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死闘(ヴァーチャル)十番勝負 そのⅡ(1から5)

2015 FEB 10 20:20:09 pm by 西 牟呂雄

其の一 天然理心流VS薬丸自顕流
 この薬丸自顕流は同じ薩摩のお家流の示現流と混同されるが元々のルーツは違う。薬丸家の野太刀の方が古くからあったのだが、示現流創始者の達人東郷重位に薬丸兼陳が入門し高弟になったのでややこしい。型は示現流より更に少なく、立木を猛烈な勢いで撃つ。何しろ『地軸の底まで叩き切れ』とやるのだから凄い。西南戦争時の薩軍の切り込みを受けた官軍に、自分の刀の鍔が頭にめり込んでいた死体が多くあったそうだ。受け切れなかったのだ。
 一方の天然理心流もスマートじゃないところはドッコイドッコイである。物凄く太い木刀を振り回す田舎剣法で、強いことは強い。例の新撰組が京都で毎日のように人を切り殺していた。
 ただ、新撰組が暴れまわっていたころはスポンサーの会津と薩摩は対長州で同盟関係にあり、直接刀を交えることはない。具体的には薩摩藩出身の富山弥平衛が新撰組に入隊し伊東甲子太郎と共に離脱した。伊東は結局惨殺され、その遺体引き取りに現れた際に油小路で切り結んだケースだろうか。いくつかの小説に取り上げられているが、新撰組は初めから多数で囲んでズタズタに切る得意の戦法に出たのでどっちが強いか分からない。
 それでは一対一の真剣勝負はどうだったろう。例えば天才沖田総司対人切り半次郎こと桐野利秋。司馬遼太郎の説では近藤勇は『一太刀目は辛くも外せ。』と言ったそうだ。
 半次郎は『チェストー!』の気合と共に物凄い勢いで切り込んで来る。総司は飛燕の動きで後ろに跳んだ。勢いは凄いが、半次郎は並外れた達人であるからつんのめることにはならず、直ぐにトンボの構えに戻り『チェスッチェスッチェスッ』と三太刀!総司は今度は左に跳びしばし正眼に構えた。半次郎の息が上がるのを待っているのだが、魔人のような気迫をみなぎらせているばかりでビクともしない。どうやら総司は太刀を受けるつもりは無いらしい、一分程にらみ合った。
 総司は銃を構えるような天然理心流の『突き』の構えに変えた。刀の刃が外側に向けられる独特の型だ。ただならぬ殺気を見て取った半次郎は必殺の打ち込みを掛けた。同時に総司の三段突きが出た。
☆半次郎が一瞬早く総司の太刀筋を見切り肉を切らせて骨を絶つが重傷。薬丸自顕流の勝ち。

其の二 大相撲VS極真カラテ
 その昔K-1の選手がテレビで当時横綱だった貴乃花と一緒に出たとき。アナウンサーが『横綱、K-1と相撲はどっちが強いと思いますか。』というアホな質問に対し『いやー、K-1でしょう。』とテレビ的に答えていたが、顔は不敵に笑っていた。
 異種格闘技の場合、ルールでいつもモメてバーリトゥードのような転がっての勝負になってしまうから面白くない(失礼)。そこでこの組み合わせではダウンしたら20カウントのノックアウト、クリンチOK(要するに組討あり)投げもあり、グローブなし、というルールでデスマッチをやったらどうなるか、を考えた。
 ゴングが鳴った後、相撲は仕切りの体制で相手が出てくるのを見据えている。極真は間合いを取りながら力士の顔面に蹴りをぶち込むべく周りをステップする。が、力士も手を着けたまま向きを変える。一瞬の間合いを見てフェイントを掛けた後前蹴りが飛ぶが、力士は額でこれを受ける。頭をぶつける頭突きの稽古で鍛えているので首ががっしりして痛みもショックも少ないのだ。しかも仕切り状態だから頭が低い。そこで必殺のローキックを出したところ、丸太のような腕で払われる。次の瞬間、力士が怒涛の立ち上がりでぶちかましにきて双手突きで突進した。相撲の前へ向かうスピードは速い。極真はかろうじて横に回りやりすごした後、電光石火の回し蹴りをみぞおちに叩き込む。しかし全然効かない。もう一発の右回し蹴りが頭部に炸裂すると同時に張り手を喰らって極真ダウン。ところがカウントを聞く前に跳ね起きる。相撲は再び仕切りの構えに入った。
 今度は間合いを取らずに相撲が突進する。顔面に正拳突きを受けるが力士は怯まずガシッと組み付き締め上げた、サバ折りだ。腹に乗せられた格好でもがき苦しむが、極真は両手で力士の耳を打った。中立一本拳だった。よろめく力士は二丁投げのように極真を叩きつけて再びダウンを取る。カウント15まで行ったが立ち上がる。力士はまたも仕切りの格好からカチ上げに当たろうとした刹那、必殺の飛び膝蹴りがマトモに入る。力士は顔面大出血し戦意喪失。
☆勝負は極真の勝ちだったが膝半月板損傷で選手生命は絶たれた。一方力士は次の場所の土俵に上がった。

