が『拝察する』という言葉を付けつつも陛下のご懸念の内容をバラしてしまった。コイツ二重の意味でクビだ。まず、陛下のご懸念の内容を政治的に微妙な時期に喋った。次に、万が一開催ができなくなった時に、陛下が介入された、と受け取られかねない。従ってそうならないために『絶対にやらざるを得ない』状況に追い込んだ。ひょっとしたらオリンピック推進派の菅総理から工作を受けてたんじゃないか。コイツ例の小室文書の時もマヌケなコメントをしたバカだからもう終わりだね。

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27日追記

 お墓参りに行ってきました。
 紫陽花の二色活けです。
 大きな声では言えませんが、この季節は菩提寺の裏手にたくさん咲いているのではじっこを少しばかり分けてもらってます。

 山門の直ぐ前の所を
 おお!堂々の聖火ラン!
 御先祖様見たかな。

フェリペ二世と太閤秀吉

2021 JUN 13 0:00:54 am by 西 牟呂雄

 スペイン・ハプスブルグ家の当主として太陽の沈まない帝国を作りあげ君臨したフェリペ二世は熱烈なカトリックの信者で、宗教革命後のカトリックの盟主を自任していた。その強烈な信仰心は、フランスにおいてセント・バーソロミューのプロテスタント虐殺を聞いて生まれて初めて笑ったと伝えられる。
 この話には続きがあって、その後は二度と笑わなかったとか、恐ろしい人物である。
 加えて新大陸で味をしめたのか成功体験として頭に刻まれたか、布教と領土的野心をワンセットにしての侵略を隠そうともしない。何しろこの人の名前をとってフィリピンがフィリピンという名前になった位だ。その勢いで南蛮貿易商人とイエスス会がペアで日本に押し寄せていた。
 信長はうまい具合に利用していたが本能寺に倒れる。後を取った秀吉にも盛んに接近し、大陸侵攻をけしかける。そこまでは良かった。重商主義的な政策をとる秀吉はあるときに気が付いた。自分で貿易できる毛利や島津はいいとして、見返りになる鉱山や産品のない大名の中には改宗してキリシタン大名に化け貿易の旨味にありつこうとする者がいることを。更にスペインは日本人を奴隷として売り飛ばしていることに激怒する。ご存じだろうが鎖国と禁教令の前に宣教師の追放を発したのは秀吉である。
 そこから劇的なことになる。フェリペ二世と秀吉が同時に死んでしまう。同じ1598年の9月13日がフフェリペ二世、5日後の9月18日が秀吉の命日だ。筆者はこういった日付を並べるのが趣味で楽しんでいるうちにこの事実を知った。
 その前にオランダが独立戦争をしかけたり、アルマダの海戦に敗北するなどスペインの黄金時代が終わりを告げる。一方で半島への進出が失敗に終わり秀吉も落ち目になってきた頃だった。
 世界史は大航海時代の主役がオランダに取って代わられ、関ヶ原の戦いに家康が勝利する。勃興するオランダと家康が結びつくのは時代の流れに沿っていた。
 歴史は繰り返す。その270年後にフランスが幕府と結びつき、英国が薩摩に肩入れしたのと同じだ。スペイン・ポルトガルからオランダへ主役が変わるタイミングで、徳川家康は偶然流れ着いた英国人ウィリアム・アダムスとオランダ人のヤン・ヨーステンを召し抱える。前者は三浦按針となり、後者の屋敷跡の地名は名前がなまった八重洲である。そして後ろ盾のオランダはスペインのようなカトリックではないため、布教には興味がないことを吹き込んだに違いない。
 結局のところ関ケ原以降は大阪・スペインVS江戸・オランダの代理戦争になり、家康=オランダ同盟が最終的に勝ったことになる。オランダは当時スペインが独占していた南アメリカ産の銀に対抗できる(当時アジア最大の銀の産出国だった)日本との貿易を手にしてメチャクチャに儲けた。
 極東の日本もある意味大航海時代のフロントにあったことになる。

