Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 2021年の安寧

将来型適正コミニュケーション限界 

2018 NOV 29 0:00:41 am by 西室 建

 フレックスは当たり前、在宅勤務どころか勤務地ですら自由、AIの進化で生産性はアップ、行きつくところは、一日2~3時間働いて後はご自由に、となるかな。
 その仕事も、例えば現代アメリカ小説家であるリチャード・パワーズは部屋の壁にバカでかいディスプレイを架けてベッドに転がりながらキーボードをカチャカチャやって執筆しているとか。そうしてモノを書くと『自分の身体があるような内容な、世界とつながっているような切断されているような』気分なのだと言っている。ちなみにこの作家は大変頭のいい秀才で、難しい文章を書ける人だから仕事ぶりは真似はしない方がいい。
 しかし、こういう話は必ず後になってダークな部分がクローズアップされてしばしば大騒ぎになる。一つ心配になったことがある。この際賃金は下がらない前提で考える。

 それは、いくら(賃金が下がらずに)時間が余っても『もっと遊ぶ』とはならない、ということだ。なぜなら、今でさえロクに働かない奴はヒマを持て余しているし、遊ぶ奴は忙しくても遊んでいる。『もっと遊べ』というのは上からやってもダメで、これは消費には結びつかない。プレミア・フライデーなどあっという間に跡形もなくなった。
 一方で本業が楽になると、もっと稼ぎたいとばかりにアルバイト的に仕事を増やす人も出てくるはずで、こういうのは概して優秀かつ貪欲、専門性の高い人だろう。通信手段はどんどん安く便利になり、すべてが『居ながらにして』できるようになれば、そういう人達はジャンルを問わずに兼業するのも当たり前。極端な例を言えば時差のないエリアでは国境を越えて日本ー東南アジアで兼業する。3時間の範囲を許容するならインド・ロシアのウラル地方まで可能だ。
 すると新しい遊び方がでてくるのか、オジさんには見当もつかない。
 先日はある報道で遠く離れている同好の人達がスカイプでそれぞれの顔を見ながらビール等を飲む”仮想飲み会”があることを知った。5人くらいでやっている人達は、それなりに楽しそう。しかし僕がやるとしたら相手は誰だろう。
 結局そういう相手は思い浮かばない。僕の世代まではそうまでして一緒に飲まない。そういう飲み会ができる人達はコミュニケーションの物理的距離とは切り離されているのだろう。
 僕は定期的に集る「会」を幾つか持っているが、エリアと密接にかかわっている。僕達旧世代は遊んだり飲んだりする際もそう簡単に空間を飛び越えられないことが分かる。
 これからの老境に差しかかって、たった一人では暮らせないことは確かだが、居心地の良いエリア・コミニュケーションは、一体どの位のスペース人数が適正なのか不安だ。

 閑話休題、人間の社会的対応識別能力は150人なのだそうだ。
 ちょっと逸れるが、どのくらいの人数と付き合ってきたか考えてみよう。僕の小学校は1学年200人以上。同じ学年で仲良く遊んだことのある奴は学年ごとに5人くらいか。そのペースで行くと学生時代に『親しくつきあう』というような間柄が100人?その後は仕事にもよるが転勤有りで想定すると、単に挨拶をするだけではなく何度も酒席を共にする程度のお付き合いをした相手は300人で。合計400人。その他親族等全部ひっくるめて500人を超えることはないだろうと思う。
 前述の150人という識別数は、京大の山樫総長の試算、及びイギリスの人類学者であるロビン・ダンバーによって導き出された個人の対応可能な社会の個体数だ。ざっと50年で500人とつきあい、そのうち150人が都度『親しく』し、『最後に残る』くらいか。それが目下の僕は150人も頻繁には合う人はいない。試しに数えてみると、近い親族を含めても100まで達しなかった。むしろ『あのときああいう奴がいた。会うこともないだろうが二度と顔も見たくない』ような奴ばかりを5人も思い出して気分が悪くなった。

 またまた話が飛んでいくが、今日のロボット技術の発達により将来着ぐるみ型の自走式介護スーツのようなものができるとする。寝たきりにはならず、立って歩け、骨折もせず、シモの世話も自動化・衛生化されてしまうと一層ボケが進む。するとこれから識別できる人数は確実に減っていき仮に毎年1/√2(ルート二分の一)づつ減っていくと10年以内にヒトケタ(家族は除く)。昔話ばかりすることになると十人の顔はアイツとアイツか・・・。
 そういう輩が集団で暮らすとすると、それなりの嗜みが身に付くのだろうか。いじめをしない、とかね。予言めいたことを言えば『常識』に従って暮らし、日本が昔から大切にしてきた『慎み深さ』が大事になるのではないか。どっちにしたって誰かに管理されなければ生きてはいけないのはどこかで既に述べた。

 普段暮らす街はデパート・ターミナル駅まで10分。この利便性でマンションの車保有比率は半分以下。
 一方、山荘喜寿庵は歩ける範囲にコンビニはない。ゴルフ場や温泉まで車で10分、お弁当を買うHot Motto は車で5分。近所の車は一家に最低2台といった具合で、車で5分の距離を歩くことはなくなるようだ。歩いているのは散歩のオジサン・オバサンがせいぜい、従って人通りは益々少なくなり夜は歩いている人は滅多にいない。
 いよいよ体も効かなくなってしまえば所詮”見るだけ”で個人も社会も希薄な空気の中で漂ってしまう。
 そのとき東京と喜寿庵のどちらにいた方がバランス良くくらせるのだろう。

 ところが、だ。20年後にどんな通信手段が発達して便利さは増すものの、コッチの頭脳は桃源郷に遊ぶ頃。半径10m以内の世界で事足りる。わー!

