Sonar Members Club No.36

カテゴリー: アルツハルマゲドン

そこにいた男 Ⅱ

2020 MAY 20 21:21:57 pm by 西牟呂 憲

 某警察署の取調室に向かう刑事が話していた。
「黒川、その話は本当か」
「デカ長、本当です。私が取り調べているときに突然言い出したのです。出井主任も一緒でした」
「自分が原部穣で死んだのは女房の浮気相手だって?いくらなんでもおかしいじゃないか」
「ですから妻に会わせろ会わせろの一点張りでした。自分は椎野なんて男じゃない、とも」
「心神喪失による減刑を狙ってんだろ。オレがバケの皮を剥いでやる」
「それが原部で喋る話はミョーにつじつまが合うんですよ。椎野だったときは本当に記憶にないように見えます」
「オマエも青い。まあ見てろって。よし、入るぞ。(ドアを開けてドカドカと入る)椎野茂だな!」
『いえ、きのうもそちらの刑事さんに言いましたが僕は原部穣です、信じてください』
「なんだ、まだやってんのか。その原部さんはもう亡くなってるんだよ。原部さんなら生まれはいつでどこなんだ」
『はい、平成✖✖年▽月〇〇日、東京都千代田区で生まれました』
「わかったわかった。だったら小学校2年の時のケガの話してくれる」
『えっ、ケガ?』
「そうだよ。その話してよ」
『・・・・』
「どうした。覚えてない?じゃあこれはどうだ、高校の時にバンド組んでたよね。よくライブハウスに出てたったって聞いたけどそこのハウスの名前教えて」
『ライヴ・・・ですか・・・』
「ほら見ろ。お前は椎野茂だろ!記憶障害のフリなんかしてるんじゃない!」
『いや、本当です。僕は原部穣です!信じてください!椎野なんて名前じゃありません、ワー!』
「泣いたってダメだ!この野郎」

「まったくしぶとい野朗だぜ。一日中『僕は原部ユズルです』の一点張りだ。きょうこそ暴きたおしてやる」
「ですがどうも様子が変ですよ。あの取り乱し方」
「だからどうした。黒川、オマエも3年目だろ。あの程度のガキなんざ一捻りだ。(バーンッとドアを開けて)オウッ、椎野。きょうこそ本当の事を吐けよ!」
『おはようございます。エート刑事さん』
「ほう、原部だってのはもう諦めたのか」
『何の話ですか』
「きのう散々手を焼かせたじゃないか」
『刑事さんにお目にかかるのはきょうが初めてですが』
「バカ言え。昨日会ってるだろう」
『きのうは出井主任って方とそこにいる黒川刑事さんです』
「なにー、今度はそう来たか。よーし、オレはデカ長の柴田だ。早速始めるぞ、おい、椎野。〇月✖✖日の夜どこにいた」
『何度も出井さんにいいましたけど勤め先の◇◇旅館にいたはずです。僕は手帳も持ってないし日記をつけてもいませんから、旅館の人に確認してください』
「それは聞き込みしてるさ。だけどその日の深夜に▽▽区の高層マンション街からあんたそっくりの男がタクシーに乗ってるんだ。そしてその日のそのあたりで人が死んでる」
『原部という人なんでしょう。僕もニュースで知ってます。その時公開されたドライヴ・レコーダーに映っている男はケガのあたりが僕にそっくりです。それで聴取されているんでしょうが私じゃありませんよ』
「ところが困ったことにあんたにゃアリバイがないんだ。旅館の同僚はその日はあんたは返ってこなかったと証言している」
『えっ、そんなバカな・・・』
「どこに行ったかさえ話してくれれば疑いは全て晴れるんだがな」
『疑いって、まさか原部という方を僕ガ何かしたというのですか』
「そこは調べている最中だが、事件性はあるとにらんでる」
『でも週刊誌やワイド・ショウではその人の奥さんが浮気してたって言ってますよ』
「その相手があんたでノコノコやってきたところで原部さんとトラブルになったとすればどうかな」
『私もどこにいたか記憶が定かではありませんが、トラブルだのタクシーに乗ったことだの一切記憶にありません。私のアリバイより原部さんの死因は何なのですか』
「それはおとといお前が原部の時に、追っかけられた後にガード・レールに頭を打ったと言ったじゃないか。この黒川と出井が聞いてるぞ」
『はぁ、私が原部の時って何ですか。その方が亡くなったんでしょう』
「きのうその口で原部だとほざきやがったじゃないか!ふざけるな!テメー、オレをおちょくってんのか」
「デカ長、落ち着いてください、あばれないで」
「黒川ウルセー!」

「昨日はデカ長キレてましたよ。きょうはやめてください。頼みますよ」
「出井も来るんだろうな。お前一人じゃ事の信憑性が確保できるかどうか分からんからな」
「主任はもう行きましたよ。ほら、あそこにおられます」
「オッ、おーい出井」
「デカ長。おはようございます」
「済まんが付き合ってくれ」
「何だか苦戦してるそうですね」
「参ったよ。見たこともない嘘つき野郎だ。さて、始めるか(ドアをバーンと開けて)。オウ!きょうのテメーは誰なんだ」
『(下を向いて)おはようございます。言ったじゃないですか、僕は原部穣ですよ』
「ホウ、そうか。死んだ男が蘇ったか」
『だからー。僕に飛び掛ってきた人は死んだかもしれませんが、その人は知らない人でした。僕の家で待ち伏せでもしてたんでしょう』
「その後タクシーに乗ったよな。自宅マンション前から。そこからどこに行ったんだ」
『乗りました。でも飲んだ時によくあるんですがどこに行ったかさっぱり覚えてません』
「そうかよ。オレは知ってるぜ。✖✖のホテルというか旅館だ」
『そんな旅館なんか行ってません。何しに僕が行くんですか』
「バカ!そこで働いてんだろうが」
『違いますよ。僕は〇〇商事の社員です』
「へー、そうかい。だったらその〇〇商事で何してるんだ」
『資材調達部の機材課設備係です』
「・・・・それは死んだ原部さんの部署だ!」
『だから僕が原部ですってば』
「だったら聞くが、その晩の後から何日出勤したんだ」
『・・・・それは・・・』
「ホレ見ろこのヤロー!」
「デカ長、落ち着いて。さっき君酔うと覚えてないって言ったな」
『はあ』
「まさかと思うがなんか薬やってないだろうな」
『くすり・・・って飲んでますよ』
「やっぱりそっちかテメーはよォ!」
「デカ長、待ってください。君何飲んでんの」
『あの、酒飲むとかえって頭が冴えて眠れないもんで』
「何を飲むんだ」
『レ〇〇〇ミンです』
「なんだそりゃー!脱法ドラッグかぁ!」
「デカ長、違いますよ。チョッ、チョット来てください」
「バカヤロウ!今半落ちしたじゃねーか!」
「黒川!デカ長を抑えろ」