其の三 USアーミーVSフランス外人部隊
 アメリカ海兵隊は確かに精鋭部隊で鍛え抜かれている。南方で日本軍と死闘を繰り広げたのは主に彼等だ。海軍も史上(水上か?)最強と言っていいだろう(大日本帝国海軍を除いて、と言いたいが)。ところが陸軍となると具体的なイメージが涌かない。鮮やかに思い出されるのは西部劇の騎兵隊か。しかしカスター中佐の第七騎兵隊はスー族(人数が違いすぎるが)の斧・弓矢の接近戦に全滅したり、こう言っては何だが朝鮮戦争やヴェトナムでの陸戦は個別戦闘において芳しくない。イラクの時も圧倒的な火力で叩きに叩いた時点でイラク軍が戦意を喪失してギブアップ。アフガンでもタリバンを制圧することはできなかった。もっともアフガンの民の(多少人種によろうが)残虐性と戦闘意欲はつとに知られる。何しろソ連軍を事実上撃退し、その後も軍閥が割拠する形で自国民同士殺しあって今日に至っている。
 レジョン・エトランゼ(外人部隊)はフランスの植民地防衛がその主務で、現在でもアブダビ・ギアナ・ジブティ・コモロ等に派遣されている。歴史は古く伝統的に猛烈に走らせる訓練をするが、その本義は『突撃』である。弾丸が雨霰と飛び来る中をバタバタ倒れつつも銃剣突撃を繰り返す。いつの戦闘か忘れたが、部隊の全滅を報告にきた伝令が全身に銃創を負っており、指揮官が『貴様は大丈夫か。』と聞くと『閣下、私は既に死んでいます。』と言って倒れたという伝説があったくらいだ。
 砂漠で双方一個連隊が対峙して作戦行動に出た場合、次のような展開があるであろう。
 互いに確認するや米軍から重迫撃砲が発射される。着弾地点に轟音と共に砂塵が次々に上がる。外人部隊は連隊ごと即座に後退して散開した。後方にも陣地を築いていたのだ。重迫撃砲は鳴りやまず長く連続して撃ってきていた。
 外人部隊の指揮官は左右に一個小隊を展開させる手に出た。無論米軍もおなじことを考えるが、ここで外人部隊側の迫撃砲が一斉に撃ち出された。ただどうやら米軍の迂回を阻止するためか部隊両翼に着弾を集中させた。
 そうしている内に1時間が経つと迂回小隊同士の交戦が始まったようだ。米軍の自動小銃と外人部隊の軽量突撃銃が火を吹いた。膠着した戦闘がまだまだ続く、日が暮れかかってきた。各迂回小隊の報告より右翼が手薄と見抜いた外人部隊指揮官(日本人)は1個大隊を幾つかに分けて右翼方面に展開させるとともに左翼の残存小隊に後進を命じた。
 太陽が落ちかけた頃に、ついに外人部隊の肉弾突撃が始まった。右翼方面から米軍の後ろに回りこむような動きを見せつつ、第一線が突撃して直ぐ伏せると後ろから匍匐前進してきた後列が鬨の声を挙げて更に前進する。米軍はジワリと圧迫されだした。一方外人部隊の損傷も激しい。しかし彼我の距離が1キロぐらいになると侵攻のスピードが上がる。戦場において、いくら自動化されていても、歩兵が3分以上引き金を引き続けることは無理で、双方の打ち合いにも必ず波が生ずる。外人部隊の大隊長(サモア人)は一瞬のスキを見逃さなかった。バズーカを連続して撃ちこませると号令した。
「着剣!突-撃-!!」
驚くなかれ正面連隊もロケット砲を発射させて全軍が突進してきた。味方を撃つ可能性もあるが、玉石砕く捨身の戦法に出たのだ。無論バタバタ倒れるがじきに米軍が後退を始めた。
☆拠点制圧は外人部隊の突撃により勝ち。しかしその後後方より飛来したアパッチの猛烈な火力で全滅。
 
