Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 和の心 喜寿庵

レイモンド君再び

2021 OCT 14 9:09:36 am by 西 牟呂雄

 赤トンボが増えたなー、という初秋の山荘で道路を掃いていた。何しろ物凄い落ち葉だから今からやっても12月には絨毯を敷いたようになってしまう。
 向こうから大小二つの人影がやって来る。そろそろかな、と思っていたヒョッコリ先生だ。すると小さい方はレイモンド君だろう。だいぶ歩くのが早くなってる。
『やあやあやあ、いい季節になったね』
『紅葉はまだですけど涼しくはなりましたね。レイモンド君上手に歩けてるじゃないですか』
『うん。まだ喋れないけど表情がはっきりしてね』
『ミャミャミャグイー』
 僕はすっかり友達になって仲良しだから、レイモンド君はヨチヨチと寄って来た。抱っこしてやろうとすると、いやがって門の中に入ろうとする。弱ったな。
『なんだ、レイモンド。お庭で遊びたいのか』
 オイオイ、オレのうちの庭だろう。この先生は勝手に入って来るけど。これは・・・。
『そうか。ちょうどいいや。キミ30分ほど見ててくれないか。そこまで行ってくるから』
『(そーら、おいでなすった。いつもの手だ)エート、ちょっと忙しいんで』
『ナニ、すぐ帰って来るよ。どうせ今だけだろ、忙しいの。普段はヒマそうじゃない』
『(勝手に決めんな)はァ、まぁ、ね』
『ホッコンホッコンヨー』
『あっ、コラコラ勝手に行っちゃだめだってば』
『じゃあよろしく』
 やられた。まっ、しょうがないか。久しぶりだし。
 前に喜寿庵に来た時は全くのオギャーだったから庭を覚えているはずはないが、トコトコと入って行ってしまった。ここは崖の上だから放し飼いにはできない。追いかけていくと芝生の真ん中に立っていた。

彼岸花

 そして庭の隅っこに咲いている彼岸花を見ていたと思うと、そっちに突進した。ヤバい、あの花はちょうどレイモンド君と高さが同じだ。『キャ~』とか言いながら花びらを掴んでしまった。『コラコラコラ、ダメー』と駆け寄ったが遅かった。一緒に遊んでいるつもりかケラケラ笑いながら引きちぎってる。口に入れるのはかろうじて止めさせた。
 暫く花びらで遊んでいたが、それに飽きるとネイチャー・ファームの方に行こうとする。あっちのピーマンとナスもまた等身大だからマズい。何しろこんな赤ちゃんに毛が生えた程度のチビでも、その機動力と破壊力は凄い。オトナが気が付かないところで想像もしないようなことをやりたがる、できもしないくせに。しょうがなくて少し離れた公園に連れて行った。

 そしてそこでもレイモンド君の探求心と行動力は怯まなかった。どうも動く物が好きらしく、車が通ると『キャー』と駆け寄り、ブランコにしがみつき、すべり台によじ登ろうとする、いずれもできないのだが。目を離すとトコトコ行ってしまうので、いつも傍にいないとヤバい。これではまるで犬の散歩だ。
 ところがしばらくすると、僕とレイモンド君の間では会話が成り立っていることに気が付いた。『はい、何か貰ったら、ありがとうございます、だよ』というとペコッと腰を折って『あーがあ~~』これが、ありがとうございます、のようなのだ。他にも、どっこいしょ、とか、ヤッター、と言っている(ような気がする)ではないか。
 待てよ、これはテレパシーじゃないのか。口には上手く出せないが、超能力で伝えているのではなかろうか。僕は凡人だたら、ひょっとしてレイモンド君はエスパーなのかもしれない。
 試しに、心の中で『レイモンド君。君はエスパーなのかい』と念じてみると、そうだよと返事をするではないか!
『ダー、ダー』
 これはロシア語の肯定だ!何で僕がロシア語を使うのを知ってるんだ。ん?

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地球が狂うと人も狂う

2021 AUG 13 0:00:14 am by 西 牟呂雄

えっ!

 

 
 喜寿庵で春先に散々ケムラーなるイモ虫の大発生と戦い、どうもおかしいと感じたのだが、ここへきてネイチャー・ファームにも異変が起きていた。
 これは昨年に植えた通称スーパー・ニンニ君と新規開拓のキャロット・フィールドで採れた最初の一本である。
 ニンニ君の不細工さはいいとして、このニンジンの奇形的小ささは何だ。原寸はニンニ君で親指大、ニンジンは人差し指といったところか。丹精込めたつもりでこれはないだろう。
 頭に来てニンジンは洗ってそのままかじったら、一応甘みのあるニンジンではあった。
 実はその前に収穫したダイコンは更に惨めなゴボウのような代物でとても料理には使えず、全ておろしたがおそろしく不味かった。
 それだけではない。庭木も変だ。

鮮やかな楓と藤

 これが去年までの鮮やかな母屋の庭にある楓である。藤の花との対比が美しい。そして秋になるともっと色が濃くなってすごみが増す。
 この楓はかれこれ70年くらいはここにしっかりと根を下ろし、一族みんなで愛でてきた。
 それが、今年も芽吹いたことは芽吹いたが梅雨時あたりから葉が落ちて来た。

どうした?

 それが、梅雨明けの段階ではご覧の有様。残りの葉もハラハラ落ちて、これはそのうち枯れてしまうのだろうか。
 そういえば藤の花も今年は色が変だった。淡いというか、元気がないのだ。
 植木屋の師匠に見てもらうと、手の施しようがない、とのこと。ただ、全部落ちた後に芽が出てくれば復活するかもしれないとか。
 裏木戸の横の茂みも、葉の色が濃淡が出て、だんだら模様のようになっていて、これは本当にヤバいことなのかもしれないと不安になった。長雨や酷暑は世界中で災害を起こし、日本中で土砂崩れが頻発し、コロナは一向に収まらないどころか次々に変種が現れる。一体何ができるのだろう、次は。

影のところの上が変色している

  
 狂ったのは喜寿庵周辺だけではない。僕の生活もメチャクチャになってきた。
 一部の読者の方はご存じだろうが、ドクター・ストップを喰らって断酒生活となり早や3週間が経とうとしている。別に頭が狂ったのではないが、睡眠に障害が出た。眠れない。
 寝付きが悪いのを酒で何とかしていたのだろうか、明け方まで眠れず、浅い眠りに落ちても2時間で目が覚めてしまう。そのまま昼間にウトウトすることもなく仕事をし(テレワークだが)、夕方6時頃に突如として睡魔が襲って来る。しめた、と思って寝てみても30分で目が覚める。
 一方、今までの生涯で急性スイ炎と大腸癌の二度の入院・治療期間中以外、ほとんどの朝を耐えがたい二日酔いで目覚めていたので、断酒による爽快な朝が迎えられるかと思ったが、これは不規則睡眠のせいなのか全く期待外れだった。睡眠不足のせいか全然さわやかな朝ではない。手足の疲れがとれていない。断酒によるストレスだとしたら本末転倒ではないか。
 まぁしかし、内臓の疾患はこの年になると命取り。せっかくだから緊急事態宣言中は断酒を続けよう。そして僕の頭がどのくらい狂うのか、この際見極めてみよう。
 えーと、ゆうべは何を食べたのか・・・思い出せない。