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委員長のダブル(影武者)

2018 MAY 18 7:07:41 am by 西室 建

 もうすぐシンガポールで史上初の会談が行われる。どのような結果になるのか予断を許さない。
 アメリカもイスラエル大使館の移転で火が着いたらマジメにこっちをヤル気は薄まる、アジアの話は票にならないから。
 それを見据えて強気になったのか、親分(大陸)にケツを叩かれたのか、やるのやらないのとグズグズ言い出した。閣僚会談をすっぽかされた方はいい面の皮で気の毒でさえある。容認していた米韓演習が気に入らないなどは後付けに決まっている。
 もっとも関係者はかの国の手は読めてるのではないかな。。散々ゴネた後で理解を示したように振舞って好感度を上げるか、親分の力を借りて人のせいにして決裂するか。 
 だから日本は(水面下はともかく)ドッシリと構えていればいいのだ。蚊帳の外と揶揄する報道は全て工作と見て間違いなかろう。向こうも核実験場廃棄の取材に日本を入れないとか言ってくれてるんだからお手並み拝見。
 特に拉致問題に引っかけて接触を図るあやしげな輩は断固排除だ。

 それはさておき、ある時に気が付いた。これ、生え際が違うのじゃないか。
 眼鏡のアップの映像が出た時にも思った。にこやかな表情の時は眼鏡をしていなくて(実験成功で幹部と喜び合ったり、韓国芸能人を歓迎している時)逆に眼鏡をしている時の視線が鋭い(会議で演説している時や要人と会談している時)。
 これは・・・、と思って検索すると、本当かどうか知らないが影武者説は随分出回っていた。
 オヤジと違って時々演説するので声紋を取られているから喋りが入る時、即ち会談をする時は本物。手を振ったりする時は影武者ではなかろうか。その名も『斬首作戦』を発動されたら絶対に助からないから信憑性はある。
 現代の整形技術を以てすれば輪郭の似ている奴を同じ顔にするぐらいは可能だろう。そう考えるとヴェールを脱いだ時からあの不自然な太り方や特殊な髪型は、本物と影武者の見分けをつけにくくする工作だったりして。
 
 そこで考えたのだが、良く似ている東洋人を太らせ整形し刈り上げると影武者を量産することができるのではないだろうか。密かに100人位仕立て上げた贋物を送り込んで突如軍駐屯地に出現させ『今から首都に進軍演習をする』と言わせれば大混乱に陥るかもしれない。或いは『核を廃棄せよ』と宣言させる。国境に立たせる。第三国で秘密会談をしている映像を偽造して電波ジャックで流す。いや冗談ですよ、冗談。
 そもそも建国時からお爺さんが伝説のパルチザンを名乗ったが、これが戦勝国の仕掛け人GPU(ゲーペーウー)が仕込んだ替え玉だったという説は昔からあった。
 それが何を吹き込まれたのか戦争が始まって仕掛け人がドン引きしたため昔の親分を頼った。
 そのうち仕掛け人と親分が仲たがい始めるとその両者の間でしたたかに振る舞う構造が定着して「振り子理論」が確立したと見ている。ただし自身は不幸にも分裂したままになってしまったが。

 同じようなことがヨーロッパでも起こっていた。しかしその国が分裂した時に国民同士が戦争はしなかった。その余力すらなかったからだ。従って統一の際にも割とスムースに行ったが東アジアではそううまくいくだろうか。
 体制保障といっても一体何を保証するのか。〇〇連邦共和国となったとしても、まさか選挙でいきなり去就は決められないだろう。
 今更統一後も社会主義体制を保証しろも何もなかろうに。今まで国民の幸せなんか考えたこともないのだから、この場合の保障とはファミリーの生命・生活のことでしかない。兄貴もやっちゃってるし。
 ああまで露骨に世襲をしたからには、連邦共和国のあかつきにはいっそのこと元首にでも祭り上げてロイアル・ファミリーにしてしまう。そして余計なことをさせないでおくのはどうだろう。
 すると元々北と南は仲が悪いから派閥争いが始まって反日に拍車がかかったりして。

 それはそうと、そうなった時に影武者は失業するか消されるか。物真似芸人というのも考えられるが、成り立つとも思えない。喜び組はアイドル・グループとして芸能界デヴューがあるけれど。

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『ソサエティ5.0』とは

2018 MAR 17 16:16:09 pm by 西室 建

 閣議決定され内閣府が発表している『科学技術基本計画』のことである。

ソサエティ5.0(クリックして下さい)

