Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 和の心 喜寿庵

レイモンド君とつつじ

2022 MAY 21 9:09:06 am by 西 牟呂雄

 喜寿庵では連休中にツツジが咲く。外の生垣を眺めていたらレイモンド君がお母さんと歩いてきた。お母さんがいるのは当たり前だが、僕は初めてお目にかかった。あのいい加減翁のヒョッコリ先生じゃなくてよかった、またホラ話を聞かされるのはかなわん。

 レイモンド君は友達だから僕を見てニコニコ見上げた。『オハヨゴザマス』などと言う。言葉がハッキリしてきたなぁ。『はい、よく言えたね。お早うございます』と返した。するとお母さんが『いつもお世話になっております。父からもよろしくお伝えするよう言い付かっております』と丁寧にごあいさつ頂いた。するとこのお母さんは先生の娘さんか一度会った息子さんの奥さんだろう。
『いえいえ。先生はお元気ですか』
『お陰様で元気にしております。今は旅行に出てまして』
『ほう、どちらまで』
『それが・・・、いつも行き先を言わないで行ってしまいますのでどこにいるやら』
『あはは、フーテンの寅さんみたいですね』
 それを聞いたとたんにお母さんの表情が極端に険しくなったのを見逃さなかった。しまった、今すごくマズい冗談をいってしまったかもしれない。あの先生、本当に寅さんを地でいっているかもしれないし、それならご家族が迷惑を被っているに違いないから。あまりの気まずさに思わず出まかせを言った。
『そうか、じゃレイモンド君寂しいね。おじさんと一緒に遊ぼうか』
『アソブ』

 一瞬ウクライナで善戦しているアゾフ大隊のことを言い出したのかとギョッとしたが、遊ぶ、と言ったようだ。そして勝手知ったる喜寿庵の中にトットコ走って行こうとして、ツツジに向かって『クイワナーイ』とこっちを振り返るのだ。どうやらレイモンド語で、これはなあに、と聞いているらしい。
『これはね、ツ・ツ・ジ』
『つ・つ・じ』
『そう。よく言えたね』
『クイワ?』

 そうか、この子の識別能力では花の形が同じでも色が違うと別の物だと認識してしまうのだ。
『これもツ・ツ・ジ。オンナジツ・ツ・ジ』
『お・ん・な・じ・つ・つ・じ・』
 待てよ、これでは『オンナジツツジ』という名前でメモリーしてしまうかもしれない。
『あのね、白い色のツツジ。こっちは赤いツツジ。白と赤、わかる?』
『ヒロトカー』
 分かってるんかな。いやまずい、僕は色覚異常だから微妙に間違った言い方をする可能性もある

 そう思っていたら生垣の中に走って行こうとする。思わず抱き上げた。庭にはまだ他に30本くらいのツツジがあって、紫っぽいのやら珍しいのが咲いているところだ。するとお母さんは落ち着き払ってこういうではないか。
『あのー遊びたいみたいですけど、父からもこちらなら安心だと聞いております。よろしければ2時間ほど見ていただけますか』
『ア~ハイハイ』
『クイワ?』
『これはピンクのつつじ(でいいよな)』
『ピ・ン。ク・ノ・ツ・ツ・ジ』
 振り返った時にはもうお母さんの姿は見えなくなっていた。

 一瞬途方に暮れたが、前から温めていた計画が頭をよぎり、ツツジ地獄にはまる前にそそくざと実行に移す決意をした。レイモンド君に有無を言わせず車に乗せ、シート・ベルトで括りつけて出発、多少グズッたけど動き出したらおとなしくなり、高速で10分の所にある北富士ハイランド・リゾートにリゾートに向った。そこに遊園地がある。
 着いた時には上機嫌になっていて、走る走る。

メリーゴーランドでドヤッ

 賑やかなミュージックとともに回転するメリー・ゴ-ランドの前で止まった。
 目を輝かせている。
 僕のユメもこれだった。
 この、何でも楽しいが訳が分からない時期にこそ、乗って面白い回転木馬。
 あと数年もすれば楽しくも無くなる乗り物で一緒に遊ぶ。
 動き出すとレイモンド君の目は真剣になった。緊張しているのかな。
 ローテーションが終わってもなかなか降りたがらないので一枚撮ってあげたが、ご覧の通りのドヤ顔は自信に満ちていた。
 それから二人で観覧車に乗ったりトーマスランドで遊ぶとアッツと言う間に1時間過ぎてしまった。
 もっと居たがるレイモンド君をだまくらかして帰ったのだが、二人で来る機会などそうありはしない。少年老い易いのだ。そして推定2才のレイモンド君の記憶には残らないのだろう。
 それはおとなにとっては寂しいことだが仕方ない。その代わりツツジは毎年咲いてくれるけれど。
 しかし、職質されたら誘拐未遂にされるのかな。

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定点観測の妙味

2022 MAY 1 9:09:20 am by 西 牟呂雄

 


 喜寿庵のネイチャー・ファームの畔に植えてある枝垂桜が4月の初めには蕾をつけた。
 3月一杯はほとんどこちらに籠っていたのだが、新年度になってさすがにテレ・ワークも飽きて山から下りようとした時に撮ってみた。
 やけに赤いというか、咲いた時の色に比べて毒のあるような強烈さを感じた。
 ところが途端にコロナが増えてしまい、ノコノコまたやってきてみると満開だった。
 蕾の時とは似ても似つかない、淡く気高い花を咲かせていた。

