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昭和亜空間戦争 Ⅱ

2015 AUG 8 22:22:18 pm by 西 牟呂雄

 大塔宮マッカーサーと白洲将門の霊界戦争の火蓋が切って落とされた。
 大量に開放された共民党員は普通選挙を通じて市民権を得ると、将門は秘かにこれを支援して怨念を撒き散らす。慌てた大塔宮はG2の下部にキャノン機関を設置し妨害工作に出る。将門は新興の愚連隊を使ってそれを又妨害する。
 終戦連絡中央事務局の参与としてオックスフォード仕込みの英語で米軍人を煙に巻き、頑強に主張し続け嫌がらせを徹底する。「従順ならざる唯一の日本人」と呼ばれてニヤリとして見せた。

 日本国憲法について、両者の対立は頂点に達する。民政局長のコートニー・ホイットニー准将をオチョクリ倒してついに大塔宮を激怒させるに至り無理矢理翻訳させられるが、将門はチャランポランに翻訳して涼しい顔だ。今日まで論争の的となる悪文の数々はいい加減に翻訳したためである。
 ただ、調子に乗って返還された広畑製鉄所の売却に暗躍して富士製鉄社長の永野重雄と取っ組み合いになったのはマズかった。人間界ではやはり腕力がものをいうため、柔道で鍛え抜いた永野に引きずり倒されコテンパンにやられた。

下山総裁の遺体回収

下山総裁の遺体回収

 組合を結成させたのはいいが世情が不安定になりマズくなってくると、大塔宮は一転してゼネストを中止させ緊縮財政のために大量解雇を実施させる。
 すると将門は禁じ手ともいえる行動に出て、ついに下山事件を起こす。この時は電力分割のドサクサに関わって北東電力の会長に化け、民間人に戻っていた。
 大塔宮はすぐさま三鷹事件・松川事件を起こして対抗する。
 
 しかし世の中は次第に安定してきて、再び実空間と亜空間の乖離が始まっていた。

 突如朝鮮戦争が勃発した。北朝鮮が民族の統一を掲げて雪崩れ込んできたのだ。あっと言う間に連合軍(国連軍)は半島から叩き出されそうになる。大塔宮マッカーサーは慌てた。
 現地では連戦連敗、指揮命令も満足に伝わらない。破れかぶれになって仁川上陸作戦を発動すると共に韓国にいた旧帝国陸軍経験者を招集させた。指揮官は大陸の英雄、金錫源大佐。総合指揮官がマッカーサーだと聞くとさも愉快そうにうそぶいた。
「日本軍を破った男が日本軍を指揮するのか。よろしい。日本軍が味方にまわればどれほど頼もしいか、存分にみせつけてやりましょう。」
 更に大量の人民解放軍にビビッて原爆使用を申し出た時点でマッカーサーは解任される。

元帥の議会演説

元帥の議会演説

 羽田から帰国するフライトの直前。未だ大塔宮であるマッカーサーは最期の霊力を振り絞って怨念を振りまき、日朝新聞のコラムに『マッカーサー元帥。ありがとう。』と書かせた。
 飛行機が飛び立つとダグラス・マッカーサーは長い眠りから覚めたような錯覚にとらわれ、ふと一体自分はどこで何をしていたのか、と思った。側近が『元帥閣下。議会での演説の草稿はいかがされますか。』と聞いた時、口をついて出たのが以下の言葉である。
「Old soldiers never die; they just fade away. 」
 これがそのまま使われたのだった。
 大塔宮は離陸した途端に亜空間に去った。

  一方、白洲次郎も北東電力会長を辞した。只見川の水利権を超法規的措置という荒業で東京電力からむしりとるような大暴れは影をひそめ、大沢商会会長や軽井沢ゴルフ倶楽部理事長等を務めた。
 将門もまた亜空間に戻り、白洲次郎に戻ったのだった。

 今回も決着がつかず現在も尚、亜空間での戦いは続いている

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昭和亜空間戦争

Categories:伝奇ショートショート

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