其の四 酒乱VSハラスメント
 酒乱と言っても色んな種類があって泣き上戸なんかは放っておけばいいから、ここで登場してもらうのはネチネチ絡むカラミ酒だ。この手の酒乱には話の終わりがない。酔っ払いは飽きることもないから始末が悪い。
 一方のナントカハラスメントもしつこさはいい勝負。思うにパワハラを露骨にやる人はセクハラもマタハラも何でもござれではないか。つまり嫌な奴だ。
 この対戦の最も凄い組み合わせは部下の酒乱の女性がハラスメント・オヤジと親睦を兼ねて飲みに行く想定である。時間が過ぎて酒乱が進む。
「キミ、そんなに飲むからオトコに恵まれないんじゃないかね。」
「フフフ、上等よ。いつでも誰とでもが日常ですから。」
「エッ・・。何てコトを。子供生めなくなっても知らないぞ。」
「あたしの家系は多産系でいくらでもコイです。ホホホ。」
「しかしね。もういい年だろう。」
「サセ頃シ頃、時を構わず、ってご存知?」
「そういうことばかり言ってると今度の査定は考えざるを得ないな。」
「こうして飲んでることを知っている人はいないのよ。会社のロッカーに女性の下着が入っている、ってブラック・メールが投げこまれてから慌てて開けたら何が出てくるかしら。鍵なんかいくらでも・・。」
「そう言えばシリアに支店を出す決定がなされたが、独身・高齢・性別問わずと人事が言っていた。」
「望む所です。あんなところなら本当に勤務してるかどうか確かめようもないでしょうね。普段は会社の経費でパリにでもいようかしら。」
「ああ言えばこう言うって性格ブスとか言われるんじゃないかな。」
「あいにく顔のほうがブスです。ブスってらくですよ~。」
「・・・・もういいや。早く辞めたらどうかね。」
「あたしの方が若いし。アッ部長ももう4年ですね。次のポストないんですか。」
「うるさい!もう帰る。」
「テメー!帰れると思ってんのか。さっきからあたしの胸見てるけどなによ。」
「調子に乗るな!見るほどの胸か!」
☆酒乱の勝ち

其の五 中国人VSインド人
 言い換えるとマレー地区で常に激突する華僑対印僑。どちらも機関銃のように喋り倒す所は良く似ているが、どうも住み分けているようには見える。逆に世界中にある中華街をインドの街中では見たことがない。まぁデカすぎて気が付かないだけか。一方の中国では稀にインド人ビジネス・マンはいるのだが、これまたどういうことかあまり群れていない。
 インド人はしかめ面をしていきなり『値引きはどれ位できるんだ。』とやる。味も素っ気もなくニコリともしない。おまけにビジネスの前面に出てくるような奴はネチッこいし暗算がメチャクチャ早い。大体〇割の、といった交渉は通じない(通じるのは日本だけだったりして)。
 方や華僑は『私に任せておけば全部OK。コミッションは最低でもこれだけ。』と図々しいこと夥しい。彼らの一期一会は『もう二度と会わないんだからむしれるだけふんだくる』という意味に違いない。
☆中国人がバイヤーの時は高いの何のと大騒ぎしてネゴろうとするが、同じくらい『あれもこれも値段が上がっていてどうしてもこの価格だ』と頑として譲らずに膠着状態に陥る。一旦は物別れになるが、翌日全く動じないインド人に痺れを切らした中国人が少し譲歩する。モノともせずに席を立とうとするインド人を見て歩み寄り、インド人の勝ち。
☆インド人がバイヤーだったら、もっと安く、どれ位安く、と畳み掛ける交渉をニタニタ聞いていた中国人がしょうがないですね、と引き下がる。ところが中国人の裏切り者が『本当はコレぐらいまでできるはずだ。私を通してくれれば』とこっそり連絡を入れ成約になる。元々は物凄いボッタクリ価格なので中国人の勝ち。

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