あれっ

 ところが、である。翌週になって楓をよく見ると、儚げではあるものの新芽が可愛らしく出て来たではないか。これはどういうことなのか!
 時系列だけで言うと、春先に芽吹いてすぐに紅葉になり、梅雨空けに散り始めて真夏に新芽が出たことになる。
 そういえば7月中、まだミンミンゼミも鳴く前にカナカナが鳴いた。これを聞く頃は赤とんぼが舞って『あっもう夏が終わるな』となぜか物悲しかったのを思い出す。
 地球も喜寿庵も、僕の目や頭まで・・・。何が正確な真実なのか。

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ヒョッコリ先生 地球を守る

2021 AUG 1 1:01:36 am by 西 牟呂雄

 喜寿庵の裏木戸を箒で履いていたところ、何やら異様な集団が行進してきた。何だあれは。そして近づいてきた時に先頭のオッサンの表情が見て取れた、ヒョッコリ先生だ!
 向こうも僕に気が付くとニコニコしながら歩調をとってこちらに来るではないか。
『全た―い、止まれ!』『ザッ、ザッ』
 子供じゃないか。全部で15~6人の小学生が2列縦隊になっていてきちんと止まった。一番後ろにいる二人は僕が少し勉強を教えていたピッコロ君とマリリンちゃんだ。元気だったんだな。
『いよう、しばらくだね』
『どうも。先日東京でお孫さんを預かりましたよ(迷惑だったけど)』
『うん。息子から聞いた。ごめんね、急な話で』
『(全くだ)いえいえ、またどうぞ。かわいいですね。ところでなにやってんですか』
『ウン?ああ、こいつ等?地球防衛軍コロナ撲滅隊の精鋭メンバーだ』
『(またバカなことを)なんですかそれ』
『何しろ収束の兆しが見えない中、連日オリンピックで熱戦を繰り広げている選手を激励し、いくら緊急事態宣言をしてもだらけて感染者が増えている都会人に喝を入れようと思ってね』
『地球ナントカ軍でもいいですけど、どうして子供なんか集めてるんですか』
『集めたんじゃないよ。この子達が、どうして感染が減らないの、せっかくのオリンピックなのに選手がかわいそうだ、って言いだしたんだ』
『それは殊勝な心掛けですが、何をするんですか』
『チャーリー!』『イエッサー』
 突然先生が大声を張り上げ、一番前のやや大きめの子が返事をしたのでびっくりした。チャーリーと呼ばれたやや年上(小学校5~6年くらいか)の男の子は2列に並んでいる子供達に向って声をかけた。
『戦闘準備!対象、目の前のオジサン』
 すると後ろに並んでいた子供達は一斉にゴーグルを付けてリュックサックから何かを取り出した。
『かかれ!』
 子供達が僕を取り囲み一斉に何かを吹きかけた。驚いて、
『オイオイ、やめてくれよ。なんだいこれは』
『うん、消毒用のアルコールなんだ。これでオリンピックの出場選手を感染から守ってやるんだ』
 先生が答えた。何のマネだこりゃ。
『だってバブル方式で選手には近づけないし、試合は無観客でしょう』
『何も東京のアリーナでやる競技ばかりじゃないだろ。自転車のロードレースはこの辺を通ったんだよ。我が部隊はセーリングのサポートに行くんだ』
『だけど県をまたいでの移動は自粛しないと』
『県境をまたがなけりゃいいんだろ』
 また始まったぞ。このオッサン、宇宙を創ったといって妙な実験をしたり、戦前の記憶があるようなことを言い、マルクスを語り戦争を総括してみせた奇人だ。今更驚かないが。
『イイカイ、セーリングは神奈川の湘南でやる。ここ山梨県と神奈川は隣接していて県境は相模湖の湖面を横切っている。だから我が軍はそこをボートで超える。即ちまたぐわけではない』
『(実にどうでもいい子供だましの理屈だ。まぁ相手は子供だからいいか)はあー。まっ気を付けて行ってきてください』
『うん。それでは出発する。ぜんたーい、進め!』
 先生と子供達はそのまま元気よく行ってしまった。どうなることやら。

 その翌々日、また同じ場所で掃き掃除をしていたら『やあやあ』と声がかかり、見るとヒョッコリ先生だった。
『おや、もう帰って来たんですか』
『コロナ撲滅隊の事かい。あんなの日帰りだよ。子供たちはオリンピックを見た、と大喜びしてた』
『そりゃよかったけど、僕なんかも小学生の時に見た前の東京オリンピックは印象に残ってますからね』
『そうかあ。ワシは戦中でオリンピックが中止になったのを覚えてるからなぁ』
『(ウソつけ。勘定が合わないだろう。まっ何歳かしらないけど)ところで本当に間近で見られたんですか』
『キミも分かってないな。セーリングったって随分沖でやってるからね。海岸から見れば遠くの波間にセールがゴチャゴチャ見えるだけだからどこが先頭か競り合ってるのかなんかわかりゃしないんだよ。でも子供たちは大はしゃぎだし、例の「かかれ」も周りの大人に大人気でね。思い出になったろうな』
『(バカみたいと思われただけだろ)それはよかった。ところで県境は無事超えられたんですか』
『それがね。相模湖渡航作戦まではうまくいったんだが、次の交通手段がバスしかなくてさ、おまけに直接湘南まではいけなかったんだよ。行ける所まで行って厚木についたんで電車に乗れた』
『(何も考えてないあんたらしいよ)そうですか。で、帰りもそうしたんですか』
『それは無理だった。もう相模湖までは辿り着けない』
『(少しは計画くらい立てろよ)どうしたんですか。東京経由ですか』
『キミも甘いな。県境をまたいたらだめじゃないか。特に東京は』
『(珍しく良心的じゃないか)で、どうやったんですか』
『東京都との県境はまたいではいけないが、宣言の出ていない静岡県ならば超えてもいいんだ』
『(また自分勝手なことを)へェー、すると反対側の』
『そう、御殿場に行ったんだ。今はそこから峠越えで富士急富士山駅に行ける』
『ハア。(子供たちは迷惑だったろうな)大変でしたね。で、あの子達のナントカ防衛軍とかいうのはどうなったんですか』
『あのね、それはもう解散した』
『えっ、もう止めたんですか』
『それがさ、オリンピック見たつもりになってすっかりセーリングに憧れちゃってね。ああいうのやりたいって話になって今は山中湖のジュニア・セーリング・スクールに行ってるよ。今度はフィフティーン・ドリフターズになったんだそうだ』
『(バカバカしい、全員集合かよ。要するにオッサンの思い付きに振り回されてるのか)あれは何だったんですか』
『キミ、チョット聞いてくれ。チャーリーってのは自閉症なんだ。キミが少し関わったピッコロやマリリンの親は不法滞在外国人だ。他は生活保護を受けてたり親のDVで一緒に暮らせないような子達だよ。もう登校拒否になってるし。あの子らに少しでもアイデンティティをもたせてやりたくてね。だからこの間の交通費とか今度のジュニア・セーリング・スクールはワシが負担してる』
『(知らなかった。ずいぶんえらい人じゃないか)そうだったんですか』
『おォ、そうだ。キミはクルーザーに乗ってるよな』
『(何で知ってんだ、前に話したかな)はい』
『今度、ドリフターズを連れてどこか島まで行ってくれないか』
『(また面倒なことを)いいですよ。神津島でも行こうかって話してましたから』
『それはいい。是非頼む。あの子らの力で航海できたらいい思い出になって自信もつく』
『わかりました!』
 いつもは半分不信に思う先生の言動だが、今日は少しさわやかな気持ちになって航海計画でも練ってみようかと楽しく酒が進んだ(自宅で)。 そうか、フィフティーン・ドリフターズね。
 ・・・・待てよ、ドリフターズ。漂流者。15少年漂流記・・・。ちょっとでも真に受けたオレがバカだった。ちゃんと断ろう。

