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一般不均衡理論

2015 APR 17 21:21:32 pm by 西 牟呂雄

 最近考えているが、経済学で言う『新古典派』の均衡理論は長期的に(100~200年)そうかも知れないが、実体経済というものは社会的な環境の視点を通してみると違っているのではないか。私の仮説だが、必ずしも経済合理性で行動しないゾーンが(先進国でさえも)一定の比率で存在して攪乱要因となり、更に確率論として試算し得るモデルを凌駕してしまう時に雪崩を打って逆バネにする「オーガニゼーション」が発動されてしまうのではないか。
 これは・・、となった時にカラ売りを組織的にやる、或は見切りを付けて資金を引き揚げるプログラムは常に内在しているのではないか、とも思っている。
 僕は『アジア通貨危機』を末端管理職の時代に目の前で見た。比較的順調だった東南アジアの通貨がガンガン売られ、韓国はIMFの管理下に入った。
 ITバブルも味わった。あれ以来「バブルというのは終わってから気づくもの」といった定義がなされたと記憶するが。
 その後更に情報技術が進みスピードも上がったにも関わらず、リーマン・ショックは起こった。前年にサブプライム・ローンが飛んで、年が明けるとベア・スターンやファニーメイと大型の破綻が続いた。これらが奇数月に起こったので出まかせに『次は9月だ。』と言いふらしたら、本当に9月の末にリーマン・ブラザーズがやらかしたので慌てた。しかしその際にも、実は猛烈なカラ売りで荒稼ぎした者はいた。ただこの『稼ぎ』の部分はすぐには現金化されないので全体の信用が縮小する。しかもすぐには返済できない不良債権への評価が算出不能なレベルだったため、国による救済がどの程度の効き目か分からずに混乱を極めた。

 実はヒラ時代に商品先物相場に入れ込んだ時があって一か月くらい夢中になっていた。供託金を積んでその10倍位の金額で売り買いをする。業者はしきりに将来の値上がりを説くのだが、胡散臭かったので逆を張った(業者はヤメロと言ったが)。この時カラ売りを覚えて専らウリの側に回っていた。最初の3日で負けて、供託金を倍にして買いに走る。するとすぐに損を取り戻したのでもう一度手仕舞いしてウリを掛ける、マンマと当たって一週目は大勝。翌週も同じことをすると勝ちが火曜日には消えた。この時に手仕舞いしないで供託金を更に積む、丸損で2週目が終わる。翌週は毎日朝ウリを掛けて、昼休みに結果を聞いては逆張りを掛けることを繰り返して一週間やってチャラにした。このあたりで頭がいっぱいになり仕事に支障をきたしてきて怖くなった。途端に大負けしたので追証が追いつかなくなって止めた。結果は始めた時の供託金の10倍の金を蒸発させてしまった。白状するとこの経験があって、言うところの『均衡』は理論的にない!と確信した。いったい幾らか?言えるわけないでしょ。ワタクシ事で恐縮だがこのせいで結婚が大幅に遅れた、とだけ言っておこう。

 最近『格差論』が盛んに議論される。数字上ではそうなのかも知れない。しかしr>gの仮説を全面的に支持する気になれない・・・。日本においては低金利と上がらない土地のため、個別格差の広がりはそう大幅でもない(シングル・マザーや引きこもりといった各論は別)。例えば大資産を形成していたはずだった企業グループも、銀行護送船団方式にイチャモンつけられた後にはメーカーも銀行も数を減らし、従業員も減らした。
 結局バブルというものは均衡状態が大きく乖離しており、多くの人が先々の信用が拡大しているつもりになって発生する。その均衡を嫌う市場の一部がスタビライズされて行き、いわゆる負のチカラが溜まって来る。そしていらないもの(製品・サービス・建築物・その他等)が目に余るようになると一気に崩壊してしまう。ましてやグローバル金融がこれだけコントロールできなくなってしまうと、崩壊は常に突然なのだ。昔だったら戦争に違いない。
 冒頭の仮説に戻ると、少し極端だがグローバル金融は均衡を嫌うのではないだろうか。まして『レバレッジ』が効いており、高速売買が常態化し、人工知能が判断することとなればビッグ・ストリームは緩やかな調整にはならずにある種の崩壊を招く危険を内在せざるを得ない。

 念のため断っておくが、証券・金融を否定しているのでは全く無い。それらへの経験もないため、そこはSMCのエキスパート達におまかせしたい。

 今日の黒田日銀の緩和政策も異常と言えば異常事態に違いなく、出口戦略が言われだして久しい。イェレンの緩和中止が聞こえてきたら即座に対応すべきなのではないか。
120¥/$の居心地の良さにも慣れてきた。株価は2万円。

 カラ売り組の息遣いが聞こえてくる。
 
 随分手にしていなかったが、久しぶりにシュンペーターを読み直してみようか。昔読んで例の『創造的破壊』について、妙に腑に落ちたことを思い出した。

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Categories:失われた20年とは何だったのか

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