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南朝四百八十寺

2015 JUL 4 0:00:06 am by 西 牟呂雄

千里 鶯 啼いて 緑 紅に 映ず
水村 山郭 酒旗の風
南朝  四百八十寺(しひゃくはっしんじ)
多少の樓臺 烟雨の中

 杜牧という詩人の有名な『江南春』である。昔からどういうわけかこの詩が好きで、蘇州や杭州に行った時に現地でしみじみと声に出してみたことがある。
 杭州(現地読みはハンゾウ)は南宋時代の首都。北京まで通じている大運河の起点でもある。切れ込みのような杭州湾の奥にある都市でこの辺ではもう川は流れない。流れないどころか銭塘江という大河ではポロロッカまで起こる。yjimageCA35WX6I

 多くの運河が巡らせてあり、喫水一杯まで貨物を積んだ平べったい船が行き交っていた。
 こんなに水が近くて大雨ですぐ洪水になるかというと、全くならない。さすがに千年以上治水を怠らなかったせいだろう。夏はメチャクチャに暑く冬に大雪に見舞われたこともあった。
 古(いにしえ)の時代、新緑の中に鶯が鳴く、春風に煙るような霧雨が降る、さぞ鮮やかだっただろう。『酒旗』は文献では”酒屋の旗”とされているが、あの紹興酒のような甘い香りの風を詩人が感じたのじゃなかろうか。それとも、どの家も『こんな日は安らかに一杯やって旅を急ぎなさんな。』とばかりに運河沿いに屋台のように酒屋を出したのだろうか。あのテの酒はチビチビやると、日本酒やウイスキィをガッと飲んだような泥酔に襲われるのではなく、いつまでもフワフワするように酔える(最後は同じだが)。
 
 ご他聞に漏れず、公害規制も何もなしで開発が進んでしまい、場所によってはひどい臭いがすることもある。とにかく流れていないのだから。
 ポンコツ工場の二階を間借りしていて、電力事情が不安定だったため突然昼間にエアコンが止まった(もちろん電気も消え機械も止まる)ことがあったが、すぐ後ろの運河の異臭が充満して耐え難かった。
 

こんな感じかな

こんな感じかな

 
 ところでこの七言絶句という形式は読み下しでは抑揚たっぷりなのだが、現地の人間に音読してもらうと、三三七拍子の七節みたいに読まれてちょっと違和感があった。
 特に『四百八十寺』のところは『スーパイパーシーシー』に聞こえてしまいちょっとマヌケ。
 そうか!『しひゃくはっしんじ』と読ませるのは原語からパクっているのか。

 杭州と言えば、宋代の政治家・詩人として名高い蘇東坡の考案した豚肉と紹興酒を煮込んだ東坡肉(トーロンポウ)という料理が名物とされる。この人は天才詩人なのだが、どうやら恐ろしく頑固な人だったらしく中央政界からは何回も左遷される。何度目かの左遷で杭州にいた時、名勝西湖の水利工事を行い、その際に振る舞ったものと言われている。220px-Su_shi[1]

西林の壁に題す

橫に看れば嶺と成り 側(かたはら)よりは峰と成る
遠近高低 各(おのおの)同じから不(ず)
不 廬山(ろざん)の真面目を 識らざるは
只 身の此この山中に在あるに縁(よ)る

 名文で有名な『赤壁賦』はちょっと長いので好きな七言絶句を載せた。前から気になっていたがこの「真面目」は「まじめ」と読んでいいのだろうか。現地の発音だと「ジェン・ミェン・ムゥ」から類推して「しんめんもく」とやった方がいいと思う。どんなもんだろう。

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Categories:古典

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