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地球が狂った ケムラー戦記

2021 MAY 26 0:00:19 am by 西 牟呂雄

 4月に芽を出したジャガイモが季節外れの霜で大きくならない。連休中に植えたキュウリが全滅し、苗を植え替えさせられる始末。5月だというのに早くも梅雨入りだがアジサイはまだだ。ネイチャー・ファームをやっていると今年は違うのが実感できる。季節が早いと言えば早いが、その落とし前のように大雨が降ったりしている。そして東京が雨だというのに喜寿庵はカンカン照りだ。

 目を楽しませてくれる花はたくさん咲いているが、こいつらもやはり勘違いしたのか。
 アヤメは花札では5月の絵柄で、それは旧暦の5月だからいまの季節に花を咲かせるのはいかにも早すぎる。
 他の雑草も咲き出した。しかし梅雨明け前の花といのはいかにも儚げな淡い色をしていて、例えば藤の花なんかはたくさん咲くから美しいが、一房だけだったら思わず『オイオイしっかりしろよ』と声をかけたくなるのではないか。
 桜もそうだ。一輪ではねぇ。
 偶然見つけた名前も知らない雑草はそんな感じだった。

雑草?

 ところがのんびり花を眺めていたら、足元で異変が起こっていた。
 毛虫の大群が降ってきたのだ。欅の木があるのだが、どういう生態なのか木の高いところで孵化して、成長すると蜘蛛の糸のようなものを出して地上に降りて来る。地表につくと、この姿にしては結構な機動力を発揮して移動し、樹木に取り付いては葉を食べてしまうのである。生意気にも好みがあるらしく、栗・つつじ・柿、そしてキュウリだ。
 念のため見回ると、わっ、ツツジが2本ほど食い尽くされているではないか。
 その有様をお見せしたいが、あまりにおぞましい光景に到底載せる勇気がない。誰も読んでくれなくなりそうなので、地上移動中の一頭だけの姿がこれだ。

ギャー!

 モスラの幼虫でさえもう少しかわいい。これが集団で行進しているところやビッシリと取り付いているところなど、誰も見たくはなかろう。
 羽化したらさぞ邪悪な色の蛾にでもなって再び我々を不快にさせるだろう。仮にケムラーと名付け殲滅作戦に取り掛かった。
 まずはホームセンターに行き、毛虫除去の殺虫剤を探したがない!お店の人に聞くと、今年は毛虫が大発生して売り切れと言うではないか。車を飛ばして他所に行きやっと数本を手に入れた。その時に注意されたのだが、素肌に触れると被れて帯状疱疹のようになってしまうとか。

ケムラー・コンバット用特殊戦闘服

 それから戦闘服(草刈りの時に着る)に身を固め、両の手にケムジェットを携え、二丁拳銃のガンマンよろしくケムラー軍団に立ち向かった。
 相手の動きが鈍いのでか大いに戦果が期待できる、『死ね!死ね!』とばかりに正面の大群が待つツツジ戦線に向い、戦闘2時間でこれを制圧。次に栗の木エリア(3年前に植えたからまだ低い)を急襲してそこを撃破。途中、地上移動中のケムラー輸送部隊を踏み殺し、植え替えたばかりのキュウリをレスキューした。戦うこと3時間、我が軍の圧勝に終わった。

 翌日、昨日の戦果を確認にバトル・フィールドを点検すると・・・こっこれは!敵は失地を回復しつつあるではないか。やはり地球は狂い出している。環境激変に備えて種の保存本能が働き大発生したのかもしれない・・・あれ、人間は?

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6月6日 追記

真っ白

真っ白、あのケムラーが・・・。

こっち来るな

戒厳令下のヨットやゴルフ

2021 MAY 9 21:21:34 pm by 西 牟呂雄

 人々はオリンピックを見たくないのだろうか。このチャンスを逃すと、例えば僕はナマでオリンピックを見ることはもうないだろう。そのせっかくの機会よりも自粛疲れによるドンチャン騒ぎの方が優先するのだろうか。池江選手につまらんSNSを送るな!
 居酒屋で酒類禁止とは、かの悪法である禁酒法時代のアメリカだな。この禁酒法によってアル・カポネが大儲けし、その後のマフィアの隆盛のきっかけになった。そうなる前にライフ・スタイル、ビジネス・モデルを変えてしまわないと、と知恵を絞ったが、何も湧かなかった。
 海は密にならない。ヨットは常に風を受けている。晴れてさえいればいやというほど日光を浴びる。コロナなんかねぇ。

オォ!