満開

 
 ソメイヨシノが連なって咲くのも見事だが、この桜はポツンと立っている。
 僕はこの桜が好きで、まるでペットを可愛がるような気持ちで眺めている。
 するとおかしなことに、犬や猫にそうするようにこの枝垂れにも名前を付けてやりたくなり、それも例えば『フォーリング・チェリー』とか『マリリン』とかいった軽薄な横文字ではなく、漢字一文字にすると何がいいかとあれこれ思い悩み、『玲』という文字を選んだ。玉の鳴る音をあらわし、玉のように美しいことを形容する文字である。
 そう名付けて眺めていると、涼やかな微風にたなびく姿はかすかに鈴の音がきこえるように揺れ、尚且つ輝くように奇麗なのだ。
 思うにこの見事な色合いになるために、冬の厳しい寒さの中を耐えて何とかあの煮詰めたような蕾を付けてこその満開なのだ。そういえば蕾の色はフト血の色を連想させなくもない。
 こういう変化を眺め続けるのも定点観測の醍醐味である。

ズラリ

 ネイチャー・ファームには、同じくこの半年寒風に晒され20cmもの積雪の中を(ほったらかしにされつつも)生き延びたスーパー・ニンニ君達が健気にも育っている。ニンニ君は同じところでの連作は、こまめに追肥してやらなければならないから僕のようなシロートには無理なので、ネイチャー・ファームの中を転々としているが、これも長い目で見れば定点観測だ。

 で、突然ここで自分という人間を定点観測てみたらということを思いついた。
 例えば長いことここに立っている桜の『玲』が、頻繁にやって来る僕のことをどう見ているのか。
 いかにも明るい都会の坊ちゃん、ジーッと蟻の行列を半日見ている少年、背中まで髪を伸ばしたバンド屋、遅まきながらのリーゼント・ボーイ、夕日が落ちるまでたたずむ詩人、負けてばかりいるギャンブラー、独り言をしゃべり続けるアル中、契約に思いを巡らせるビジネスマン、まったく腕の上がらないゴルファー、国籍不明のヨット・マン、じょうろで野菜に水やりする素人ジェントリー・ファーマー、古希にならんとするスノー・ボーダー、・・・止めた。

水仙と桃

 振り返ると水仙が花を開き桃の花が咲いた。この桃は源平と言って白とピングの花が一緒に咲くのだが今年は白ばかり。
 定点観測をしていると、自然も姿を変えていくのか。ましてや生身の人間においておや。

 我が身の変遷を振り返ってみて、一つ気が付いたことがある。この半世紀を通じて興味の趣くままに暮らし、それなりに精進したつもりではあった。しかし、風体は多少変われども、例えばIQが上がったとか品格が増したなどという事はない。だが、その間の様々なチャレンジが全部無駄だったかと言えばそう簡単には言い切れない。多少の役に立ち、多大な迷惑を振りまきはしたが、そこには存在していたことは確かで、その(中身は変わらないとしても)果実を味わうのはこれからに違いない。というどうにも爽やかでないオチになってしまった。

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真冬の富士と魔王天神社

2022 FEB 24 0:00:08 am by 西 牟呂雄

 性懲りもなくスノボに行く途中に富士山のヴュー・スポットがある。
 曇り空にうっすらと富士山を見るとなんか変。ぼやけた写メで見にくいだろうが、山頂がすっぽりと雲に覆われまるでお椀を被ったようだった。
 これは「富士山が笠をかぶれば雨が降る」と古くから言われている笠雲で、検索してみると事実冬場では70%ほどの確率だそうだ。
 この日は寒い曇天で、降れば雪。車はノーマル・タイヤだから下手すると遭難。這う這うの体で帰ったらやっぱり降った。富士山の言い伝えありがたや。

山中湖にて

 このところ山荘暮らしが長いので(テレ・ワークのせいで)、休日には富士五湖をひとつづつ一周するドライブを今年から始め、西湖・河口湖・山中湖と回った。どこからでも富士は見えて観光客もオフ・シーズンとコロナのおかげで少ない。
 こちらは山中湖からの富士だが、山裾から湧き上がっているような光景が珍しいので納めた。
 こんなに晴れているのにあの雲の下は風が舞っているのだろうか。

 先日、西村さんの初詣ブログに第六天魔王についてコメントしたが、第六天魔王とは別にサタンではない。仏教における天のうち、欲界の六欲天の最高位(下から第六位)にある他化自在天のことであり、日蓮などは修行者を堕落させる者と説いた。
 かの織田信長が叡山を焼いた後、正覚院豪盛等が武田信玄を頼ったため信玄から信長宛てに書状が届くが、「天台座主沙門(しゃもん) 信玄」とあったため、その返信に信長が「第六天魔王信長」と署名し叡山残党への恫喝の意味を込めたとされる。但しその書簡はいずれも現存せず、宣教師ルイス・フロイスの報告書にあるだけなので疑う声もある。だが世間でそう言われたり噂されていたのだろう。フロイスの書簡を見たことはないがアルファベットで『ダイローテンマオ』と読めるそうだ。

うわぁ

 一方、仏教の世界観を表す名称を持つ神仏習合の神社はその伝承はともかく多く、五湖の西湖の近くに魔王天神社はある。
 いつも行くスキー場の入り口だ。
 この日、また性懲りもなくスノボをやりに行って恐ろしい目に合った。ボードを抑えるビンディングは樹脂でできていて、固くシューズを固定しているが、3本目を滑ろうと締め始めたら『パリッ』と音がして、左足の甲の所が飛んでしまった。もう20年も使ったから来るべきものが来たのだ。仕方なく足首だけ固定して降りてきたがヤバいの何の。それにしても・・・。以前スキーでも似たような目に合ったことがある。

春夏秋冬不思議譚(ゲレンデに砕けたスキー靴)

 
 あまりのことに、お祓いがてら魔王天神社をのぞいてみた。山が神体というので長い階段があり、見上げてみるとこのおどろおどろしさはどうだ。
 そしてたまたま通りかかった人に聞くと地元での呼び名は「オダイローサマ」。まさにフロイスが聞いた通りの第六天魔王そのものだった。よいこらしょっと登ってみると何と石段は108段!