「デカ長、あいつはシロですよ」
「寝ぼけるんじゃねぇ。真っ黒だ」
「あいつが飲んでるレ〇〇〇ミンは睡眠導入剤です」
「それがどうした」
「過度の飲酒とともに服用すると解離性譫妄(せんもう)といって意識障害を起こすんです」
「だからってシロにゃならんだろうが」
「デカ長、鑑識から上がって来た結果もガイシャの遺体に格闘の後はなく、恐らく自分で転んだ打ち所が悪かったのだろう、とのことです」
「だったら何で自分は原部だって嘘を言い張るんだ」
「ガイシャの、いや被害者じゃなさそうなんでホトケですね。ホトケの奥さんが出合い系か何かで知り合た男を自宅に上げて浮気をしてたのは報道だけじゃなくてこっちもウラがとれてます。その相手として現れたのが譫妄でヘロヘロになった椎野でしょう。寝物語にダンナのことを聞かされているうちに自分が原部だと思い込んだんですよ」
「そんなバカな。思い込んで普段は旅館の番頭をやってたのか」
「旅館にいる時は椎野なんです。解離性多重人格なんです」
「それじゃ何か、あいつの頭の中では死んだのは誰だってことになってるんだ」
「突然現れた第三者で奥さんの浮気相手だとでも思ってるんでしょう。もっとも椎野の時はこの件と無関係という認識でしょうが」
「冗談じゃない。オレのカンに狂いはない。あいつがホシだ」
「アイツって誰ですか。椎野はホトケに指一本触れてませんよ。原部で証言した内容は鑑識の結果と一致して蓋然性があります」
「それじゃ原部だろう」
「原部はホトケでしょう」
「うるさい!どっちでもいい!こうなったらトコトン追い詰めてやる」
「そんなことしたら逆提訴されることだってありますよ」
「じゃ何か、そのナントカ障害のガイキチを釈放して野放しにしろってのか」
「まずは精神鑑定を受けさせるんですね」
「知ったことか。よーし、ぶっ殺してやる」
「本気ですか。イヤちょっと待ってください」
「デカ長落ち着いてください。どうしたんですか拳銃なんか出して」
「抵抗するな、テメー等も弾き倒すぞー!」
「やめてください!」「拳銃しまってください!」
「やい、出井!黒川!公務執行妨害で逮捕するぞー」

「黒川、デカ長がヤバい。狂ってからじゃ遅い」
「出井主任。わかりました。僕が見張ってますから、上の方に手を回して本件から外してください」
「わかった。いやそれどころじゃないかもしれん。先にデカ長の精神鑑定だな。取り調べ中のデカ長の識別能力を超えてしまったようだ」

そこにいた男 Ⅰ 

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そこにいた男 Ⅰ 

2020 MAY 19 23:23:06 pm by 西牟呂 憲

 原部(ばらべ)穣(ゆずる)36歳、妻と二人で東京のマンション暮らしである。商社勤務のサラリーマンで、仕事はそこそこできるだが、酒が好きで酒乱のケがある。原部の運命の歯車は狂うべくしてある日狂った。
 週明けの月曜日、酒にしたたかに酔いフラフラとタクシーを降りた途端に酔い過ぎて一瞬どこにいるのか迷って道端に佇んだ。もう道を歩く人もいない。向かいのマンションが原部の自宅があることに気が付いて、渡って帰ろうとすると、突然男が飛び出してこっちに向かって来る。他に人はいない。とっさに酔った足取りで逃げようと踵を返した。
「待てコノヤロウ!」
追ってくる男が叫ぶと車道を横切って走る。そして二車線の車道を渡る寸前に原部が派手に転んでしまった。すると折って来た方の男はそれに躓くように足を取られそのままつんのめってボクッという音を立ててガード・レールに頭から突っ込んだ。
 重い打撃音とともに「ガッ」とか「グッ」とかいううめき声が聞こえた。
 原部は車道でひどく顔を擦りむいて血まみれの凄まじい形相になっておきあがる。男の方は道端で頭を分離帯の方に向けて転がっている。気が付くと服は転んだ衝撃でところどころ破けたりして乱れている。明らかに原部を狙った突進だった。
 そこにタクシーが通りがかって、佇んでいる原部をタクシー待ちと思ったのかハザードを点滅させながら寄せてきた。倒れていた男には気が付かなかったようで、原部のいる少し先に止まった。
「お客さん、乗るなら早く乗ってください」
 息の上がっていた原部は途端に酔いが回り、後先考えずにその車に乗り込んだ。
「お客さん、お客さん、つきましたよ」
と起こされてワン・メータ程度の料金を払って降りると持っている金を数えて目に入った看板に駆け込んだ。ここまでは何回もやってしまったことのある酒の上の出来事だった。

 翌日、出社しようとしてやめた。一瞬どこかと思ったが、どうやら旅館にいることは分かった。何が起こっているのかサッパリ分からず行っても仕事にならないと考えた。夕べの事ははっきりとは覚えていないが、何かやらかしたような不安が頭を掠めた。そして妻の携帯に連絡だけは入れようとライン通話しようとしたが、拒否される。電話番号も着信拒否。どうしたことか。
 とスマホでニュースを見て仰天する。
『深夜の殺人事件か マンション街の死角』
「深夜の突然の来客とトラブルになったらしい会社員 原部穣さんがマンション外で事故に会い死亡。現場から逃走した男がいた、という目撃証言もあり何らかの関係があるとみて警察は行方を追っている」
 オレが死んだ?冗談じゃない。服を着てラウンジに行き、ちょうど付いていたテレビがワイド・ショーをやっていたのでそれに見入る、そこでもニュースになっていた。キャスターが『現場から立ち去ったタクシーの行方を追っています』等と言っている。少しづつ記憶が蘇った。原部は逃げてきて顔に怪我をしているが、実際には何もしておらず、突然男が襲い掛かってきたのだ。そしてフラフラとタクシーに乗った。
 ハッと事の重大さに気が付いて銀行ATMに走った。下ろせない。こんなに早く封鎖されるとは手回しが良すぎないかと思ったが、とにかくダメである。
 原部は途方に暮れた。所持金は一万円もない。妻は連絡は取れない。何が起こっているのか。

 椎野茂は住み込みで働いている簡易旅館のテレビニュースに見入っていた。ベイ・エリアで起きた事件をワイド・ショーで特集していた。
 夜中にご主人が訪ねてきた男と争って死亡。犯人と思しき男を乗せたタクシーを追っている、という内容だ。
 掃除の早番で来たおばちゃんが声をかけた。
「おはようございます。椎野さん、夕べは夜中にケガして帰ってきて大丈夫ですか」
「おはよう。うん、もう何ともないよ」
「全然覚えてないんですって。椎野さん休みの時に時々変になって帰って来るって評判ですよ」
「ああ、オレ酒癖ワリーからね」
 実は酒癖の問題ではないのだ。酔っ払って寝付けないときにレ〇〇〇ミンという睡眠導入剤を使う癖があって、時々意識を失うことがある。
 椎野はこの簡易旅館で去年から週に3日程働いている。この近辺には修学旅行の生徒を泊める安めの旅館がいくつかあったが、少し前から訪日する外国人の宿泊客がその値段の安さから来るようになった。それに対応する人材が全くいなかったため、語学対応する人材を求めていた時に、初めはボランティアとして雇われた。
 椎野は英語だけではなく中国語や韓国語、カタコトでロシア語、イタリア語を喋って見せたので社員待遇にしてもらい日払いで手伝っていた。
 ただ、働く時は住み込みでほかの手伝いもこなすという条件だったが、問題は出勤が不規則なのだ。一週間もどこかに行っていたりして顔を見せなかったり、或いは一日おきとなったりする。それでも客受けがいいため社長も従業員も大目に見ていた。給料は日給だし、明るくみんなに好かれてもいた。
 ここで拾われるまでは失業者だったようだが、過去のことはあまり話さない。犯罪者ではないようなので誰も詮索しなかった。
 この日は若いアメリカ人が全く日本の事情を調べもせずに投宿し、これからどうやって観光するのかの相談に乗っているうちに意気投合し、一緒に飲みに行ってしまった。
 だが、椎野自身はなぜケガをしたのかは全く記憶に無かった。