 内容はネットで閲覧できます。狩猟時代・農耕時代・工業時代・情報時代に次いでやってくる超スマート社会を目指す、という構想だ。
 先日、さる講演を聞いたところ大量データ処理やデジタル経済の周辺技術は全地球規模で加速度的に発達していることに驚いた。アメリカばかりじゃなく至るところで開発が進む。インドのIT産業の凄さはたびたび現地入りして肌で感じているが、そのほかにもロシア・ベラルーシといったところからホットなイノベーションが次々に起きている。
 それらが、ヴェンチャーを通じ更に機能・付加価値を増やす事は誠に結構であるが、それを社会インフラとして発展させるのは我が国が最適な社会なのではないだろうか。
 第1にこれからの高齢化社会が「超スマート」社会を欲している。これから高齢者になり将来の衰えが目前にせまっている身としては切実にわかる。体は効かない目も悪くなる耳も遠くなる、の状況でも最低限の生活をする際には、このコンセプトの便利さは必要だ。
 昨年さる知り合いが長期に入院をされたが、看護師さんたちの猛烈な忙しさと入院患者の要望の多様さのギャップを目の当たりにした。こういうところに集中して投資することで社会コストが大幅に下がるだろう。
 第2に、この「ソサエティ5.0」社会では既存の農産物・工業製品の在庫が減るだろう。いらないものは作らないで済む、ビッグ・データにより消費の予測精度がはるかに上がる、また産物・製品の歩留まり向上する。従って無駄が著しく減らせるはずだ。しかもこれは日本人が一般的に持っている「もったいない」の精神にピッタリと平仄が合う。そしてコスト削減に効く。
 すでに十分安くなっている通信費をはじめ、あらゆるモノ・サーヴィスの価格が一段と破戒される。在庫の削減はそれぐらい大きいのだ。
 第3には、これらのデータを充分に活用し得る社会インフラがほぼ整っている。サーヴィスを受けるにはその公平性が必ず問われることになるが、都市部と過疎地の利便性の差はよほど極端な例を除けばそう大きくない。山の中や離島でドミノ・ピザが30分以内に来ない、と怒ってもしょうがないたぐいである。
 むしろ「ソサエティ5.0」社会においては、最近見られる田舎への移住や働き方改革によって東京への一曲集中が緩和されていくものと思われる。普通のサラリーマンが日本中どこででも仕事が見つけられ、通勤を伴わずに執務できるようなイメージが湧く。性差・年齢差もなくなっていくだろう。
 第4に現状様々な非効率を引き起こしている現象が避けられるようになる。卑近な例では災害の対処、救助手段、被災者の病院への搬送、交通事故対応、犯罪の予防、治安の安定といった諸問題の解決スピードが飛躍的に上がるはずだ(犯罪予防は難しいか)。
 それだけではない。役所の手続きや病院の待ち時間なども短縮される。或いは渋滞が減る、混雑が緩和される、といった日常の利便性にまで影響がある。
 そういった事象は今後労働人口が減り続ける我が国にとって経済的にも大きく貢献するはずだ。
 最期に、実現時点では確実にヘロヘロの老人になる筆者にとって有難いのは、その超スマート社会が極めて安心感をもたらすだろうことである。
 後顧に憂いが無くなるとでも言うのだろうか。
 あらゆるコストが劇的に下がれば、もうそんなに長くもない将来に思い悩むことはなくなる。
 一方でその頃の若者は、無償化した教育によってかえって多様化していくだろう。勉強しない奴は昔からしないが「ソサエティ5.0」には落ちこぼれは存在しない。妙な話だが、行きたくもない学校だったら行かなくて済むのでだ。
 AIのおかげで外国語が喋れなくともグローバルに活動もできる。

 ところで、オカミはこういう資料を丁寧に書くと『仕事』が終わったと思ってしまいがちだ。あとは予算を付けてオシマイ、民間でどうぞ、ってそうじゃないだろう。
 こういう社会が実現するには継続的な政策の後押しと、さらにその時点での政治にも十分な透明性・正統性があり、広く国民の声を聴き周知徹底する体制がなければ。単なるノリのポピュリズムや極端に偏ったものでないことも求められる。
 現時点ではいささか観念先行なのは仕方がない。ここで一旦地に足をつけなければ、単なる『儲け話のエサ』になりかねない。
 「ソサエティ5.0」は社会も変動させる。
 昨今の世界情勢をみるにつけ近未来でグローバリズムはそんなに普遍的な概念ではなくなるかもしれないのだ。EUの末路を見極めたい。
 考えても見て欲しい、自由だグローバルだと言っても国境が無くなった途端にデモクラシーそのものが霞んでしまうだろう。
 更に高齢者(近未来の私達)は本当は何を望むのか。誰がどうやって各種のそういった意見を救い上げられるのか。
 又、技術的には達成されるとしても、高齢者が使いこなせるシステムでなければ我々は奴隷化する。
 そしてその前提として高度な安全保障体制が緻密に組まれた平和が確保されなければならない。 
 
 そうなってこそモラルの高い「ソサエティ5.0」社会が実現するだろう。

2025年 AIを国民のベーシック・アセットに

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最近困ったあべこべの話

2018 FEB 5 22:22:58 pm by 西室 建

 討論番組で大嫌いな評論家が偉そうに「安倍さんに会ったら」「自民党の幹事長に会ったら」などと喋っていて不愉快になりつつ一点不安に駆られた。
 アメリカが憲法改正を言って来なくなったと言う。
 何しろ最近のアメリカはシリアにミサイルを撃っただけで、中東でも存在感は出せていない。エルサレムに大使館を持って行っても別にどうってことはない。未だに移転する時期は後ろずらしにしている。
 更に言えば、御存じとは思うがイスラエルは何百発もの核を持っているのだ。このモデルを東アジアで見立ててみると、恐ろしい話が現実味を帯びる。歴史・人口学者エマニュエル・トッドは『核は分散すれば誰も使えない。日本も核武装したらいい』と言った。 

 狂った国の指導者が本当に戦争を始めて、見せしめ的に核を日本に向けて発射した場合は米軍は即座に反応するだろう。但し全面戦争に巻き込まれかけた時点で、核の傘が日本を守ってくれない可能性は高い。外交力でどうなる話ではなかろう。
 憲法改正の論議は深まるだろうがまさか核武装まではできまい。国民のアレルギーが強すぎる。公明党も連立を離脱するだろう。
 米・中・露の核大国は三竦みのように、世界中でどこかが退くとどこかが刺さり込んで来る。シリアはロシアが仕切るだろうし中央アジアは中国とロシアがせめぎ合う。中国の海洋進出に蓋をするような位置にある日本は今のところアメリカの縄張りということだ。
 ひょっとして、アメリカは真っ当に日本が憲法改正をするのを望まないのか。それでいて『中国の膨張は自分で止めろ』等と言い出されたらどうする。苦し紛れの安倍総理の加憲案や閣議決定の解釈集団的自衛権や安保法制だけではいささか心許ない。おまけに半島にはもう核があり、核武装でもしなければ防衛力に不安が残る、となれば右翼もつらいのだ。
 自主独立の悲願は当然としても、一国だけで安全保障は確保できる環境にはない。『私の机の上に核のボタンがある』とまで言ってのけて威嚇した。