オダイロー様

 ヒイヒイいって上ると質素なお社があり、まさしく『魔王天神社』なのである。
 覗くと御神体はなく、奥は吹き抜けになってその先への階段があるだけだった。
 人っ子一人いない狭い境内で、おもむろに10円玉を放り込み、本日起こった不幸を払い年末から続く諸々の厄災を報告し、家内安全世界平和商売繁盛、祓い給え清め給えカシコミカシコミ申し上げ奉りました。

舞殿

 ふと見ると、参道の前にかわいらしい神楽殿があったから、ついでに大魔王踊りでも奉納しようかと思ったが『不審者を見た場合は村内放送の上通報します』などと書かれていたのでさすがにやめた。

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喜寿庵の日没

2022 JAN 16 0:00:53 am by 西 牟呂雄

 しばしばブログ・ネタにもしている喜寿庵は、祖父がひいおばあさんの喜寿を祝うために普請道楽で建てた山荘である。凝り性だった祖父は、家相に拘り表門を東に向けるために私道をしつらえたり、庭に大石をヨイトマケで引きずり上げたりと大変な入れ込みようだったらしい。
 この祖父はよくわからない人で、京都帝大に学んだ当時のインテリではあったが、奇行で有名であった。満州旅行で仕立てたジナ服や、やりもしない乗馬服で街を闊歩していた。伯父から聞いた話だが、一緒に歩いていて『暑い』といきなり川に飛び込んだり、一時弓に凝ったときは巻藁に幼い伯父を乗せて矢を打ち込んだりしたそうだ。
 更に喜寿庵を整理していて最近分かったことだが、理系の高校を出ながら京大は経済学部に入り、しかも中退していた。あくまで推測だが、左傾しかけてひい爺様に辞めさせられたのではないかと睨んでいる。

冬至の頃のショット

 そもそもなぜこの場所に建てたか、といえば桂川渓谷の借景だと伝わっている。写真は冬至の頃の日没で、ちょうど山の端が重なり合った谷間に落ちる光景に惚れ込んだと。
 確かに、夕日が山にかかってからほんの10分ほどはため息が出るほど美しい。様々な思い出が脳裏をよぎる瞬間だ。ただ不思議なもので、この光景を見ながら嬉しさがこみ上げてきたような記憶はない、忘れている。この先どうなってしまうだろう、と途方に暮れたことばかりが残っている。例えば癌を宣告された時とかだ。
 更に恥ずかしい話だが、この光景に向かって『チクショー、何が何でも成し遂げてやる』とか『今に見ていろよ』等と高揚したことも全くない。挫折は何度も味わっているが、そっちがダメならコッチにするか、的な気楽さで交わしてしまったように思う。

 話は変わるが、法然上人は西方に沈みゆく夕日を見ながら、阿弥陀如来のおわす極楽浄土を観想するという修行をした。日観想という。
 今更この年で人格が向上するとも思えないが、この山間に日が落ちている時期に2~3回やってみたが、何も見えてこなかった。思えば努力・我慢・反省とは無縁な人生を送って来たのだ、これではいかん。
 そこで今後5年の目標を作ることにした。年ごとに計画を立ててみた。
 ある目標を作ってみたが、ちょっと書くのはははかられる。ただ、それにアプローチする方法は、一人でやる、ゆっくりとやるということだ。形が見えてくるのは今から1年後かな。
 まず今年。酒を止める・・・、ダメだ。

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レイモンド君再び

2021 OCT 14 9:09:36 am by 西 牟呂雄

 赤トンボが増えたなー、という初秋の山荘で道路を掃いていた。何しろ物凄い落ち葉だから今からやっても12月には絨毯を敷いたようになってしまう。
 向こうから大小二つの人影がやって来る。そろそろかな、と思っていたヒョッコリ先生だ。すると小さい方はレイモンド君だろう。だいぶ歩くのが早くなってる。
『やあやあやあ、いい季節になったね』
『紅葉はまだですけど涼しくはなりましたね。レイモンド君上手に歩けてるじゃないですか』
『うん。まだ喋れないけど表情がはっきりしてね』
『ミャミャミャグイー』
 僕はすっかり友達になって仲良しだから、レイモンド君はヨチヨチと寄って来た。抱っこしてやろうとすると、いやがって門の中に入ろうとする。弱ったな。
『なんだ、レイモンド。お庭で遊びたいのか』
 オイオイ、オレのうちの庭だろう。この先生は勝手に入って来るけど。これは・・・。
『そうか。ちょうどいいや。キミ30分ほど見ててくれないか。そこまで行ってくるから』
『(そーら、おいでなすった。いつもの手だ)エート、ちょっと忙しいんで』
『ナニ、すぐ帰って来るよ。どうせ今だけだろ、忙しいの。普段はヒマそうじゃない』
『(勝手に決めんな)はァ、まぁ、ね』
『ホッコンホッコンヨー』
『あっ、コラコラ勝手に行っちゃだめだってば』
『じゃあよろしく』
 やられた。まっ、しょうがないか。久しぶりだし。
 前に喜寿庵に来た時は全くのオギャーだったから庭を覚えているはずはないが、トコトコと入って行ってしまった。ここは崖の上だから放し飼いにはできない。追いかけていくと芝生の真ん中に立っていた。