 原部は、なぜかアメリカ人のカップルと居酒屋で盛り上がっていた。
 アメリカ人二人はインドから来日していて、世界一周の新婚旅行なのだそうだ。
 偶然原部がかつて赴任していたバンガロールから来たと言う事で大いに話の花が咲いた。
「あのサイババの病院は見てきたか」
「見た見た。びっくりしたよ」
 話しながら原部は少し困惑した。なぜならバンガロールの記憶はあるのだが、どこに住み、何の仕事をしていたのかさっぱり思い出せないのだ。
 モヤモヤしながらアメリカ人カップルと別れたのだが、二人は『一緒に帰らないのか』と怪訝そうにした。
 悪い癖で、眠れるために睡眠導入剤を口にしてから帰宅するのだが、自宅マンション前でハッとした。突然意識がハッキリし、オレはここで死んだことになっているのだと気が付いた。そして歩きながら自分の結婚生活の記憶が殆んどないことに唖然とした。それどころか自分の生い立ちを思い出そうとしているうちに意識が混濁してきた。

 椎野は勤務先の旅館のロビーにある週刊誌を目にし、先日テレビで見た深夜の事故の記事を読んでいた。
 かの事件は意外な展開を見せ、格好のワイドショーのネタにもなっていたのだ。
 事件の直後は、亡くなった原部さんの奥さんがここのところストーカーに悩まされており、事件当日はそのストーカーがマンションの前に現れたため原部氏が追いかけて事故に会い死亡した、という報道だった。
 ところが一週間もしないうちに風向きが変わってきた。
 曰く、被害者の奥さんであるA子さんは原部氏に隠れてズーッと付き合っていた浮気相手がおり、被害者の出張の多いことをいいことに自宅マンションでの密会を重ねていたらしい、と。そしてその浮気相手がたまたま被害者がいるときに訪ねてきたためにトラブルとなり、事故に遭ってしまったのだ、と。ストーカーという情報は本人からのカバー・ストーリーとしてリークされた、つまり嘘だ、と。
 何とも気分の悪い話に不愉快になりながら、椎野はしきりに顔のケガが気になった。どこでやったか分からないが擦りむいた後が赤く瘡蓋のようで見苦しい。
 その時、つけっぱなしにしてあるテレビから速報のテロップが出た。
「警察は先日の深夜に起きた事故で現場からタクシーで去って行った不審な男について、タクシー会社から提供されたドラオヴ・レコーダーの映像を公開することにしました」
 ブレイキング・ニュースで画面が変わると『あっ!』と声を上げた。映しdされたのは明らかに自分の顔だからだ。
 同時に数名の男と制服警官が入り口から入って来た。受付に向かっていたのだが、ロビーにいる椎野に気が付いてドカドカと向かってきた。
「椎野茂だな。原部穣さん死亡の件で任意同行頂く」
 えっ、今ニュースで言っていた件か。オレの顔が出たけど何も関係ないぞ。
「わたし、椎野ですけど・・。何の話ですか」
「言い分は署でいくらでも聞いてやる。とにかくおとなしく同行しろ。逆らうと余計罪が疑われるぞ」
 高圧的な態度に呆気に取られているうちパトカーに乗せられてしまった。

つづく

そこにいた男 Ⅱ

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喜寿庵で植樹

2020 APR 29 17:17:59 pm by 西牟呂 憲

 コロナ・クライシスに怯える東京にいるより安全なので喜寿庵にいる。テレ・ワークなるものにもチャレンジしているが、これは我々おじさんには慣れるまで多少の時間がかかる。
 ところがその間に緊急事態宣言が出てしまい、あんまり大っぴらに行き来するのも憚られる事態になってしまった。こちらの方にコロナを持って来た、と思われると居心地が悪くなってしまう。まあ、近所といえるほどの人口密度はないエリアだが。飲み屋もないし。

 実は先月、さるめでたいことがあり、ギリギリでコロナ・パニックになる直前だったので、喜寿庵のネイチャー・ファームの一画に記念植樹をした。この『センダイシダレザクラ』という品種は遅咲きので、4月15日時点が満開である。勢い余って『礼』と名前まで付け、天にお礼をしたつもりだ。
 ついでに広がるるコロナ禍をおさえるため、八百万の神を鎮る自作の「疫病退散」の踊りを奉納しようと、某日厳かに神事を執り行っていた。
 四方に酒を注ぎ残りを飲み、疫病退散を踊っていると、
『ナーニやってんだい』
 の声。ヒョッコリ先生ではないか。また勝手に入り込んだのか、しかも神聖な踊りの最中に。
『いやー、東京はコロナ騒ぎで大変なんでこっちでおとなしくしてるんですよ』
 と取り繕った。
『いや、そこから見たら頭がおかしくなって疫病退散の踊りでも踊ってるのかと思ったよ。ガハハハハ』
『まさか、アハハハ(いやなジジイだな)。先生はコロナ対策なんかどうしてるんですか』
『あれは弱ったなぁ。大体ああいった新種のウィルスに対する抗体を体内で作れるように普段から注意しておかないと。特に都会の人なんか弱い』
『(また知ったかぶりして)普段からって言っても何をすればいいのか分からないでしょう』
『ん?ゲンノショウコウを煎じて飲んで、それでも咳が出たら葛根湯をのめばいい』
『(聞かなきゃ良かった。お亡くなりになった方もいるというのに)ところでピッコロ君とマリリンちゃんはどうしてますか』
『一緒に来て芝生で遊んでるよ』
『(勝手に遊ばせるなよ)最近僕が不定期に読み書きを教えてあげたりしているんですよ(お前が面倒みてそうにないからな)』
『それは無理だよ。あいつらは字を読んだり書いたりはできんだろう』
『いや、凄く覚えが早いですよ。しかし何か国籍とか問題あるんですか。もう学齢に達しているんでしょう』
『ムチャいうなよ。あいつらにどうやって学校に行かせられるんだ』
『エーッそんな』
『おーい、ピッコロ』
 先生はファームから芝生の庭に行ってしまった。しょうがないな、奉納踊りの途中だったのに。

これが?

『このおじさんはオマエに字を教えてるって言うけどムチャいうなよ、だよなぁ』
 なに!これ犬じゃないか。そういえば以前ヒョッコリ先生はペットの犬を飼ってると言っていたけど・・・。
『ピッコロってこのワン公の名前ですか』
『あたりまえじゃないか。なーピッコロや』
『ワン、ワン』
 嬉しそうに尻尾を振って、ワッ飛びついてきた、僕に懐いている。

マリリン?