 話は変わって、EUのドイツ一強その他全滅はもう懲りただろう。
 スペイン・カタルーニャが独立騒ぎを起こす一方で、国民投票までやったスコットランドの独立熱は冷めていると言われている。その理由は北方油田の価格の値下がりにより経済が良くなっていないからなのだそうだ。カタルーニャはスペインの中では豊かで、スペインその他地域の若者の失業率35%とは大違いだから、いつまでもこいつらを税金で養うのはかなわん、という理屈だ。その”取り残された”上記『多弱』の方が(移民問題もあり)右派を支持している。
 ここで不思議な逆転が起きていると筆者は考える。従来のイデオロギーの左右対立がはなくなったために(旧西側では)保守ー革新の構図が変わってしまった。
 これはどうも移民問題で苦しむEUの極右はさておき、我が国に於いてはそっくりそのまま新自由主義ーリベラルの対立構図に入れ代わったのだ。
 ところが、右とされる安倍政権は岩盤規制をこじ開けて『規制緩和』する、移民は受け入れる、TPPは推進する、要するにグローバル化を進めている。真摯に議論に参加してそれなりにプロの対応をしているリベラルは(与党内議論ではあるが)公明党ぐらい。
 するとこれらに全部反対する野党は国粋主義のナショナリスト党になってしまう。これでは私のような保守派は困る。いつのまにかリベラルはいなくなってしまい、充分に与党内リベラルの意見を吸い込んだ安倍一強が成り立っているではないか。
 希望と民進は一瞬くっつきそうになって一晩でオジャン。小沢一郎は見る影もなし。

 目下のところリベラルを標榜するならば反新自由主義の思想が確立されなければならない。それはおそらく大きな政府の元、職能にあった高い雇用と福祉を充実させるべく平等感のある文化国家といった概念か。筆者は想像たくましく江戸時代がそれにあたるように思えてならない。江戸期はヨーロッパで起こったようなブルジョア革命を醸成しないような安定社会だった(維新はブルジョア革命ではない)。

 さあ、困った!

 民進党は大塚代表が気の毒なくらい苦労が偲ばれるが、党大会でついに「新しい党」と言い出した。何をどう新しくするのかは分からない。原点回帰でも詠ってはいかがか。

もしも江戸時代が続いていたら

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機械に使われる気分

2017 MAR 8 16:16:46 pm by 西室 建

ルンバ君の顔

 皆さん、彼をご記憶でしょうか。
 我が家の働き者、ルンバ君です(本当はもっと変な名前ですが恥ずかしくて書けない)。
 相変わらずルンバ君は疲れもせずにセッセと掃除をしてくれています。
 僕はルンバ君と仲良しなので、彼が掃除をしているあいだ中彼の側にいて世話を焼いているのです。
 椅子だの屑篭だのスリッパが放置してあるとルンバ君はぶつかって向きを変えます。まだAI搭載型ではないので部屋全体を俯瞰してコースを決めることはできないため、ランダム(といってもいくつかのパターンで)方向を選んでトコトコ進みます。
 そこで僕が進行方向にある家具を、ルンバ君の邪魔にならないようにどけて歩くのです。
 これ(まさかやる人はいないでしょうが)やりだすと結構集中力が要ります。嬉々として1時間もやって我に返ると、フト思います。『この状態ってオレがルンバ君に使われてるんじゃないか』と。
 以前、認知症になった僕が『介護スーツ』というマジンガーZのようなボディ・スーツを着せられて、食べたくもない時にモノを食べさせられたり(本人ボケて分かってない)したくもない運動をさせられることを想像してゾッとしましたが、AIのただならぬ発達ぶりにあながち冗談ではなくなってきていますね。

2030年 認知症で自由になる

 自動運転の技術は今後飛躍的に発達することが予想されますが、どの時はどうなるでしょう。おそらく本人認証技術も同じように進化し、持ち主とその家族以外が乗ってもスタートできないようにするでしょうから、そのうち車にボビーとかジョーといった名前をつけてルンバ君のように擬似家族のようになるかも(僕がやりそうで怖い)。
 すると、その車が走りやすいようにまた気を使い、家の前の障害物をどけたり。

 狭い一本道を二台の車がすれ違えなくて困っています。車は自動運転なので行く事もバックすることもできないで止まってしまう。
 すると乗っていた人間が出てきて怒鳴りあいを始めました。
「オイッ、お前のクソ車が邪魔でウチのボビーちゃんが通れなくて困ってるだろーが。」
「ナニ!そっちこそこんなかわいいウチのジョーを脅かしやがって!何ならオレが相手になってやろうか」
「上等だ、このやろう」

こういう場合は人間同士が決着をつけるのだろうか。

ルンバ君(仮称)

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2035年 人工知能天国 (今月のテーマ 人工知能)

本当だろうか 暗殺‼️

2017 FEB 15 21:21:38 pm by 西室 建

 この人  マカオの怪人 が毒で暗殺されたって・・・。時系列的には以下である。

 日米首脳が名指しで「脅威」と声明 
   ⇓
 よせばいいのに総理アメリカ滞在中に独裁者が頭に来てミサイル発射
   ⇓
 大統領・総理二人で揃って強く非難
   ⇓
 国連安全保障理事会で制裁決議採択 中国も賛成
   ⇓
 中国はシブシブ『いいかげんにしろ』と圧力をかけた(推測)
   ⇓
 独裁者が体制転覆を嗅ぎ取り新体制の核となりうるスペアを”消す”(推測)
   ⇓
 習近平の面目丸潰れで怒り狂って制裁開始(推測)

 ここから先は得意のゲーム理論・利得表を作って見立ててみよう。但しあまりに複雑になりそうなので、中・朝・韓の3国間の利得表で計算してみた。
 すると結果は韓国の大混乱。
 大雑把に起こりうる最適ポイントだけ列記してみるとこうなった。
 まず中国が石油パイプ・ラインのコックを閉じ、同時に人民解放軍を国境に配置。困った北は政治混乱の続く韓国の親北勢力に統一をチラつかせてアプローチする。韓国現政権は当事者能力を欠いているため腰砕けになる。大統領不在の国では唯一の右派組織となった韓国陸軍が極度に緊張する。朝鮮人民軍も部隊を引っこ抜いて対峙することとなる。結果大統領選挙の日程さえ決まらずに一月過ぎると・・・。
 