 でもって油壷に来てみれば,運悪くというか何というか快晴で虹まで見えるのに強風波浪注意報。ほとんどの船は外に出られずご覧の有様。クルーもヒマを持て余していた。ここは緊急事態でも蔓延防止でもないので店で酒が飲める。うちの船の連中は近くのお寿司屋さんに行ったらしいが、僕はキャビンで本を読んでいた。
「アッお久しぶりでーす」
 明るい声がして人が一人入ってきた。見たら若い女性で誰だか知らない人だ。
「えーと、みんな出ちゃって誰もいないよ」
「あたし分かりますか」
「ごめんなさい、誰だっけ」
「高校生の時に一度お目にかかってますよ」
「そうなんですか。そりゃ失礼しました」
「あたし就職して後輩になりました」

 一瞬の間が空いた。僕の最初の勤め先は荒っぽいことで知られる素材メーカーで、タコ部屋に押し込んだようにコキ使う。そこにこんな可愛らしいお嬢さんが勤めることは想像の範疇を超える。
「なんだってそんな無謀なことを・・・」
「昔お目にかかった時に伺ったお仕事の話が面白くて学校の先輩を訪ねたんです。そうしたらその先輩たちもみんなキレッキレであたしも行きたいなと」
「ふ~ん」
 目の前のお嬢さんが高校生の頃と言えば東南アジアをウロウロして随分危ない目にあっていた頃かな。キレッキレとはどういう意味だろう。そういえば同僚や先輩にブチギレする人物がたくさんいたが、そういう人という意味ではなさそうだ。
「で、今は何をなさってるの」
「✖✖製造所で△△課にいます」
「それは□□係ですか」
「いえ、▼▼係の方です」
 いや驚いた。僕が40年前にいた職場ではないか。しかし、時代は違っているに違いない。僕がいた頃はそれはそれは酒浸りの凄まじく野蛮な職場だったから、このようなお嬢さんに務まるはずはない。恐る恐る聞いてみる。
「○○○○の習慣はまだ続いてますか」
「噂には聞きましたが3年前には廃止されました」
「△▽△はまだ出入りしてますか」
「毎月いらっしゃいます。コロナのせいで接待はされなくなりました」
 やはり昔とは違うな。そしてそれは進化とか改革とかいう過程を経て世の中にアジャストした結果だから、僕も別に寂しいとも懐かしいとも思わない。デジタル化でもIT革命でもいい。ただモノ造りのスピリットだけは残してほしい。
 いろいろ話していると、随所にその片鱗が感じられて嬉しかった。そして改めて尋ねた。
「結婚されても続けますか」
「そのつもりなんですが、私は総合職キャリアなので転勤がつきものですよね。会社が配慮してくれるかどうか。今の彼は専門職キャリアなのでほとんど転勤はありませんから」
 そこだよな。彼女がキャリアを積むと、例えば子育てなんかが全部彼女の方にのしかかってしまうと無理が生じる。家族の協力、行政の補助、ご主人の理解、会社の配慮、そして何よりも子供さんの幸せが担保されなければ。社内結婚でもしたら勤務地が九州と北海道になることも、或いはどちらかが外国になってしまう可能性だってありうる。僕らの頃は家庭の状況も何も、紙切れ一枚でどこへでも行くように訓練されてしまった。本人の希望もクソも無かったものだ。
 暫くしたらクルーが帰ってきた。このあたりは緊急事態でも蔓延防止でもないから全員出来上がっていて絵にかいたような酔っ払いだらけ。乗り遅れた僕はあまり酒が進まず、ひと眠りして夜半に喜寿庵に移動してしまった。お嬢さんがんばんなさい、と声をかけて。お嬢さんはクルーの娘さんだった。

無残 戦死したキュウリの墓標

 一つには先日の霜にやられかけたネイチャー・ファームが気になったせいもある。東名高速で御殿場を経由すると、今は東富士五湖道路に直接乗れるようになったので、港から2時間はかからない。
 翌朝、早速ファームの点検に行くと丹精込めたつもりのキュウリが枯れているではないか。どうもここの土壌はキュウリと相性が悪い。
 今年新たにチャレンジしたニンジンは芽を吹いた。
 ニンニ君ことニンニクはやはり難しく歩留まり5割。
 ダイコンは順調。ジャガイモは霜害から復活。

新企画キャロット・フィールド

 キュウリの戦死に頭に来たのでゴルフに行く。ホームコースに行ったところ、何と駐車場はギッシリで東京のナンバーも多いではないか。だが、ここも密にはならないしお風呂は帰って入りゃいいんだからどうってことはない。酒も飲まないし。
 それはいいが、できるかどうか。するとある2サム組の了解が得られたのですぐぬ出られた。女性は金髪のオバサンでもう一人は角刈りのアンチャンという恐ろし気な二人、オバサンのエラソーなしゃべり方から店の従業員を伴ってのプレイらしかった。
「二人とも下手ですし、コイツはコースに出るのは今日が初めてなんです」
 エラいのと組まされたもんだ。で、結論から言うとオバサンは本当に下手、アンチャンは驚くべきポテンシャルを持っていた。小柄なのだが何かのスポーツ経験者らしく、ドライバーで280ヤード以上は飛ばす。しかし3ホールのうち2ホールはOBだった。スコアはメチャクチャ.しかしロングホールで2オンしそうになり、更にバーディーを取りそこなった時は慌てた。オレの30年の精進は何だったのか。
 僕はと言えば、この日は苦手なホールはドライバーを打った後はPWとか7番Iとか1本だけでやるというゴルフに徹した。ロング・ホールだけはスプーンとクリークを使ったが、最近の課題は寄せのマズさだからだ。ピッチ・アンド・ランを磨くつもりだったがスコアは不思議なことにいつもながらのものになる。
 オバサンはヒーヒー言いながら、アンチャンは元気に走りながら、それなりに楽しくプレイできた。アンチャンにはマナーをいちいち教えてあげると大変に感謝されて、終わった時には又やりましょう、と約束した。

 こうして東京周辺をグルグル周っていれば戒厳令下でも遊んでいられる。かえって自由な僕の長いGWだったが、エート、仕事の方は・・・。

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ポツン 考

2021 APR 9 5:05:27 am by 西 牟呂雄

 膝丈まで伸びた笹やススキを刈り込んで畑を少し広げ、いよいよジャガイモを撒いた。今年のテーマは共生である。昨年の暮れに得意のニンニ君(ニンニクのこと)を15株植えて、その周りをキュウリ・ナス・ピーマンでガードし、外側をジャガイモで囲むという布陣だ。