『あのー、マリリンちゃんは・・。妹の』
『へぇ?妹?マリリン、こっちにおいで』
 ササッと現れたのは違う犬種だけど、やっぱり犬ではある。
 気が遠くなりそうだが、何とか記憶を辿ってみた。
 ヒョッコリ先生が二人の子供を連れてきて、僕はその子達と遊んだ。暫くしてまた会ったときに先生が『そんな子供は知らない。それは飼っている犬の名前だ』と言ったのも確かだ。
 しかしその後もピッコロ君やマリリンちゃんはたまにやって来て僕と遊んだ。そして複雑な境遇のようなので僕が字や言葉を教えるようになった。ここまでが時系列で辿れた。
 その間も先生は学生さん達と会合していた所に現れたり、勝手に芝生でバーベキューをやったことさえあったっけ。
 それはいいのだが、そうだとするとヒョッコリ先生は二人いて片方のヒョッコリAは子供の面倒を見ており(見てないようだが)、もう一人のヒョッコリBは同じ名前の犬を飼っているとでもいうのか。
 いや、それとも大腸癌手術の後遺症、或いは睡眠導入剤の多用、飲酒による脳障害等で僕が犬と子供の識別ができなくなったのか。
『それじゃまたね。お前たち帰るよ』
 と先生はスタコラ帰って行った。
 植樹した枝垂桜『礼』を見上げて力なく呟くのみだった。
「オレの頭が狂ってアルツハルマゲドン状態になっても、お前だけは真実を見つめ続けてくれ。お前は今年からここに来たのだから過去はいいから、しっかりと後を頼むよ」
 そろそろ夜陰に紛れて上京しようか。

 そう思っていると、緊急事態宣言が全国に展開されてしまい県をまたいでの移動を自粛せよとのお達しが、ステイ・ホームだとか。この語感、何でも横文字にする某知事の趣味が前面にでて嫌いだが。東京に舞い戻るのも具合が悪いまま連休になってしまった。これは・・・。

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これは戦争だぁ Ⅱ

2020 APR 8 18:18:54 pm by 西牟呂 憲

 欧米型のリーダー、特に戦争遂行時の典型的な例で思い浮かべるのはエドワード・ザ・ブラック・プリンス、百年戦争のヨーロッパで連戦連勝しイングランドの優位を確保した。皇太子でありながら黒い甲冑に身を固め単騎敵陣に真っ先に切り込んでは大軍を圧倒した英雄だった。
 こういった貴族がイギリスのクラース(階級)のトップにいる。彼らは普段は何もしない。それ以下の階級とは通常通婚もしない。喋る英語さえも違う。これらは良く知られた話だ。
 しかし彼らの本務は防衛・戦争なのだ。ノブレス・オブリージュ、国家存亡の際には真っ先に先頭に立つことが義務と考えられている。従って普段ブラブラしていようが社交に現を抜かしていようが構わない。第一次世界大戦ではオックスフォード・ケンブリッジの貴族や王族の子弟に戦死者が多かった。彼らは志願した、上記エドワードの先例に倣ったといえる。
 翻って英国はこの度のコロナ・クライシスにあたり、当初は(良かったかどうかは知らないが)感染のピークを減らして多くの人が軽症を発症しても集団免疫を作ることを国民全体で共有する、といったものだった。ご案内の通りすぐ撤回されたが。
 すると皇太子が感染し、首相が重症になった。これは上記ジョンブル魂の発露として(再び良かったかどうかは知らないが)あっぱれではないか、上から順に倒れていく。
 なかなかやるもんだと思ったものの、あまり日本向きではないだろう。

 勿論我が国においてもこういったヒーローは歴史上いくらでもいて、人気もある。だが、どうであろう。後継者が続かないのだ。
 例えば日本には現在そういった意識を共有する階級が無い。武士階級は読書人として官僚化した姿において武士道という概念を練り上げたが、江戸期を通じて国家防衛の洗礼を受けていない。明治期の軍人に多少の面影があるといっても階級を形成できないうちに潰れた。

 総理大臣が緊急事態宣言を発表した。感染拡大の抑制のため要請と共に108兆円の経済対策をペアにしてあるところに、ギリギリ手続きを踏んだ跡がみえた。無論そう簡単に経済の回復などはありえない。苦しい年になるだろう。顔にも疲れが見て取れた。
 神戸で、3・11で、あれだけ冷静に行動し助け合った人々が平均的日本人だとすると、総理の訴えた言葉は届いたと思う。いきなり混乱に拍車をかけるより余程練られている。
 何しろ都知事がロック・ダウンを連発した途端にトイレット・ペーパーの買い占めやスーパーの行列ができるというミニ・パニックだ。加えて昨今の世相はマスコミの煽りと通信の発達により不平不満・炎上の無間地獄と化しているが如し。評論家は総じて朝令暮改状態。
  遅いの批判は覚悟の上だろう。

 話は変わるが私は例の大腸癌の経過観察でCT検査を受ける、あの慶應病院でだ。バカ研修医が宴会をやってクラスターを発生させた。
 週末には92才になったオヤジと会うことになっている。癌の経過も恐ろしいが、コロナを病院で拾うのも怖い。散々迷って延期しようと試みたが、この騒ぎで一斉に延期したらしく6カ月待ちにされてしまう、とのこと。その間に再発したらどうなる。
 といういきさつで意を決して本日突撃した。二重マスクに普段はしない眼鏡までかけて身を固め、決死の思いで行ってみると、『入院患者のお見舞いお断り』『マスクを付けない人の入館禁止』の張り紙とともに病院はガラガラ。不急の予約検診については病院側から変更予約の電話案内を昨日の段階でかけまくったらしい。さすがは慶応病院である。私に来なかったのはやはり急を要するのかもしれないと、緊張感を持って診療を受けた。 
 従って今後2週間はテレワークになるが、その旨を親しい仲間には伝えた。すると奴らはさすがに私の友人だけあって、返信は次の通り。
「御武運を祈ります」
「アーメン」
「靖国で待っていろ」
「よかったね」
 一人だけが『祈ってくれ』に「まかしとけ」と返信してくれた。

戦争だぁ!

