陰謀論大好き Ⅲ アメリカの悪意
2023 AUG 1 0:00:40 am by 西 牟呂雄

2022年5月での発言は以下の通りだった。
『チェック・アンド・バランスの欠如が生じて、一人の男が全く不当で残忍なイラク侵略を開始することになった』
ジョージ・ブッシュ元大統領の発言である。ネオコンに操られてありもしない大量破壊兵器を口実に戦端を開いたことへの深い反省かと思ったら、さにあらず。一人の男はプーチンを指しており、特別軍事作戦が始まった後にこれを批判する演説だったとか。すぐに気が付いて『ウクライナというところをイラクと言ってしまった』と訂正したというオチがついている。
いちいち説明するのも面倒だが、私はロシアがおっ始めたドンパチで多大な損害を被っており、プーチンの侵略は言語道断の立場だ。筆者のブログを読んで『こいつは親ロシアだ』と誤解するバカがあとを絶たない。
だがディープ・ステートでも何でもいいが、その狡猾さはどっちもどっちとまではいかないものの、かなり怪しい。
アメリカのシンク・タンクとしてしばしば報道に登場する『戦争研究所』の名前は記憶に新しいだろう。実はここはかのネオ・コンの巣窟なのだ。かつては共和党にベッタリだったネオ・コンは、今やバイデン大統領を担いで煽りにあおっている感が拭えない。
更にEUを飛び出した英国は、007の伝統を受け継ぐ情報大国の冷静さを全く失ったかに見えるほど好戦的だ。このアングロサクソン系両国にとって、実は戦争がこのまま継続するのが都合が良い、とさえ見える。ロシアが国力をすり減らし、ともすればエネルギーを軸にロシアに接近しそうなドイツを苦しめることができているではないか。
ところが、初期の首都奪還失敗により出鼻をくじかれルーブルが大暴落したロシアは、その後制裁を受けながらも目下のところ為替は盛り返し、後に安定した。世ゆ界の人口1位と2位の国が制裁も非難もしないでロシア産の石油をガバガバ買い戦争経済を支えてしまっているからだ。甚だしきはダントツの産油国であるサウジでさえ、その安さにひかれて輸入し始めている。
因みに筆者は目下インドで食っているのだが、その設備投資意欲はバブルのようだ。鉄鋼生産の例でいえば各社倍増の計画でもうすぐ日本を抜く。
但し、中国はコロナ対策の痛手はまだ残っており、不動産投資の低迷と地方政府の財政破綻は不気味なレベルになっている。
反転攻勢の作戦開始から数ケ月経つが、ロシア軍はしぶとい。そうなると双方勝ち切れないまま戦争が続き、どちらかが疲れ果てていいかげんいやになるまで終らない。どちらか、とはロシアVS英米なのだ。
更に筆者のシギントでは、ロシア嫌いのポーランドから数千名の義勇兵がウクライナ軍と共に戦っているとも聞く。ポーランドは1999年以来のNATO加盟国であり、万が一にもにもロシアのミサイルが着弾したら全面戦争の可能性すらある。
ヤバいことに、ベラルーシ入りしたワグネルが北西部のスバウキ・コリドーに接近している。100km先がロシアの飛び地、カリーニングラードである。何を考えているのか。
御年100才のキッシンジャーが何故か北京に飛んで習近平からオベンチャラを言われている。本当はアメリカは思い通りに戦争設計ができなくて困っているのか。当面の主敵とまで定めた中国に秋波を送っているのだとすれば、アメリカは疲れ始めたのか。
一方ミサイルの発射を繰り返す北の国に戦時下の国防大臣が訪問する。日本はこれらの核保有3か国に取り囲まれている。
大陸も半島も北方も力の行使にためらいがないとすれば、腹を据えなければなるまい。せっかく南の新大統領が親日派なのだから、ここは一つ、南・日本・台湾で強固な同盟を結んでおいた方が良くはないか。当面の対米従属は戦略的に正しいが、アメリカの手のひら返しはある程度想定していなければならないからだ。
しかし、実はそれは政治家の仕事ではない。政治家は時に現実を見て妥協するのが持ち味なのだ。むしろ民間、もっと言えば情報機関やら秘密結社のような水面下でダイナミックに動けるオーガニゼーションの仕事だろう。いよいよSMC(シークレット・メソッド・センター)の出番かもしれない。
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こんなこと言っておいて・・・
