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えらいこっちゃ Ⅳ

2015 APR 7 19:19:20 pm by 西 牟呂雄

 すったもんだで1年が経ち、亡母の一周忌を迎えた。何はともあれ1年という時間が経過してオレは還暦を迎えてしまった。菩提寺の桜が今年も散った。
 洋服やら膨大な本、レコードを捨てまくったり売り払ったりしても、まだ山ほど物があってため息が出る。これはそろそろ本腰を入れないと将来に禍根を残すかもしれない。今オレがやらないと必ず捨て残ってしまうからだ。それでなくとも先々代の誰も読まない本が捨てきれずに残っているし、この間は何代前が着たのか良く分からない羽織袴が発見された。

 故人を冒涜するつもりは全く無いが、その人の持ち物というのは本当に困る。当人を偲ぶ以外に何の役にも立たないからだ。オレはあまり過去を懐かしがる気風は薄く(記憶力が悪いという説もあるが)昔の物を残さないしおまけにしょっちゅう物を無くす。写真とかもあまりない。根本は『見なけりゃ思い出さない記憶は必要ないや』と考えるからだ。
 今でも亡母の若かった頃の姿なんかは残しておくべきだったとは、全然思はない。

 命日の前に一周忌を、との話になりカレンダーからお彼岸の3月21日にやることにし、それではお経はその前にとドンドン早まって3月14日に墓参し住職に頼み込んだ。3月とも思えない寒い日で、おまけに墓前でお線香を焚いているときには雨が降った。
『いくらせっかちにして命日の前を選んだにしてもこんな寒い日とは何事か!』
と怒り狂っている顔が浮かんできてゾッとした。更にまずいことに翌日は晴れ上がったポカポカ陽気。今度は
『それ見たことか!』
の声が聞こえて来るようだった。

 日本は四季の表情が豊かだから、それぞれの季節に想いを託せる花も風もあるだろう。だがよりにもよって桜の便りの時期とはお袋様らしいといえば、らしい。いやでも思い出す。
 来年もその次も桜を咲かせては一度は雨を降らせることだろう。桜、こんな寒いうちにまだ咲くな!こっちだって後10回くらいしか見ることが出来ないんだぞ!
 
 還暦を期に余り人前に出なくなったが、その分たまの飲み会では大乱れになってしまう(それは昔からの声有り)。N=constantということなのか、はたまた酒が弱くなったのか。視力・気力ともにめっきり落ちたが、オレはまだ死にそうもない。オヤジが米寿、オレが還暦、息子が25という構成にもなると時代が変わっていくことを実感させられる。

 一周忌の席上(墓参とは別にした)何人かがスピーチしてくれた。
 従兄弟が何人もいるのだが、彼等は『おしゃれで配慮が行き届いて、やさしいおばさまだった。』と口を揃えて言うのだ。一体誰の話だ、と呆気にとられた。どうも子供の目から見るのと多少印象がズレている。
 敗戦後早にく結婚したおやじ・おふくろには、叔父・叔母達の方が『世話になった。』と感じているようだった(二人は長男と長女)。オレとしては、死んだ母親の思い出を一族で共有していくうちに供養になり、次の世代に気質が伝わってくれればと思った。

 オレがこれからどうなっていくのかは知らない。だからどう終わるのかはもっと分からない。
 暫く音沙汰ないなあ、と周りが気が付いたときにはこっそりオサラバしていて『あのオッチョコチョイ、声も掛けずに逝っちまいやがった。アイツらしい。ワハハハハ。』くらいがお似合いとは思うが。

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えらいこっちゃ

えらいこっちゃⅡ

えらいこっちゃ Ⅲ

菩提寺のニワトリ

 

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