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光輝く彼方

2020 MAR 5 7:07:19 am by 西牟呂 憲

 昨年の大腸癌除去手術の際に『せん妄』状態に陥ったことは既に書いた。無論その間の記憶はない。ただ写真を見たことを思い出すような、一場面のことは頭の片隅に残っている。
 それは、点滴を引き抜いて床に血が飛散った場面で、血の赤さが点々とする床を確かに見た。血痕の赤さがやけに鮮やかで、不思議なことにそれ以外の床やベッドが強く湧き上がるような明るさ、それも照明を浴びたような強い光りの中だった。あれはどういった幻覚作用なのだろう。
 実はこれも何度か書いているが、あわや一巻の終わりという事故・病気を以前やっているが、事故の際にも一瞬明るくなった(大晦日の夜中だった!)気がしているが後の刷り込みかも知れない。
 既に送った亡母の臨終の時に、幻覚を見ていたようで何かを喋っていたのを聞いたが、その表情は明るかった。
 思うに肉体が滅びる最後の最後は、苦痛を和らげるというか苦痛ではなくなるべく作用するメカニズムか物質が人間、いや動物には備わっているのではなかろうか。それがあまりに甘味なものであるため、臨死体験者・蘇生者が語る『あの世』の概念が作られたのかも知れない。
 夢の中にいたらしい『せん妄』期間中、約6時間程の私は少しは喋って、どこかに行こうと言う意思をもって動こうとし、もう少しで拘束されるところだったという。この間生きてはいたが記憶すらないので私としては眠っていたのと同じである。
 
  話は飛ぶが、多重人格というものがあるそうだ。「24人のビリー・ミリガン」という本で有名になった精神障害の一種とか。検索するとトラウマとか鬱病とか統合失調症とかいった恐ろしい病名が並んでいて、それらのストレスから逃れるために別の人格を作ってしまうとか。そして別の人格になっていた時の記憶は残らない、と。
 要するに『せん妄』とか『泥酔』になって何も覚えていないのは、多重人格と同じ(見た目の)状態のことになる。

 孟子の胡蝶の夢の境地ではないが、どちらが本当の自分か。恐ろしいことに、稀に『せん妄』の状態から戻らなくなって記憶喪失扱いされる患者もいるのだそうだ。それは優れて肉体は生きていても元の自分は死んだも同然である。その場合は今までの自分の魂は、雲散霧消してしまうのか。そうであれば、肉体は滅んでも精神がリレーされる方を誰でも選ぶだろう。生き物は必ず死ぬ。

 懐かしい亡き友よ、お前の精神はオレ達が引き継いでいるぞ。そしてもうすぐそっちに行く。きっとあの光りの輝きをくぐって。

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時を歩き続ける男 年始編

2020 JAN 1 5:05:29 am by 西牟呂 憲

 そろそろ松の内も過ぎようとしている。男は年末には北上をやめた。雪の山越えはいくらなんでも歩いては行けないびで、在来線を使って太平洋側に出て年を越した。
 相変わらず表情を頻繁に変えながらトボトボ歩いていたが、今日の宿を探さなければ。雪道を歩くので、移動距離がかせげない。雪が降っていると旅は一休みして居続けをすることになる。幹線道路で遭難でもしたらみっともないからだ。
 3.11の被災地を縫うように南下してきたが復興人員が大勢来ているのだろう。即席の民宿めいた宿が目に入ったのでそこに入ろうとした時、肩を叩かれた。
『おじさん、待ってたよ』
 振り返ると見たこともない妙齢の女性が立っていた。
『相変わらず旅ばかりしてるんだね。元気だった』
 思い出せない。
『えーっと、どこかでお目にかかってましたか』
『いやねえ、忘れちゃったの。以前雪に降りこめられてモーテルに一緒に泊まったじゃない。アハハ、でももう20年くらい前だから無理もないか』
 半月前にそういうことがあったが、その時の女性は学生風の若い人だったはずだ。まてよ、その子に面影が似ている。髪の長さもこんなロングだったし眼差しも、いや、そっくりじゃないか。
『もしかしてあなたは海岸で夕日を見ていて、その翌日にお蕎麦屋さんで向かい合わせに座って、一緒に歩いて雨宿りにモーテルで泊まった人かい。若い美人だった』
『あら、20年近く前のこと良く覚えてるわね。夕日やお蕎麦は覚えてないけどモーテルに泊まったのは確かよ』
『えっ、先月の話でしょ』
『いやねぇ、先月なんて。あたしはおばさんになったけど先月だったらそんなに急に老けるわけないじゃないの』
『・・・・、あの、・・・・』
『ねえ、ここに泊まろうとしてるのでしょ。さっきあたしがチェック・インしておいたわよ』
『それはー、マッ他を当たります』
『何言ってんのよ。おじさんが来るのが分かってたから相部屋で二人分のチェック・インしてるんじゃないの』
 男は唖然とした、と同時にそれは助かったとも思った。
 二人でその民宿っぽい宿に入った。部屋にはトイレもシャワーもない。六畳にちゃぶ台のような机、お茶のセットがある。
『あたしそこのコインランドリーに行くから待ってて。御飯食べに行こう』
 と言って女性は出て行った。
 あの女性は確かに先月会った人に違いないのだが、確かに年齢は当時は二十歳くらいにみえて、面影はそのままだが40歳代の風情である。
 暫くしたら洗濯物を持って帰って来たので、目の前の居酒屋に行った。
『カンパーイ!だけどあたしはオバサンになったけどおじさんは変わらないね』
 事情が良く飲み込めないので相槌の打ちようがない。
『前の時は「自分は余命幾許もない」みたいなこと言ってたけど手術とかしたの』
『そんなこと言わなかったよ。この通り体力は大して無いけど旅は続けられる』
『言ってたわよ。大腸癌だったって。心配したけど』
『チョット待てよ、・・・それは20年前の話だろ。僕達が会ったのは先月であなたは家出してたんじゃない、あの頃』
『実はね、あの旅は婚約を解消した後だったの。色々あってさ、挙式の直前に逃げておじさんに会ったんじゃない。それは20年前だってば。先月はあたしはアメリカにいたわよ。でも良かった。大腸癌は切って直ったんだね』
 男はさっぱり要領を得ないまま、ビールを焼酎に変えた。
 確かに20年ほど前に大腸癌の手術をしていた。その後暫く検査を続けたが、あほらしくなってほったらかしにした。その後さる事情により心境が大いに変わって仕事を辞めて今の旅暮らしに至った。しかし・・・。
 女は古くからの知り合いに語る様に話した。彼女の中ではそうなっていて、終いには男の方もそうだったかもしれない、と思い始めた。
『あの後あたしも結婚したのよ。娘を生んだんだけど、その頃から上手くいかなくなって結局離婚したの。そうしたらそれから運が開けたのね。しごとも始めて何とかやれるようになっていって、娘も10才になってるのよ』
 ごく自然に布団を並べて敷いて寝たらしいのだが、記憶が曖昧ながら目が覚めると、男はしっかりと二日酔いになっていた。モソモソと起き上ると隣の布団を見やったが、掛布団がくるまっている。しばらくするとその掛布団の塊がムクリと起き上った。
『バぁ~』
『わぁッ』
『おはよー』
『びっくりした。起きてたのか』
 10才くらいの少女だった。まだ子供だが、間違いなく昨日の女性の子供時代であることが瞬時にわかった。先月会ったあの若い女性の少女時代に違いない美少女だ。昨日からの流れ、更にこの一ト月あまりに起きた出会いを考えると、もう驚くにはあたらない。
『あのね、おじいさんはもう行かなきゃならないんだよ。お嬢ちゃん、そろそろおうちまで送って行こうか』
『やだぁ。きのう連れてってくれるって言ったもん』
 やれやれ、とにかく宿を出よう、と支払いをしようとしたところ「前金をお預かりしましたのでそのままお立ち下さい」といわれて男はあわてる。
 宿を出た時はもっと慌てる。きのうと景色がまるで違っているではないか。後ろから少女がついてきた。
『えーとさ、ここはどこだったっけ』
『ウソーッ、千本通り高辻下る、でしょー。やだオジイチャン』
『せんぼん・・・』
『きょうは桜を見に行こうって話したじゃん』
『さ、さくらぁ』
 ますます混乱しながら少し歩くと、丹波口という駅があった。なんとここは京都ではないか。
 男にはもはや時間の感覚が失われているようだ。
 地球の傾きがもたらす季節と自転が時間を感じさせる。人間は更に能力や体力の衰えや記憶することで時間の経過を經驗的に計ることはできる。
 だが、この男に関して言えば同一と思われる女性と何度も出会う事でかえって時間を感じられなくなってきたのだ。いつからこうして旅を続けているのか、いつまで続くのか。いや、この男は生きている人間なのだろうか。
 そして、年齢が変わってもいつも男の前に現れる女もまた、この世の人ではなかろう。

