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『今ここで思いついた』ウラジミール・プーチン

2018 OCT 4 22:22:16 pm by 西 牟呂雄

 余裕綽々でプーチン大統領は言った。
『ちょうど今こんな考えが頭に浮かんだ。平和条約を結ぼうじゃないか。今ではなく年末までに。あらゆる前提条件なしに』
 ニュースで散々否定的に報道されたので筆者もいささかひどいブラフだという印象だった。『なぜその場ではっきり断らなかったのか』『事前にその発言が止められなかったのは重大なミスだ』といった評価が多かった。
 冷静になってその状況を思い出すと、以下の3点が気になる。
 一つは安倍総理のスピーチが先にあり、プーチンがそれに答える形で飛び出した発言であること。つまり総理のスピーチに答える形での発言だ。
 もう一つは、この場を仕切っているモデレーターはブリリョフという著名な司会者で、この発言はロシア全土に中継されている番組であったこと。
 更に、安倍総理とプーチン大統領の間に習近平が座っていたアングルだったこと。
 要するに十分に『聞き手』、この場合ロシア国民と習近平を意識しての発言なのである。
 まず、総理スピーチでは将来に向けての話をしながら、日中・日朝の関係に触れ、ロシアとの長い交渉経緯を紹介し、『プーチン大統領、もう一度ここでたくさんの聴衆を証人として、私達の意志を確かめ合おうではありませんか。今やらないでいつやるのか、我々がやらないで他の誰がやるのか、と問いながら歩んでいきましょう』と語りかけ拍手を浴びていた。ロシア・ウォッチャーに聞くと、とりわけプーチンの拍手は手振りが大きかったという。
 そして質疑が終わるとブリリョフが大統領に向かって、北方4島に『アメリカの軍隊が来たらどうなるのか』と聞いたのだ。専門家によればさすがにこのテの問いかけは勿論予定の質問だそうだ。そしてその答えに、まずこう切り出している。念のためロシア大統領府が発表した英訳が手に入ったのでそのまま紹介すると次の通りだ。
Allow me to being by saying that SHINZO is right. Both he and I are eager to sign a peace treaty.I believe this to be extremely important for the relations between our countries.
となっている。
 この”SHINZO”のニュアンスは特別で、格段の信頼関係を感じさせるものだ。他の先進国首脳と何かとトンガリがちのプーチンがこう呼ぶのは世界でただ一人であり、そこに失礼さは微塵も感じられない。
 そして56年モスクワ宣言に触れ、冒頭の発言につながる。
 プーチンは過去の交渉記録をすべて知り尽くしている。そして安倍総理も秘密提案まで含めて諳んじているほどだ。この56年宣言を口にしたことは重大なシグナルだろう。
 更には習近平を前にしてわざわざ中露で領土問題(大ウスリー島のこと)を解決した事を引き、最後をこう結んでいる。
 We will seek to provide favorable conditions for resolving these issues. We want to resolve them, and I hope that one day yhis will happen.
 今のまま四島一括返還を言い募っていても、戦争でもない限り絶対に領土は返還されないままなのは明らかである。さりとて、さしたる根拠もなく足して2で割るような妥協案に持ち込むこともウィンーウィンとは言いがたい。
 総理の必死の外交を冷ややかに見ているのは誰だ。外務官僚のサボタージュということを作家の佐藤優が常々指摘しているが本当にそうなのだろうか。四島一括返還をお経のように唱えていれば大過なく過ごせるのかも知れないが、このままでは百年事態が動くとも思えない。

 プーチンは冒頭の言葉で踏み込んだ。これをガチーッと受け止める禁じ手はないものか。筆者はある、と考える。『よし、分かった。56年モスクワ宣言から始めよう』と言ったらどうだ。
 56年宣言は歯舞・色丹の引き渡しを謳っているのだ。地図をみて欲しい。両島は国後の真ん中あたりまでの海域に食い込んでいる。経済協力も地政学的に効果が激増するに違いない。
 プーチンは国民の前で約束している。無論国民をいきなり失望させるわけにはいかないが、驚くなかれ一般のロシア人は北方領土で係争していることはおろか、何処にあるのかさえほとんど知らないのが現実だ。平和条約ならば2島は帰る。
 ここまでならば日米安保条約の範囲として認定してロシア側も差し支えないはずだ。いや、除外対象としても本当はいいのだが、尖閣列島を範囲内と断定しているため中国に対して理屈が立たない。やっかいなのは国後・択捉には地対艦ミサイルを配備し軍事拠点としていること。
 さて、二島引渡し後は満を持して巨額の(1兆円くらいか)公共投資を国後島にする。日本に施政権だけはあるが、クナシリは自治とする。タックス・フリーとし、日露企業を呼び込む。できれば原発(もうダメだろうが)を建設するとか、ディズニー・リゾート型の施設などで人が集るようにする。カジノでもテニスの大会でも何でもいいからとにかく日本人が行けるようにし、金が回るようにする。
 ちなみにかの大坂なおみ選手の祖父としてテレビに出てくる人は、歯舞群島の勇留島出身だ。札幌から飛行機を飛ばせば彼女の出るトーナメントは日本人で満員になるだろう。
 ところで、択捉島は治安が結構悪いらしい。連邦政府の社会経済発展計画で投下された資金が汚職を蔓延させ、少ない人口ながら殺人や麻薬の犯罪までがある。ここは一つ両国で協力し、日本人が行くならばコーバンなどを設置し安定に努めていただきたい。特にヤクザとロシア・マフィアがくっつかないようにしなければ金をドブに捨てるよりひどいことになりかねない。

 と、まぁ勝手な事を思いついてみたが、右翼の人怒らないでくださいね。私は保守派のつもりです。左派の人反対するなら対案をお願いします、国益を損なわないように。 

北方四島共同経済活動は

国境を考える Ⅳ


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Categories:ロシア残照

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