夏の終わりのヨット・レース
2020 SEP 7 0:00:05 am by 西 牟呂雄
結局この夏は全然海で遊べなかった。自粛と言えば自粛なのだが、感染者が200~300人出ている最中に東京から行くのが憚られたのが大きい。どうしても港が見たくなって入口までドライブして船をみないで帰ったりした。
それが夏のドン詰まりにレースがあって、我が愛艇はボランタリーに本部船(実行委員長が乗船しスタート支持やゴール着順を判定する船)をやることとなったのでお手伝いに行った。勿論日帰り・泊まりなし・酒ナシ。
スタッフは随分前からコース設定、マーク手配、帆走指示書の作成・公示、などでずっと忙しかった。僕はひと夏棒にふったのでミソっかすなのだが、一度も乗らずに年を重ねる罪悪感に抗しきれず朝早くからポートを目指した。
当日のスタート予定は10時。着いて直ぐに出港の運びとなった。快晴・微風で海は静かに凪いでいた。
コースは3角形のルートでターンする所とスタート・ゴールにマークを打つ、黄色の大きな風船のようなもので、本部艇はそこにいて現在レース実行中である旗(オレンジ)を上げる。そして大会会長が当日の風を見て、コースの時計回りか反時計回りかを判断してこれも旗で知らせる。その間、エントリーしていた船が本部船を回って参加人数を知らせチェック・インする。人数によってレーテイングが変わるからだ。
タイム・キーパーが時計を見ながら「5分前まであと1分・・30秒・20秒・10秒・9・8」とカウントダウンしてキッカリ5分前に予告信号(音響 短音1声、掲揚)、4分前準備信号(音響 短音1声、掲揚)。
この頃になるとスタートラインで各艇が風向きからポジション取りの駆け引きは始まってまるでクジラが群れているように海面が慌しくなり、スキッパーの怒鳴り声が飛び交う。1分前(準備信号旗降下 音響 長音1声)、5・4・3・2・1・スタート(予告信号旗降下 音響 短音 1声)、さあ、始まった。
フライングもなくきれいなスタートだ。やや上り風を受けた船がグーッとヒールしながら出て行った。本部艇からはラインをオーバーした船にリコールをしたり、場合によっては再スタートをしなければならないため緊張はするがきょうは問題ない。
遠くに行ってしまうと横一線にしか見えないのでレースの様子は分からないが、大分バラけているので早くも戦いは佳境に入ったようだ。
10時スタートで最終フィニッシュは15時半。レースの無事を祈るばかりだ。
本部艇は早々とゴール・ラインを作るために、アンカーを引き上げマークの反対側に移動した。普段はここで「さぁビールでも」となるのだが、大会会長・レース実行委員長も乗船しているので控えて釣竿を出したりお弁当を食べた。
すると面白いことにカモメが1羽近くに来て着水した。こっちを見ている。こいつはお弁当を食べているのを見ておこぼれを待っているのだろうか。試しに海老の尻尾を投げて見るとオォ!パタパタ水面を蹴って食べた。シャケの皮は、これも食べた、それも潜って。
そうこうしていると本部(陸上)から連絡が入る。東京湾の方から参加している船がリタイアしたらしい。エンジンの調子が悪いので帰港できないかもしれないので、というのだが。レース中は帆走なのでエンジンの調子が悪いのがなぜわかったのか不思議だ。
ちょうど水平線のあたりに第二マークに向かってスピンを上げている船団が見える。あれはレース中盤を走っている連中だな。今日は各マークにプレス・ボートがレスキューも兼ねて張り付いてターンした船を連絡してくれる。そしてドローンも飛ばして動画も撮影、通信機器の進化は目覚しい。しばらくはこの強い日差しの下、昼寝かな・・・。
大島は見えたが富士山はモヤって見えない。
ところで本命は精鋭の乗ったレース艇が数杯。中には快速カタマランがいてこいつは速い。スタート後3時間を過ぎた頃から第二マークをターンしたという連絡が入りだした。
すると江ノ島方面から続々と船影が見えてくる。あのコースの真上りではあと2回タックを入れないとゴールできそうもないな。それぞれスキッパーの判断により沖の方から回るグループと半島側に突っ切ってきてワン・タックで勝負する船に別れた。このあたり、風だけではなく潮の流れも考慮して作戦を変えているようだ。
プレス・ボートから『まだ1艇ターンしていないがリタイアの連絡はないか』の連絡が入りヒヤリとする。この船はその後僕達の本部艇に挨拶に来て『マークを発見できなかった』と言ってリタイヤしたが、チャートの読み違いなのか。更に『最後の船〇〇は時間内にはフィニッシュできそうもない』との連絡も入る。
その頃はファースト・ボートがハッキリしてきた。スタートの時のように近づいてくると〇時〇〇分5・6・7と読み上げていきラインを通過した時点で音響・短音でゴールを記録する。ところがマズいことに日が傾きだした逆光の上、船体がこちら側に傾くため船名とセール・ナンバーが読みにくいのなんの。双眼鏡まで出して何とか読むのだが、固まって来られると慌てる。
本命がフィニッシュし、後続にデッドヒートを繰り広げる塊が入って来る、僅か7秒だった。3時間以上波や風と戦ってきて僅か数秒の差でフィニッシュ。彼らはこの数秒に知恵を絞り戦術を練り技を競ったのだ。すべての参加者の意思が結晶した結果は、順位とは別に讃えられてしかるべきである。
そんな時にプレス・ボートが『〇〇は時間内のフィニッシュをあきらめ帰港することの連絡あり』と伝えて来た。〇〇はおじいさんが二人のダブル・ハンドで参加していたが、参加そのものを楽しんでいたに違いない。それではこちらも撤収しようか。
すると最後に僕がドジを踏む。アンカーが上がらないので引き上げに行ったのだが岩を噛んだのだろう、水深40m位なのだがどうしても上がらない。ロープを足で踏んで腕に巻きつけようとしたらどうした弾みか足に絡まって転んだ。スキッパーが咄嗟に後進をかけてニュートラルにしてくれて助かったが、下手すると骨折やら落水やらになるところで、あわやの事態にド顰蹙もの。深い反省とともに夏が終わった。
夏の海、また来年な!