おしまい

時を歩き続ける男 年末編

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時を歩き続ける男 年末編

2019 DEC 31 21:21:15 pm by 西牟呂 憲

 男が歩いている。胸を張って顔はやや俯き気味にゆっくりと。低い冬の日差しの中、冷たい風に向かって一歩づつ歩いている。手はポケットに入れていて時おり目の前にかざしたり顎をなぜたりして落ち着きは無い。
 ただ、表情は目まぐるしく変わっていた。
 かすかに微笑んだりニタリとするが、どういう訳か突然涙ぐんだりひどく目を怒らせたりする。笑っているときは子供のように嬉しそうだが、悲しみに沈んだ暗い表情では絶望の中を歩いているようにも見えた。
 男は街道沿いの車の往来の多い道を歩き続け、いつしか川の土手を登った。人の往来があるのですれ違ったり追い抜かれたりしていたが、勿論知り合いのはずはない。男は目指しているところも無いらしく、まるで歩く以外には目的はない、歩くためにのみ存在しているかのようだ。そしてその間中、非常な頻度で表情が変わるのだった。
 つまり男は歩き続けるのだが、周りの状況や景色とは関係なく頭の中で色々な思いを巡らしている。それはおそらくこれからのことではなく、絶え間なく過去の何かを思い出しては笑ったり泣いたりしているに違いない。男には歩き続ける以外には未来はないと思われる。
 男にとって時間は歩くための目盛りで、それは歩き終わる時に向かう道標にすぎないだろう。周りの景色・空間はさらに現在の男には用がない。それが美しかろうが、ゴミの山であろうが。

 男は北上している。時々視界に入る海は日本海のようだ。服装はカナディアン・グース、ヨッパーにジーンズ、スニーカー、リュックサックのようなものを背負っている。年齢は60~70才くらいのオジイチャンだろう。両手には何も持たず、いやよく見れば空き缶を持っていて、時々立ち止まっては煙草を吸い、吸い殻をそこに入れている。
 どうやら幹線道路しか歩かず、横道にそれたり名所旧跡を訪ねることもしない。日が暮れる前に街中に適当な宿を見つけ泊まる。多くはビジネスホテルの看板を出しているところだ。
 チェックインすると、まず下着を着けたままシャワーを浴び、ボディ・シャンプーやら石鹸を全身に塗りたくる。そして流したあとに下着をタオルで絞ってハンガーに掛ける。翌朝までには乾くようだ。何組かの着替えは持ち歩いているようだった。そして近くのコンビニで簡単なカップ麺やおにぎりを買って夕食にしている。たまにビールを買うこともある。
 その日はどうやら城下町だったような所のシケたホテルに泊まることにして、珍しく公共交通(バス)に乗って海岸まで出た。雪が少し降ったらしく、街を外れると積もっていると思われた。
 ところで、観光地にあるような旅館では、男の怪しさに「予約はないと泊まれません」と断られる。街中のビジネスホテルを見かけると、スマホで予約を入れ、更に前払いでもしなければ宿泊できない。
 男は広い海岸に立った。

 砂浜の向こうに夕日が落ちていく。あまりの見事さに少し立ち止まり煙草に火を付けた。無論、簡易灰皿は携行している。冬の海が少し荒れていて真っ黒にみえる。水平線上には薄い雲がかかっており、夕日が沈んでしまうのはもうすぐだ。
 左に夕日を感じながら、時々雪が盛り上がっているような砂丘を右に見ながら歩くと、波の音は厳しく聞こえた。
 少し離れたところに一人、ポツンとした感じで敷物に腰を下ろし膝をかかえるようにしている髪の長い女性が座っていた。その女性はいかにも学生風の軽装で、ジーッと夕日だけを凝視していた。照らされた表情はよくわからない。色の白い人だった。
 男はそのまま歩き、とうとう夕日が雲の中に埋没してしまうと戻り始めた。
 先ほどの女性はもう姿を消していた。帰りはバスを使わず、1時間以上かけて歩いてホテルに戻った。思ったほどの積雪はなかったのだ。

