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荒事の華麗な芸 市川海老蔵五役相勤申し候

2014 DEC 19 21:21:25 pm by 西牟呂 憲

 師走の歌舞伎座は雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)であります。
 今年の忠臣蔵は播磨屋・音羽屋・成駒屋さん達たちが関西に行ったようで、お江戸はナシ。
 始まりのときに腹話術で使うカラクリ人形が『エッヘン、演じまするは市川海老蔵』などとやってみせて客席を笑わせます。

「よっこらさ。シャ!うんこらさ。よっこらさ。シャ!うんこらさ。」
 成田屋・海老蔵さんの見得が決まる。すかさず声が掛かり万来の拍手。見事なものでした。二幕目に演った『毛抜き』のシーンです。成田屋歌舞伎十八番の演目、いわゆる荒事(あらごと)で下ネタだらけの出し物。お小姓に迫り女に擦り寄りどちらにも振られ、そのたびに『いや、面目次第も御座りマーせーヌー。』と頭を下げる。私生活もそんなもんだろう、遊びは芸のこやしですなと想像を掻き立てられます。
 寄り道しますが、この場で髪の毛が逆立つ奇病になる息女、錦の前をやるのは成駒屋からはただ一人参加の中村児太郎。僕が玉三郎に次ぐ女形だと贔屓にしていた人で、見た目も綺麗だが『いやじゃ、いやじゃ、いやじゃわいな~』とか『アイナァ』という声がいいんです。

 今回のウリは、海老蔵さんの一人5役で”早変わり”も2回程あり、花道での”梯子乗り”あり(初めて見ました)最後の大詰めの大立ち回りの後、不動明王になっての”宙乗り”あり(これも新歌舞伎座では初めて見た)。
 そして大和屋・坂東玉三郎さんが花道を出てきた時は、席が東 42という一番遠くからだったので失礼にも一瞬『美川健一みたい』と思いましたが、舞台に進むとさすがに艶っぽい。海老蔵さんの鳴神上人を酔わせて口説き落とすところがギョッとするほど壷に嵌まってこれまた結構。鳴神上人は下戸の設定で無理矢理飲まされ泥酔し、還俗し夫婦になると口走る。

「お師匠様。還俗されたらお名前は(本気かどうか確かめている)。」
「ぬぅ、そーれーはー(ツイ口走っただけなので考えてない)。」
「してそのお名前は(畳掛ける)。」
「ぬぅ。」「さぁ。」「ぬぅ。」「さぁ。」
「いーちーかーわー、えーびーぞーおー(破れかぶれで本名を言う)。」
やんやの大喝采でした。
 おまけに酔っぱらっている演技など、酒乱伝説もあるくらいだから上手いのなんの。僕が泥酔したらあれぐらいかな、いやまだ修行が足りない。もっと飲まなきゃ。
 
 それから大詰め『朱雀門王子最後の場』。素晴らしい見得を見ていて気が付いたが、歌舞伎は客席から見るもの。何が言いたいかというと、あの見得の見事さは映像には合わないように思います。映画でもテレビでも”切り取った”画面になってしまい、見る人は監督或いはデイレクターの視線でしか観賞できない訳ですね。おまけにアップで撮ったりパンしたりする演出をされると舞台とは印象が違いすぎる。新劇でも早野さんが出演したハムレット を見たときにも感じたことです。
 例えば今回も活躍した萬屋・中村獅童さん。この人もいいんだけど(実はファン)映画やテレビに出すぎるから科白の時に相手を見過ぎる。そこは半分向けて客席の虚空を睨むところでしょう。映像と舞台は別物です。

 そして最後に不動明王が制多迦(せいたか)童子と矜羯羅(こんがら)童子を従え降臨して”宙乗り”になります。ですが新橋演舞場ではないので上るだけ。そこに紙吹雪を降らせますが、あれはあんまり意味が無いような。クリスマスの演出のつもりなんですかね。
 面白かった。

九月花形歌舞伎

九月大歌舞伎 千穐楽

猿之助四十八撰


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Categories:古典

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