 ついで話を二つ程。ひとつは、関ヶ原・大阪夏の陣でひとまず戦国時代が終わったのだが、その時点での負け組はどうなったかという話。この時代、土着の地侍以外に武器を携えて渡り歩いている浪人は大勢いて、俗に『兵を挙げる』は『一戦やるから来る奴はいないか』のこと。要するに一人傭兵みたいな者がウジャウジャいた。大坂の陣の際の豊臣方は関ヶ原の負け組の巣窟だった。そういう輩は物心ついてからというものズーッと戦争ばかりで他に能がない。あの宮本武蔵でさえその中にいたようなものだ。
 負けておとなしく帰農するといっても土地はない、商いをするにも知識も経験もない、戦争以外には使い物にならない。
 どうもオランダ組はそこにビジネス・チャンスを見つけたのではないか。鎖国以前は家康も朱印船貿易でたんまり儲けていたし東南アジアに日本人町がいくつもあった。オランダ東インド会社は一方で勃興する次のライバルイギリスや土着の勢力とも争わなければならない。
 ここで需要と供給が一致したため、オランダはこれを商売にしようと考えたのが日本人傭兵部隊、すなわち給料を貰って戦う外人部隊だった。有名なのはシャムのアユタヤで活躍した山田長政である。マニラにもジャワにもインドのゴアにさえ数百人規模の傭兵部隊がいて、暴れまわった。
 恐らく当時の鉄砲保有数世界一で、海では倭寇が暴れ回り、生まれてから戦い続きの荒くれ集団だ。強いことは強い。しかし、待遇が悪いと反乱を起こすなど扱いづらい奴等、という評判だったらしい。
 もう一つ、鎖国に至った経緯について。キリスト教の禁教とセットで教えられるのだが、筆者は違う見方をしている。
 当時大陸では明が女真族の清に圧迫されていた。北京を占領して大清帝国になるのはもう少し後だが、万里の長城を超えるのは時間の問題となっていた。それに加えて特に四川省あたりは大飢饉に見舞われていた。当然の事のように流民が発生し一部は国外に逃げ出し始めていたのだ。
 今日の東南アジアの中国系は清の弁髪例を嫌って海を越えて来た福建系や広東系が多い。そういった移民の流入は日本にも押し寄せていたに違いなく、その人数が当時の経済規模からいって許容範囲を超えそうな勢いだったのではないか。
 長崎には鎖国期でさえ商用の華人は1万人以上居住していたし、国姓爺合戦の鄭成功は五島の日本人女性「田川」を娶っている。倭寇で散々暴れに行ったのだから向こうが混乱に陥ればその反対もあるだろう、という仮説なのだがいかがなものだろう。
 そして貿易の旨味を独占しておかなければ西南雄藩、すなわちもともと密貿易に長けていた島津・毛利といった外様に儲けを持っていかれる。これが鎖国令の裏の意味ではないか。
 人口動態調査を探したが、いいウラは取れなかった
 いずれにせよ提題の二人はいい時代の終わりに死んだのだ。

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ミルクキャラメルの箱

2021 APR 25 0:00:55 am by 西 牟呂雄

一枝もこころして吹け沖つ風 わが天皇(すめらぎ)のめてましし森ぞ
 昭和4年。粘菌の研究で名を成した全く在野の研究者である南方熊楠に昭和天皇行幸の際に御進講するようお達しがあった。
 生物学者でもある陛下は兼ねてより熊楠のことを知っていて、どういうルートなのかは知らないが大正の末に粘菌の標本を所望され、熊楠は90点を献上していた。
 熊楠は神島で陛下をお迎えし、案内の後に御召艦「長門」にて約30分の御進講に及んだ。この神島は伊勢志摩にある三島の潮騒の舞台となった『かみしま』ではなく和歌山の『かしま』である。
 せっせと持ち込んだ標本110点もこの時に献上されたが、その標本をキャラメルの箱に入れていた。それが森永ミルクキャラメルだったと記憶しているが出典は忘れた。
 冒頭の一首は翌年に行幸記念碑が立てられた時に熊楠が詠んだ歌だ。何とも無邪気なもので、二人でさぞ盛り上がったのだろう。
 熊楠は全くの無位無官。おまけに数々の奇行で有名な難物だ。陛下の前で突如悪い癖が出ないかと、関係者は気を揉んだことだろう。しかしながら当日は留学時に求めたフロック・コートの正装で現れ見事なジェントルマンであったそうな(普段は全裸で過ごすこともあった)。
 熊楠は抜群の記憶力の持ち主であったことは広く知られるが、昭和天皇もまた記憶の王でありその逞しさにしばしば周辺は舌を巻いた。この御進講から30年の後、南紀行幸啓の宿舎から神島が見えた時、
雨にけふる神島を見て 紀伊の国の生みし南方熊楠を思ふ
と詠じられた。
 楽しかった思い出だったに違いない。

