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映画『HIROSHIMA』で鈴木貫太郎を観る Ⅱ

2018 MAR 1 20:20:28 pm by 西室 建

 SMCメンバーの野村さんが長年鈴木貫太郎の研究をし、そのコレクションの表記映画・ドキュメンタリーについてブログをアップされたが、実は私も同じ物を見ている。
 私も双方の立場を丹念になぞった重厚な作品だと高く評価している。
 そして終戦工作において鈴木総理が巷間言われる陸軍を抑えるための『腹芸』をしていたという説を野村さんは支持されているようだが、この点私は少し違った見方の立場だ。
 77才で多少耳が遠くなっての総理大臣である。懊悩し苦しみぬいて最期に昭和天皇の英知に頼ったのではないか、と思うのだ。なにしろ2・26の時に銃弾を浴びて一命をとりとめたお方だ。徹底抗戦を主張する陸軍を抑えることができるのか、その不安たるや尋常ではなかったはずだ。ただしこの人の見識と振る舞いに対する敬意はいささかも損なわれるものではない。
 一方ポツダム宣言への回答として『黙殺』と言ったかどうかについても考証を加えておられるが、私はこれは使ったと思う。米国はその翻訳に困ったことは確かで、単純に『ignore』とはしなかったらしい。確認していないが『silent kill』と翻訳したというヨタ話もあるくらいだ。
 ついでながら、私はハリー・トルーマンはレイシストであるとも考えている。

 さて、作品の中に「ホウッ」と唸らせられたシーンがあった。
 冒頭の大本営と思われる会議の席上で阿南陸軍大臣が配下の参謀に尋ねる。
「畑中少佐とやら」
 既に『日本でいちばん長い日』等で御存知と思うが、畑中健二少佐は実在の人物だ。終戦時の陸軍省軍務局課員だった。 
 終戦の詔が裁可されポツダム宣言を受諾することになり、陛下の玉音放送が録音された後、8月14日深夜鈴木総理があれほど心配していたクーデターが起きる。畑中少佐はその中心人物で、近衛師団参謀を巻き込み徹底抗戦のために無条件降伏を阻止しようとした。
 皇居を占領し、玉音放送の原版を奪取しようと考えたが、それをはねつけた近衛第一師団長森赳中将と参謀白石中佐を殺害してしまい、更には師団長命令を偽造した後に12日時点で完全武装して皇居の警護の当たっていた近衛歩兵第二連隊を展開する。
 電話は切断、皇宮警察は武装解除。あわやとなったのだが東部軍管区田中軍司令官の説得に失敗し結局鎮圧される。玉音盤は事前に徳川義寛侍従によって保管され無事だったが、宮内省を捜索する殺気立った雰囲気を後に証言している。
 畑中少佐と椎橋中佐は自決、田中司令官も責任を感じて自決。
 しかしながら帝国陸軍が消滅してしまい、その他の将校は当時の軍法・刑法違反にも拘らず責任を問われなかった。
 又、その騒ぎの最中に参謀肩章を吊った某宮様を皇居内で見た、という証言もあるのだが真偽の程は分からない。
 映画等では狂信的な人物として描かれたが、本人は至って物静かな人だったようだ。敗戦の衝撃が多くの人から冷静さを奪った極端な例だろう。最も冷静だったのは無論鈴木首相と天皇陛下。

 もう一つ。
 原爆を運んだインディアナポリスがテニヤンからの帰りに日本海軍の潜水艦イー58に撃沈されるシーンがある。それは事実だが、閑話休題。
 スピルバーグのジョーズという映画をご記憶だろうか。初作品で海洋学者が乗る「オルガ号」の船長クイントが夜のキャビンで戦争中の事を語るシーンがあった。日本の潜水艦にやられて海に放り出され同僚が鮫に食われる、という話だ。クイントはその時インディアナポリスに乗っていたと語るのだ。
 ジョーズでは原爆については触れられていなかったが、見たときにピンときたことを思い出した。

 やはり原爆の被害があまりに甚大なので、日本では大っぴらに放送はできなかったのだろう。天皇陛下の御言葉が入るのがヤバイというのも野村さんの考察通りと思われる。

戦争の終わり方

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