 3カ国以外に地政学的にもっとも影響のある国は日本だが、今回の計算の中に組み込むスキームが全く思い当たらなかった。仮にあるとすれば独裁者が『拉致問題の真相はこうだった』と頭をさげる、できないか。
 トランプ大統領が秘かにデニス・ロッドマンを特使として派遣し、核の廃棄と引き換えに独裁者に第三国(といっても受け入れ先は思い当たらない。ヨーロッパの何処か?)への亡命を示唆する、無理か。
 ここは一つ韓国陸軍白骨部隊(国境の最強部隊)の精鋭が潜入、秘かに独裁者を拉致監禁し大統領職務停止中の朴槿恵氏が中心の人民統一党による革命政権の樹立を宣言する・・失礼しました。
 とにかく38度線でプッツンした両軍が撃ち合うことだけは避けていただきたい。

 って明日は故金正日総書記の生誕記念日じゃないか!

マカオの怪人


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アメリカ・中国・南北朝鮮、そして日本

2016 MAR 22 7:07:25 am by 西室 建

 水爆実験や弾道ミサイルに頭にきて軽薄なブログを書くとあまり考えていないのがバレるので(もうバレているだろうが)ひと月インターバルを置いた。国連安保理がノタノタしている内にケリー国務長官と王毅外務大臣の米中会談が行われた。
 筆者はこの会談で再び両国が取引し、日本には知らせず韓国・北朝鮮を蚊帳の外に置き、秘密に手を握ったと見立てている。それが何なのか。

ケ)南沙諸島の『航行の自由』作戦は継続中でイージス単独でやる、ただし護衛潜水艦部隊は潜行させない。非難声明を強硬にしても構わない。アメリカのメンツを守れ。それからコリアだが、我々も北を潰そうなどとはしない。
王)それはわかった。我々もホトホト手を焼いている。制裁は取り合えずある程度の事はしよう。だが一つだけ頼みがある。日本を調子に乗らせないでくれ。そこで相談だが。

 こんな感じでやったに違いない。つくづく思うのだがアメリカにも中国にも韓国にも信頼できる友人はいるが、こうもパズルのように複雑になると国家間での約束事は当てにならないのではないだろうか。日米同盟の帰趨が心配だ。大陸・半島に至っては国家としての振る舞いがひどすぎるので、個人的に不愉快であり付き合うつもりはない。
 米中は昔から裏で繋がっている。それは地政学上、日本が間に挟まっていることも大きい。日本があまり力を持つ事を両国とも好ましくないと思ってい上に、日本を叩いている限り両国は協力できるからだ。
 G1の一極であったアメリカは現在大統領選挙の真っ最中だが、外交についての議論は全く盛り上がらない。というかトランプ効果で強硬論の品評会になってしまい、冷静なアピールがない。共和党はあんなではなかったはずだが(私は自称リパブリカン)今更手遅れだ。
 消去法でヒラリー氏になったところで彼女の本質は中国贔屓(亭主の影響か)。尖閣は安保の範囲内とは言ったものの、大統領になったら手のひら返しも在り得ると覚悟しなければ危ない。

 最近の言説で、主にヒストリアンと呼ばれる保守系の論客がアメリカの内向き姿勢について言う事がある。過去の世界大戦の直前にそっくりだと。
 台頭する新勢力、現在は国家としては中国に甘く対峙しているのが良く似ている、と。これはかつてのヨーロッパを席巻したドイツ、そして(自衛の意味合いが強いと私は思うが)よせばいいのに大陸に深入りした日本に対し、当初日和見的に対応して混乱を拡大させたことを言っている。
 それだけではなく、中東に手を入れたために執拗にテロの標的にされてもいる。
 ここでアメリカが場当たり的に対処して、中国と密約で妥協する可能性は非常に高いと危惧する。

 中国は経済が液状化している。西からのISのプレッシャーも来る。但し日本は経済的には仕掛けない、仕掛けられない。今更断ち切れっこない。おまけに中国は潰れない。イザとなれば自国民の1~2億人を苛め抜いて平気なお国だ。
 北は内心では中国と憎しみ合っているがアメリカからも無視される。この段階では敵の敵は味方とはならないし、三代目は予測不能。 
 南は日本に擦り寄るしか手立てはないはずだが、世論とマダムはそれを許さない。日本からはもはや手は差し伸べない。スワップ要請も受けない。何の国益にもならないからだ。大陸と違い日本経済も大して困りはしない。

 するとどうなる。日本が孤立してしまうではないか。
 そう、日本独自で毅然とする瀬戸際に立っているのではないか。覚醒せよ。

 米韓合同演習はかつて無い規模で、特殊部隊まで投入し猛烈な圧力をかけたら北は又ミサイルを撃って見せた。北は合同演習をやられると、対応するために部隊展開をせざるを得ない。演習をしたとも伝わったが、これは大量の油を使うのでホトホト困っているはずだ。もはや手立てがなくなっていることを如実に表したと筆者はみている。18日に撃って(1弾は失敗したらしい)昨日もまた予告なしに撃った。
  しかし、いくら撃っても誰も相手にしなくなったら再度の核実験はやるという予測はつく。危ないぞ!