 チェックアウトした時に、昨日の女性を見かけた。どうやら本格的なバック・パッカーのいでたちで、今日はとっくりのセーターにマフラー。チラッとこちらを見た後、一人でホテルを出て行った。男は後姿を見送ると、いつものように殺風景で車の行き交う幹線道路を歩きはじめる。男の表情が豊になってくる。嬉しそうに微笑んだり淋しそうになったり。
 午後になって港町に入った。そこそこの市街地で、この街に泊まろうと思うのかあたりを物色していと、蕎麦屋のチェーン店に目が止まり入る。けっこう混んでいて、食券で狐蕎麦を買いテーブルでの相席になった。座ってみると向かいの席は髪の長い女性で、軽く会釈された。男は良く分からないまま目礼して、直ぐに出された狐蕎麦を食べて席を立つ。こんな田舎でも店内は禁煙で、例の簡易灰皿で一服したかったからだ。
 それからおもむろにまた歩き出した。どうやら手ごろなホテルが無いようなのだ。1時間ほどすると道路は小高い丘を越えて行く。トンネルが見えてきた。男は疲れて腰を下ろしてしまった。しばらくすると若い女性がやはり歩いて来るではないか。女性は男に気が付くと『アッ』と声を上げた。
「オジサン。きのう海岸を歩いていたでしょう」
 男が見上げると、さっき蕎麦屋で向かいに座っていた人で、ということはきのう海岸で膝をかかえていた女性で今朝ホテルで見送った人物ということだ。
「や・・・こんにちわ。それじゃあなたきのう海岸で座っていた?」
「うん。そうだね。さっきのお蕎麦屋さんで向かい合わせだったじゃない」
「そうでした。・・・、ボクはオジサンじゃなくてオジイサンだけど」
「あはは、ずっと歩いてるんですか」
「はい」
「どこまで行くの」
「いや、決めてないんですよ」
「へー、それじゃあたしと同じか。ここからどうするの」
「まあね、道に迷うと分からなくなるから表示のある国道だけを歩きます。本当はこの街で宿を探そうとおもったんですがね」
「じゃもう少し一緒に行きましょ」
 二人連れで歩き始めた。女の荷物の方が大きいのだが、何しろ男は初老で歩みは遅い。丁度いいステップでノロノロと歩いていた。
 町外れになると田舎の街道筋を歩く者などは滅多にいない。寄せられた雪が残っている。
「おじさんは何で旅をしてるの」
「旅しかできないからですよ」
「うふ、その旅はいつ終わるのかしら。あたしは家出してるんだ。」
 男はそれには答えなかった。すると女は尋ねられた訳でもないのに身の上を話し出した。
 子供の頃から孤独だったこと、周りから見えている自分と自分が思っている現実とがいつも違うこと、よくモテたらしいが交際にはオクテだったこと、自分はカラッポな人間だと思っていることなど、合いの手を入れる間もないほど話した。かといって喋り捲るわけではなく、男が何も喋らないからポツポツと話し続けたようだった。よくみると大変に美しい顔立ちだ。
 そうこうしているうちに夕日が傾いてきてしまった。
「オジサン、もう直ぐ暗くなるよ」
「うん。早く次の町に行かないと寒いよ」
「チョット待って」
 女はスマホを取り出して地図を検索した。男も同じようにやっている。
「オジサン!どうやら泊まれるような町まで山道が続くよ」
「まずいな、弱ったってしょうがない。だけど何だか雪も降りそうだ。もう少し行こう」
 夕日を追いかけるような雲が頭上に広がっていた。低気圧が迫っているのだろう。肌寒いが、充分に湿気が感じられた。
 30分程歩き続けると、少し開けた景色になると道路沿いにホテルの看板。空室のサインが出ているいわゆるモーテルだ。まずいことにチラホラ雪が舞ってきた。二人は弱った顔で目が合った。
「オジサン。休もうよ。ああいうとこ一人じゃ行けないんでしょ」
「さあ、『休息5000円 宿泊7000円』ってばかに安いね」
 するとサーッと風が吹いてきたので、二人で走ってジタバタとチェック・インした。部屋の中はどでかいベットがあるだけ。そしてそこからガラス越しにみえる大きな浴槽が見えた。みすぼらしいモーテルだった。
 男は『チョット失礼』と言って濡れた服をハンガーに掛けるといつものように下着になって浴槽に行き、熱いシャワーを浴びながらボディシャンプを塗りたくって全身を洗った。女の方は少し驚いたようだった。下着を乾いたバスタオルで絞りながら着替えると『こうして干しておくとすぐ乾くんだ』と言う。女は笑いながら答える。
「あたしは町についたらコインランドリーを使うんだけどね。ねえ、ビールでも飲む」
 コイン式の冷蔵庫にはぎっしりとビールが冷えており、カップ麺などもある。女はコップも二つ出して並べる。
「はい。かんぱーい」
 男にとっては久しぶりのビールだ、旨かった、あっという間に飲み干して注いだ。すると女も一気飲みしている。
「ねえ、今度はおじさんの話もしてよ」
「おれ?何もないよ。不思議なんだがキミはこうして名前もわからない僕みたいなのとここで雨宿りして平気なのか」
「成り行きだよ。それでおじさんは何で歩いてるのさ」
「うーん、そりゃ色々あるわ。エイズになったから、なんて言ったらどうする」
「あーはっは、エイズなの?」
「ふふ、いい度胸だね」
「で、どうして旅を続けてるの」
「生き続けるためだよ。止まってしまうと生きているのか死んでいるのか、死んだことはないからよく分からんけど。一方でこの先に希望だの夢だのが見つかることはないし、この年だから。要するに逃げ出したんだ。これでも家族もいた、というか今もいるんだけど、連絡はとってない。向こうが探してるかどうか知らないが、多分諦めてるんじゃないかな。残りの金を持って行く、って置手紙は残したからね。ある日、あと何日歩いたりして生きていられるか勘定してみて一日幾ら使えるか割ってみたのさ。時間が区切られているのはどの生き物も同じだけど、人間は唯一死ぬことが意識できるようになっちゃったから」
「それって後どのくらいなの」
「分かるわけないじゃないか。ざっと10年のつもりだったけど。ひどいこと聞くな」
「ごめーん、でも冗談でしょ」
「お嬢ちゃんにゃかなわんな。マッいいや。とにかく時間が限られていることを自覚してないと、バカみたいにのんびりテレビ見て残りの時間が失われてしまうってことになりかねない」
「うん、うん」
「つまり時間が流れていることが分からなくなった時点で人間としての『本人』は失われる。そうなるとどうしても人の世話になるんだけど、圧倒的な善意にすがるというのも結構エネルギーが必要で、その力が枯渇すると無遠慮な態度になっちゃう。図々しく、当たり前だと思うようになるね。それがいやなんだ。もっともその段階では自分でも自分が制御できないくらいイッちゃってるかもしれないし」
「アッ、話途中だけどあたしシャワー浴びてくるから」
 と立ち上がるとバスの前にトコトコいって服を脱ぎだした。
 男は唖然とするもののどうすることもできなくて、ポカンをその姿を見ていた。真っ白な裸身が目に入るのだが、こういう場合どうすればいいのか考えあぐねているとガラス越しにバシャバシャとシャワーを浴びているのが見えた。そういえばさっきオレも似たようなことをしたんだっけ、ともう一本ビールを開けた。

 翌日、男は大きなベッドで目を覚ました。部屋に一人だけである。エアコンの前のハンガーに干した下着、自分のリュック、タバコ、空いたビール瓶。昨日の女は影も形も無い。あれは・・・。外は晴れていた。
 机の上に置き手紙。
 『おじさんの話おもしろかったよ。良く寝てたから先に行くね。その調子だったらまた会えるかもしれない。お金をワリカン分置いていくからまたね』

 つづく

時を歩き続ける男 年始編

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ガンマ線バーストだって

2019 DEC 25 7:07:35 am by 西牟呂 憲

 約45億年前に太陽の百倍の質量を持つ星が重力崩壊し、ブラックホールが生成される際に放出されたという。 

1兆電子ボルト

 何とダイナミックと言うか破壊的と言うか、私程度の頭脳が理解する範囲を遥かに超えた時間とエネルギーのメカニズムだろう、ため息も出ない。
 この想像図の、エネルギーを放出した輝きの後には光りも時間も閉じ込めた暗黒のブラックホールが出現するはずだ。
 ガンマ線バースト自体は20秒程度の現象らしいが、45億年後に観測されたことにもワクワク感満載。確かガンマー線はX線より波長の短い放射線と呼ばれる電磁波だ。これを私も浴びていたのだろうか。

 話は変わるが、先日癌の切除手術を受けたが、本番の前に「PET」という検査をされた。要するに癌の周りに集りやすいモノを人工的に体内に入れ、癌のある部位、転移状況を確認する検査である。そのためそのモノを測定しやすくするためにその物質に外殻電子数の同じ放射性同位体を入れて測定する。勿論、人体に影響のない微量な放射能であるが、暫くは(30分くらい)排泄物から放射能が出るのだと言う。
 多少気味が悪く、終わった後には疲れた気がしたものだった。