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
強くなってきたぞ! 日本ハム・ファイターズ
2020 AUG 28 21:21:47 pm by 西 牟呂雄
チーム状態のいい時に栗山監督が繰り出すスクイズが炸裂した。復帰のビヤヌエバのホームに突進する迫力は、バッファローが突っ込んでくる地響きを感じた。25日のライオンズ戦のことだ。
ライオンズをカモにし、ロッテには手こずったもののイーグルスとは5分、8月に入って13勝8敗。やっと首位と4.5ゲーム差にまで漕ぎ付けた。
上沢、有原に勝ちがつきだしてバーヘイゲンもいい。何と中田はH・Rと打点でリーグトップに立っている。ただし中田の場合、なるほど打点は評価できるがここぞの逆転チャンスのタコぶりは相変わらずではある。27日には中田も大田もH・Rを打ったが、さすがにライオンズを3タテは無理なのか、サヨナラ負けを食ったのは愛嬌としよう。因みに中押しの得点チャンスでは中田はタコだった。堀のイニング跨ぎの続投にも疑問が残る。せめて加藤で繋いでたんだから玉井を出して元日鉄リレーで締めりゃいいものを、悔やまれる。
近藤を欠いているのはいかにもヤバいが、その穴を大田とか松本・渡邊あたりがカバーしていい戦いを続けている。特に杉谷のプレーは光る。バントが自打球になったのをバックレて走って見せバレたのはご愛嬌、ピンチ・バンターとはプロに相応しい。
問題は清宮で打つ方も大したことない上にあの守備のマズさは何だ。少しは特守でもやらせてみてはどうか。エラーは付かなくてもマズいプレーで足を引っ張っているのはワタシが見ているうちでも2度や3度じゃないぞ。到底プロのボール捌きじゃない、反省しろ!
上沢や有原も5回あたりで必ずおかしくなるのは、キャンプ後の調整ができずに走り込みが足りなかったせいだろう。金子も不本意な使われ方のせいか、なぜか脆い。
だが、この快進撃の最も大きな理由は別にある。
8月になってから宿敵ホークスと一度も当たってないのだ。
シーズン初めの作戦ではホークス戦は全試合捨てて調整期間にするはずだったのだが、栗山監督は5勝6敗1分といい勝負をしてしまい、そのせいでオリックスに足をすくわれドベ争いにまで調子を落とした。やっと這い上がったところに最強チーム相手に月末3連戦になってしまった。
従って封印していた秘策とフォースを使わざるを得ないのである。
秘策はこうだ。先発は有原・マルティネス・バーヘイゲンに固定する。相手は千賀も和田も週初めに使っている上に目下5連勝中。いくらなんでも一つぐらいは取れるだろうから得点できなければジタバタしないで捨て、他の試合に臨みを繋ぐ。清宮をスタメン1塁で守備の練習をさせる。無駄な盗塁を繰り返して甲斐を疲れさせる。エラーが出たりしてスキが出たらワタシがフォースを使う。
と思ったらギャア!武田が来ちまった。いつの間に復活してたんだ、このポーカーフェイス。あのオバケ・カーブは困る。対してこちらは金子。さてはショート・スターターで行くのか・・・。
アッ!安倍総理が辞任しちゃった!さぞ無念だろうに・・・。
で、試合は金子が初回からぶち壊し。打線は復活武田にヘロヘロ。清宮はマズい守備を披露。の3拍子揃った完敗。栗山監督この試合捨てたな。
いいでしょう。有原でリベンジ。彷徨うファイターズと新総理のあしたはどっちだ!
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
ヒョッコリ先生 戦争を語る
2020 AUG 27 7:07:28 am by 西 牟呂雄
からの続き
とにかく母屋まで連れて行って冷たいお茶を出した。すると図々しいことに『せっかくならビールがいいなあ』などとほざくので、仕方なくビールの栓を抜いて結局僕も一緒に飲みだしてしまった。うまい!