彼岸花

 そして庭の隅っこに咲いている彼岸花を見ていたと思うと、そっちに突進した。ヤバい、あの花はちょうどレイモンド君と高さが同じだ。『キャ~』とか言いながら花びらを掴んでしまった。『コラコラコラ、ダメー』と駆け寄ったが遅かった。一緒に遊んでいるつもりかケラケラ笑いながら引きちぎってる。口に入れるのはかろうじて止めさせた。
 暫く花びらで遊んでいたが、それに飽きるとネイチャー・ファームの方に行こうとする。あっちのピーマンとナスもまた等身大だからマズい。何しろこんな赤ちゃんに毛が生えた程度のチビでも、その機動力と破壊力は凄い。オトナが気が付かないところで想像もしないようなことをやりたがる、できもしないくせに。しょうがなくて少し離れた公園に連れて行った。

 そしてそこでもレイモンド君の探求心と行動力は怯まなかった。どうも動く物が好きらしく、車が通ると『キャー』と駆け寄り、ブランコにしがみつき、すべり台によじ登ろうとする、いずれもできないのだが。目を離すとトコトコ行ってしまうので、いつも傍にいないとヤバい。これではまるで犬の散歩だ。
 ところがしばらくすると、僕とレイモンド君の間では会話が成り立っていることに気が付いた。『はい、何か貰ったら、ありがとうございます、だよ』というとペコッと腰を折って『あーがあ~~』これが、ありがとうございます、のようなのだ。他にも、どっこいしょ、とか、ヤッター、と言っている(ような気がする)ではないか。
 待てよ、これはテレパシーじゃないのか。口には上手く出せないが、超能力で伝えているのではなかろうか。僕は凡人だたら、ひょっとしてレイモンド君はエスパーなのかもしれない。
 試しに、心の中で『レイモンド君。君はエスパーなのかい』と念じてみると、そうだよと返事をするではないか!
『ダー、ダー』
 これはロシア語の肯定だ!何で僕がロシア語を使うのを知ってるんだ。ん?

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地球が狂うと人も狂う

2021 AUG 13 0:00:14 am by 西 牟呂雄

えっ!

 

 
 喜寿庵で春先に散々ケムラーなるイモ虫の大発生と戦い、どうもおかしいと感じたのだが、ここへきてネイチャー・ファームにも異変が起きていた。
 これは昨年に植えた通称スーパー・ニンニ君と新規開拓のキャロット・フィールドで採れた最初の一本である。
 ニンニ君の不細工さはいいとして、このニンジンの奇形的小ささは何だ。原寸はニンニ君で親指大、ニンジンは人差し指といったところか。丹精込めたつもりでこれはないだろう。
 頭に来てニンジンは洗ってそのままかじったら、一応甘みのあるニンジンではあった。
 実はその前に収穫したダイコンは更に惨めなゴボウのような代物でとても料理には使えず、全ておろしたがおそろしく不味かった。
 それだけではない。庭木も変だ。

鮮やかな楓と藤

 これが去年までの鮮やかな母屋の庭にある楓である。藤の花との対比が美しい。そして秋になるともっと色が濃くなってすごみが増す。
 この楓はかれこれ70年くらいはここにしっかりと根を下ろし、一族みんなで愛でてきた。
 それが、今年も芽吹いたことは芽吹いたが梅雨時あたりから葉が落ちて来た。

どうした?

 それが、梅雨明けの段階ではご覧の有様。残りの葉もハラハラ落ちて、これはそのうち枯れてしまうのだろうか。
 そういえば藤の花も今年は色が変だった。淡いというか、元気がないのだ。
 植木屋の師匠に見てもらうと、手の施しようがない、とのこと。ただ、全部落ちた後に芽が出てくれば復活するかもしれないとか。
 裏木戸の横の茂みも、葉の色が濃淡が出て、だんだら模様のようになっていて、これは本当にヤバいことなのかもしれないと不安になった。長雨や酷暑は世界中で災害を起こし、日本中で土砂崩れが頻発し、コロナは一向に収まらないどころか次々に変種が現れる。一体何ができるのだろう、次は。

影のところの上が変色している

  
 狂ったのは喜寿庵周辺だけではない。僕の生活もメチャクチャになってきた。
 一部の読者の方はご存じだろうが、ドクター・ストップを喰らって断酒生活となり早や3週間が経とうとしている。別に頭が狂ったのではないが、睡眠に障害が出た。眠れない。
 寝付きが悪いのを酒で何とかしていたのだろうか、明け方まで眠れず、浅い眠りに落ちても2時間で目が覚めてしまう。そのまま昼間にウトウトすることもなく仕事をし(テレワークだが)、夕方6時頃に突如として睡魔が襲って来る。しめた、と思って寝てみても30分で目が覚める。
 一方、今までの生涯で急性スイ炎と大腸癌の二度の入院・治療期間中以外、ほとんどの朝を耐えがたい二日酔いで目覚めていたので、断酒による爽快な朝が迎えられるかと思ったが、これは不規則睡眠のせいなのか全く期待外れだった。睡眠不足のせいか全然さわやかな朝ではない。手足の疲れがとれていない。断酒によるストレスだとしたら本末転倒ではないか。
 まぁしかし、内臓の疾患はこの年になると命取り。せっかくだから緊急事態宣言中は断酒を続けよう。そして僕の頭がどのくらい狂うのか、この際見極めてみよう。
 えーと、ゆうべは何を食べたのか・・・思い出せない。