 ここで考えは飛躍する。国境の近い国は他にもあるではないか。ロシアと台湾である。
 いじらしくも独立の気概をみせて新政権を選択した台湾。苦境にありながらも図々し振く舞わざるを得ないロシア(クリミア・ウクライナでの振舞いは全くいただけないが)。賛否両論あるであろうが、不思議な事に安部総理はこの両国のトップとウマが合うらしい。常に緊張を強いられる国家のトップ同士が会談するときに、作り笑いでない表情を見せられる関係というものは構築しようとしてできるものではない。大国アメリカのオバマ大統領がサシでプーチン大統領とシリア問題で通訳のみの会談の映像を見たが、プーチンにいいようにあしらわれていたように見えたではないか。

 プーチンとの会談を整中の安倍総理の次の一手が見えて来る。ロシアは北の国とも国境を接しているのだ。

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近未来 無犯罪都市 TOKYO Ⅳ

2015 NOV 17 20:20:19 pm by 西室 建

 『ラー』本部で待つ出井の所に椎野と大和刑事がやってきた。
「オッ出井か。ご案内の通り一発逮捕にこぎつけた。」
「車に乗せられた時はあまり言い気持ちはしなかったんですけどね。」
「そうそう。店を出たら大和は車に乗せられて出ちゃってサ。イヤ焦ったの何の。ちょうど空車がいたんで追いかけられた。」
「私は椎野さんや防衛がいるものとばかり思ってましたから何とか逮捕できると思ってたんですよ。そうしたらホシの車が都合がいいことに追突したんです。」
口々に今回の作戦がうまくいったことを喋る二人。
 逮捕に至る経緯はこうだった。大和刑事は指示されるままにルノアールを出ると大型の車に呼び止められてそれに乗った。多少気味が悪かったが懐に入ると覚悟を決め乗り込むと、早速簡易検知器のようなものを使いマイ・ナンバー・カードが本物かどうかチェックすると直ぐに車を出した。
 椎野はその時になって店から出ると大和を乗せた車が出る所だった。偶然、客待ちのタクシーがすぐにいたので飛び乗って後を追った。大和を載せた車は幹線道路に出て少し走ると、金の受け渡しに車をとめようと左に寄せる。その時前の車(ワンボックス・カー)が妙な動きをしてスピン、追突した。大和を乗せた男は多少ガラも頭も悪そうな青年だったが『このやろう!』と叫んで前の車に詰め寄った。すると『申し訳ありません』などと言いながらガタイのいい屈強そうな男達が4人くらい降りてきてグルリと囲んでしまったのでトラブルに至らず、誰が通報したのかパトカーが直ぐにやってきた。無論椎野もヤジウマに混じってコトの推移を見守る。警察の事故処理が終わり、その若い男に大和と椎野が『警察だ。不正私文書売買で逮捕する!』と手錠をかけたのだった。

 出井は複雑な心境だった。公調と握ったことは言うわけにはいかない。飛乗ったタクシーも事故も仕組まれたものであることはその後知らされていた。
 確かに犯罪は減っている。一般市民はこの張り巡らされた管理ネットの元、大して気にも留めずに生活を営んでいる。ある面お上を気にせずに暮らすこと、古の尭(ぎょう)舜(しゅん)の治世の如しである。しかし一方で、組織拡大のために犯罪そのものを生み出してまで管理しようとする一団がおり、自分はそれに加担しようとしているのだ。
「どうした、出井。」
「うん。」
「乗るだろ。新宿ホームレスだけでこの成果だ。次は池袋でまたやれば必ず引っかかるぞ。」
「まァ暫くは多少の実績にはなるな。だがそうするとこの大げさなハイテク防諜施設そのものと『ラー』の存在意義はなくなるが・・・。」
「何言ってんだ、成果があがりゃ文句はあるまい。」
 暗号電報によってマイナンバーの売人が新宿から池袋にフィールドを移した事も公調から伝えられていた。しかし、このタイミングで池袋を出すとは。もしかしたら自分より先に椎野が公調にツウ(内通)しているのではないかと疑心暗鬼にも駆られ、出井は一瞬気が遠くなった。

おしまい

 管理され切った社会は組織防衛と権益の増殖を招き、出世のためには犯罪までを管理する人々があふれかえる。誰が誰と繋がっているのか分からない。そして犯罪は減り続ける、生温い市民の集合体になってしまった。普通の定義は難しいが、多くの”市民”は幸せそうに暮らし続けているのだ。このままでは済まないのではなかろうか・・・・。

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2015 NOV 15 20:20:58 pm by 西室 建

 椎野は振り返って出井に告げた。
「ひっかかったぞ。」
「だけどお前35歳の『ヤマト』なんて名乗って、誰だそれは。」
「大丈夫だ。生活安全課の刑事だ。いかにもマイナンバーを売りそうな役柄にぴったりだから前から仕込んでおいたんだ。それで咄嗟に年が言えた。」
「なるほど。」
 大和は新進気鋭の刑事だが、確かにモッサリしていてスーツでなければいかにも困っていそうに見える。早速言い聞かせて護衛の私服も4人手配し、現地に行かせる手はずを整えた。

