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喜寿庵の秋 Ⅱ 地方創生

2014 OCT 31 9:09:22 am by 西 牟呂雄

  喜寿庵にいたら、夜に地元の大学生が大勢訪ねて来た。これも不思議な集まりで、某大学のサークルが地元との交流目的でやってきてはみんなで料理したりお喋りしたり。校風は概して真面目で公務員・教職志望が多いが、エリアがエリアだから世間ズレしていない子ばかりで驚くほど社会を知らない。そこでオジサンが世の中の話をしたりする。僕がやっているような世界のアチコチで滑って転ぶような話がそんなに役に立つとも思えないが、それでも目を輝かせて質問してくる学生に語り掛けているうちに、いい気持ちで酔っ払ってしまった。
 その中の一人の女の子は今年卒業するのだが、ここに残って起業するそうだ。いまどきの子らしく『女性であることを前面に出したくない。』『今やらないと一生できないかもしれない。』等と元気です。地場のお菓子屋さんや織物屋さんと一緒に何か商品開発ができないか、市役所の観光課と組んでイベントの目玉になるものを考える、そういったことを仕事として行くようだ。勿論応援するが、若い女の子の超えるべきハードルは高い。資金の目処はつくのか、消費者はどこにどれだけいるのか、流通はどうするのか・・・。ご他聞に漏れず、街中には空き家とシャッター商店だらけで人口は減っている。繁華街もフーゾクもない。彼女が徒手空拳でやろうとしていることが上手く行ってくれること応援してやりたい。
 地方創生が政策課題になり、大物大臣が就任した。この人話し方もゆっくりだが人の話もじっくり聞いてくれそうでだが、地方の陳情なんかも真面目に聞いてくれるのだろうか。いきなりこの女の子の事業計画に予算をつけろとは言わないが”じっくり”聞いてもらえばこういったネタはたくさんあるのではないか。規制緩和も大都市でやるより、物凄い田舎でマリワナを解禁するとか離島にカジノを作るとかした方が効果がありそうだが。今頃日本法人を立ち上げる外資はファンドか外食くらいだろう。

 冗談はさておき、あしたは手作り感溢れる地元産業展示会もある。ここは江戸期中頃まで将軍家に献上する為の『御茶蔵』があった所で、本当に御茶壷道中があった。あの「茶壷に追われてトッピンシャン」のお茶壷道中だ。それを復活させて神社から会場までパレードというか行進というか、道中して見せるのだそうだ。市の観光課が主催し、学生さんたちがボランティアで行列に扮する。ちゃんと「したにー下に」とやるらしい。どうせそれ目当てで観光客が来る訳はないのだから、参加者と地元の人が楽しけりゃいいのだ。そういえばここは火事で焼け出された松尾芭蕉が半年ほどいたことがあったり、その昔秋元藩だった時の大名行列を再現したりもしている(九月の八朔祭り)。何回か見たが参加者は楽しそうにちょんまげの鬘を被って毛槍を投げる芸をしたりしてゆっくり長い時間をかけて進んでいた。考えて見ればお江戸の昔は文化は地方にあったのだ。江戸の旗本は勉強なんか全然しないでヘラヘラしており町人は税金なんか何にも払わずチンタラ暮らしていた。各藩の藩校で鍛えられて頭角を現した秀才が昌平坂学問所で朱子学をやる。そしてクニに戻って私塾を開いたり師範になったり。廃藩置県は時代の趨勢だが、300諸侯の国割りは現在の小選挙区と重なるのは、エリア分けとしては良く出来ていたのだろう。

 話がズレたが要は『地方創生』は上から目線で無理矢理予算をつけたりするパフォマンスではなくて、そこでみんなが楽しんでいることを見て少し助ける、そのあたりからやるのがよろしい。地震復興も現地に張り付いている役人はいるのだろうから(自治体でもいいんですよ)、仮設住宅に住み込んでやる位の気概があった方がベターでしょうね。復興予算の名の下に各省一度査定で切られた予算を一斉に復活させたという噂は根強い(民主党時代)。

 そう言えばパートナーのロシア人を招待した時にも学生達がバーベキューをやっていて、酔っ払った彼は『ロシアで仕事がしたければ無条件に採用する。』と言い出して僕を慌てさせた。

 ひとつ明日はその『産業展示会』と手作り『お茶壷道中』を見に行こうか。

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Categories:和の心 喜寿庵

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