Sonar Members Club No.36

Since July 2013

病中の趣味、嘗めざるべからず

2016 FEB 15 0:00:18 am by 西 牟呂雄

 珍しく高熱が出て臥せっていた。本当に『立って半畳・寝て一畳』を地でやっていると薄汚くなってかなわんですな。お風呂にも入れないし髭も剃らない。節々が痛くてボーッとしてしまう、眠れない。誰とも喋らない。
 テレビなんて見るものがない。古い本を読みだす。これで3時間は潰せる。

 仰向けに寝ても眠くない。あいつは今頃何をしているのかなぁ、と暫く会わない友達を思い出してみる。子供が結婚したとか言っていたが孫はできたのだろうか。そういえば別の奴はこの間バッタリ会って元気そうだった。不思議なもので連絡先はお互い伝えなかったな。

 木星には四つ月があって最も内側にある月は42.5時間の公転だが、裏側に入って見えなくなる時間が地球と木星の接近した時より最も遠いときでは20分以上遅れることから、光に速度がありそれは秒速22万kmだとわかったんだって。
 因みにあまりの飽きっぽさと集中力の持続欠如から1冊の本だけを読み続けるのは苦痛で 2~3冊を回し読みしている。歴史エッセイも覗いてみることに。”満洲”は土地の名前ではなく民族の名前で、州と書いてはいけない、と。『マンジュ』というサンスクリット語の漢訳だが、国名(清)から何からみんなサンズイが付いていなければならない、と。なぜならば大明帝国が火徳の王朝を自称したため、水でないと勝てないから。

 2日目もズーッと同じ状態が続く。こう高い熱が続くとフラフラする。
 JRの熊谷駅のひらがなが『くまがや』になっているが、次郎直実は『くまがいじろうなおざね』と習った。いつから『くまがや』にしてしまったのだろう。友人の熊谷もくまがいと呼んでいたが、地元の人はどうしているのか。
 ヒマに任せてレイモンド・カーヴァーの原書を読むが、高名なアル中作家は酔っ払って書いたのか、全然面白くない。きっと知らない単語が多すぎて電子辞書ばかり使うせいだろう。日本語の小説も読まないのにバカな本を買ったもんだ。
 代わりに『新しい高校化学の教科書』まで読んだ。こっちは以前から少しづつ少しづつ読んでいたが内容を全く覚えていないことに感動した。
 眠れない。

 3日目、体が痛い。骨が痛いのか全身痛い。
 ついに医者に行く。インフルエンザではないのは既にわかっていたが、薬がなくなりそうなのだ。じっとしているのも疲れるものなのだ。ついでに散歩をしよう。
 熱のせいで物凄く寒く感じるから、スキー・ウェアでトコトコ出かけると、さすがに”寒い”とも感じなかったが、病院でも道端でも多少奇異の目で見られた。
 
 4日目
 いよいよいけない。39度以上が続く。私はなにか悪いことをしたのだろうか。
 友人が編集している文芸誌(季刊)が送られてきた。この人翻訳業界の大物で独特の凝った文章を書くんですな。
 ところでまさかこのまま死にはしないだろうが、この熱の高さは何なんだ。
 
 『眠れない』と訴えたらお医者様が睡眠導入剤をくれたが、これが高熱のせいか物凄く効く。呂律がまわらなくなって訳の分からんことを口走って寝た。
 するとですな、変な夢をみるんですな、これが。昔喜寿庵のあたりは犬は放し飼いでリードなんか付けなかった。その頃いたペケという犬と川の中州をズーッと歩いていると、突然ペケは全力疾走で逃げてしまいいなくなった。『オーイ。ペケ!』と言いながら追いかけるがもう分からない。この川の中州は記憶のある桂川のものではないようだ。そして私は学齢ギリギリのガキらしい。こまったなぁ、と途方に暮れていると突然『ワン!』の声。何と私の身の丈程に巨大化したペケがいるではないか・・・・。怖い夢だった。

5日目
 昨晩から猛烈に汗をかきだした。夜中に一度着替えるがグッショリしている。明け方横を向いて寝ていると胸を汗が伝っていくのが分かる、凄い。サウナにいるように滝のように流れる。また着替えたら熱が37度台に下がっていた。
 立ち上がってみると、体が軽くなったような気がしたが、疲労感もまたあった。発熱はそれほど体力を奪うものなのか。
 病中の趣味、嘗めざるべからず・・出典は忘れたが中国の古典だが、これはウソです。この熱では、例えば音楽なんか全然聞きたくない。
 それに昔は38度くらいは平気で酒をガブ飲みし気合で直した、やっぱり還暦を過ぎたのだ。うーん。ムチャはできないなぁ。
 何もやることがなくなったので、頭に来て深大寺の側にある天然黒湯に1時間浸かった。これで治ったなら高い薬代と医療費は何だったんだ。

六十而耳順


「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

Categories:未分類

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