2023 JUL 1 0:00:48 am by 西 牟呂雄

『発展は、精神的、道徳的な価値に基づいた文明の対話の中で行われなければならない。文明によって人間やその本質に対する理解は異なるものだ。そしてすべての文明が人間の至高の尊厳と精神的本質を認めている』
『伝統的な価値観は、すべて守らなければならない固定的なものではないが、新自由主義といった価値観とは異なり特定の社会の伝統、文化歴史の経験に由来して、いずれもユニークなものである』
『ジェンダーやゲイ・パレードといったファッションを国民・社会に導入するのは構わない。ただし他人に同じことを要求する権利はない』
成程と唸らせる発言だ。
翻って、最近SMCの投稿で検証されているように、敗戦以来ペシャンコにするシステムを構築してもゾンビのように
蘇ってくるジャパンという化け物を、繊維交渉・鉄鋼貿易・半導体輸出にいちいちイチャモンをつけ、グローバル・スタンダードをゴリ押しして護送船団方式を潰し、新自由主義を導入させたアメリカに対する警句としては秀逸な論考と思う。最近のLGBT法案の茶番もまたしかり。
ところで冒頭の発言は誰のものか。驚くべきことに日本人の右翼ではない。昨年の10月にモスクワで開催された通称『ヴァルダイ会議』でのプーチン大統領の講演なのだ。
ウクライナ戦争下で、ブラジル・アフガニスタン・中国・エジプト・フランス・ドイツ・インド・インドネシア・イラン・カザフスタン・ウズベクスタン・南ア・トルコ、さらには米国の民間人も参加した会議だった。
それなりの論理的な話をすることのできる指導者が、何の大義も見いだせないムチャな戦争をしかけるという国際関係の不可解さに唖然とせざるを得ない。自分は戦争を始めておいてどうかと思われる発言だ。
私はあの侵攻を支持するものではないことを強調しておかねばなるまい。ロシアからの帰国者の話を元に一般的なロシア人の感じているところをブログに書いたところ、まるで筆者が戦争支持者のような誤解を受けて攻撃を受けたからだ。バカバカしい。
開戦から15ヶ月。双方の思惑通りに行かない最中にワグネル騒ぎという不確定要素が勃発した。これに関するインテリジェンスは筆者の手元にまだない。
2014年、クリミアを占領した頃にロシアの事業パートナは『何でそんなことをするんだ』と怒っていたが『だけど支持率は高いし選挙では圧勝するではないか。どうしてロシア人はプーチンに投票するのか』と聞いた。帰って来た答えは『オレ達はソ連崩壊の時にドン底に落ちた。それをここまで戻してくれたのがプーチンだ。それにあの程度の悪い奴に投票しておかなければもっと、物凄く悪い奴が出てくるに違いない』と開き直られた。なるほどワグネル騒動を見てこういう輩のことを言っていたのかと妙に納得した。
しかしながら、1年以上の戦闘が続くと、ズーッと戦争が続くことが居心地のいい輩が透けて見えてくる。まずはアメリカ。自国の兵士は血を流さなくて対立軸であるロシアの国力を消耗させることが可能になり、面倒な中国問題に集中できる。ブリンケンはチャイナで何を話したのか。侵攻以前のウクライナにおけるネオコン一派の露骨な活動が既に明るみになって来ている。
そして中国。この事態にアメリカがどこまでコミットするのかじっくりと見極めているだろう。そして虎視眈々と日本を取り込むべく触手を伸ばしてくるはずだ。ターゲットはハニー・トラップにかかったとの噂もある林外務大臣。一方でロシアをサポートするフリをしつつ一帯一路の構築にいそしんで稼ぐ。
ただし、訪露して習近平が高らかに謳った『制限のない友好』について、肌感覚としていささか疑ってかかっている。他に頼りになる相手がいないからさすがのプーチンもヘーコラしてみせたが、アッチラ大王やジンギスカンの恐ろしさをロシア人は忘れない。黒竜江沿いの国境線に中国人は2億人、ロシア人は800万人。竹槍で来られてもロシアは防衛できっこない。ロシアは自ら中国の軍門には下らないはずだ。
さてさて、この悲劇を一刻も早く終わらせたいと思っていないのはどこの誰だ。筆者の考えでは単純な一国の悪意ではなかろう。何かグローバルなオーガニゼーションなのか。陰謀だー!!
