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神々が集った島 神津島航海記 後編

2016 AUG 20 17:17:28 pm by 西 牟呂雄

どこへ行こうか衆議の結果、島北端の名組湾沿いにある赤崎遊歩道に行くことにした。 切り立った崖にウッド・デッキ風の回廊があり、その下に底まで透けるほどの澄み切った入江がスポットなのだ。
 バスに乗って信号もない道をトコトコ行く。あまり大きくないせいか観光開発も大々的ではなくこじんまりした感じ、景観は素晴らしかった。

私ではありません

歩いていくとせり出した所が二ヶ所設けてあって、子供がビュンビュンと飛び込んでいた。
 しかしこの飛び込み台、海面まで4m程度だと思うがそこに立った恐怖感は凄かった。オジサンは禁止とでも書いてあれば止めたがそんな表示もない。しょうがなく飛んだ。その瞬間水面に落ちた衝撃が足の裏に伝わった。続いて視界はグリーンの泡ブクブクの中で、体はどっちに向いたのかと思っていると直ぐに明るくなってポッカリと水面に出た。やってみると面白くて二回も飛んだが、海は上がると震えるほど冷たかった。
 これは今年の冷水隗が大島から神津島まで居座っていて、漁にも影響が出るほどだったとか。
 実はこの写真を撮ったのはそこに通じる橋の上で、7~8m位の高さがある。そこからも勇気ある若者は飛び込んでみせた(オジサンはやらない)。
ここだけの話、飛び降り自殺だけはやめておくことにした。
 食料を買い出しに島に一軒のスーパーから船に帰ろうとしたら、偶然タクシーがいたので交渉すると乗せてくれた。ところが運転手が不気味な事を口走った。
「お客さん等ヨットで来たんだったら早く帰ったほうがいいよ」
「ん!」
「次の台風が出来てこっちに向かっているよ」 
 ナニ!そうか、さっき出て行った船が『直撃』と言っていたのはこのことだったのだ。あわてて船に戻ってパソコンで天気図を検索すると本当に台風七号が発生しているではないか。当初予定通りアイランド・ホッピングを諦めきれない連中は
「大島まで逃げて波浮で様子を見よう」
「イヤ、下田の方がいいだろう」
 等といい、オレはよんどころないヤボ用で神津ー調布のフライトを予約していたが飛ぶかどうか不安になり、結論は明朝未明に決める事にして取り合えず持ってきた酒を飲み尽くしてしまおう、となった。

離島のホームレスではない

 翌朝、四時半に起床して天気図を見ると事態は更に切迫してきた。そして、多数決によりキャンセル料金を出し惜しむオレを置いて船は帰港することになった。
 この哀れな姿は決して離島のホームレスではない。行き場を失って途方に暮れるオレだ。フライトが欠航になれば、イチかバチか高速船で下田か熱海にでも出なければ帰れない。それも欠航になるとしたら・・・。
「じゃっ、気を付けてね」
 と船は朝日の中出港して行った。

朝日を浴びる海岸に突き出た岩

朝日を浴びる海岸に突き出た岩

 気を付けるって、オレは何を気を付ければいいのか。
 更にヤバいことにこの明るい天気は一気に曇り、無情の雨まで降り出した。オレの運命は一体どうなる。雨の中ちっぽけな空港に行き必死に祈った。

 結果は(当たり前だが)20人乗りの飛行機は無事に飛び、オレは何事も無かったように調布に降り立った。アー疲れた!

名機 ダニエル228

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Categories:ヨット

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