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202X年の怪 (日本侵略される!)

2014 SEP 20 12:12:11 pm by 西牟呂 憲

一日目 
 北陸の某所、午前11時。原発が再開されたことにより、人の流れが戻った地方都市の沖合いに轟音とともに水柱が上がった。数発連続して爆発した後一瞬静寂が訪れが、直に数倍の規模の水柱が立ち、山間部でも煙が上がった。住宅街の市民も作業中の農民も、仕事を放っぽり出して逃げ惑った。ただ、作業中の発電所職員は、徹底した危機管理マニュアルに従って通常運転は粛々と続けられた。
 同じ頃、北海道・東北数箇所でも似たような水柱がいくつも上がり、何者かによる攻撃があった模様だが、何れも30分もしないうちに第一波が終わり、近隣の人々からのツイッター・SNS等でネットに攻撃時の動画や被害状況がアップされ、騒然となった。
 ところが実際の事変が全て人里離れたところばかりでテレビ・クルーが間に合わず、ヘリを飛ばした頃には海面は穏やかに、山間部には白煙が登るのが少し写される程度の画像しか撮れない。
 臨時ニュースがテロップで入った。どの局も進行中の番組を打ち切り、のんびりした映像の前で『何者かのテロ行為の可能性があります。』とアナウンサーが伝えた後に、あわてて体育館等に避難した人々の『いやもう物凄いキーン・バーン・ドーンという音に慌てて逃げ出したんだけど。』というインタヴューが流されるのみで、一体何が起こっているのか、誰にもわからないのだ。
 午後1時頃から、又ネットに奇妙な画像が現れた。数名の目出し帽を被った武装集団が隊列を組んで駆け足で移動しているのだ。ビデオに撮られた映像では、どこに行くのか整然と走っていく姿が映り『何かあったのですか。』などと言う質問には一切返事をしていない。すばやいテレビ局はその映像を流し始めた。
 午後2時、県庁所在地と東京、大阪、名古屋、横浜、神戸、博多で爆発が起こった。こちらはいずれもほぼリアル・タイムで報道され、焼け焦げた事務所等の画面とともに『同時多発テロ』という言葉が飛び交うようになる。日本中が騒然となった。
 爆発のあった大都市ではそれまで普通に機能していたインフラが一斉にダウンした。特に爆心に近い所で全ての家電やATM・カードが機能しなくなり、パソコンから携帯から全部駄目である。中心部はパニックになった。
 無論、官庁も企業も警察も全部だ。事態を重く見た野田聖子総理は急遽安全保障会議を招集。そのころ原発を抱える地方首長から、風評により治安維持が困難との報告が寄せられ始めた。
 安倍内閣から後継指名を受けて、盤石の船出だった野田総理は慌てていなかった。驚いたことに官房長官・小渕優子、防衛大臣・小池百合子、外務大臣・山谷えり子、の四大臣会議メンバーが全て女性であることに多くの国民は『アッ。』と息を呑んだ。そして、
『いずれかの国家および組織のテロ攻撃の可能性を捨て切れない。国民の皆様におかれては、どうか冷静に対処願いたい。国家の安全は全く問題ない。』
との声明が出された。
 午後五時、警視庁は大都市の一斉テロは時限型磁気爆弾の爆発、という見方を発表した。官邸と警視庁は磁気爆弾の影響はシールドされて無事なのだが、パニックに陥った人々には伝わらない。しかし郊外の周辺部や地方は何の影響もなく、日常が進行しつつあったが、各紙夕刊は『日本に本格的同時多発テロ』の見出しを打ったが、不思議なことに実際の死者・けが人といった犠牲者は殆ど存在しないようなのだ。
 大都市中心部は帰宅困難者で溢れかえり、警視庁機動隊の出動が時の首長『車椅子の都知事』こと佐々淳之から命令された。同時に佐々知事より自衛隊に治安出動要請があり、練馬と朝霧の普通科連隊が皇宮警察との協力の元、皇居と官邸の警護が始まった。何故か国会議事堂は警備対象から外された。