あれっ

 ところが、である。翌週になって楓をよく見ると、儚げではあるものの新芽が可愛らしく出て来たではないか。これはどういうことなのか!
 時系列だけで言うと、春先に芽吹いてすぐに紅葉になり、梅雨空けに散り始めて真夏に新芽が出たことになる。
 そういえば7月中、まだミンミンゼミも鳴く前にカナカナが鳴いた。これを聞く頃は赤とんぼが舞って『あっもう夏が終わるな』となぜか物悲しかったのを思い出す。
 地球も喜寿庵も、僕の目や頭まで・・・。何が正確な真実なのか。

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ヒョッコリ先生 地球を守る

2021 AUG 1 1:01:36 am by 西 牟呂雄

 喜寿庵の裏木戸を箒で履いていたところ、何やら異様な集団が行進してきた。何だあれは。そして近づいてきた時に先頭のオッサンの表情が見て取れた、ヒョッコリ先生だ!
 向こうも僕に気が付くとニコニコしながら歩調をとってこちらに来るではないか。
『全た―い、止まれ!』『ザッ、ザッ』
 子供じゃないか。全部で15~6人の小学生が2列縦隊になっていてきちんと止まった。一番後ろにいる二人は僕が少し勉強を教えていたピッコロ君とマリリンちゃんだ。元気だったんだな。
『いよう、しばらくだね』
『どうも。先日東京でお孫さんを預かりましたよ(迷惑だったけど)』
『うん。息子から聞いた。ごめんね、急な話で』
『(全くだ)いえいえ、またどうぞ。かわいいですね。ところでなにやってんですか』
『ウン?ああ、こいつ等?地球防衛軍コロナ撲滅隊の精鋭メンバーだ』
『(またバカなことを)なんですかそれ』
『何しろ収束の兆しが見えない中、連日オリンピックで熱戦を繰り広げている選手を激励し、いくら緊急事態宣言をしてもだらけて感染者が増えている都会人に喝を入れようと思ってね』
『地球ナントカ軍でもいいですけど、どうして子供なんか集めてるんですか』
『集めたんじゃないよ。この子達が、どうして感染が減らないの、せっかくのオリンピックなのに選手がかわいそうだ、って言いだしたんだ』
『それは殊勝な心掛けですが、何をするんですか』
『チャーリー!』『イエッサー』
 突然先生が大声を張り上げ、一番前のやや大きめの子が返事をしたのでびっくりした。チャーリーと呼ばれたやや年上(小学校5~6年くらいか)の男の子は2列に並んでいる子供達に向って声をかけた。
『戦闘準備!対象、目の前のオジサン』
 すると後ろに並んでいた子供達は一斉にゴーグルを付けてリュックサックから何かを取り出した。
『かかれ!』
 子供達が僕を取り囲み一斉に何かを吹きかけた。驚いて、
『オイオイ、やめてくれよ。なんだいこれは』
『うん、消毒用のアルコールなんだ。これでオリンピックの出場選手を感染から守ってやるんだ』
 先生が答えた。何のマネだこりゃ。
『だってバブル方式で選手には近づけないし、試合は無観客でしょう』
『何も東京のアリーナでやる競技ばかりじゃないだろ。自転車のロードレースはこの辺を通ったんだよ。我が部隊はセーリングのサポートに行くんだ』
『だけど県をまたいでの移動は自粛しないと』
『県境をまたがなけりゃいいんだろ』
 また始まったぞ。このオッサン、宇宙を創ったといって妙な実験をしたり、戦前の記憶があるようなことを言い、マルクスを語り戦争を総括してみせた奇人だ。今更驚かないが。
『イイカイ、セーリングは神奈川の湘南でやる。ここ山梨県と神奈川は隣接していて県境は相模湖の湖面を横切っている。だから我が軍はそこをボートで超える。即ちまたぐわけではない』
『(実にどうでもいい子供だましの理屈だ。まぁ相手は子供だからいいか)はあー。まっ気を付けて行ってきてください』
『うん。それでは出発する。ぜんたーい、進め!』
 先生と子供達はそのまま元気よく行ってしまった。どうなることやら。

