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船弁慶

2014 OCT 3 20:20:03 pm by 西 牟呂雄

IMG_0003 能の船弁慶を見て来ました。吉祥寺の月窓寺でやる薪能で、野村万作・萬斎の親子が演るのでチョイと行ったのです。撮り方が腕が悪く、人だまみたいですが幽玄が味わえますでしょうか。実際には照明が投光されてもう少し明るいのですが。薪能は地元振興のためもう30年も続いている名物イベントです。
 船弁慶は歌舞伎の演目にもありますが、お能はやはり武家の芸事、歌舞伎は町の芝居といったところでしょうか。三味線なんか入りませんからね。
 先ずは狂言で『柑子』と言って太郎冠者が当時貴重品だった日本固有のミカンを食べてしまうお話で、まぁコミカルで笑えます。私、表情豊かな万作さんの顔が海老一染ノ助・染太郎のお兄さん、亡くなった染太郎に似ているなー、と思いましたね。
  

静御前

 それで船弁慶になるのですが、義経役は大抵子方(子供)がやることになってます。あくまで脇役なんで大島伊織君という恐らくこの業界のお子さんでしょうが、まだ小学校未満じゃないでしょうか。出だしから一生懸命スリ足をして「判官みやこおちー。」と声を張り上げます。烏帽子姿がカワイイ。オペラ・グラスで見ると、やはりお子さんですから目がよく動いていました。
 ワキの弁慶が口上を述べます。初めに書いたように武家の芸事なので科白の終いに『~~~~候。』とつけますが、~~~ソウロ、と切って述べます。”ロ”のところを一段と低く止める。
 主役である前シテの静御前が舞いを舞います。塩津哲生(てつお)さんという喜多流の方が演じていました。この流派の特徴なんでしょうか、泣いていることを表現するために頭と足を小刻みに震わせるのです。初めて見ました。あれも”技”ですからアル中の酒が切れた時だってああはいかないでしょうね。そしてこの静御前をやった人が次に後ジテの平知盛になってまた出てきます。しかしお仕舞は手を開き気味にグルっと廻るだけですから、トーシロの私にはあんまり面白くない、正直。
 ここで狂言になり一行が船で出立します。その船頭役が萬斎さんです。この人舞台栄えしますね。一転にわかに掻き曇り船が波に揉まれるところになると艪漕ぎの動きが早くなり『なみがなみがなみがなみが』と科白を早回しするのが見所。
 そして平知盛の亡霊が薙刀をかざして襲い掛かってきます。能は全てスリ足ですが、この時だけ初めに踏み足になります。

義経と渡り合う 平知盛

 
 受けて立つ義経は「そーのーとーきーよーしーつーねーすーこーしーもーさーわーがーずー。」と立合うのですが、相手は亡霊ですから切れません。結局弁慶の法力で怨霊は退散します。お能は女の役以外にも亡霊・老人など、成人男子以外は面を付けます。この知盛がしているのは真角(しんかく)という面と冠り物(かぶりもの)の黒頭(くろがしら)です。歌舞伎の連獅子よりも後ろは短く角も生えています。あの格好をしてみたい!能は趣味でやる人もいますからどこかの装束屋さんで売っているかも。しかしそんな物買ったら買ったで大騒ぎになりそうで・・・。

 作者は観世信光、世阿弥の甥の子供です。多くの作品を残していて、お能としては世阿弥のモノよりショーアップされた観世流の元を作った人ですね。
 この〇阿弥と称する人々は踊念仏の一遍上人が始めた時宗(じしゅう)の一派です。観世家からは阿弥がとれていますが、宗旨替えをしたのでしょうか。それとも今でも時宗を信仰しているのか、誰かご存知の方いらっしゃいますか。ついでに冠り物を貸してくれる所をご存知の人も宜しく。

月窓寺 薪能

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Categories:古典

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