 ほぼ同じ頃、原発を抱える各県の知事から、地区自衛隊への治安出動要請がなされた。村井宮城県知事、田母神福島県知事はじめ、自衛官出身の知事が多いことに気が付いた人はあまりいない。各地では原発の内部・敷地内に各普通化連隊を中心とした部隊が配備され、周辺を機動隊が警備活動をするシフトが整然と敷かれた。
 午後7時、沖縄地区警戒活動中の海上自衛隊のP3Cが墜落したと政府が発表した。緊張は一気に高まり、メールが飛び交って全国民の知るところとなった。
 野田総理以下、安全保障会議の四大臣はNHKの画面に現れた。
『複数の発電所付近に原因不明の着弾と、国籍不明の武装部隊の目撃が報告され、また大都市部に機能麻痺を狙ったかと思われる磁気爆弾が爆発しました。被害は調査中ですが、国民の皆様の安全を確保するため自衛隊の治安出動をかけ、警察警備も全力を挙げて展開中です。どうか冷静な対応をお願い致します。必要ない外出は控えて頂きたい。尚、明日から公的機関・小中学校並びに高校大学・各種専門学校等、金融関係、株式取引は当面2日間を目途に休止。役所、製造業は2日間は必要最小限の出勤とします。通勤、通学の安全が確認でき次第早急に平常に戻すべく新たに布告致します。』
 一気に喋ると、続いて小池防衛大臣が登壇し、
『事態を収拾するために、安全保障会議に海上保安庁を管轄する国土交通大臣と警察を管轄する国家公安委員長を加えた「大本営」を設置し、その下に在日米陸軍・空軍・第七艦隊・海兵隊並びに自衛隊統合幕僚会議を並列して大本営作戦本部とし、石原慎太郎衆議院議員を特命本部長とすることにしました。事態の進展に逐次政府発表をお待ちください。』
と締めくくった。石原慎太郎議員は既に90歳を幾つも超えていて、会見場はどよめきが起こった。
 その後、さすがに中心部の盛り場の表通りは人通りが減っって夜が更けていくが、よく見ると飲み屋は普通に繁盛しており、パチンコ屋もゲーム・センターも普段と変わらず営業している。地方都市では何の変化も無かった。
 しかし真夜中12時に突然「緊急政府発表」のテロップが流れ、再び野田総理が画面に現れた。
『容易ならざる事態が進行中です。但し、良くお聞きください。現在何者かの攻撃があることが想定されていますが、現実に十分なる抑止がされて国民生活になんの支障もきたしておりません。しかしこれから24時間を情報遮断、ブラック・アウトと致します。なお各社の報道は規制されませんが、通信障害を起こすので地上波は随時制限させていただきます。以下具体的な状況は石原本部長より申し上げます。』
代わって石原慎太郎がスックと立ち上がる。例によって偉そうにマイクの前に歩いてきて目を瞬かせた。
『まぁ戒厳令などと言えば騒ぐバカもいるかも知れんから、外出控え勧告ぐらいに思ってくれ。各地に攻撃を受け、一部ゲリラ部隊の侵攻があったやもしれないのだが、確認に至っていない。被害状況は現時点では極めて微小。しかし万が一に備える意味でも慎重に行動して頂きたい。尚、自衛隊全部隊に出動準備命令を、在日米軍に緊急即応準備要請、海上保安庁全艦船に出港待機、警視庁並びに各自治体警察に機動治安体制発動、全消防に防災体制準備発令。交通規制はしないが、24時間の情報遮断。即ち地上波の一部使用禁止だな。娯楽番組を止めろ、なんて言わないから。次の発表を待っていてくれ。NHKは自主報道と政府発表のため、私のところで管理せざるを得ない。答えられないことが多すぎるので、質問はなし、だ。』
 画面は解説者とアナウンサーのスタジオに切り替わったが、結果として何がどうなっているのか誰にも分からなかった。

つづく
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202X年の怪 Ⅱ(戒厳令ではない!)

202X年の怪 Ⅲ(何かおかしい!)

202X年の怪 Ⅳ(クーデター!)

202X年の怪 (エピローグ)

Categories:202X年の怪

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