「毎年毎年この時期になると戦争の反省ばかりだなあ」
「しょうがないですよね。つくづくやるべきじゃなかった戦争ですよ」
「キミに前にも言ったけどこの先に8月13日に爆撃されたところがあって、そこでは人も死んでいるんだ」
「本当に終戦直前ですね。しかし人口も大していない上に軍の施設も何もない所でしょう」
「あれはなぁ、東京で散々落として帰る途中に余った爆弾を捨てたんだよ。B-29は富士山をランドマークにしてたからね」
「えっ??」
「だって1発か2発だったよ。下にいたのは運が悪いとしか言いようがない。そのまま抱いて帰るのは燃料の無駄だと思ったんじゃないか」
「物量の違いがケタ外れですね。持って帰るくらいなら捨てるという。何でまた絶対負ける戦争をやっちゃったんでしょうか」
「ハル・ノートは知ってるよね」
「はい。日本が完全にプッツンする内容ですね」
「『こんなものを突き付けられたらモナコだろうがルクセンブルグだろうが銃を取って立ち上がる』とアメリカ人が言ったとされる内容だ。しかもそれをハルに焚きつけたハリー・ホワイトはコミンテルンのスパイだったことが今はわかっている」
「その頃はアメリカ人も知らなかったのでしょう」
「勿論そうさ。だがルーズベルトは既に始まっている欧州戦争には加わらない、と言って当選した大統領なんだ。ここは何とか先延ばしにしていっそ内容をすっぱ抜く手もあった。アメリカ人は今でもハル・ノートの存在を知っている奴なんか殆どいない」
「そうなんですか」
「仏印進駐で石油の禁輸を食らって挙句の果てにハル・ノートだからな。そこで散々モメてる中、山本五十六が真珠湾をやっちゃった」
「真珠湾は大成功でしたからね」
「キミも甘いな。ありゃヤケッパチに近い。あんなことやるのは止めて植民地解放とだけ言ってマレーとジャワに行けば良かったんだ」
「すると無傷の米太平洋艦隊がフィリピンに来ませんか」
「そりゃ来るけど2~3年はかかる。ABCD包囲陣のうちB・Dにだけ宣戦布告して戦争してればいい。何ならハル・ノートを丸飲みしてもいいぐらいだ」
「そんなことしたら陸軍が黙ってないでしょう。ハル・ノートには中国から即時撤兵が入ってるじゃないですか」
「その中国はチャイナだよな。すなわち当時の中華民国だ」
「はい」
「チャイナの国境は万里の長城になっていて外側は満洲国、マンチュリアは入らない」
「えっ?」
「帝国陸軍はチャイナから引き揚げて満州・朝鮮・台湾から南方だけ押さえていればアメリカも手が出せない。すると中国内で国民党と八路軍の内戦になるだけだ。ジャワ・マレーを抑えてインドにちょっかいを出すだけなら制海権は握れるからな。イギリス東洋艦隊なんてセイロン沖でほぼ全滅したんだから連合艦隊は今日の第七艦隊と同じポジションについたはずだよ」
「香港はどうなるんです」
「シンガポールと同じさ。史実の通りだね。イギリスは香港を要塞化していたが若林中尉の一個中隊の夜襲により6日で落ちた。チョロイ。ついでに肩透かしを食ったアメリカに防共ラインとしてアリューシャン・千島防衛ラインでも申し入れたら完璧だな。なんなら満州の共同経営もエサにしてもいい。その頃はドイツ軍がモスクワの手前で干上がってるからタイミングも最高だ」
「三国同盟はどうなります」
「知ったこっちゃない。ヨーロッパの情勢不可解で内閣が吹っ飛んだことを考えればその程度のバックレはかわいいもんさ。大体国際条約を一方的に破るのはドイツとロシアのお家芸だ」
「それでアメリカは黙ってますかね」
「無論フィリピンがあるからいつかはドンパチになるかも知れんがそれだって2~3年先になる。その間にどうにか時間を稼いで何とかなったんじゃないか。考えても見ろよ。仏印の進駐にガタガタ言ったってそのころのフランスなんかドイツに占領されて実態なんか無かったんだから。そうなるとフィリピンのアメリカ軍は孤立しかねない。一方インド洋の制海権を握った段階でB・Dと講和するというのはどうだ。シンガポールでパーシバル将軍に迫ったみたいに。実際、真珠湾のすぐ後にはアメリカ西海岸に浮上したイ号潜水艦が砲撃する一方でマダガスカルやシドニーにはイ号から発艦した特種潜航艇が攻撃している。インド洋は日本の海だった」
「(バカバカしくなってきた)講和ができるとそれで終わりますか」
「さすがにその後は分からんな。アメリカ次第なんだけどね。終戦直後から東西対立は始まるだろ」
「はい」
「アメリカは終戦直後から朝鮮・ベトナムと四半世紀戦争を続けた。その時の兵站の要を担ったのは日本だよ。日米で戦わず満州あたりをバッファーに持っていれば遥かに安くついただろうし共産中国への押さえも利いておたがいいい事尽くめだったろう。或いは蒋介石あたりを使って共産化を防げたやも知れない」
「日本はどうなっていたでしょう」
「我が国の場合は東亜の解放を謳っただけに東南アジアを植民地にはできない。君臨しても統治せずだったろうね。当然朝鮮・台湾には独立を勧める。日米同盟を結んでアメリカが払ってきたコストの半分位は持たされたかも知れない。岸信介あたりが絶妙な手腕を発揮して長期政権になっただろう。ただ高度経済成長ができたかどうか。あの戦争で勝ち太りしたのはアメリカだけなんだからねえ。すると我が国に分厚い中間層は形成されず格差は昭和の時点で社会問題化したろうな。華族制度の廃止やら農地解放は簡単にはできないだろうし国会改革なんかもっと無理。治安維持法とか統帥権の問題もそのままだ。キミみたいな怠け者は本土にいられなくなってインド浪人にでもなってたかもしれないよ」
「(笑えない。実質それに近いじゃないか)先生はどうなってたでしょうね」
