酩酊するインド
2018 SEP 19 0:00:56 am by 西 牟呂雄
この夏の東京に比べればはるかに涼しいインドだった。
去年は水争いで暴動が起き、一昨年は下流の都市が大水害に遭い、今年は上流で洪水になった。日本も大雨・台風・地震と傷ましいことばかりだが、どうやら世界中で地球がおかしくなっているのじゃなかろうか。
経済は去年あたりが底だったようで、著名な企業がいくつも破産した。しかしこの国の分けのわからなさは奥が深すぎて手に負えない。ウジャウジャと街に溢れかえっているいる人々は到底税金を真面目に払っているとは思えない。いきおい私のようなまともな観光客からは取れるだけふんだくるのだろう、ホテルの明細を見ると何から何まで6%とか9%のTaxがかかっている。
ここは訪ねたことのある場所なのだが、そこに至る街道沿いの風景がどうも違っている。嘗てはガタガタの道を車で通った。
だが、フト気が付くと僕はその埃だらけの道を一人で歩いている。暑い照りつける日の中をスーツを着て革靴を履いて。胸のあたりに玉のような汗が滲んで来た。右も左もいつのまにか人はいなくなり、ボロ車とトラックが行き交っている。
突然目の前に砂漠のような光景が出現した。砂に流されたように道がなくなって、しかもその砂は踏み固められたように固い、足がめりこむようなことはなくかえってスタスタ歩ける。しばらく歩くと横を車が一台、私を追い越していった。
そしてその車がスーッとスピードを落として殆んど歩くような速さになると、その先に子供が赤ん坊を抱いて立っている。すると車の中から何かが放り投げられている。子供はそっちに走って行き一生懸命に拾う、赤ん坊を抱いたまま。あれは物乞いをしているのだ。
だが本当に不幸な目にあって物乞いをしているのか、それとも職業的にやっているのかは分からない。
そして妙に寒い、何故だ。
うっ、寝ていた。ぼやけた目に霞んで見えたのは喧しい音楽の鳴るバー・カウンターだった。オレはインドに来ているはずだよな。
だが、今見た光景は確か・・・いや、そうだ確かにインド高原の南部に来ている。この寒さはエアコンを効かせ過ぎるからだ。テーブルにはストレートのウィスキィのグラスが一つ。
飲み干して立ち上がってみると意外にしっかりしている。それにしては何も持っていないのは何故なんだろう。何もインドくんだりで泥酔しなくても。
これから間違いなく宿酔いになりそうな深夜の空港で、やっとこさ出国手続きを終えた。というのもヴィザが本日切れるので、オフィサーにが何しに来ていたのかしつこく聞かれて手間取ったからだ。だいたい入国の時からガタガタ言われた上に、ホテルのチェックインの際にはカードが拒否されたりと今回は散々な旅だった。
ムスッとしながらゲートにいると、揃いのジャージ姿の子供たちが集って来る。そしてその背中にはKARATEの文字が。インドで空手?
これから国際大会でマレーシアに行くのだとか。そして東京オリンピックから空手が競技種目になるので練習を始めた、と目を輝かせている。折角だから写真に撮らせて、と頼むと集まってきて『iyaaa!』の掛け声で型のポーズを決めてくれた。何事か、と待っている乗客が一斉にこっちを見ていた。
ここだけの話だが、引率していたカラテ・マスターは見るからに胡散臭そうなオッサンで本当に空手を教えているのかは怪しい。
そういえば今まで何度もインドに来ているがショート・カットの女性を見たことがない。宗教の縛りなのか美的感覚なのか、もっともムスリムのチャドルの中はわからない。
で、帰国してみると台風で関空は閉鎖、北海道は地震で大変な事になっていた。
袂に入る風がヒヤッと感じられる。いつのまにか秋になったようだ。
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