若き日の熊楠

 生涯仕事らしい仕事に就かなかった熊楠だが、一体自分のことは何だと思っていたのだろう。粘菌で有名だが、10ケ国語に通じ民俗学にも造詣が深い。人類学・考古学・宗教学全て独学。50本の論文がネイチャー誌に掲載され、日本人のダントツ1位である。ロンドン時代に亡命中の孫文とも親交があり、来日時には和歌山に熊楠を訪ねている。
 今日であれば博物学者とでも言うのかもしれないが、本人がそう思っていたかどうか。一種の天才だろうが、こういう頭脳構造にありがちなバランスの悪さで始末におえない。よく言えば欲が無いのだろう。むしろ心のおもむくままに唯々何かに没頭していただけではないか。
 最近知ったのだが膨大な日記に、幽体離脱というかろくろ首というか、不思議な体験を記述している。その記述が妙に生々しくて具体的なのだ。もちろん本人も夢だと言っているが、胴体から首が離れて飛んでいく様が活き活きと描写されている。この現象というか感覚に熊楠が興味をそそられないはずがない。日記にによれば『頭が抜け出て』そこら中を飛び回り『急に自分の頭とおぼしきところへ引き入れられた』のだそうだ。
 実は筆者は熊楠の日記を読んで、似たような経験があることを思い出した。無論夢である。ただ、筆者の場合、四谷のJRから見える土手で三輪車のような軽量飛行機に乗り、空を飛んでいて落ちる夢なのだが、その落下する感覚がヤバいと感じつつスーッとうつ伏せに寝ていた自分の肉体に入り込むものだったことを今でも覚えている。ただ、筆者の場合は一度だけ。
 熊楠は数回に渡る神秘体験の後、古今東西の文献から自分と同じような事象を調べ上げて数本の論文を書いている。ひょっとすれば熊楠はエスパーだったのか。
 話が突然飛ぶが、筆者は昭和天皇が超能力者だった、という仮説を立てているので、一度だけ邂逅した二人はその後もテレパシーで話していた・・・無理だな。

晩年の

 ところで、この写真は晩年の熊楠-----ではない。
 だがよく似ていると思いませんか?
 誰だかわかった方はお知らせください。仮想通貨100万ソナー・ダラー差し上げます。
 ヒント。熊楠が大学予備門(旧制一高の前身)に通っていた時の同期です。