「ワシか。そうだな、七族共和となった満州合衆国で教師になる、というのはどうだろう」
「七族って何ですか」
「満州国の五族は日・鮮・満・漢・蒙なんだがそれに革命を嫌ったロシア人とパートナーのアメリカだ。但しアメリカは民族の名前じゃないので白人・黒人とする。日・鮮・満・漢・蒙・白・黒」
「・・・・」
「おォ!もっといいのが浮かんだ。七だから虹の色に例えればもっといい。すると日本は日の丸の赤、鮮は少し明るい橙、満は黄、蒙は緑で漢は藍。後は白人を青にして黒人は紫。どうかねこれは、七族共和の虹の国だ」
「(どうでもいいや)いいんじゃないですか」
「うん。待てよ、クレームがついたらやだな。やっぱり白人は白、黒人は黒とするか。いや、それとも」
「(いいかげんにしてくれ)チョッちょっとすみません。あのー終戦の時は先生はどこにいたんですか」
「・・・・」
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
真夏のネイチャー・ファーム
2020 AUG 23 0:00:08 am by 西 牟呂雄
炎天下 汗したたるや 色野菜
暑い!熱波が押し寄せたネイチャー・ファームのかわいい野菜達も青息吐息。
不思議なことにナスは去年ほど出来が良くなく、長梅雨の影響かとも思われたが、ピーマンの方は豊作で取れ過ぎるくらいたわわに成っている。
昼間に水をやってもすぐ乾いて熱を奪ってしまうので朝やるわけだが、これが結構な重労働で作業着がグッショリになってしまうほど汗をかく。まさに汗と涙の果実である。
今年のチャレンジはこれだ。見たこともない新種の野菜に思った方、違います。
実はこれキュウリ。過去何回も失敗したキュウリが収穫できた。
今まではネットを張るのが面倒だったのでそのまま地面に這わせていたが、年に1本2本の収穫でダメになっていた。
それで今年は脇に生えてきた竹を切って葉を落としたものを立ててみたところ、御覧のような一見ハイブリッド・キュウリが育った。遠くから見ると奇怪な植物が人の背丈よりも高く伸びているように見える。ただ、このキュウリ、あんまりおいしくはない。
そろそろ秋蒔きダイコンでも始めるかな。
しかし梅雨が空けてしまうとこのエリア、今度は夕立も降らなくなった。
それにしても熱波といっていい暑さだ。ここではこの時期になれば夜は涼しいはずが、風のない日は眠れないくらい暑い。
そうは言ってもお盆が過ぎたのは日の傾きでわかる。コロナも収まらないおかげで夏は台無しになり船の航海も中止になった(ここにいる分にはコロナは関係ないが)。これで一つ年を重ねるとは前期高齢者となった身にはもったいないとさえ思う。
桂川のせせらぎは涼しげだが、音だけ涼しげでもこの暑さは堪える。
誰も訪ねてこない。
「やぁやぁ」
ワッ、ヒョッコリ先生だあ!
「また変なことやってるね」
「(何かイチャモン言うつもりだな)いやあ、どうですたまには冷たいモノでも出しますよ」
「おっ、いいね」
引っ掛かってくれた。待てよ、話が長いと困るな。
この項
に続く
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
(追記 収穫されたオバケ・キュウリ)
矢も楯もたまらず
2020 AUG 16 8:08:51 am by 西 牟呂雄
矢で攻めても盾で防いでも勢いを止めることができない、それでどうにもならない気分を表題のようにあらわすのだが、まさにそれだ。梅雨は明けた。いい感じの南風(はえのかぜ)。
いつもであれば伊豆の島か保田・伊東、あるいは熱海・下田の花火大会を見にナイト・セーリングで行く所をこのコロナのおかげで花火大会は中止、島からは露骨に『来るな』のお達しが出ている。島は確かにクラスターでも発生したら大変だし、花火もねぇ。
クルージングは三密でもなんでもないが、問題は着いてからガブ飲みして雑魚寝になるとさすがにヤバい。
それでも夏になったら海は見たいし風も浴びたい。油壺から相模湾に出た時の伊豆大島や富士山が見たい、ましてあの長い梅雨が明けたんだから尚のこと。
で、たまらなくなって一人車を飛ばした。
但し、今回はクルージングには参加しない旨を連絡していた。毎日400人も感染者が発表されている東京からの参加は、メンバーが怯えるかもしれないと配慮したからだ。問題は泥酔した僕が大声で歌ったり踊ったりする可能性が排除できない。おまけに他のメンバーは神奈川だ。やっぱりハーバーの桟橋にまで行くのは遠慮するか。
と思っていたら高速を降りて半島に向かう一本道は渋滞しているではないか。近場ならいいかと一斉に繰り出したのか、このあたりは帰省でもGo Toでもなかろうに(夏休み期間ではあるが)。見れば品川・多摩・埼玉のナンバーがウジャウジャ。仕方がない、半島の先の島にでも渡ってみるかとノロノロ進む。やっと大橋を越えるころには午後の日が傾きかけた頃だった。ところでこの大橋は以前は通行料を取っていたが今年の4月から元が取れてタダになった。
遊覧船発着所で車を降りたらもうクラーッとするほどの熱さ。そして強い風が吹いていたが、体温のような風で全くさわやかさがない。ほうほうの体で車に飛び乗り鄙びたビーチに行ってみた。
なんだこれは。
「コロナ対策のため市内全域で海水浴場は閉鎖します」
こんなところは三密にもならないが・・・。
色んなことを考えた。
この熱さでは甲板に寝転がることもできない、車だからビーチでビールも飲めない(そもそも売っていない)、沖には強風による白波が立っている、見渡してもヨットは全然出ていない、船に触るぐらいはしたいなぁ、そういえばこの前のバーベキューのお金払ってなかった、コロナの奴め早く消えて亡くなれ、オレは1人でこんなところで何やってんだ、せめて反対側の湾の入口まで行こうか、相変わらず車は多いから帰りも渋滞だな・・・・。