 ついでに崖の傍の密林のようになった所もかなり開墾した.すると奥では自生したおそらく藤の木が複雑に絡みついた、なにやらグロテスクな姿になっていた。枝分かれしてまたその枝同士がからみつき注連縄のようになっていた。面白いのでわざわざ切ってベランダに転がしてある。活け花のオブジェにでもどうだろう、差し上げますよ。
 このエリアはこの70年くらいはだれの手も入っていない崖の上で、この直下で桂川が大きく蛇行している。切り立った岩の上に土がこびり付いたような痩せた所で、こんな見事な造形をつくるのにも感心させられる。
 この辺りはもうウチの敷地ではないらしく、妙な杭が打ち込んであるのだが面倒を見る人はいない。さりとて開墾しても勝手に耕す訳にもいかず意味はない。まぁ、今後の自然観察のフィールドにでもなるかどうか。ヒマに任せてログ・ハウスでも建ててみようか。

開墾スペース

 冬枯れのポッカリ空いたスペースはなぜか足元は柔らかく、長年積もった落ち葉が腐葉土になっている。この先はもう切り開けそうにないな。
 振り返って母屋を見やろうとして目に留まったものがあった。今まで気が付かなかった訳ではないが、こっちのアングルからみると実に場違いなものが生えている。何だろう。僕は植物は疎いのだが、ユッカという葉っぱの先が硬くとがった観葉植物が伸びそこなったような不格好なブッシュである。
 元々このあたりは檜を植えていたのだが、日当たりが悪くなり過ぎて数年前に十数本を伐採した場所だ。おそらくこいつは檜の根元にこっそりと根を張って小さくなっていたのに、檜が切り倒されていきなり人前に出てしまい、そうなったら実に居心地が悪く、植物だから殻に閉じこもることもできずに困っているに違いない。
 それは人間だって場違いな思いは散々味わうし、いつも何かが足りない思いはする。こんなことではいけないと反省はしても、無理に一歩踏み出せば体に一部が持っていかれるような気がして破れかぶれになる。

ポツン

 えっ?お前のことだ?失礼しました。度胸任せのアドリヴ一発だけじゃだめだよね。
 ともかく今まで目もくれていなかったが急に愛おしくなって水をやりましたとさ。
 大きく育てよ(これ以上育つかどうか不明だが)。
 その右隣に、昨年植林した桜が今満開である。
 ソメイヨシノよりも遅い仙台枝垂れで、高地なので今頃が見頃である。やっと根付いたと言うのか精一杯咲いて見せるのだが、どことなく儚げなのが気に入っている。『礼』と命名している。
 そしてこいつもポツン、なのだ。いっそもう2~3本並べてやった方が華やかだったかも知れない。ところが物の弾みでネコヤナギを挿し木してしまった。
 そして桜が咲き柳が新芽を吹く景色を私が見ることはできそうもない・・・。
 しかしこうも思うのだ。孤独であるからこそ美しくもある。この桜は好んで孤独になったわけではないが、気高く孤高を保ってこその映え方もあるだろう。

 よし、こいつを見てもう一花咲かせる気になったぞ。でっ、何しようか。

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レイモンド君と再会した

2021 APR 1 0:00:24 am by 西 牟呂雄

 ある日メールが届いたが差出人に心当たりがない。大変に丁寧な文面ではあるがどこか要領を得ない。『○○では父がいつもお世話になっており恐縮しております』などと書いてあるが、〇〇は喜寿庵のあるところで、誰かの世話なんかした覚えはない。なんだか事情があってどこやらに出張が決まりどうしたこうした、終わりの方に『コロナ禍によりほかに頼る親族もおらず、愚息の面倒を見ていただきたく』と結ばれていた。
 恐らくこの就職難に、誰かの勤め先をお願いするメールかなと思った。ご時世がらそういう頼まれごとはうまくいくはずもなく、参ったなと放っておいた。
 しばらくした休日にインターホンが鳴る。
「はい」
「あっ、こんにちわ。ワタクシ先日メールいたしました✖✖✖と申します」
「・・・エート」
「○○で父がお世話になっている」
「(あの不審なメールの人か。若い紳士じゃないか)ちょっとお待ちください」

何か背負ってる

と言ってドアを開けて、仰天した。小さな子供を連れていて、それはあのレイモンド君ではないか!するとヒョッコリ先生は✖✖✖という名前でこの人はその息子さんか、先生はレイモンド君のことを孫だと言ってたっけ。
「どうも初めまして」
「あのー、この子はレイモンド君ですか」
「はい。以前お世話になった」
「(お世話じゃねーよ。無理やりおしつけられたんだよ)いやー大きくなって」
「はい、もう一才で歩きます。実はですね、私たちは共働きなんですが女房が体調を崩しまして云々ーー(中略)--コロナも第三波が収まりませんし」
 要するに東京には頼る親族もおらず父(ヒョッコリ先生のこと)に相談したら僕のところに行けと言われたという事らしい。あのメールはそういう意味だったのか、冗談じゃない。ところでレイモンド君がやけに大きなリュックを担いでいるのが気になって『何を大事にそんな大きな物を背負ってるのですか』と聞くと、お世話になった時の使い捨ておむつと着替えだと言うではないか。いやこういうのには弱いんだ、オレ。更に青年も大きな包みを持っていて、それはレイモンド君用のごはんなのだそうだ。一日3回3日分が小さなタッパーに小分けにされていておやつも付いている。バナナを小さく切ったものとパンのようなお菓子だ。
 で、結論を言うとこの子を3日間あずかることになってしまった、折り悪く僕一人なのに。
 初日。1才の子供とはベビーからキッドになるころだろうか、レイモンド君は歩くようになってはいたが、スタスタとはいかない。そもそもこの年頃の記憶はどれくらい持続するのだろう。僕とレイモンド君は4カ月前には友達になった。知り合いの飼い犬は半年前に会った僕を覚えているが、1歳児の方はあやしいもんだ。抱っこしたら泣き出す。

 さっそく昼時になったので、お粥のようなパックと何かの煮込みみたいなやつをあっためて食べさせる。これはよく食べた。ミルクを温めてくれと哺乳瓶を渡されたのだが、温めるのが面倒なので常温の牛乳を飲ませると、すぐに寝てくれた。ここまでは順調だったのだ。
 異変は昼寝から覚めた時に起こる。『ふぎゃー!うんぎゃー!ぎゃあー』と泣き出したのでおむつをかえようとして仰天した。ひどくお腹を壊している。マニュアルに従ってペット用の敷物を敷き詰めウェットティッシュを傍らに脱がせたのだが、のたうち回るレイモンド君には手を焼いた。しかしまあ、こう言ってはナンだが我々のように酒・タバコ・刺激物・その他怪しげな薬や病気には侵されていない赤ちゃんだから、そんなに毒性のある排泄物でもなかろうテキトーにやっておいた。
 待てよ、ご時世は緊急事態の真っ最中だし万が一ここでコロナになられたらエライことになる。思い直してお風呂にお湯を張りぬるめのシャワーでレイモンド君を磨き上げた。そしてその状況は夜まで続き、その度に僕もお風呂に浸かること三度に及んだ。おかげでレイモンド君はすっかりお風呂で遊ぶことに慣れて楽しそうにしていたが。
 しかし一緒にお湯に浸ってしみじみとおもうが、この小さな体の中に大人と同じ五臓六腑がちゃんとそれぞれの繊細な機能を働かせ、小さな頭の中で脳が必死に成長しようとしているのだ。人間は何とも繊細な、いや生き物は皆見事な自然の造形か神の思し召しか。夜の7時にはグッスリ寝てしまった。