 そして冒頭のガンマ線バーストは45億光年も離れた所で起きたからどうってことないとしても、そもそも宇宙ができてから138億年ではなかったか。すると宇宙年表で言えば1/3あたりでもうバーストしたわけで、ブラックホールはそれ以外に多く観測されているから宇宙誕生の直後からジャンジャン起きたことになる。そうなると最早時間の概念そのものがなくなる、ちょっと難しいかな。
 加えて最近の観測技術は進化し、宇宙誕生の際の銀河の中心部には炭素のガスの雲が発生していたことがわかったり、ブラック・ホールの周辺に惑星が存在するという仮説が出された。
 それどころか、その他の特異分子雲の発見・監察により電波天体としてにんしきされる超巨大ブラック・ホールは代用の400万倍の質量と推測される見当もつかない暗黒だとか。

 いずれにせよ生き物や星は時間と共に変化するが、宇宙の方はそんなもの知ったこっちゃない。
 と・言うことは・・・・アインシュタイン先生!教えて下さーい。

中性子星合体だって

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追憶のメキシカン・プロレス ルチャ・リブレ

2019 SEP 17 6:06:16 am by 西牟呂 憲

 直近のアルツハルマゲドン研究(私のです、あくまで)によると、耄碌が進んだ年寄りが同じ話ばかりして嫌われるのは、記憶の連続性が途切れてしまい、プロセスが飛ばされても差し支えない独立した部分だけが残ってしまうからだ。
 そしてその独立した記憶までもが消滅すると、これはもう桃源郷に遊ぶ心地。それはそれで愉快かもしれないが、端から見ればあまり楽しそうじゃない。
 画像保存機能が発達した現在では、結構なことに記憶からこぼれ落ちそうな場面も検索することができる。
 しかし、それさえも残らないマイナーな思い出、これを残すのにブログというのは実に有難いものではなかろうか。
 大好きなプロレスについて、上記の事実はそっくりそのまま当てはまる。
 誰の記憶にも残らないセミ・ファイナルや中継のない試合。ひょっとしたら僕しか覚えていない光景があるのではないか。往々にして記憶はすり替わる。

 試しに自分で欠けそうな記憶を辿ってみると、やはり途切れてしまった。
 場所は後楽園ホール。怒涛のコールが鳴り響く。
『ケンドー、(チャッチャッチャ)ケンドー、(チャッチャッチャ)』
 あのニッポン・チャッチャッチャのノリだ。
 ここで困った。ケンドーというレスラーは日本人ペイント・レスラーであるケンドー・ナガサキ、同じく日本人マスクマンのケンドー・カシン、メキシカン・マスカラでその名もケンドー、と3人いるが誰だったっけ。マスクマンのルチャだったようなので多分ケンドーだったかな。ここまで書いてどの団体の試合だったかも思い出せないことに愕然とした。全日本や新日本じゃない。ヒマに任せて通りがかった試合を見たようだ。僕はケンドーを初めて見で、それが最後だった。コメディアンのケンドー・コバヤシは関係ない。
 そのケンドーは上半身を反らし下半身でリズムを刻みながら、チャッチャッチャのところで広げた両手の手首を上の方にクッ、クッ、ク、と上げる。いわゆるルチャのノリで観客は大喜び(僕も)、益々コールは大きくなる。
 相手はメキシカンのルード(悪役)で覆面はしていなかった。入場してリングに上がるも、あまりのケンドー・コールに耳を塞いで見せたり顔をしかめたり。終いには頭に来てリングを降りて控え室に帰る素振りを始める。
 すると、通いつめているらしい練達のファン達は逆にルードのコールを始める。この阿吽の呼吸は実にプロレス的でツウならではの面白さがあった。エーット、確か『プラタ・チャッチャッチャ』だったかな。
 それを聞いたヒールは嬉しそうに再びリングに戻り、観客と一緒にチャッチャッチャをやってはしゃぐ。
 今度はケンドーが両手を広げてポルケ(ホワイ)の表情。手を耳にかざして客をあおると、心得たもので再び『ケンドー、(チャッチャッチャ)』が始まる。
 いつ果てるとも知れないパフォーマンスに客は(僕は)酔い痴れるのだった。

 勿論、試合の結果なんか記憶にない、遠い彼方の光景なのだ。
 読者の諸兄諸姉、この試合を覚えている方は御一報下さい。いるわけないか。

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宿酔(ふつかよい)

2019 JUN 27 20:20:00 pm by 西牟呂 憲

 ああ、オレひどい二日酔いなんだ。吐き気がして喉が渇く。頭はチャポチャポしてるし少し痛い。いや、ズキズキではないけど。
 ちょっと手伝ってくれ。ここ、この耳の後ろの所に傷みたいなのがあるだろ。見てくれ。そうそう、その縫い目みたいなところ。はがれそうなんだけど上手く掴めないんだよ、引っ張ってみてくれない。夕べ転んで打ったみたいなんだ。朝起きたら枕が真っ黒に濡れてて何かと思ったら出血してたんだな、これが。
 うー、気持ち悪い。
 イテテテ。もっとゆっくり、そうそう。何だ、ぺろんとはがれてくるじゃないか。
 ホント?頭の皮が剥けて来るのか。アッ、もういいよ、その辺で。何だかさっぱりする。
 剥けてるってかつら取った感じ?
 真っ赤?ええっと。痛て、確かに沁みるな。皮膚がむき出しなの?血管が浮き出てる?何だよ気味が悪いな。酒臭い!それはそうだろう。二日酔いの元のアセトアルデヒドがそのあたりにたんまり固まっているはずだからな。
 おい、なんだか痒くなってきたぞ。ちょっと待って、そーっとそーっと。何だかピクピクしてるけど。あー痒い。
 うわっ、おいおい今指が入ったぞ。オレの頭、何だか風船みたいにプヨプヨしてる。変だよ、頭蓋骨ないのか。やってごらん。バカ、そんなに押すな。
 おっとっと、待て。何だか涙が出てきたぞ。ヒックヒック。痛くも悲しくもないのに。ハンカチを・・・。ナンだこれ!おい、みてくれ。これ涙じゃなくて膿みじゃないか、緑色してる。目から膿が出ちゃったよ。お前が頭に指突っ込んだから目から膿が出たんだろ?あっまた、もうやめろ。
 ナンなんだよこれは。相変わらず喉が渇く、ゴクゴクゴク。
 ちょっとすっきりしたような気分だ。そういえば痒みも頭痛も治まった。吐き気は相変わらずだけど。
 もういいや、そのさっき剥がした頭皮をもとに戻してくれよ。
 えっ、透き通ってきた?脳味噌見えてんのか?やだな。何!何も見えない?そんなバカな。オレに脳がないはずはないだろう。良く見ろ。ホントか、さっきの膿みたいな色だと。あっまた涙が・・。もしかするとその汚れた膿が頭の中から染み出してるんじゃないか。冗談じゃないぞ。
 ゴクゴクゴク。うーおいしい。えっ、また少し透き通った?水飲むと薄まるのか。いや、バカ言っちゃいけないよ。オレの胃が頭にあるみたいじゃないか。あっ涙が・・・、ウワーまたあんな目ヤニが。ちょっと目を洗わせてくれ。
 ナンだって!頭の中の色がどんどん薄まってくる?もっと洗ってみよう。
 おいおい、少し良くなってきてる。コーヒーが飲みたいな。グビッ。
 はァ?今度は黒くなった?そんなバカな、それじゃ脳はどこに行ったんだ・・・・。

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