矢も楯もたまらなくなって車を回した。
夕日スポットで相模湾を眺める。相変わらずヨットは一艘も見当たらない。夕焼けには早いが沈み始めた光に向かって思わずつぶやく。
「おーい、僕はここだよ」

この日、淋しくはないが孤独だった。
案の定渋滞にはまって3時間もかかって帰ったが、この車列は皆僕と同じで海を見るだけに来たのだろうか。
ヒグチのリスト
2020 AUG 9 10:10:48 am by 西 牟呂雄
先の大戦末期、ヨーロッパでの戦闘を終えたソ連軍は満洲・北方領土を侵すべく虎視眈々と南下しようと兵力を集中させた。満州における守備は関東軍であるが、戦力をかなり本土・南方に割かれており、尚且つ不思議なことに危機的状況にも係らず関東軍は楽観論が主流でソ連の対日参戦後は一たまりもない。しかも8月15日のポツダム宣言受領の前後はドンパチの真っ最中で即時停戦とはならなかった。
戦車部隊の侵攻に対し、関東軍航空隊には敵戦車に対して特攻をかけて対抗。国境線の第107師団は山岳地帯でのゲリラ戦で29日まで戦い続けた。
一方、アリューシャン列島では米軍と対峙したもののアッツ玉砕・キスカ撤退の後に対ソ防衛戦の備えとして南樺太の守備も兼ねた大本営直属の第5方面軍が編成された。
8月18日、千島列島最北の占守島にソ連軍が上陸する。それに対し方面軍樋口季一郎中将は、有名な「断乎反撃に転じ、ソ連軍を撃滅すべし」との命令を出し、旺盛な砲撃と第11戦車隊の猛烈な突撃で食い止めた。浅田次郎の『終わらざる夏』に詳しい。この樋口中将の果敢な決断なかりせば北海道がロシア領にされたかもしれなかったのだ。
樺太においても15日以降もソ連の侵攻は止まず、16日には新たな部隊が上陸し出し歩兵第25連隊は23日まで交戦した。
その間、電話交換女子達が集団自決、停戦協定後の白旗が掲げられた赤十字テントへの空爆、引揚げ船への潜水艦による攻撃といった火事場泥棒的なソ連軍の振る舞いは、現在ロシア人と親しく付き合い好感を持っている私ですら不快感を感じる。
それもこれもヤルタ会談でソ連の参戦をそそのかし領土の取引まで勝手にしたルーズベルトが悪いのだが。そして調子に乗って北海道の半分をよこせ、とまでほざいたスターリンの野望を打ち砕いた樋口中将の迅速・果敢な決断に敬意を表する。
話は変わるが、多くのユダヤ人を救った『シンドラーのリスト』が映画によって人々の記憶に残り、『東洋のシンドラー』日本人外交官杉原千畝のリトアニアでのビザ発給が人口に膾炙する。かの樋口中将もユダヤ人から厚く尊敬されていることは御存知だろうか。
話は大戦前に遡る。直接の引き金はヒトラーのユダヤ人迫害なのだが、ヨーロッパ全域及びソ連でもひどい目に合ったユダヤ人の一部はシベリア鉄道で遠く満州のハルピンにまで大勢きていた。これは計画倒れとなった満州国へのユダヤ人入植計画(通商フグ計画)による影響もあったためである。
計画そのものは頓挫し、紆余曲折があったものの昭和12年に第1回極東ユダヤ人大会が開かれるに至った。その際「ユダヤ人追放の前に、彼らに土地を与えよ」と祝辞をのべたハルピン特務機関長こそ樋口少将なのである。日独防共協定を締結した同盟国に対する激しい非難にユダヤ人達は喝采し、中には泣きだす人もいたという。
その後もドイツからのユダヤ難民が満州を経由して米国上海租界に亡命する入国・移動の手配に尽力し、数百人のユダヤ人が難を逃れた。ユダヤ・ネットワークでは「ヒグチ・ルート」と呼ばれたらしい。
この件はドイツのリッベントロップ外相から抗議文書が届くなど外交問題となったが、かの東条英機が理解を示し「当然なる人道上の配慮によって行ったものだ」と問題にならなかった。
尚、樋口少将がハルピン特務機関への移動となった直接の原因は、ロシア語に堪能だったこともさることながら歩兵第41連隊長時代の部下だった相沢中佐が軍務局長永田鉄山少将を惨殺した相沢事件を起こしたため進退伺いを出したからと言われている。
ユダヤは記憶する。あの旧約聖書を今に伝え信仰を絶やさない民である。
1970年頃、異端の人智学者である高橋巌はスイスでヘブライ大學名誉教授のゲルショム・ショーレルから「樋口季一郎という人がいることで日本人を尊敬している」と言われた。
2018年時点でも、樋口の孫である隆一氏がイスラエルを初訪問した際に「ヒグチ・ルート」で難を逃れたカール・フリードマン氏の息子さんから謝意を受けてもいる。
翻って日本人はユダヤ人を差別する感覚を持っていない。単に実利的な意味でなく、イスラエル・ユダヤとの関係を構築できれば世界史的な、安倍総理の言う地球儀を俯瞰した外交が展開できるのではないだろうか。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
贋作ジェットストリーム グラディス・ナイト編
2020 AUG 3 8:08:01 am by 西 牟呂雄
ーインストロメンタルのミスター。ロンリーが聞こえてくるー
冬の日本を離れて暖かい東南アジアへ
もっと寒い白夜の国へ
どんな旅になることでしょう
あるいは真夏の南米から
オセアニアから
旅はいかがでしたでしょうか
旅先の思い出もさることながら
母国の地を踏むことも楽しみかと
夜間飛行のお相手はパーサーのジェット・ニシムロです
本日はモータウン出身の女性ボーカル
グラディス・ナイトの曲をお楽しみ下さい
帰りたい
帰りたいんだよ
誰も待ってないけど
帰りたいんだよ
こんなになっちまって
全てを失ったオレにも