 その翌々日、また同じ場所で掃き掃除をしていたら『やあやあ』と声がかかり、見るとヒョッコリ先生だった。
『おや、もう帰って来たんですか』
『コロナ撲滅隊の事かい。あんなの日帰りだよ。子供たちはオリンピックを見た、と大喜びしてた』
『そりゃよかったけど、僕なんかも小学生の時に見た前の東京オリンピックは印象に残ってますからね』
『そうかあ。ワシは戦中でオリンピックが中止になったのを覚えてるからなぁ』
『(ウソつけ。勘定が合わないだろう。まっ何歳かしらないけど)ところで本当に間近で見られたんですか』
『キミも分かってないな。セーリングったって随分沖でやってるからね。海岸から見れば遠くの波間にセールがゴチャゴチャ見えるだけだからどこが先頭か競り合ってるのかなんかわかりゃしないんだよ。でも子供たちは大はしゃぎだし、例の「かかれ」も周りの大人に大人気でね。思い出になったろうな』
『(バカみたいと思われただけだろ)それはよかった。ところで県境は無事超えられたんですか』
『それがね。相模湖渡航作戦まではうまくいったんだが、次の交通手段がバスしかなくてさ、おまけに直接湘南まではいけなかったんだよ。行ける所まで行って厚木についたんで電車に乗れた』
『(何も考えてないあんたらしいよ)そうですか。で、帰りもそうしたんですか』
『それは無理だった。もう相模湖までは辿り着けない』
『(少しは計画くらい立てろよ)どうしたんですか。東京経由ですか』
『キミも甘いな。県境をまたいたらだめじゃないか。特に東京は』
『(珍しく良心的じゃないか)で、どうやったんですか』
『東京都との県境はまたいではいけないが、宣言の出ていない静岡県ならば超えてもいいんだ』
『(また自分勝手なことを)へェー、すると反対側の』
『そう、御殿場に行ったんだ。今はそこから峠越えで富士急富士山駅に行ける』
『ハア。(子供たちは迷惑だったろうな)大変でしたね。で、あの子達のナントカ防衛軍とかいうのはどうなったんですか』
『あのね、それはもう解散した』
『えっ、もう止めたんですか』
『それがさ、オリンピック見たつもりになってすっかりセーリングに憧れちゃってね。ああいうのやりたいって話になって今は山中湖のジュニア・セーリング・スクールに行ってるよ。今度はフィフティーン・ドリフターズになったんだそうだ』
『(バカバカしい、全員集合かよ。要するにオッサンの思い付きに振り回されてるのか)あれは何だったんですか』
『キミ、チョット聞いてくれ。チャーリーってのは自閉症なんだ。キミが少し関わったピッコロやマリリンの親は不法滞在外国人だ。他は生活保護を受けてたり親のDVで一緒に暮らせないような子達だよ。もう登校拒否になってるし。あの子らに少しでもアイデンティティをもたせてやりたくてね。だからこの間の交通費とか今度のジュニア・セーリング・スクールはワシが負担してる』
『(知らなかった。ずいぶんえらい人じゃないか)そうだったんですか』
『おォ、そうだ。キミはクルーザーに乗ってるよな』
『(何で知ってんだ、前に話したかな)はい』
『今度、ドリフターズを連れてどこか島まで行ってくれないか』
『(また面倒なことを)いいですよ。神津島でも行こうかって話してましたから』
『それはいい。是非頼む。あの子らの力で航海できたらいい思い出になって自信もつく』
『わかりました!』
 いつもは半分不信に思う先生の言動だが、今日は少しさわやかな気持ちになって航海計画でも練ってみようかと楽しく酒が進んだ(自宅で)。 そうか、フィフティーン・ドリフターズね。
 ・・・・待てよ、ドリフターズ。漂流者。15少年漂流記・・・。ちょっとでも真に受けたオレがバカだった。ちゃんと断ろう。

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地球が狂った ケムラー戦記

2021 MAY 26 0:00:19 am by 西 牟呂雄

 4月に芽を出したジャガイモが季節外れの霜で大きくならない。連休中に植えたキュウリが全滅し、苗を植え替えさせられる始末。5月だというのに早くも梅雨入りだがアジサイはまだだ。ネイチャー・ファームをやっていると今年は違うのが実感できる。季節が早いと言えば早いが、その落とし前のように大雨が降ったりしている。そして東京が雨だというのに喜寿庵はカンカン照りだ。

 目を楽しませてくれる花はたくさん咲いているが、こいつらもやはり勘違いしたのか。
 アヤメは花札では5月の絵柄で、それは旧暦の5月だからいまの季節に花を咲かせるのはいかにも早すぎる。
 他の雑草も咲き出した。しかし梅雨明け前の花といのはいかにも儚げな淡い色をしていて、例えば藤の花なんかはたくさん咲くから美しいが、一房だけだったら思わず『オイオイしっかりしろよ』と声をかけたくなるのではないか。
 桜もそうだ。一輪ではねぇ。
 偶然見つけた名前も知らない雑草はそんな感じだった。

雑草?

 ところがのんびり花を眺めていたら、足元で異変が起こっていた。
 毛虫の大群が降ってきたのだ。欅の木があるのだが、どういう生態なのか木の高いところで孵化して、成長すると蜘蛛の糸のようなものを出して地上に降りて来る。地表につくと、この姿にしては結構な機動力を発揮して移動し、樹木に取り付いては葉を食べてしまうのである。生意気にも好みがあるらしく、栗・つつじ・柿、そしてキュウリだ。
 念のため見回ると、わっ、ツツジが2本ほど食い尽くされているではないか。
 その有様をお見せしたいが、あまりにおぞましい光景に到底載せる勇気がない。誰も読んでくれなくなりそうなので、地上移動中の一頭だけの姿がこれだ。

ギャー!

 モスラの幼虫でさえもう少しかわいい。これが集団で行進しているところやビッシリと取り付いているところなど、誰も見たくはなかろう。
 羽化したらさぞ邪悪な色の蛾にでもなって再び我々を不快にさせるだろう。仮にケムラーと名付け殲滅作戦に取り掛かった。
 まずはホームセンターに行き、毛虫除去の殺虫剤を探したがない!お店の人に聞くと、今年は毛虫が大発生して売り切れと言うではないか。車を飛ばして他所に行きやっと数本を手に入れた。その時に注意されたのだが、素肌に触れると被れて帯状疱疹のようになってしまうとか。

ケムラー・コンバット用特殊戦闘服

 それから戦闘服(草刈りの時に着る)に身を固め、両の手にケムジェットを携え、二丁拳銃のガンマンよろしくケムラー軍団に立ち向かった。
 相手の動きが鈍いのでか大いに戦果が期待できる、『死ね!死ね!』とばかりに正面の大群が待つツツジ戦線に向い、戦闘2時間でこれを制圧。次に栗の木エリア(3年前に植えたからまだ低い)を急襲してそこを撃破。途中、地上移動中のケムラー輸送部隊を踏み殺し、植え替えたばかりのキュウリをレスキューした。戦うこと3時間、我が軍の圧勝に終わった。

 翌日、昨日の戦果を確認にバトル・フィールドを点検すると・・・こっこれは!敵は失地を回復しつつあるではないか。やはり地球は狂い出している。環境激変に備えて種の保存本能が働き大発生したのかもしれない・・・あれ、人間は?