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卒業生のレポート

2021 APR 17 0:00:32 am by 西 牟呂雄

 私が非常勤講師を務めている北富士総合大学も卒業生が巣立っていきました。昨年度に限っては対面のゼミは一度も行われず全てオンライン、遂に実際に会うこともなかった4年生が3人です。
 私のゼミは半期2単位の選択制なので3年生・4年生が同じ講義を受けます。昨年度下期での受講者は7人。従って4年生3人3年生4人、女子学生が多く、男子は3年生の2人でした。この環境下で試験などはできませんから毎回課題図書を指定してレポート提出形式でした。一応講座名は「日本思想史」となっていますが、今どきの学生さんですから時事問題に絡めて毎回テーマを練ります。「キリスト教の普及」とか「仏教の変遷」とかゼミの回数分の課題と図書を選びました。それが12月に入るころ「権力と権威の分離」のテーマに移った時点で異変が起こりました。
 鎌倉時代を背景にした武家政権と畿内の朝廷とのかかわりについて議論を始め、戦国期から江戸時代、そして明治維新を経て敗戦後までを網羅するつもりで3回分の2回目でした。ここで女性・女系天皇についての問題で紛糾してしまったのです。
 7人中4人が賛成。3人が反対、不思議なことに3年生の男子は賛成でした。どうやらその前に発表された秋篠宮家の眞子様の「お気持ち」がきっかけだったようです。
 ちなみに私は立場上中立で議論の進行を見守るしかなく、極端に事実を間違った認識を指摘しただけです。しかしながら単純に賛成=フェミニスト・反対=ネトウヨ、といった構図ではありませんでした。印象ではやや世論に傾いている学生が賛成し、考え抜いた学生が反対になったようで、それは提出させたレポートのクオリティではっきりしています。
 それは今どきの学生さんですから未だに幼さが残っていることは否めませんが、本年卒票した一人のレポートが面白いものでした。本人は卒業後地方公務員に職を得て地元に帰っていきました。しっかりしたお嬢さんで、お父様は地方の商社勤めです。
  レポート内容は反対派なので、SMCの趣旨としてはややバイアスのかかった不適切なものですが、各種アンケートではおおむね賛成の世論であると思われるので、、本人の了解を得た上で抜粋を公開し、広く読者のご意見を促したいと思います。尚、私がこの学生にいかなる評点を付けたかは守秘義務がありますのでご容赦願います。