懐かしい場所だけは残ってる
最期はあの街で死にたい
こんなに年を取って
追われ追われて流れても
子供の頃を過ごした
あの街を
一目見てから 天国に行きたい
先に死んだ ジョニーもサムも
あの町にきっといる
さあ 南に急ごう
ディオンヌ・ワーウィックが、スティービー・ワンダー、エルトン・ジョンを誘い、最期にグラディスに声をかけて実現したスーパー・ユニットの大ヒット曲です。
お終いは邦題「偽りのウェディング・ベル」です
また空の旅でお目にかかれるのを
お待ちしています
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
勝負どころのこれから
2020 JUL 27 21:21:08 pm by 西 牟呂雄
雑音を遠ざけてじっくり考える。浮かび上がってくる思いがやがて見えてくる。
僕はポピュリストではないから世論を気にはしないし炎上するほどの読者もいないので、いくらでも暴論を書き連ねてもかまわない。この際ちょっと整理しておきたい。ただし右翼なのでリベラルの人は読まない方がいいですよ。
安倍総理の果敢なところが発揮されたのは、予算を組み替えて『1人10万円支給』に舵を切ったところに凝縮される。その他、遅すぎる早すぎるとかまびすしいが『学校休止』『非常事態宣言』等打つべき手は的確だったと考えている。
難を言えばあの新法の中身の薄さと評判の悪いマスクなんだが、パニックを起こしている国民にメッセージを送るつもりで滑った。マスクはたかだか数百億、一律10万円は12兆円だからマスクはやらなけりゃ良かったぐらいだ。
手続きの問題はなしとしないが中小企業への繋ぎ融資も10兆円を越える枠であり、総理はまだまだ追加する気満々なのが頼もしい。
締めて数十兆円は国債発行でまかない、その国債は全部日銀が購入する。流行のMMTによれば誰も困ることはない、人間の欲望には限りはないのだ。
そこで改めて世界を見渡せば、先進国の中で最もダメージが少なかったのは日本だ。この際中国はあえて触れない。本当かどうか分からないことに加えて、今後まともに付き合う必要はないと思い至った。稼ぎたい人が覚悟を決めて稼ぎに行けば良い。そういう意味では韓国もそう。友好は目的ではなくて結果だ。先の結果はコメントなんかできない。
EUの惨憺たる有様や、アメリカの凄まじい分断は日本にはない、あるけれど少なくとも移民問題からは解放されている。
そこで少し前までのゾンビ国家からの脱却をひたすら志向すればいい。
今回のテレワーク推奨で、取引先や同業者の動きを見ていて、いくつかのヒントがあった。
①『不要・不急の出張は止める』なにこれ。すると不要な出張を前提に仕事をしていたのか!
②『大人数の会議の中止』不思議不思議、見ていると何もすることがなくなる人がいた。こういう人は会議に出るだけなので、その人(シロウト)の理解のための資料が増える。ということはそのために負荷がかかる人が出てくる。
③『接待の自粛』自粛できる接待はしてもしなくても同じということが良く分かった。すると接待の(セットする)ために出社しているというオッサンがいる。
要するに結構な給料を貰っていい気持ちになっているオヤジの大半が最もデジタル化によっていらない人達だったことが奇しくもコロナでバレたのだ。
これから進むデジタル革命で上記の無駄がなくなる。それに加えて日本は何故か感染者数・死亡者数とも突出して少ない。自粛要請だけで済んだのは謎だろうが、この日本モデルを世界が見習おうとしてもできまい。なぜそうなのかはえらい学者センセイが分からないのだから僕にわかるはずがない。しかし中国のような監視社会でなくても充分に押さえられたことも事実だ。
ぼんやりと思いついた仮説はこうだ。
ベーシック・インカム或いはベーシック・アセット及びヘリ・マネは正しい。むしろ、放っておけば拡がる一方の格差解消の社会的コストは安くつくだろう。
マスコミはそのうち書くだろう。財政規律の破戒だナンだ。要するにイチャモンの類なんだが、そういう話を載せれば溜飲が下がる人々は大勢いる。現在進行形の戦争の最中に有効な提言ならまだしも対案にもならない妄言を喜ぶのはいささかおかしいのではないかとさえ思う。
リーマン・ショックの際に中国はなりふり構わず財政出動させ、立ちすくむ先進国にあっと言う間にキャッチアップした。勿論国内格差は拡がったが、そもそも自国民をいくら傷つけても押さえつけて構わない統制国家であり、それだけでは収まらずに他国への(自国内少数民族も)進行を隠そうともしないで切り抜けた。日本はどうか。
政府がバブルを煽っているのだから足元の株価はご案内の通り。だがその恩恵に全くあずかれないゾーンがヘリ・マネによって救わればいいのではないか。
その金で倹しく楽しみを味わいながらそこそこやってくれればハッピーなのだが、例えば全てパチンコでスッてしまうような輩は一定数いる。まさか上記中国のように統制はできまい。それでなくても既にAI・ロボットによってそのゾーンのできる仕事は恐ろしく手間のかかる生産性の低いものしか残っていないのだ。
一見矛盾するが、煩雑で手間のかかる仕事をデジタル化するコストよりも人間にやらせたほうが安くつく、自動化されない。
例えば凝った料理。材料の状況に合わせて仕上げるような仕事。或いは相手に合わせたサービス、即ち保育士、調停人、といった時間を掛けて双方が納得するまで丁寧に対応する仕事。そういう仕事の時間単価を上げる、または税率を極端に下げる、といった方策はとれないか。要するに職人を大事にする日本独特の文化にのっとればどうであろう。筆者としてはグローバル化ももうこの辺で先が見えた気がしている。
