Sonar Members Club No.36

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笑わないボブ・ディラン

2014 JUL 1 22:22:21 pm by 西 牟呂雄

 過日You・tubeを見ていて気が付いた。ライヴ・エイドのテーマ曲としてマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーが造った『We are the Woeld』のレコーディング・ドキュメンタリーなのだが、一流所満載でさぞ手間が掛かったろうと思われる光景が映し出されている。ハリウッドで収録された。
 その中で中心人物ハリーヴェラフォンテ(発起人の一人)の『バナナ・ボート』、例のデーオ、ディイェイェイオーを皆で歌ってふざけあっているシーンがある。プロデューサーのかのクインシー・ジョーンズまでがゲラゲラ笑っているが、大勢いる中で一人ニコリともしない男がいた。本名ロバート・ジマーマン、ボブ・デイランだ。そう言えば写真でもライヴでもこの人が笑っているのを見た記憶がない。
 不幸にして、ディランがフォーク系のプロテスト・ソング・シンガーで神様扱いされていた頃は、僕の方がローリング・ストーンズ一色だったからビートルズ同様リアル・タイムで味わってない。良く聞いたのはその後ザ・バンド(前はホークス)と組んだ当たりからだから、ギター一本のスタイルはもうやめていた。ジョージ・ハリスンのバングラディッシュ・コンサートに出てきて、実につまらなそうに歌う印象だった。そして本人プロテストシンガーと呼ばれるのに抵抗があったのだそうだ。ジョージとは親友のはずだからステージの上でももう少し楽しそうに歌えばいいものを。
 ユダヤ系なのだが、この業界はユダヤ系ばかりなのでディランがそのことで孤立するはずもない。事実同じ場所にポール・サイモンもいたが、こっちははしゃいでいた。ディランの中に、アフリカを救う、エイズを撲滅する、といったこの手の企画が偽善的に見えていたのがあるのではないか。ディランの音楽が最も先鋭的であり輝いていたのは1960年代から1970年代位で、それもミュージックよりも詩が個性的だった。一時はノーベル文学賞の候補にもなったと記憶している。
 撮られたのは1985年の初頭なのが象徴的で、以降輝き続けてはいるが突出した存在では無くなってくる。ネバー・エンデイング・ツアーとしてライヴは人気ではあるが、レジェンドに祭り上げられたと言ったら言い過ぎだろうか。
 実際にはかなり”クサ”とか”ヘロ”とか”コケ”を食いまくっていて、かなり声を荒らしている。全員でボーカルを回していくのだが、ディランはのどに負荷がかからない音域を、例の怒鳴りつけるロッド・ステュワートみたいな歌い方でガナる。ブルース・スプリングティーンも参加していて同じようなノリだ。
 仮にギター一本で、例のガシャガシャ奏法からニコリともせずにメロディー無視で怒鳴りだしたら(ステージならまだしも)それは変なおじさんではないだろうか。
 しかしディランは常に言っている。
「僕が変わったんじゃない。世間が変わったんだ。」
 確かに世界は変わっているが・・・。あれから20年も経ったし、そろそろ狂い咲いてニコニコするのでは、強烈なメッセージと共に。

 ところで、僕としてはミック・ジャガーも一緒に出てワン・コーラスソロを取って欲しかったのだが、こういうところに群れないのがストーンズの個性なのかも知れない。

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ボブ・ディラン&ザ・バンド

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Categories:オールド・ロック

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