 『皇統問題が喫緊の問題となって既に何十年も無駄に過ぎてしまいました。私はその間にしばしば俎上に上る女性・女系天皇についてかねてより苦々しい思いを抱いておりました。
 一度も例外のなかった男系天皇が途絶え、次の天皇の権威は保てるのでしょうか。国柄を失っていいはずはありません。壊してしまえば二度と戻すことのできないモノ、これらを文化・伝統として守るのは国民の矜持でありましょう。
 日本の天皇陛下は目下のところ世界で唯一「エンペラー」と訳しうるポジションで(キングなどという野蛮な代物ではない)あり、その権威は神話から続く男系の伝統によって担保されている家系です。
 先般亡くなられた佐々淳行氏が書いています。皇室こそ1世紀に一度あるかないかの国難に毅然として声を励まし国民を統合することができる唯一無二の存在であると。
 3・11で苦しむ避難者を慰めることができたのは先帝のお言葉であったことは多くの国民が知っており、その後に避難所を訪れた某総理に被災者が罵声を浴びせたのと対照的であったと聞きました。
 翻れば先の大戦を収めることができたのも昭和天皇の『堪え難きを耐え、忍び難きを忍び』の肉声で、300万将兵が一斉に武装解除に応ずるという奇跡が起きたからではないでしょうか。
 その天皇陛下たるや、単に巡りあわせで帳尻の合うようなものではなく、将にひたすら国民を思う、と鍛えられた人が生み出す品格と威厳あればこそです。仮にその場にあの某青年の顔を想像すれば、女系天皇などあり得ません。そういうケースを排除するのが男系の維持という考え方で、女性排除とは違うのです。
 私の父は前回のサッカー・ワールド・カップがロシアで開催された際にエカテリンブルグに滞在していました。その際、オリンピック誘致でも活躍された高円宮久子様が、故憲仁親王殿下が日本サッカー協会の名誉総裁だったご縁で訪ロされていて、その時の、つい四半世紀前まで共産主義者であったロシア人達のプリンセッサ(ロシア語)・ヒサコに対する熱狂的な歓迎ぶりに目を見張ったと言っていました。エカテリンブルグはロマノフ家が惨殺された町であり、その跡地には教会が建てられています。ロシア人達は自分たちが失ってしまったものに対する憧憬があったに違いありません。それはエンペラーの家系の権威であり、久子妃殿下が品格をお持ちだからこそと思います。久子様は民間からのお輿入れですが、ロシア人を熱狂させる品格と威厳をお持ちです。
 ただ皇統には思い込んだら一途になる遺伝子があるようで、聞くところによるとそれこそ昭和の陛下も平成の先帝も令和天皇陛下に至るまで思いを遂げられています。それが悪いということではなく、そうであったとしたらなおのことお相手には相応しい振る舞いが求められるのではありませんか。皇太后陛下も現皇后陛下も悩み苦しみつつそれを身に着けられました。
 皇嗣殿下の教育はいかなるものなのか、内親王殿下の振る舞いにはいささかの違和感を感じます。そういう結婚をしてはいいはずがない、となぜ初めからおっしゃらず「憲法が規定するので認めざるを得ない」と仰ったのでしょうか。
 ひょっとすると〇〇さんは「あんなのが皇族入りしては大変なことになる」という意識を国民に植え付けるために男系堅持派が送り込んだダミーなのではないかとさえ思えます。
 2000年の歴史を考えれば、100年や200年の時間軸なぞ知れたものであり、その血を引く正統性が確保される者に早めに帝王学を叩きこみ次世代に備えるのはもっとも理にかなっていましょう。
 そもそも皇族の高みに上るにあたってはプライバシーなぞは無きものと心得なければならぬことを教えなければ、〇〇さんのような者が入り込むスキができてしまう。お言葉にあった、結婚することが必要な選択などという戯言を文書で発表するとは何たる不始末でしょう。
 愛子内親王殿下には有無を言わせず旧皇族の男子と婚約していただき(候補者はいます)、万が一に備えて頂くのがよろしい。それがいやなら、皇嗣殿下の内親王様たちはすでに手遅れゆえ旧皇族男子の全員を速やかに復帰していただいてしかるべきと考えます。
 いずれにせよ、あまりに根深い問題を世論で判断しよう、或いは多数決による機関決定する、などとは不届きであり、ましてや「外国では」と歴史も伝統も違う事例を持ち出すような意見を参考にする必要はさらさらなく、ここは何としても女系・女性天皇のみならず女性宮家の創設もやめなければなりません。これはジェンダーの問題でも女性の地位の問題でもないのです。日本の国柄を崩す蟻の一穴は塞いだ方がいいのではないでしょうか。
 ところで憲法について、直近気が付いたことがあります。先帝退位の際に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が発布されました。驚くべきことに、これに対して内閣法制局は「退位するという天皇の声明文は天皇の意思表明と見なされ」「天皇の地位は国民の総意に基づく、とした憲法1条、並びに天皇の国政関与を禁じた4条との整合性がとれない」という見解を発表しています。
 崩御された際に行われる国事行為と同じことをするのに違憲の疑いありとは、いかにも責任逃れのためのお役人の発想で誠におかしいと思います。
 事程左様にツッコミ所満載で、翻訳悪文の見本のような憲法をロクに変えられないで独立した国家と言えるのでしょうか。九条改定の議論を待つまでもありません。
 膨大なエネルギーを使って自衛隊が違憲であるという判決が下るようなバカバカしさに「いいかげんにしろ」とは思わないのでしょうか。こういうことを続けていては違憲判決に罰則もないのをいいことに解釈でつぎはぎばかりになり、逆にリベラルを通り越した全体主義への逆バネが効いて保守勢力でさえ顔をしかめる国家になってしまいます。
 話は変わりますが、余談を少々。私の知り合いに藤原家の血を引く方がいらっしゃいます。明治までは京都の山科にいたそうです。その人が声を潜めて言うには藤原家の始祖は鎌足ではなく不比等である、とのことです。即ち中大兄皇子の子を宿した采女を下げ渡され生まれたのが不比等、天智天皇の皇胤に当たると。このことは藤原家には伝わっているらしく、近衛文麿の弟の忠麿(水谷川家への養子)から今東光が聞かされて活字になっています。私の知り合いの説では他にもう一人天皇家から養子に入った者がいることになっていて、それがその後の藤原一族の出世の要因なのだとか。
 もう一つ、先般高円宮絢子女王と結婚した青年がいます。現在日本郵船のサラリーマンをされていますが、NPO法人「国境なき子供たち」の理事も務めているそうです。どうもおばあ様の頃からこの活動に熱心だったお家と聞いています。そしてそこを通じて久子様との面識があったため、今回のご成婚にいたったのでしょう。
 こういう気質、すなわち公の心を保つような伝統を持つ人の集う、あるいは家風として伝えているイエであれば安泰というもので、久子様の教育と慧眼に恐れ入るばかりです。