すなわち、あんまりグローバル化が進むと国家を超えたある種の組織、例えばGAFAのようなオーガニゼーションが力を持ち過ぎて、それこそ陰謀論者が喜ぶような世界になってしまいそうな気がしている。
余談であるが、ゼロ成長平和社会の一つの例として江戸期の都市における職人は大体月に十日も働かない。後は花見だ紅葉狩りだ夏祭りだ相撲だ正月だで遊んで暮らして無税だった(貧しかったが働きもしていない)。そういう巧の国になってもいいじゃないか。えっ、いやですか?もっと稼ぎたい?そうですか、すみません。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
PayPayドームの死闘 日本ハムファイターズ
2020 JUL 23 23:23:37 pm by 西 牟呂雄
対ファイターズ戦で6連勝だったターミネーター千賀に杉浦で勝った。冗談みたいなバレンティンの一発だけに抑えて2-1。
お次はこれまた5連敗中の和田(要するに去年はこの二人に潰されたのだ)に対しマルティネスで挑み、チャンスをしくじりながら2点を先制して和田を引きずり下ろした。ところがさすがにホークスはあの松田が逆転!これは明らかに栗山監督の継投ミスである。2・3塁になったところで宮西か公文だった。負けました。2-3。
そして三戦目。実は首位VS最下位なのだがバーヘイゲンが試合を作ってキャッチャー宇佐見のHRで勝った。このキャッチャー宇佐見がキモなのだ。
すでに述べたようにホークス戦は捨てる作戦を立てていた。去年も宿敵ホークスとは結構いい勝負をするのだが、そのたびにチームはガタガタになって次のクールでボロ負けするのがパターンだったからだ。
今年は8月まで6連戦が続く。だから今週は有原・上沢で2つ勝てれば、程度で考えていた。そして2つ勝てたのだから良しなのだが連日の1点差ゲームは過度の飲酒を招く。胃にも肝臓にも悪いしストレスもハンパない。
ところで、現在最下位とはいえ先週のロッテ戦から負・勝・負・勝・負・勝ときて今週は勝・負・勝となっている。すなわち楽天の4敗とオリックスの後半3連敗が今日の最下位を招いたわけだ。
この持ち直しは別に中田がHRを量産したものではない。その謎はキャッチャーだと睨んでいる。
ロッテ戦の頭で2度の送球ミスにより引っ込められた清水をベンチ入りさせなくなってからチームが勝ちだしたのだ。あの悪送球は本当にプロとも思えない下手さ加減でで当然すぎる2軍落ちだ。さすがに本人もしょんぼりしていた。
キャッチャーはシーズン前からヤバかったが、ここは宇佐見にがんばってもらうしかない。鶴岡も39才になったし・・・。
コラッ、清水!鎌ヶ谷で死ぬほど送球練習して戻って来い!
それでホークス後半の3試合はどうなるんだ。有原頼んだぞ。そして上沢に勝ち星を付けろ(まだ未勝利)!
って、あしたは東浜か・・・。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
ヒョッコリ先生が マルクスを語ったけど
2020 JUL 18 7:07:57 am by 西 牟呂雄
半農半テレ・ワークの生活も軌道に乗ってきたのはいいが、夏の暑さは今年もハンパない。昼間はとてもじゃないが土はいじれたもんじゃない。といっても梅雨明けでジャガイモとダイコンは収穫してしまったのでさしてやることもない。
夕方になって散歩に出ようと木戸を開けたらワッ、ヒョッコリ先生に会ってしまった。いつもと違って子供がつかうような小振りのリュックサックを背負っていた。桜の植樹をしたとき以来か。
「やあやあやあやあ、元気かい」
「(うるさいな、見りゃ分かるだろ)おかげさまで、ここにいればコロナにも罹りませんし」
「うん。ヒマそうじゃないか。まっ、こう景気が悪くちゃどうにもならないだろうね」
「(アンタに景気がわかるのかよ)まあ、テレ・ワークとかでボチボチですね」
「そう言ってサボってんだろ。わかるよ」
「(ギクッ)そんなことないですよ。先生こそあのインチキな仮想通貨はどうなりましたか。一年くらい前にやってたじゃないですか」
「ああ、スーパー・メタリック・コインのことか」
「(なにがメタリック・コインだ。紙にかいただけだったろう)そうそう、略してSMCと言ってましたね」
「悲しいかな失敗した」
「(当たり前だよ)それは残念でしたね」
「地域性にこだわりすぎてダメだった。広げなければビジネスとしては成り立たないマルチ商法的な運用をせざるを得なくなって断念したんだよ。但しその欠陥を克服する新しい理論にたどり着けたけどね」
「(また変なことを思いついたのか。懲りないジジイだ)ほう、それも仮想通貨なんですか」
「分かっとらんなキミは。小規模流通の実験ならまだしも仮想通貨は暗号技術がなければとても一般に使えるエビデンスがないだろう」
「(だから失敗したんだろう)はぁ、誰か使ったんですか、そのSMCシステム」
「大いに使ったんだよ。だがワシの方の理論武装が甘かったんだ。資本主義の本義である成長を見誤ったんだよ」
「(違うよ。理論なんか無かったくせに)それが今度は何が理論の柱なんですか」
「資本は増殖を続ける宿命にある。そこに競争という補助線を引く。即ちマルクスの言った”相対的余剰価値”の拡大競争のことだね。キミはこの前話していて分かったけど近代経済学とか計量経済学とか言ってもマルクスなんか勉強して無いだろう」
「(ギクッ、だけどそれがどうした)そういえば講座は取っていませんでしたね」
「嘘付け、キミの通った学校は2年の時に必修だったはずだ」