 2日目。あいかわらずお腹の調子が悪い。僕がミルクをそのまま飲ませていたが、検索してみると大人よりもはるかに腸の短い赤ん坊は常温の牛乳を直接飲ませると途端にお腹がゆるくなるらしい。『赤ちゃんムギ茶』なるものを買いに行った。無論レイモンド君を抱っこしてだ。意外と重い。
 本当にそうだったようで、昼寝からは元気になりヨチヨチ歩き回る。ところが危ないことがどういうものかまだ分からないので、何でもかたっぱしから手に取っては口に入れようとする。目が離せないとはこのことだ。
きのうお風呂に何回も一緒に入ったのでもうすっかり打ち解けてニコニコしているが、テーブルの上にあるものを取ろうとしたり、ピアノの鍵盤を叩こうと一生懸命に背を伸ばしたり。食べて寝て泣いて一日が過ぎた。夜半に帰宅した家人は散らかりまくった部屋のあまりの惨状と、そもそも何でキッドが僕と過ごしているかを理解できず唖然とした。説明するのにはもともと無理があるので納得がいかないのは仕方がないが、レイモンド君の寝顔を見てあきらめてくれた。

 3日目。どうも落ち着かない様子だ。僕は親切に仲良くやっているのだが、レイモンド君の方は『このオッサン、色々と世話を焼いてくれるけどいつも一緒だったパパやママとは関係ないんじゃねえの』という感じで一人で手当たり次第に引っ張り、叩き、投げるという破壊本能全開。参った僕は外に連れていくことにした。
 近所の公園ではよく保育園が園児を連れてきているし、それだけでなくお母さん方が子供たちをつれてシートを広げてお弁当を食べていたりする、この非常事態宣言下にもかかわらず。
 靴を履かせて公園まで抱っこして行った。地面に降ろしてやると、これが裸足で部屋の中を歩き回るのとは勝手が違うらしく、素人が初めてスキーを履いた時のようなペンギン歩きだ。この時も何組かのママ友グループがいたので僕もシートを広げ二人で座った。
 だがどうも変だ。何故か注目を浴びているようで居心地が悪い。オッサンとキッドの組み合わせがそんなに珍しいか。ハッと時が付いたが、僕はさっきコンビニで反射的に買ったビールを手に持っている、これか・・・・。
 一方レイモンド君は少し年上の子供達が遊んでいる方に一生懸命近寄っていく。ママ達は一段と険しい視線をオレに送っている。おいおい、オレは誘拐犯でもアル中でもないぞ。仕方なくシートを畳みレイモンド君を『ホラ、おウチに帰ろう』とそこらのママ達に聞こえるようにわざと大声で言い、担ぎ上げ退散したのだった。
 夕方連絡が入ってこれから父親が迎えに来るとなった。食料もちょうど3日分食べ尽くしたし、正直ヤレヤレといったところか。
 日が暮れる頃、例の青年がやって来た。
「いや、大変お世話になりました。申し訳ありません」
「(そりゃ大変に決まってる)いやいや、こちらも楽しかったですよ。レイモンド君じょうずに歩いてましたよ」
 そこへチョコチョコと歩いてきたら満面の笑みで青年にしがみついた。それっきり離れやしない。やっぱり寂しかったんだな。そう思うと、あれだけ面倒見た身としては微笑ましい、いやうらやましいかな。
 レイモンド君はチャイルド・シートに据わって(括りつけられて)帰っていった。車が動き出したときに一瞬困ったような表情になったようだったが、まっ気のせいだろう。また遊ぼうね。
 アッ、きょうは仕事をサボッちまった。あしたから働かなくちゃ。

喜寿庵紳士録 レイモンド君

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喜寿庵紳士録 レイモンド君

2020 DEC 24 9:09:00 am by 西 牟呂雄

 そろそろ会いたいなあ、と思う先輩・友人がいる。今年はコロナ騒ぎで春からは全く会えなかった。
 するとコロナ安全圏だった喜寿庵で珍しく新たに知り合った友人レイモンド君とはまた会う機会が来た。ここにもクラスターが発生してしばらく来られなかったが、ほとぼりも冷めたようなので久しぶりに来てみると。
 クラスター発生直後は本当に人っ子一人歩いていなくて住民がどこかに行ってしまったかのようだったらしいが、こういう田舎の地域は感染経路が分かりやすいので集中的に抑え込みが効いて3週間たった今では平穏な日常が戻っていた。
 ところでヒョッコリ先生は子守の手がなくなるとレイモンド君を連れて来る(先生は友人でもなんでもない)。困ったことにこの人はスマホも持ってないらしい。電話してアポを取ることなどなくいつもフラリと現れるのだ。そもそもどこに住んでいるのかも僕は知らない。もしかしたら僕がここにいるのを確かめてからやって来るのか。
 レイモンド君は何故か正装をしていた。

蝶ネクタイをしてる

「やあやあやあ、寒くなってきたね」
「(あたりまえだろ)もう年末ですよ。レイモンド君こんにちは」
「実はこの子の両親がコロナになっちゃってね」
「えっ、ミャンマーに行ったんじゃないんですか」
「(あわてて)そっそうなんだ。それで帰国したらイチコロで罹ったらしいんだ」
「(見え透いた嘘だな)2週間隔離された後にですか」
「そこんところは良くわからない。それでね、この子のお宮参りに連れていく人がいないということなんだけどね」
「(アンタが行きゃいいだろう)ほう、先生は忙しいんですか」

