南シナ海波高し
2015 NOV 4 22:22:12 pm by 西 牟呂雄

アメリカがついに堪忍袋の緒を切ってイージスを人工島の(自称)領海内に派遣した。恐らく秘匿任務の潜水艦も潜航していることだろう。F22もスタンバイ。これはそう簡単なデモンストレーションではない。アメリカは待っていたに違いない。何を、一つは日本の安保法制の採決をだったと考えている。このヤバい事態が夏にでも起こったら廃案にされていたかもしれない。
もう一つはTPPだ。冷戦時代にやっていた封じ込めのアウト・ラインがそれなりに出来た。私自身は多少の違和感があるものの賛成せざるを得ない、という立ち位置である。
かなりの長期に渡ってこの作戦は実行されるだろう。中国はどうするか。
あの胸クソの悪い中国外務省の報道官は「断固として」「あらゆる手段を」「無慈悲な(これは北の国か)」とガナリ立てるが、結局のところ手も足も出ない。それぐらい米中の海軍力は違う。訪米時に爆買いまでして見せたのに習近平の面子は丸潰れだ。国内からは突き上げられ国際社会では孤立する。
アメリカにしても来年は大統領選挙があるので、クリントン候補を勝たせたい民主党オバマ陣営としても簡単に拳を振り下ろせない。戦争の始まる前はイケイケの候補が勝ち、始まって犠牲者が出ると止めた候補が勝つに決まっている。
現在は水面下で米中の相当激しい外交戦が繰り広げられているはずだ。
中国嫌いのヴェトナムは勿論、ロクな軍事力のないフィリピンは心から歓迎していることだろう。
話はズレるがフィリピン国軍は建軍以来一度も対外戦闘をしたことのない軍隊で、ミンダナオのムスリム過激派との小競り合いはするがそれにも米軍の軍事顧問団の指導を受けている。要するに弱っちい国なので中国にイチャモンなんかつけられっこない。操業していた工業団地にフィリピン空軍のプロペラ機が落ちたこともあったくらいだ。
北部高地のバギオという町にミリタリー・アカデミーがあって、そこは先の大戦時の最期に山下兵団がギブ・アップした場所。そこで山岳レンジャー訓練中の士官候補生達を見たことがあった。尋常な目付きではなかったが習志野の空挺団の方が精悍だとは思った。
しかし地図を見れば一目瞭然、この海域でドンパチが始まるとASEANと日本は本当に困る。そして僕は愛する台湾に思いを馳せるのだ。多少遠いが領有権を主張しているのである。人工2千万。正式に国交のあるのは僅か23カ国で北朝鮮よりも少ない。なぜか北朝鮮は162カ国と国交があり国連でもデカい面をしている。
巨大帝国と対峙するにきれいごとは言っていられない、国民皆兵で誰もが兵役に就く(徴兵逃れで留学する者も多い)。僕は1996年の総統選挙に合わせて大陸がミサイルを撃ち込んだ時台北にいたが、ネオンは消え人影も普段より少なく、まるで戒厳令のようだったことを肌で感じた。
人工島の埋め立ては喉元に匕首を突きつけられた格好で、周りに頼りになる国はない。さぞ心細かっただろう。友邦日本は南シナ海に行くなどトンデモない。やっとアメリカが重い腰を上げてくれた格好だ。
台湾経済は極めて特殊で、バランス・シート重視の分厚い中小企業が支える。2千万国民の中に70万人以上の社長がいると言われている。経営は真面目で堅実だ。
僕は大陸でも仕事をしたことがあるが、パートナーに恵まれてそれほどひどい目にもあっていない。もっともあまり大きく稼ぐピクチャーには敢てしなかったので嫌がらせも受けなかったのだろう。会ったのは皆いい人達で仲良くしていた。しかし国家の意思、集団の論理となると大陸の政治性・戦略性は別の生き物のような振る舞いになることは歴史が証明している。隣の国もそうである。
言うまでも無く中国は一つであるが、台湾国民はソフトもハードも中国人ではない。僕はしばらく住んでいたから実感している。
先の大戦ではアメリカは台湾を素通りして沖縄に上陸した。沖縄は地政学的な立地から直ぐに返還されず米軍基地は未だに多くの問題を孕んでモメている。台湾は国民党に占領された。一方で尖閣は沖縄県に所属しているにもかかわらず県は国と対立するばかり。複雑な沖縄事情を私ごときが語れないが、日台紐帯の橋頭堡になってくれないものか。個人的に台湾がいじらしくてしょうがないのだが。
米中海軍同士のテレビ会議は非常にプロとしての会話で終わっているはずだ。詳細は表には出ないだろうが「ここまではやる。」「これはやらない。」といった内容が確認されたと睨んでいる。暫くは中国の尖閣への排他的経済水域航行のような頻度でアメリカは侵入する。
見過ごしてならないのは『敵の敵は味方』『こっちも忘れるなよ』の国際関係だ。ロシアは演習中の米空母にスクランブルさせた。北のあの国も構って欲しくてしょうがない。
千両役者、我らが安倍総理はこの面倒な時期に日中韓首脳会談を鮮やかにさばいた。
ハナから得るものなど全くない首脳会談なんぞやる必要は無いと思っていたが、あの余裕。どちらも経済がヤバくなったので、一つ日本にネジを巻いてやろうとでも思ったのか。
大陸は焦り丸出しで台湾にもトップ会談を持ちかけた。これで次の選挙は民進党に決まった。馬総統も終わり。
半島は私のインテリジェンスには少しでも中国と差がつくように日韓の昼食会をしなかったことが伝わってきている。何しろ1000年恨むと宣言した大統領なのだから次に首脳会談をするのはどの国も指導者が代わってからじゃないか、島が帰ってくる訳でもないし。反日デモも相変わらず(但し、中国の官製反日デモは無くなったことを確認している)。
両国とも国是としての反日はしばしば国内の権力闘争の格好のネタであり、イザとなったら法治国家とも思えない行動に出る。個人同士の信頼関係に頼るしかないことを我々は十分経験している(個人的に信頼が築ける人はいる)。
それより中韓どちらも国境を接した、拉致を認めない核保有国をどうにかしてくれ。
首脳会談がなくて困っているのは舞台が回ってこない外務官僚くらいだろう。ところで私は嫌韓でも反中でもありませんのでよろしく。
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Categories:潮目が変わった

東 賢太郎
11/5/2015 | Permalink
先日の人民元切り上げは驚いた。中国経済にとって明らかに逆行する決断だから身を切ったことになる。きいた話だが、習近平は訪米したら針のむしろだった。サイバーテロが相当やばいらしい。習は人民元のキーカレンシー仲間入りが貿易、金融で国をたてる絶対条件、プライオリティーなので少々の不利益は覚悟で腹を切ってみせた、本当かどうかは知らないが、少なくとも今はアメリカが脅せているようだ。
西室 建
11/7/2015 | Permalink
本日の報道で『中国は一つ』の原則が確認されたとか。
既に述べたように言うまでも無く中国は元々一つである。
だが台湾が中国であったとは言えない。国民党が勝手に”中国”から上陸したのだ。
香港の一国二制度がどうなったかを台湾が知らないはずがない。
国民党は南沙の埋め立てを認めているのか。尖閣を領土と言い張るのか。
来年早々の総統選挙が見物になった。
民進党が勝つ方に1万ソナー・ダラー。