 幸い、旧皇族方は菊栄親睦会なる集まりを通じて戦後も親戚づきあいをされています。ご指摘の光格天皇・継体天皇の例を持ち出すまでもなく、自然に溶け込めることは間違いありません。それを差し置いて女系だなどとは不見識も甚だしいと考えます。

 如何ですか?さて、このレポートは昨年提出されたものですが、昨今レポート中の〇〇氏の手記なるものが発表されました。全文を読んではいませんがネットで知る限りでは、法律家を目指しているとは思えない身勝手な理屈をコネまわし、猛烈な反発を受けると4日後に支払うことにしたという不可解な経緯をたどっています。しかも内親王殿下に相談してお墨付きを得ている、とするなど責任転嫁するのを怠らない。あまりの稚拙な戦略にあきれ返るしかありません。これでは・・・アッ、SMCの内規に触れますのでこの辺で。

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日本の分断

2021 MAR 8 0:00:26 am by 西 牟呂雄

 コロナ禍の元、はや1年が過ぎようやくワクチン接種が始まった。この1年というものほとんど山荘で暮らし、それでもヨットにも乗りスノボもやった。やらなかったのは飲み歩くことだけで、家飲みのコストが上がっても純粋にビール・焼酎だけでは大したことにはならないのが分かった。これでは個人消費が上がらないと実感した。
 一方では企業業績は回復しつつある。消費を抑えて所得があまり落ちなかった結構な人々は車の買い替えに走ったらしい。さらにジャブジャブの金融政策で株価は3万円に達した。ただ、株を買い越しているのは外人のようで、企業業績を反映していない、すなわちバブルなのだな。
 ここまではいいとして、さて長きに渡った厄災の後にパラダイムシフトが起きるかも知れないと警鐘を鳴らしてきたが、その姿が透けて見えてきた。
 いくつかの条件が不透明ではあるものの、消費の急回復が見込まれそうで、それも余程の外的要因がマイナスに働かなければ比較的長続きしそうである。更に脱炭素というグリーンエコノミーが新たな投資を呼び、様々なイノベーションも含めて大きな成長要因となるだろう。
 少し時間を戻して、昨年は日米の指導者が変わった。アメリカではバイデン大統領が誕生し、日本は菅政権がスタートした。しかしいずれも前政権の影を引きずっていると筆者は見ている。菅総理ははっきりと安倍政治を引き継ぐと公言して後継となった。その長期安部政治への支持率は辞任を表明した時点で共同通信の調査では30%台から20ポイントも跳ね上がった。トランプは敗れはしたが7100万票も獲得しアメリカの分断を一層明らかにした。7100万票はオバマ大統領の獲得票数よりも多いのだ。
 即ち、日本の場合は大方の民意はスムースに後継を選び、アメリカは改めて分断が浮彫になったと言える。いや、むしろアメリカの分断がトランプを生み出したのだ。ティー・パーティー運動やサラ・ペイリン副大統領候補の動きがあったではないか。おまけに民主党にバーニー・サンダースという対立候補がいた。
 日本はその時期にソフト右傾化を巧みに舵取りした安倍政権により安定していた。例えば悲願とまで表明した憲法改正には抑制的だった。
 大変面白い社会分析アンケートでボーター・サーベイという手法があり、読んで字のごとく投票行動に対する調査だ。国際政治学者の三浦瑠璃氏の著作で知った。設問に答えることで縦軸に社会的な保守ーリベラル、横軸に経済保守ーリベラルの4象限に分ける手法で、第一象限から反時計回りに保守・ポピュリズム・リベラル・リバタリアンと分析している。