 指定されたのは今頃まだあったかというような「ルノアール」。椎野と出井、そして2人組みの護衛が二組、時間よりも早く店に入り隅の席を確保しようとしたが、奥の席にはカップルがおり壁伝いの席もあらかた占められていた。結構混んでいたのだ。それぞれ、一人は入口が見える席に座り世間話を装った。見たところそれらしい男は見当たらないのでコーヒーをチビチビ啜る。
 大和刑事は指定時間の5分前に入った。まず自分を待っている男がいないか見回すのだがいない。仕方なく席についていかにも人待ち風情に佇んだ。
 約束の4時が過ぎ、何も動きが無い。5分、10分経ち人も動かない。これはガセか、と思いだした時、店の者が
「お客様のヤマト様、ヤマト様、いらっしゃいますか。お電話が入っております。」
と声がかかった。大和がカウンターに行き店の受話器にかじりついた。何か話している。こういう場合相手が店に来る場合は全員動かないが、外に呼び出された場合は一人だけ後を追い、護衛一組が後から追う。きょうは椎野の役割だ。
 会話に聞き耳を立てていた椎野は気配を察知して
「それじゃ、私はちょいと急ぎますんで。」
「じゃあココはオレが払っておくからお先にどうぞ。」
 という流れで席を立った。と、同時に大和の電話も終わり席に戻ってきたが座らずに伝票をもってレジに向かった。直ちに護衛の一組も後に続いた。ところが大和、椎野に続いて護衛二人がレジに並ぼうとすると先に4人の男達が席を立ち会計をする。大和と椎野は既に出て行ったが、男達は別々に会計をする様で一人づつ支払いお釣りを受け取っていた。残った出井は気を揉んだがソワソワして見せる訳にもいかない。
 するとその時店に入ってきた二人の男が出井に向かって急に声をかけてきた。
「あれ、出井さんでしょう。お久しぶりです。」
 ズカズカと寄ってきて椅子を引く、知らない顔だ。何事だ。声を潜めて聞いた。
「どこかでお目にかかりましたか。ちょっとド忘れしてまして。」
「フフフ。いや『ラー』の出井さん、良く知ってますよ。私は原部(ばらべ)です。こちらは英(はなぶさ)です。」
 男はサッとさりげなく身分証明書を見せた、公安調査庁の人間だ!出井はドギモを抜かれた。
「公調?公調の人が何でこんなところで。しかも『ラー』をなぜ・・・・。」
「マイナンバーの地下売買組織を追っていたところでしてね。声を落としてくださいよ。」
 原部という男は確かに眼力があるいかにもな風采だが、英という男はおよそこの業界の人間には見えない。分析官なのだろうか。
「オタクはネットの防諜が専門のはずですよね。」
「そこはお互い様、まァまァ。『ラー』は公調でも気づいているのは私達だけですよ、さすがに。」
原部と名乗った男は小声で話しだした。大和と椎野の成り行きが気に成ったが仕方がない。
「で、出井さん。最近は上り(逮捕件数)はどうですか。」
「どうもこうも。そちらが片っ端からやるもんだから・・。」
「いや、このところこちらもさっぱりで。マッ犯罪が激減してるのはご存知の通りなんですがチョットね。こうなると困るのは誰ですか。」
「誰も困らないでしょう。」
「フッフッフ。監視対象が出て来てくれないととリストラされますんでね、そろそろ稼ぎませんと。」
「あんた何を言ってるんだ。」
「アッさっきの呼び出し。お連れさんが追いかけたでしょう。あれウチでたぶらかしたヤクザです。」
 途端に出井の携帯が振動した。
「失礼。(携帯に出て)何だ。」
『まかれました。撤収します。』
 それだけで切れた。椎野の後を追った護衛に行った二人からだ。
「出井さん。大和さんなら出たところで車に乗せられましたよ。椎野さんはタクシーで追っています。」
「ムッ、」
 ただならぬ気配に店に残っていたもう一組の護衛が会話を止めている。ニヤリと笑って原部が呟いた。
「今からウチの人間が撤収しますから見ていて下さい。」
 するとスルスルと人が、オッサンもカップルも消えるように、しかも自然に帰って行く。それまで満席だったのに3分もしないうちに出井達と護衛の二人だけになってしまった。出井も顔色を変えた、まさかここまで。
「こういうのはウチのほうがね。予算が違いますよ、人数も訓練も。大和刑事と椎野さんは我々が護衛していますからご心配なく。」
「どういう意味でしょうかね。」
「車が二台追走してますよ。あのですな。」
 少し間を置いてから一気に語った。
「出井さん、今消えたのは全部ウチの人間です。そっちのお二人は防衛でしょ、分かります。それでね、まァ挙げる件数低下は出世に響くし予算も対前年で削られる。そいつはお互いよろしくない。ですから今回みたいに同じターゲットを追うのは無駄でしょう。」
「公調さんはテロ・思想犯が本命であとはサイバー管理でしょう。私等が追ってるようなのは管轄外じゃないですか。」
「今日の奴みたいな”闇”の連中から流れるケースもありましてね。マイナンバーの売り買いは対テロ対策の重要管理項目ですよ。それがですね、予算が付きすぎてウチは今やネットの管理人みたいになってます。もっともこちらは出口から追って来たんですが。」
「相手がヤクザの枝なら捜査権はこっちでしょう。”仕込んだ”ってどういうことですか。」
「勿論管轄はそうです。そこはホラ、一つ取引といきませんか。”仕込んだ”ってのはちょっと時間と手間がかかるこちらのノウハウなんでね。」
「取引とは穏やかじゃありませんね。要するに合同で捜査するってことですか。」
「出井さん、冗談でしょう。そんなことやらかしたら上の方が滑って転んでって手間ばかりかかる。ウチは法務省管轄ですよ。下手にサッチョウ(警察庁)なんかが出てきたらもういけない。私等限りで握ってしまいませんか。」
「原部さんでしたね。そんな権限お持ちなんですか。お互い役人でしょ。」
「私は治安が維持できればいいし組織が守られればもっといい。このヤマは『ラー』に譲りますから。今頃はマイナンバーのチェックをしてる頃でしょう。」
「見返りはこちらのあぶり出しの機動力ですか。」
「さっきも言ったようにウチはハイテク化が進みすぎて伝統的なフィールド・ワークができなくなってるんですよ。しかもターゲットが決まらないと今日のような囲いはできません。あぶり出しのノウハウは無い。そもそもウチには正確な意味での逮捕権もない。あれだけ予算が付いちゃうと帰って成果上を出せって上の方からもゴリゴリやられます。ところがこの頃は盗聴・メール閲覧は当たり前になってますからプロの犯罪は見えにくい。パクれるのは素人に毛が生えた程度か変質者ばかりになっっちゃって、はっきり言って成果は落ちてます。」
「こちらのほうも同じですよ。結局元に戻ったようなもんです。」
「でしょう。お互い損にならないってことでどうですか。」
「それで連絡はどうするんですか。」
「秘密回線のトランシーバーと暗号電報です。まぁ見てください。」
 原部と名乗った男は鞄の中から携帯よりも大きめのトランシーバーを取り出した。前世紀の異物のようだった。そして回線を入れると。
「大和刑事を保護して椎野さん達にホシを挙げさせろ。」
とだけ言った。