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6月6日 追記

真っ白

真っ白、あのケムラーが・・・。

こっち来るな

戒厳令下のヨットやゴルフ

2021 MAY 9 21:21:34 pm by 西 牟呂雄

 人々はオリンピックを見たくないのだろうか。このチャンスを逃すと、例えば僕はナマでオリンピックを見ることはもうないだろう。そのせっかくの機会よりも自粛疲れによるドンチャン騒ぎの方が優先するのだろうか。池江選手につまらんSNSを送るな!
 居酒屋で酒類禁止とは、かの悪法である禁酒法時代のアメリカだな。この禁酒法によってアル・カポネが大儲けし、その後のマフィアの隆盛のきっかけになった。そうなる前にライフ・スタイル、ビジネス・モデルを変えてしまわないと、と知恵を絞ったが、何も湧かなかった。
 海は密にならない。ヨットは常に風を受けている。晴れてさえいればいやというほど日光を浴びる。コロナなんかねぇ。

オォ!

 でもって油壷に来てみれば,運悪くというか何というか快晴で虹まで見えるのに強風波浪注意報。ほとんどの船は外に出られずご覧の有様。クルーもヒマを持て余していた。ここは緊急事態でも蔓延防止でもないので店で酒が飲める。うちの船の連中は近くのお寿司屋さんに行ったらしいが、僕はキャビンで本を読んでいた。
「アッお久しぶりでーす」
 明るい声がして人が一人入ってきた。見たら若い女性で誰だか知らない人だ。
「えーと、みんな出ちゃって誰もいないよ」
「あたし分かりますか」
「ごめんなさい、誰だっけ」
「高校生の時に一度お目にかかってますよ」
「そうなんですか。そりゃ失礼しました」
「あたし就職して後輩になりました」

 一瞬の間が空いた。僕の最初の勤め先は荒っぽいことで知られる素材メーカーで、タコ部屋に押し込んだようにコキ使う。そこにこんな可愛らしいお嬢さんが勤めることは想像の範疇を超える。
「なんだってそんな無謀なことを・・・」
「昔お目にかかった時に伺ったお仕事の話が面白くて学校の先輩を訪ねたんです。そうしたらその先輩たちもみんなキレッキレであたしも行きたいなと」
「ふ~ん」
 目の前のお嬢さんが高校生の頃と言えば東南アジアをウロウロして随分危ない目にあっていた頃かな。キレッキレとはどういう意味だろう。そういえば同僚や先輩にブチギレする人物がたくさんいたが、そういう人という意味ではなさそうだ。
「で、今は何をなさってるの」
「✖✖製造所で△△課にいます」
「それは□□係ですか」
「いえ、▼▼係の方です」
 いや驚いた。僕が40年前にいた職場ではないか。しかし、時代は違っているに違いない。僕がいた頃はそれはそれは酒浸りの凄まじく野蛮な職場だったから、このようなお嬢さんに務まるはずはない。恐る恐る聞いてみる。
「○○○○の習慣はまだ続いてますか」
「噂には聞きましたが3年前には廃止されました」
「△▽△はまだ出入りしてますか」
「毎月いらっしゃいます。コロナのせいで接待はされなくなりました」
 やはり昔とは違うな。そしてそれは進化とか改革とかいう過程を経て世の中にアジャストした結果だから、僕も別に寂しいとも懐かしいとも思わない。デジタル化でもIT革命でもいい。ただモノ造りのスピリットだけは残してほしい。
 いろいろ話していると、随所にその片鱗が感じられて嬉しかった。そして改めて尋ねた。
「結婚されても続けますか」
「そのつもりなんですが、私は総合職キャリアなので転勤がつきものですよね。会社が配慮してくれるかどうか。今の彼は専門職キャリアなのでほとんど転勤はありませんから」
 そこだよな。彼女がキャリアを積むと、例えば子育てなんかが全部彼女の方にのしかかってしまうと無理が生じる。家族の協力、行政の補助、ご主人の理解、会社の配慮、そして何よりも子供さんの幸せが担保されなければ。社内結婚でもしたら勤務地が九州と北海道になることも、或いはどちらかが外国になってしまう可能性だってありうる。僕らの頃は家庭の状況も何も、紙切れ一枚でどこへでも行くように訓練されてしまった。本人の希望もクソも無かったものだ。
 暫くしたらクルーが帰ってきた。このあたりは緊急事態でも蔓延防止でもないから全員出来上がっていて絵にかいたような酔っ払いだらけ。乗り遅れた僕はあまり酒が進まず、ひと眠りして夜半に喜寿庵に移動してしまった。お嬢さんがんばんなさい、と声をかけて。お嬢さんはクルーの娘さんだった。

無残 戦死したキュウリの墓標

 一つには先日の霜にやられかけたネイチャー・ファームが気になったせいもある。東名高速で御殿場を経由すると、今は東富士五湖道路に直接乗れるようになったので、港から2時間はかからない。
 翌朝、早速ファームの点検に行くと丹精込めたつもりのキュウリが枯れているではないか。どうもここの土壌はキュウリと相性が悪い。
 今年新たにチャレンジしたニンジンは芽を吹いた。
 ニンニ君ことニンニクはやはり難しく歩留まり5割。
 ダイコンは順調。ジャガイモは霜害から復活。