滋養様

滋養鳥居 高さ1m手造り

                                     
「キミの家の庭に手作りの鳥居があるよねぇ」
「(人のウチのことをよくしってるな)あぁ、私設の滋養神社のことですか」
「そうそう。キミが一人で踊りを奉納してるだろ」
「(ギクッ見られたのか)それより先生の実験室のある八幡様にいけばいいじゃないですか」
「いや、あそこはマズいんだ。僕がウロウロしているところを見られたくない。ということでちょっと半日この子を預かってお参りをさせてやってくれ」
「(そら来た)今日は僕も忙しいんですが。チョット出掛ける用事もあって」
「よしよし、レイモンド。一緒に連れてってもらえ。これね、寝ちゃったときの着替えとおむつと離乳食なんだけどね。まぁ、すぐ迎えに来るから」
 例によって勝手なことを言って赤ちゃんを僕に抱かせた。やられた。
 レイモンド君とは3月ぶりで、心なしか少し締まったというか痩せたのかもしれない。
 ともあれ、お宮参りということで滋養鳥居の前に行き二人で踊りを奉納した。何の踊りにするか迷ったが七五三が過ぎたので仕方がない、七五・三十五から七五三を引いて十五の奉納踊りを舞った。
 さてどうしよう。久しぶりのレイモンド君は、やはり僕を忘れてしまったのだろう、初めは珍しそうに踊っていたが(抱かれていただけだが)家の中に入った途端泣き出した。わかった、3か月前に会った時はテレワークばかりだったので無精髭を生やしていて今と表情が違っているのだ。それはともかく、僕はいつかこの日が来ると思い秘密兵器を準備していた。今時の若い親御さんは与えることはないおもちゃ、デンデン太鼓だ。ところがせっかくやって見せてもちっとも面白がらず口に咥えようとしてばかり、危ないから取り上げるとまたフンギャーである。
 ようやく落ち着いたところで二度目であるが喜寿庵を案内した。やはり覚えてはいないようでキョロキョロしている。
 座らせてみると何かに掴まって立ち上がろうとする。ソファーの端っこを一生懸命つかもうとするのだ。これが大変で、まだハイハイも覚束ないから寄っていこうとするのに前に進めない。「アギー」とか「グー」とか言いながら匍匐前進していた。挙句の果てにつかみそこなってゴンッと音を立てて顔面を床にぶつけた。
『フンギャー』
 今度は抱っこしても泣き止まない。仕方ないのでこの際おしめも替え、ミルクの飲ませたらゲップと一緒に少し吐いてしまった。ついでに着替もしたら機嫌が直った。フー。

笑ってる

 それから二人で遊んだが,赤ちゃんというのは愛されることが商売だ。従って無償の愛しか受け付けないのではないのか。僕は勝手に友達になったと思っていたが、愛情は一方向でもありうるが、友情は双方向でないと成り立たない。
 ヤンキー娘が早くに結婚して子供を産むが、さっさと離婚して次の男ができる。するとその相手が連れ子を虐待するという痛ましい事件が結構多い。次のアンチャンにしても赤ちゃんもしくは3歳未満の子供はかわいいものの、無償の愛情は注げない。泣いたりグズッたりするのを我慢できなくなって思わず手がでる。チビちゃんに友情を持とうとしても応えてもらえないのだ。
 僕は既に(レイモンド君は忘れていたようだが)友達になる段階はクリアしたので、後は覚えてもらって親しみを感じてもらえばいいわけだ。幸い僕の方はヒマで時間だけはあるから毎日でも一緒にいられればすぐ慣れてくれるのに。しかし次にいつ会えるのかは分からない。
 分かった。そもそも赤ちゃんと前期高齢者とでは流れる時間が違うのだ。赤ちゃんは記憶力が発達していないから毎秒毎秒新しいことの洪水に浸かっているようなもので、こちらが心待ちにして再会してもワン・オブ・ゼムでしかない。。友情を育むにも時間はかかるだろう。
 まっ、あと10年くらいかけて親友になろう。それまで生きてるだろうか、オレは。

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喜寿庵周辺クラスター発生!

2020 DEC 12 0:00:14 am by 西 牟呂雄

 2020年はコロナに始まりコロナで終わる。この間、無念にもお亡くなりになった方に深く哀悼の意をささげるとともに、最前線で治療に当たっておられる医療関係の皆様に心から感謝と敬意を表します。
 今年の初めに僕の信仰する『滋養様』からのお告げを書いています。

令和二年(令和初) 滋養神社お告げ


 これが、コロナ禍を全く予言できずに、なおかつ内容も全部と言っていいほどの外しっぷり。100点満点中0点という前代未聞の結果に終わりました。滋養様の力が落ちたのか、予言の受け手であるワタシの霊力が落ちたのか。とにかく自粛に塗り込められて1年が過ぎようとしています。
 それにしても、ノストラダムスでもエドガー・ケイシーでも著名な予言者でこの厄災を予言したと思われる字句はないのだろうか。かつて流行ったものをザッと検索しても今のところ見当たらない。従って滋養様や私だけが外したわけでもない、と言えるかな。

 それが、ですぞ。今までほとんど陽性者がいなかった我が山荘・喜寿庵のある地域でついにクラスターが発生したのです。市街地の中心部にスナックが固まっている所がありますが、そこの従業員とお客さんに陽性者が出ました。聞くところによると、その後どういう経路か知らないですが高校に飛び火して教員も生徒にも患者が出たそうです。
 かのスナックは結構繁盛していて前後一週間に数十人の接触者がいた、感染したお客さんはゴルフ帰りにカラオケをやって陽性になった(そのゴルフ場は私のホーム・コース)、街は全く人通りがなくなった、コンビニもスーパーも買い物する人がいない、らしいのです。幸い喜寿庵周辺には陽性の人はいません。しかしあの辺は極端に人口密度が低いので参考にならず、週末に行くのも憚られます。この冬のスノボのリフト待ちや4人乗りクアッド・リフトは密じゃないのか(スノー・リゾートまで車で30分の近さ)。しかしねぇ・・・、ここ吉祥寺でも近くの病院でクラスターは発生したし、週末の人出はそんなに減ってないようですよ。

 飲み会は全く無くなり、半年は山籠もりでリモート暮らし、船には3回程乗ったが航海には出ず、運動は少しゴルフをやっただけ、癌は再発していませんでした。それどころか体重は増え、中性脂肪の値が危険水域にまで上がり、日本ハムファイターズは最下位争いの5位。読書量は変わらず、文庫・新書を中心に活字だけは追っています。
 しかし、あの酔っぱらってやるドンチャン騒ぎがなくなったのは悪いことばかりでもないですね。ひどい二日酔いと自責の念にかられることはありませんし疲労感も大したことない。翌日「こんなこと口走ってたぞ」と言われて青ざめる心配もない。