つづく

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2015 NOV 14 8:08:04 am by 西室 建

 警視庁生活安全課長の椎野は、マイナンバー詐欺の追及のための膨大なネット・メールのデータに目を通しながら席を立った。そして夕刻には都内、六本木のマンションの一室を訪れた。何の変哲も無い賃貸物件の一室は、電磁波シールドと最新の盗聴防止システムを備えたネット上難攻不落の要塞で、サイバー戦争の最前線を担う防犯関連者の連絡所としてキィ・クラブの体裁をとった密室である。
 認証システムが施されたキィを使って入室すると生活臭は一切無く、事務机が淋しげに並んでいる。一人の男が椎野を待っていた。警視庁公安部サイバー対策課長、出井である。
「待ったか。」
「今来たところだ。」
 二人は一切外部に漏れない環境で密かに状況を伝えあった。即ち、ここは地下に潜った詐欺組織を燻り出すための秘密作戦室、具体的には法律ギリギリの囮捜査の司令塔なのだった。コード・ネームを『ラー』と言った。
 二人は2018年にこの秘密組織が始まってからのメンバーだったが、発足当初目覚しい成果を挙げたものの毎年逮捕件数は下がり続けた。一つには個人情報保護の観点から、テロリスト情報や性的変態犯罪予備軍の管理が公安調査庁側に大幅に移管されたこともある。しかしそれにしても、世の中が進歩したり人々が利口になったはずはない。サイバー空間でのセコい詐欺も激減したかに見えるがそんなこともない。しかし成果が下がるのは官僚組織にとっては命取りだ、予算が削られるのである。

「サイバー囮捜査は完全に手詰まりだ。ネット関連で引っかかる詐欺の類は殆ど素人しかいない。」
「みんなデータを監視されているのが当たり前になりすぎてしまった。我々が相手にするようなプロの犯罪者は既にネット上には出てこないのではないか。この囮捜査も時代遅れだろう。」
「しかし組織犯罪はどこへいったんだ。ヤクザを追い込みすぎて解散させてばかりいたから事務所のガサ入れも出来なくなったぞ。」
「監視慣れというかネットでの勧誘詐欺は首都圏ではもうない。何か別の手段が採られているに違いないのだが分からん。何か撒き餌を仕込まなければ。貴様いい知恵はないか。」
「そうは言っても公安調査庁と違ってこっちは予算が無い。」

 散々悩んだ末に二人が思いついたのは、何とか地下犯罪組織に辿り着こうとする涙ぐましいアナログ作戦だった。新宿のホームレスに『マイナンバー売ります』のカードを持たせそれを配らせる、引っ掛かった(変な話だが)闇のグループが連絡を取るにはホームレスの親方(どこにも仕切り屋は居る)に言い含めて住所と固定電話を教えさせるようにした。何しろ誰もが管理されているのが前提のため携帯・メールは絶対に信用されないご時世なのだ。全く変な世の中になってしまった。
 しばらくすると驚いたことに次々と連絡が舞い込んだ。そしてその通信手段は電報なのだ。それも毎日10件・20件と来る。たちまち小所帯の『ラー』では捌けなくなってしまった。二人のほかには24時間交代勤務でネットを監視しているサイバー官5人しかいない。
 今回のアナログ・ヒュミント作戦では、犯罪組織にマイ・ナンバーを「売り」に行く実在のスパイが欠かせないのだった。切羽詰った出井と椎野は応援を仰いだ。所轄の人員では足りそうもない。公調(公安調査庁)に人を出してもらいたいのはヤマヤマだが交流も無い。仕方なくホームレスの親方と話をつけて、多少口が利ける程度の子分を斡旋してもらった。そもそもその電報には待ち合わせ場所が記入されているのみで今時の通信手段は全く使わないので、その場所まで行けるレベルを選ぶ。格差社会が進行して識字率までが落ちているから電車にも乗れないのがいるからだ。手配できる人数はせいぜい100人程度で直ぐに「売り」の配布を打ち切り日付の確かな電報に対応させる。すると、半数の者は接触出来た。残りは手ぶらで帰って来た。駅の改札で待ち合わせる、といった電報はほぼガセだった。
 その場で『マイナンバーを寄越せ。』と要求された者が殆どで、そういう輩には精巧に作られた偽のマイナンバー・カードを大体5~10万円で売りつける。そして実際には使えないことを後に知ることになり、使用時点で御用になる。
 三人だけ、共に公園のベンチを指定された者がその場でタッチ式の検査機のようなものでカードをチェックされ見破られた。
 二人は帰ってこなかった。
 一人、メモを渡されたのがいた。『本気ならばこんなカードではだめ。固定電話で連絡請う。03-△△△△ー◆◆◆◆』と記されていた。固定電話というのがヤバそうだ。
 相談した結果出井が公衆電話から掛けることになった。
「もしもし、メモを頂いた者ですが。」
「メモでございますか?」
出たのは若い女の声である。
「あのー、マイナンバー・カードの件で・・・。」
「チョットお待ち下さい。」
コールが鳴って男に代わった。
「あー、そちら様公衆電話なの?」
「あっはい、そうです。家電持ってないんで。」
「あーそう。冷やかしとかじゃないの?本当にナンバー売るほど困ってんなら相談乗るけど。」
「いや、本当に困ってます。おいくらで売れますか。」
「オタクお幾つ?そう若くないね。」
「はい。35です(本当は45)。」
「それは結構高いよ。じゃあ会ってみるかい。名前は。」
「ヤマトといいます。是非お願いします。本当に困ってるんです。」
 男はいきなりその日の夕方、都心から少し離れた沿線の駅前の喫茶店の名を告げた。

つづく

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