米・露はどう対応するのか
2017 FEB 9 9:09:53 am by 西 牟呂雄

トランプ大統領になって先が見えない予測不能になると、私のような保守派は歴史に立ち返って考える。百年前はどんなだったか。
1917年は二つの世界史的動きがあった。一つはロシア革命。もう一つはアメリカが第一次世界大戦にシブシブ参戦した。ロシアはグシャグシャな混乱期となりアメリカはヨーロッパに関与を始めた。
目下の状況はこの反対に見える。ロシアはプーチンの元にクリミアを併合してドネツク(東ウクライナ)で戦闘、アメリカのトランプ大統領は内向きに舵を切る。しかし実は少し前にはその逆で、足元の東ヨーロッパの国々がEU入りしNATOがロシアの足元にまで範囲を拡げ、その勢いを後押ししたのはアメリカ(オバマ大統領は積極的でないにせよ)であった。
アメリカが中東に手を焼いてイランと妥協までしたが、ロシアはシリアに露骨に介入する。
世界を左右する両国の関係は100年間振り子のように(サイクルとは言えないが)綱引き状態にある。冷戦は終結したものの、この力関係は相変わらず国際社会に強い緊張を強いている。
情報機関がリークする大統領に拘わるスキャンダルめいた話はさておき、この振り子理論で言えば米露関係は安定に向かうと睨んでいる。ひとつのヒントに気が付いた。
トランプ大統領は就任前にキッシンジャーと会っている。
キッシンジャー人脈が復活した。これはロックフェラー人脈でもある。
指名された国務長官はテイラーソン。言うまでもなくエクソン・モービルのCEOであり同社はロックフェラー直系。
クリミア併合による制裁で金融と並んでロシアが堪えているのは石油掘削の最先端技術が対象になっていることだ。北極海に近いエリアの石油は中東のモノと違って油層が硬く、既存の技術では掘れない。その技術を握っているのはアメリカのメジャーなのだ。
一方ティラーソンはサハリンⅠプロジェクト依頼ロシアと関わった親露派として知られる。制裁解除はロシアにもエクソン・モービルにも共通のウィンーウィンなのだろう。
制裁解除には何かのきっかけと条件があるだろう。
筆者はクリミア、もしくは戦闘の散発する東ウクライナの非武装緩衝地域化だと考えている。クリミアは手遅れかも知れないが、ドネツクあたりならウクライナも飲める妥協点ではないだろうか。それさえクリアすれば米露は対ISで十分協同活動し得るだろう。
もう一つ。来年はロシアでも大統領選挙が行われる。勿論プーチン再選は磐石だろうが、節目になることは間違いない。
ところでトランプと会談後、キッシンジャーは中国を訪問する。何故か。
キッシンジャーと共和党は親中だが、ティラーソンは知られた対中国強硬派だ。しかも同様の発言をするマイケル・フリンと先日来日し尖閣が安保条約適用範囲であることを表明した”狂犬”マティース国防長官といった布陣である。マティースは「明のビヘイビァを研究している」と言ったそうだ。
筆者はキッシンジャー訪中を、エクソン・モービル(ロックフェラー)繋がりでティラーソンを国務大臣にせざるを得ない旨、中国に伝えるためだったと見立てている。案外「トランプは本気だから浮かれるな」と釘を刺しに行ったかもしれない。中国はトランプ大統領の当選を選挙期間中の『TPP脱退』『駐日米軍撤退』発言に期待していたフシがあったからだ。おまけにヒラリーでは『人権問題』を取り上げるだろうが、トランプだったらその点心配なかろう、と。
或いはキッシンジャーは「トランプには良く言い含めておいたからな」と言ったかもしれないが。
この米・露接近はプーチンの追い風となり、領土交渉を言いつのる安倍総理に対してプーチンがそっぽを向くのでは、という論調が主流のようだ。筆者はそうは思えない。
最近ロシア関係者で頻繁に話題に上るのが、上記制裁解除の結果採掘・精製可能となるシベリア・オイルの北極海ルートの輸出に関して、プーチン大統領が並々ならぬ熱意を示しているからだ。北極海ーオホーツク海ー日本海ルートはロシアの核心的戦略の気配がする。その際に千島列島の安全確保は極めて重要だ。タンカー回送ともなればアラスカからも近い。
双方受け入れ可能な『共同管理』、例えば主権はフィンランドだが自治権を持ち言語・教育・生活様式はスウェーデンとしたオーランド諸島方式、といった方法の本で『共同経済活動』をするやり方はある。無論安保条約は適用されない。
ちなみにこの裁定案は国際連盟の提案で採用されたが、発案者は日本人新渡戸稲造だった。
そういえば北方領土とクリミアには奇妙な歴史的偶然が重なる。
クリミア戦争は1854年から始まるが極東でも戦われた。英仏連合艦隊がカムチャツカ半島のロシア守備隊を攻撃しているのだ。そしてその戦いの隙をついてプチャーチン提督は下田で択捉島が日本領土という文言を含む和親条約を結んでいる。
また、先の大戦の戦後処理のために連合国が会談して(あの不愉快極まりない)北方領土に禍根を70年ものこしたその場所は、クリミア半島のヤルタであった。
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Categories:ロシア残照

東 賢太郎
2/10/2017 | Permalink
「米露は対ISで十分協同活動」、これじゃないか核心は。対イスラム戦争を国論とし支持率上げる。移民差し止め否定判決で司法を悪者にする。ゴーサッチを入れた最高裁を牛耳る。ベストシナリオと思う。ISつぶしが失敗だと一気に失脚する。それが最大のリスクシナリオだ。だからロシアは絶対に必要だ。
中国は殴って脅して最後は客にする。これしかないよ。労働者なんか雇用したって儲からなきゃ給料出ないだろ。中国ほどでかくていい客なんて世界にない。明白だ。でかいメキシコ。叩いて見せて人気取る。十分取れたら仲良くする。キッシンジャーのお役目だ。
そうなったらポチはいらない、尖閣は国境問題だからフォークランドと同じく介入はしないと来る可能性がある。
西室 建
2/10/2017 | Permalink
何しろ目下の調査でも支持と不支持が拮抗してアメリカが分裂している。
テロでもあれば支持率は上がるが、その前に『暗殺』でもされたら大変だ。
安倍総理とはケミストリーが合うから舞い上がっちゃったらチョット恐い。ここはトヨタに少しおとなしくしてもらって・・・。
西室 建
4/8/2017 | Permalink
ついにトランプが撃っちまった、59発全弾命中。
それも習近平とメシを食ってる時。その場で非難声明は出せないから国連でいくら中国がツベコベ言っても後の祭り。
ロシアだってウクライナとドンパチやってるんだからどうってことない。何といってもまだ制裁されているのだから解除のカードも残っている。
これは計算したのか天才なのか、トランプは。
北の国も震え上がったに違いない。
プーチンはどう出る、ISはどう出る、目が離せない。