「(ナッ、なんでそんなこと知ってんだ)アッそうでした。でも用語を覚えるだけでいやになって放棄してました」
「じゃあ聞きなさい。資本は増殖し続け、相対的余剰価値を増やす競争は終わらない。これはマルクスが指摘し、最近ではピケティが改めて「r>g」と表現して格差拡大の豊富なデータを示した。ついでにそれを解消したのは戦争だったとも言っている。しかし一方で今後はAI・ロボットが発達してきて大多数の普通の人達は恐ろしく安い仕事に付かざるを得なくなる。つまり便利にはなるが忙しさからは解放されない社会が出現する。格差は凄まじくなる」
「(また訳の分からんことを言い出したぞ)そうなんですか」
「幸か不幸かコロナショックの瓢箪から駒で10万円のヘリ・マネを蒔いた。目下の所賛否両論だ。だがあと一年もするとその絶大な効果に気が付いて世界からも絶賛されるだろう。するとだな、マイナス金利政策は止められなくなってるしゼロ成長経済プラス・ベーシック・インカムも制度化されるだろう。そこだよ、ポイントは」
「(怖くなってきたな)どうなるんですか」
「労働およびサービスの商品化が意味を成さなくなる。非付加価値生活こそが究極の姿の脱商品文化、すなわち働かないで付加価値も求めない」
「(この人は全共闘世代より上なんだろうに何を今更ヒッピーみたいなことを)つかぬことを伺いますが先生は共産主義者とか社会主義者なんですか」
「全く違う。ただマルクスについては充分に研究した。マルクスの理論を実践するもっとも手っ取り早いのが革命なんだろうが、ワシは革命家ではない。ましてや一党独裁とか世襲なんかはマルクス主義でも何でもない」
「(やっぱりただのイカレ爺いなのか)それで日本はどういう社会になるんですか」
「だからね、新自由主義だのグローバリズムだので稼ぎ捲っている会社にいるスキルも無いようなヒラ社員。こういう人の給料が大したことないの知ってる?」
「そういう知り合いはあんまり・・・」
「そのあたりの人材がAI・ロボット化によって落ちてくることになる、中流でなくなる、こういう格差拡大主義の反対をワシが”脱商品文化”として理論化したわけだ」
「良く分からないんですけどそのナントカ文化は普段何してればいいんですか。なんか働かなくてもいい、と聞えるんですが」
「その通り。例えばキミのうちにはキミが見ていても価値が分からないものはあるだろう。キミがほったらかしていても何の意味もないが、ワシのような教養人には文化的な価値が充分にある。チョットみせてごらん」
「アッ、チョット待って」
言う間もなくまるで自宅に入るみたいにズンズンと入り込んできた。参ったな。
そして書斎の本棚をみて素っ頓狂な声を上げた。
「これこれ、この埃を被っている森鴎外と幸田露伴。キミなんか読まないだろう。オォ、この手触り!昭和初期の出版だな」
「(だから何だ)それは僕の爺様あたりが買って眺めてた本ですね。一回くらいは読んだでしょうけど」
「キミィ。要するにキミにとってはこの本は何の付加価値もない非商品なわけだ。古本屋なんかも引き取ってはくれない、この保存状態ではね」
「(大きなお世話だよ)まあ・・そうです」
「よろしい。ワシからほとんど付加価値のない食料を供給するからその本と交換してくれ。食料ならキミがどんな私生活をしていようと必要なモノだろう」
「(そう来たか)その食料って何ですか」
「うん。まあジャガイモなんだがね」
「いや、ジャガイモは僕もやってますよ」
「違うんだよ、ワシのジャガイモは。キミは種芋を買ってきて自分で植えて水をやってつくったんだろう」
「(他にどうやって作ると言うのか)当然そうです」
「ワシは食べるだけ収穫すると後はほったらかしにして次の年に自然に発芽してくるのを待つ。するとひどく栄養のバランスが崩れて小さすぎたりひしゃげてしまったりで全く商品としての価値が無いものが育つ。間引きも芽かきもしないからな。ましてや肥料なんか絶対にやらん。すると、だ。絶対に商品にならんジャガイモが採れるんだ」
「(バカバカしい)そんなもん食べられるんですか」
「食べられるに決まってる。現にワシはそれを食べている。そのジャガイモと埃を被ってゴミにしかならない森鴎外・幸田露伴を交換する。これぞ非商品化循環経済の極地だ」
「(よーし、少し脅かしてやろう)それはマルクスの言う所のルンペン・プロレタリアートになるってことですか。僕には単に怠け者が落ちこぼれているだけに聞こえますが」
「間違っとる!これぞ低成長時代に即し、尚且つAI・ロボット時代に文化的に生きる、まさしくニュー・ノーマルである」
「(あーはいはい)そうかなー。ホームレスがそんなこと言ってましたよ。で、その先生のジャガイモってどこにあるんですか」
「それはここにある」
先生は背中のリュックをおろすと中を見せた。こっこれは・・・。
「ではこの本を代わりに貰っていくから。しかしどちらも商品ではないから商談成立とは言わんな。ワハハハハ」
意味不明の笑い声を残して先生は帰っていった。
僕はしばし呆然とし、その後無性に腹立たしくなった。だってこれ、ほとんど詐欺じゃないのか。先日初収穫としてマリリンちゃんが掘ってしまった出来損ないよりも遥かにデキの悪いクズ芋ではないか。あんまり頭に来たのでタバコの箱と大きさを比較したが、そりゃ商品どころじゃない。
僕はこいつをどうしたら食べられるかを必死に考えた。
早速試しに皮も剥かずに吹かしてみた。やはり食欲をそそらない。
翌日それをフライパンでバター炒めでいい色にして食べた。おいしい!だが、確かに買ってきて食べる代物ではないだろうな。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」