新企画キャロット・フィールド

 キュウリの戦死に頭に来たのでゴルフに行く。ホームコースに行ったところ、何と駐車場はギッシリで東京のナンバーも多いではないか。だが、ここも密にはならないしお風呂は帰って入りゃいいんだからどうってことはない。酒も飲まないし。
 それはいいが、できるかどうか。するとある2サム組の了解が得られたのですぐぬ出られた。女性は金髪のオバサンでもう一人は角刈りのアンチャンという恐ろし気な二人、オバサンのエラソーなしゃべり方から店の従業員を伴ってのプレイらしかった。
「二人とも下手ですし、コイツはコースに出るのは今日が初めてなんです」
 エラいのと組まされたもんだ。で、結論から言うとオバサンは本当に下手、アンチャンは驚くべきポテンシャルを持っていた。小柄なのだが何かのスポーツ経験者らしく、ドライバーで280ヤード以上は飛ばす。しかし3ホールのうち2ホールはOBだった。スコアはメチャクチャ.しかしロングホールで2オンしそうになり、更にバーディーを取りそこなった時は慌てた。オレの30年の精進は何だったのか。
 僕はと言えば、この日は苦手なホールはドライバーを打った後はPWとか7番Iとか1本だけでやるというゴルフに徹した。ロング・ホールだけはスプーンとクリークを使ったが、最近の課題は寄せのマズさだからだ。ピッチ・アンド・ランを磨くつもりだったがスコアは不思議なことにいつもながらのものになる。
 オバサンはヒーヒー言いながら、アンチャンは元気に走りながら、それなりに楽しくプレイできた。アンチャンにはマナーをいちいち教えてあげると大変に感謝されて、終わった時には又やりましょう、と約束した。

 こうして東京周辺をグルグル周っていれば戒厳令下でも遊んでいられる。かえって自由な僕の長いGWだったが、エート、仕事の方は・・・。

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ポツン 考

2021 APR 9 5:05:27 am by 西 牟呂雄

 膝丈まで伸びた笹やススキを刈り込んで畑を少し広げ、いよいよジャガイモを撒いた。今年のテーマは共生である。昨年の暮れに得意のニンニ君(ニンニクのこと)を15株植えて、その周りをキュウリ・ナス・ピーマンでガードし、外側をジャガイモで囲むという布陣だ。

 ついでに崖の傍の密林のようになった所もかなり開墾した.すると奥では自生したおそらく藤の木が複雑に絡みついた、なにやらグロテスクな姿になっていた。枝分かれしてまたその枝同士がからみつき注連縄のようになっていた。面白いのでわざわざ切ってベランダに転がしてある。活け花のオブジェにでもどうだろう、差し上げますよ。
 このエリアはこの70年くらいはだれの手も入っていない崖の上で、この直下で桂川が大きく蛇行している。切り立った岩の上に土がこびり付いたような痩せた所で、こんな見事な造形をつくるのにも感心させられる。
 この辺りはもうウチの敷地ではないらしく、妙な杭が打ち込んであるのだが面倒を見る人はいない。さりとて開墾しても勝手に耕す訳にもいかず意味はない。まぁ、今後の自然観察のフィールドにでもなるかどうか。ヒマに任せてログ・ハウスでも建ててみようか。

開墾スペース

 冬枯れのポッカリ空いたスペースはなぜか足元は柔らかく、長年積もった落ち葉が腐葉土になっている。この先はもう切り開けそうにないな。
 振り返って母屋を見やろうとして目に留まったものがあった。今まで気が付かなかった訳ではないが、こっちのアングルからみると実に場違いなものが生えている。何だろう。僕は植物は疎いのだが、ユッカという葉っぱの先が硬くとがった観葉植物が伸びそこなったような不格好なブッシュである。
 元々このあたりは檜を植えていたのだが、日当たりが悪くなり過ぎて数年前に十数本を伐採した場所だ。おそらくこいつは檜の根元にこっそりと根を張って小さくなっていたのに、檜が切り倒されていきなり人前に出てしまい、そうなったら実に居心地が悪く、植物だから殻に閉じこもることもできずに困っているに違いない。
 それは人間だって場違いな思いは散々味わうし、いつも何かが足りない思いはする。こんなことではいけないと反省はしても、無理に一歩踏み出せば体に一部が持っていかれるような気がして破れかぶれになる。

ポツン

 えっ?お前のことだ?失礼しました。度胸任せのアドリヴ一発だけじゃだめだよね。
 ともかく今まで目もくれていなかったが急に愛おしくなって水をやりましたとさ。
 大きく育てよ(これ以上育つかどうか不明だが)。
 その右隣に、昨年植林した桜が今満開である。
 ソメイヨシノよりも遅い仙台枝垂れで、高地なので今頃が見頃である。やっと根付いたと言うのか精一杯咲いて見せるのだが、どことなく儚げなのが気に入っている。『礼』と命名している。
 そしてこいつもポツン、なのだ。いっそもう2~3本並べてやった方が華やかだったかも知れない。ところが物の弾みでネコヤナギを挿し木してしまった。
 そして桜が咲き柳が新芽を吹く景色を私が見ることはできそうもない・・・。
 しかしこうも思うのだ。孤独であるからこそ美しくもある。この桜は好んで孤独になったわけではないが、気高く孤高を保ってこその映え方もあるだろう。

 よし、こいつを見てもう一花咲かせる気になったぞ。でっ、何しようか。

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