 アメリカ人の投票行動をこの手法で分析すると保守とリベラルの二つの塊が出現し、それが共和党と民主党の支持者にピタリと重なる。ところが同じ調査を日本でやると投票者は全象限にバラけてしまって偏らない。
 著者が日本の政治家を採点してみたところ、第一象限=安倍晋三、第二象限=原口一博、第三象限=枝野幸雄・山口那津男・山本太郎・志位和夫、第四象限=橋下徹、ド真ん中に石破茂、となっている。因みに簡易テストを自分でやってみたところ第一象限の遥か上の方に行ってしまい統計的に管理外になってしまった。即ち私の意見は永遠に反映されないという事だ。
 ところで、自公連立というのは保守層にリベラルが従属する理想的な形であることがハッキリする、この構造を倒すには立憲・国民・共産の連立がなければ選挙で勝てない。安倍政権が安全運転に徹して改憲を大きな争点にしなかったため、連立政権はあらゆる層からの票を掘り起こして勝ち続けた。給付金を公明党に合わせて一律十万円に切り替えたのが典型的なケースだ。
 三浦氏はさらに分析を進め、日本人の本音と建前構造にまで掘り下げていくのだが、詳しくは著書の方を見ていただこう。
 実は日本に関する調査はコロナ禍の前に行われている。2020年の1年間でどれ程国民が痛めつけられて意識が変わったのかどうか。或いは全体にバラけていたものがどこかの象限に移動したのか。
 この調査には年代が付記されていて年代の分布が分かる。するとリベラルのゾーンは何故か年齢構成は高い。団塊世代が中心かとも見える。おそらくこの年代は全共闘運動にも重なっていて、いまさら保守とはいかない。コロナ禍の打撃は比較的少ない。
 一方の保守が意外と若い世代の支持が高いが、人数そのものが高齢者に比べて少ないので投票行動についてはいわゆる無党派層となっている。ここは学生も含まれていて、実質コロナの影響をもっとも被っている年代である。貧困の問題も深刻なケース(若いシングル・マザー、コロナ失業者、アルバイト学生等)も多く、流動する可能性が高い。
 ただしその場合でもいきなり保守⇒りベラルへの移動はないのではないか。昨今の不祥事(森失言・総務省接待)への野党の追及姿勢があまりにも礼を失したありさまに、かえって野党の支持率が下がったことを考えるとリベラル系の政治家への支持にはなり得ない。三浦氏の分析では菅総理は保守ゾーンではなくリバタリアンに位置しており、ど真ん中の位置にいるのは石破茂なのだ。保守からの流動はせいぜいそのレベルまでだろう。
 今のところ日本には移民による人種問題はない。すると上記仮説からもわが国には分断は起こり得ないという結論になる、いまのところは、だ。
 おそらく二つの理由による。一つはあれだけ持て囃された『新自由主義』であるが、調和を好む日本に本質的になじまず、その恩恵による富裕層という者が『層』として形成されなかったこと。一時ヒルズ族と呼ばれたIT長者がいいところまで行ったが、社会的に認知される前に統廃合されてしまった。もう一つは中産階級全体が20年以上も続いたデフレにより地盤沈下したため、多くの場合格差が拡大していると認識していない、と見ている。
 筆者は政治家ではないのだが、せっかく格差・分断に覚醒していないのなら、なるべくそのままの状況を維持する政策が望ましいと思う。そのためには少し前に大流行したトマ・ピケティが主張したように、累進性の高い税率で分配する仕組みに持っていかざるを得ない。その場合の線引きは・・・。