 直近見つけた数字では足元のコロナ・ピーク対応で全従業員(事務方)の30~50%がテレ・ワークだ、とあります。すると日頃から同僚などと気軽に話す機会をあまり持たない人達の方にストレスがかかると言われています。こういうタイプの人は承認要求が満たされなくなって心理的負担が重くなる。今までは従来柄の長時間労働によってそのストレスから逃れていた、という理屈です。
 実に農耕社会の形態が色濃い日本の企業文化です。しょっちゅう天気を気にしつつ、左右に目配りしながら黙々と作物の育てるプロセスは村社会=企業文化の等式が成り立ち得ます。
 余談ですが、実はこの常時仕事中のようなダラダラ長時間勤務こそ日本のお家芸であり、高度経済成長の原動力だったと筆者は考えています。この方式は白人にも黒人にもできない。黄色人種でも日本人だけです。しかしもう通じない。ダラダラやる仕事はデジタル化されるからです。
 話を戻して。上記のストレスをためやすい人というのはおそらく口を開けば自慢話ばかりしてウザがられるオヤジですね。同じ話を何回もループしたりもする。突然キレて怒鳴り散らすパターンもある。従ってリモートになると顔を合わせなくてすむので周りは喜ばしいでしょう。コロナ騒ぎで暴露された弱さをアジャストするヒントは足元にあるはずです。
 ダイナミックな仮説ですが、いきなり全部をリモートにしても生産性は上がらない、むしろ下がると思います。まず大きな組織では成果が偏ってしまう。小さい組織はある程度は効き目があります。ですがそれがリモートの効果では全くない。そもそも小さい組織は初めから無駄な管理コストの削減幅は小さい。スタート・アップ企業でもそうだと思いますが、ベンチャーの成功率は30%以下ですからデータも少なすぎます。稼ぐことはできてもユニコーンにはならないベンチャーは中小企業のことですしね。
 それでは「比較的大きな組織でイノベーションを起こす」というテーマだったらどうでしょう。これも人によるのです。例えばテレワークで家に引きこもってインスピレーションを得る人もいれば、人と喋りながらヒントを得るタイプもいる。自説に固執して他の意見を全く受け入れないのはどっちの環境でもダメ。
 それどころか家に籠ったがためにかえって仕事に縛られて勝手に長時間労働にのめり込むかもしれない。挙句に家庭崩壊になったり精神のバランスを崩したり。
 すると両方の中間を取るような『ワーク・ステーション』のようなスペースができたりして。郊外・あるいはリゾート地の傍にIT環境の整ったフリー・スペース(図書館の自習室をゆったりとさせた感じか)に出勤し、そこには全く異業種の人達が集まるでもなく仕事したりメシを食ったり。疑似職場というかバーチャル・オフィスというか分かりませんが、そこに出勤するのはどうでしょう。

 それで『お前はどうするんだ?』ですか・・・・。働かないのがいいけど。
 それで喜寿庵にも行けないんじゃ今週末はどうしようかな。

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喜寿庵紳士録 不思議な酔っ払い

2020 DEC 1 0:00:13 am by 西 牟呂雄

 先日ホーム・コースでゴルフをした。喜寿庵から車で10分だから、天気を見てから電話で『今日はやれますかね』と聞いてうまく空いていれば回らせてくれる。ラッキーなことに『ラウンドはちょっと混んでますけど午後ハーフなら入れますよ』とのことなので、ハーフだけやったのだ。
 そういう時はロッカーも使わず、そのまま近くの温泉(これはゴルフ場から5分)に浸かって帰る。
 気分よく温泉にも浸かってお惣菜を買いにスーパーに寄った。まだ3時半過ぎである。駐車場で一服していたら、見るからに怪しげなオッサンがフラフラ歩いて来る。手には日本酒のパック、定まらない視線、これはヤバい。ところがそのままこっちに向ってくるではないか。その時の僕のいでたちは、ゴルフ用にしているチノパンにポロシャツ、ジャケットを羽織っていた。オッサンは短く刈り上げた髪に真っ黒な顔、ジャンパーの背中には何やら不気味なデザイン、業界でいう極めて頭の悪いファッションである。そして『先輩(チンピラが話かける常套句)先輩』と距離を縮めた。なんだこいつは。
『レッド・ツェッペリン知ってるっしょ』
はぁ~~。目は完全に据わっている。
『まあ知ってるけど』
『あのね、ジミー・ペイジも腹が出たんだって。ケケケケケケ』
 いや、これは相当危ない。どうも年格好は似たところではないだろうか。さっさと切り上げよう。ところがオッサン、ニターっと笑いながら、
『いや~ハード・ロックやってたんでしょ~』
 等とヤケにうれしそうなのだ。

ディープ・パープル

『あぁ、ちょっとやってたよ。ディープ・パープルとかさ』
これがまずかったようで、オッサンは満面の笑みを湛え『ジャッ、ジャッ、ジャー、ジャジャ、ジャジャ-』とスモークオンザウォータのイントロをエア・ギターで口ずさむ。左手を見ると正しいコード進行を抑えているではないか。
 普通だったらここでベース・ランニングを僕が口ずさんで二人で共演するのだが、今は相手が悪い。しょうがなくて愛想笑いをしながら車へ逃げ出した。

 落ち着いたところで暫し考えた。こんな山の過疎地でもハードロックのファンはいるだろう、それはいい。昼から酔っ払いがいるのも良しとしよう。
 問題はそのイカレポンチがゴルフ帰りにジャケットを羽織っている紳士の私に何故寄ってきたか。そして昔バンド野郎だったことを見極めたように話しかけたのか、である。幾つかの理由を胸にてを当てて考えた。
➀ 私のたたずまいが、どんなアホでも受け入れてくれそうなほど慈愛に満ちていた。
➁ 一目で私がアート系の殺気を放っていた。
 どちらも違うだろう。考えたくもない第3の原因を出さざるを得まい。
➂ その昔バンド屋だったオーラが出ていた。
 仮に、仮にそうだとしても何十年も前の雰囲気がいまだに残っているとは思いたくもない。しかしながら目下のところ思い当たるとすれば、当時の仲間とは今もしばしば付き合い、ギター談義や矢沢永吉のモノマネに明け暮れているから、往年の悪癖が滲み出てしまうのかも知れない。
 であればこれは非常にマズい。なぜならこのコロナ禍でここのところそういう集まりが無いにもかかわらずバカなオーラが消えない、ということか。いかん。早くこの邪気を払わねば。
 早速、そういった仲間にメールした。各カクシカジカ云々だったのでキミ達との付き合いは改めたい、今後はもう少しアカデミックな話をするように、とね。
 すると奴ら(3人)の反応たるや反省のカケラもないふざけたものだった。英語でロックンロールの歌詞を寄越す奴、その話しかけたオッサンの素性を推測し現在の職業を予想する奴、それは酔っ払った私が姿見の鏡を見ていたのだろうと言った奴。私は深いため息とともにロクな仲間がいないことを悟った。
 前期高齢者を踏み出した今、心新たに第二の人格に昇華することを誓わざるを得ない。但し、今さらこの年で修復不能なものは除く、例えば酒癖とか。
 まずはブログから・・・。

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