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森失言は悪いに決まっているが

2021 FEB 12 0:00:39 am by 西 牟呂雄

 そりゃ、あれは悪いですよ。ああいう立場の人が言っていいことじゃないので、十分反省してもらって今後立派に勤め上げてほしい。
 だけど辞めなきゃならないほどとも思わないな。謝って撤回してるんだから『お爺ちゃんいい加減にしなよ』くらいで済む話。八十翁が口を滑らせただけでしょ。世界がどう言ってるかは関係ない(筆者はアンチ・グローバリストなんで外国がどうこう言ってくると反射的に開き直る癖がある)。時間の感覚が無いのではないか、と思うほどいつまでも自分の意見を主張したり、アーでもないコーでもないと同じ自慢話が長いのはオッサンも多いよ。
 おそらく直近に、時間が迫っているのに特定の女性がまくしたてて往生した経験がトラウマになってあのマヌケな発言になったと推察する。普段イエスマンに取り囲まれている典型的な老害である。だが、繰り返すが辞めなきゃならないほどの話か。
 森センセイは元々文教族でスポーツ関係では世界中の要人とパイプが太い。更にコスト切りのプロで、今回も知事の引っ掻き回しや延期にかかる予算の膨れ上がりに辣腕を奮っていることはクロウトの間では知る人ぞ知る。
 それに、もし本当に今年実施されるとすれば、もうあまり時間がないところに新しい頭を据えたら現場がどんなに大変か、組織を運営した者なら容易に想像がつく。辞任を言い立てるのはある種の意思(オリンピックを成功させたくない、といった)が働いているのか、ほかにネタがないからマスコミが飛びついたのか、と勘繰らざるを得ない。
 例えばあの森氏の逆ギレ発言を引き出した記者の下品な質問である。あのエラソーな物言い、煽り方、お前は何様でどこかの工作員か、と聞きたくなる煽りだった。あんなのを見ると(無論マヌケな失言はマズいが)森氏よ十分反省してガンバレと声をかけたい。  
 同じく、ガースーへの無礼極まりない質問をした野党参議院女性議員にも同じ下衆の志の低さを感じた。ここが名前の売り時とでも思ったか、必ずしも雄弁ではない総理に『国民に伝わらないんですよ』とまくし立てる。あれで共感を得る国民はいるのかも知れないが、それは違うのではないか。こんな質問で時間を費やすとあのマズイ森失言もありになってしまうではないか、女性議員さん。ここもやはり筆者としては、がんばれガースーと言わざるを得ない。
 ただ、その無礼な質問に対し目を据えて『失礼ではないか』とドスを効かせたガースーは迫力あった。近いうちにその議員周辺のスキャンダルが出る予感がする。あんまり調子にのるなよ、の警告だろう。
 そもそも組織委員長はボランタリーに勤めているのであって、政府ともJOCとも別建ての団体なのだ。国会で取り上げるような話かね。ミャンマー情勢とかワクチン搬送とか景気対策をやってくれよ。
 だいたいそういう役職に就いてくれるのは功成り名遂げてヒマな名誉欲だけが旺盛な人しかいない、あれ会議だらけで忙しいんですよ。辞めさせたところで後のなり手がいない。それなりの重みの人はなかなか探せないし今更受ける人なんかいない。どこかの皇族がいいかもしれないが適任なのは高円宮妃殿下久子様くらいだろう。海の王子?まさか。
 そうこうしている内に炎上騒ぎになって、朝から晩までワイド・ショーがこの話に明け暮れているそうじゃないか。そうなると寄ってたかって非難声明を出さないと、お前もそうか、の魔女狩りに巻き込まれる。一番辞めたがってるのは本人じゃないのかね。野党の女性議員の白装束は薄気味悪いし、とうとう某知事は嬉しさ丸出しで会議を欠席するパフォーマンス。ポピュリストは気楽でいいよね。
 改めて、森失言はダメですよ、ダメ!だが筆者は、あんなお爺ちゃんはそういう頭だからしょうがない、としか思わない。だけどこうガンガンやられているともはや手遅れというか勝負あったね。バスに乗り遅れるなの大合唱。しばらく選挙は打てないだろう。
 そして当然の事であるが辞任。後任は川淵三郎、この人は選手村の村長だから何とかはなるだろう。世の中はそんなもんですか、オレは群れるのが嫌いなだけのスネた年寄りなのだな・・・。
 実はこの森という人は座談の名手で、話せば大変面白いオッサンだ。さる縁で偶然話を聞いたことがあってファンになった。総理も同じように辞任したが、その経緯は抱腹絶倒モノの語り口だった。
 プーチンとの交流も巧みであったし、李登輝の訪日ビザ問題でも気骨を示した。ラグビー・ワールドカップの招致にも手腕を発揮。
 こういう所、誰も評価しないので念のため。もう少し脇を締めてくださいよ、遅いけど。

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