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陰謀論大好き
2023 JUN 10 0:00:56 am by 西 牟呂雄

巷に跋扈する陰謀論には手を焼くが、陰謀論は面白いと言えば面白い。困るのは本気で信じ込んで暴れたり元総理をテロにかけるような大バカが出てくることだ。更にフェイク・ニュースの害毒が廻ると投票行動を基本とする民主主義が成り立たなくなる。
これは先進国も途上国も関係ない。民主主義の卸元アメリカでバカ共が国会に雪崩れ込んで暴れた。多くの勢力が大統領選に干渉したことも明らかになっているが、トランプ教信者達がああもヒート・アップするとは。まあ、アメリカ人でもあの程度の輩は履いて捨てる程いる。ましてや。
僕のフィールドはかつてBRICSと言われていたエリアだが、あの無茶なドンパチを仕掛けたロシアですら選挙はやって見せているし、もうすぐ人口世界一の民主主義国となるインドに至っては腐敗しているなんてもんじゃない。昔は1票125CCのバイク1台というほど買収が横行し、下手にITが発達してしまったため与野党ともフェイク・ニュースを流す組織を持っていて、選挙ともなると何が本当で何が嘘かも分からなくなるらしい。そもそもモディ首相が率いるインド人民党はヒンドゥー至上主義の差別的政党で、イスラム教徒への弾圧を隠そうともしない。首都デリーの面積当たりの監視カメラ数は世界1で中国以上なのだ。
大陸は台湾の選挙に介入しまくり、フィリピンはフェイクを流す会社が200社あるそうだ。タイは何回選挙しても中華系のタクシン派が勝ってしまい、頭にきた国軍がクーデターを起こした。
これに比べれば我が国の選挙違反なんかはカワイくさえ見える。いや、実際にはかなりやられているのかもしれない。途上国も先進国もなく、民主主義の健全さは大きく損なわれているのが現状であり、それに対する有効な処方箋を我々は持っていない。
ところで、世銀の主任エコノミスだったブランコ・ミラノビッチが2012年に発表したエレファント・カーブをご存じだろうか。世界全体で1988年から2008年までの20年間に先進国の高所得者層と、途上国の中間層の所得は大きく伸びたが、先進国の中所得者層の所得はほとんど伸びなかったことを表した研究である。
グローバル化が進んで(この時点では主として中国の)低所得層が中間層入りし、先進国の中産階級が没落して(あるいは所得が伸びなかった)いったことが分かる。
アメリカにおいてはトランプ現象を生んだのはこれではないか。人口においては多かった中間層が一斉に反知性的になってしまったと読める。
中国はいまだに選挙などやっていないし、アジアの選挙事情は上記の未熟さだから中間層が形成されても大して期待できない。
日本は20年以上も失っているわけだから、実感ありありだ。日本の民主主義は大丈夫か・・・。
こうなったらカウンター・インテリジェンスとして、普段から飛び切りのフェイクを垂れ流し、あまりのバカバカしさにネットニュースを誰も信じなくさせるのはどうか。
例えば・・・。
ロシアとウクライナは実は戦争はしておらず、破壊された町はすべてロシア国内にある秘密都市である。プーチンとゼレンスキーはグルになってとEUとアメリカが、支援でヘトヘトになるまで偽戦争を続けるつもりだ。
公開されている画像・報道をみれば、避難する人も爆撃をされた建物にいた人達も着ているものがおよそきれいなことに気づくだろう。ボロボロの衣服を纏った避難民には見えない。戦闘の場面も全て演習の空砲である。
こうして欧米を弱らせた後に、中国をけしかけて台湾と尖閣を攪乱させ、ついでに北方4島を軍事要塞にして日本を植民地にする大戦略なのだ。かくしてユーラシア大連邦を作り上げ、アメリカを潰し、ヨーロッパ・日本・東南アジア・アフリカを隷属させるつもりなのだ。
コロナは当初、ワクチンで荒稼ぎするつもりでアメリカが密かに開発したウィルスだったのだが、中国に盗まれてしまい、それが素人の管理で市場に漏洩した。中国は慌てて人のせいにしようと躍起になったが、実は既に2億人が死んでいる。たび重なるロック・ダウンで経済はメチャメチャ。表に出ない暴動は1日に500件も起こっていて制御不能になっている。
習近平は経済の失速を一人っ子政策の失敗にして葬り去り、国内の統制に集中するためにひそかにアメリカにスリ寄ろうとして、まず最も邪魔な安倍元総理を排除しようと画策。結果は例の大事件なのだが、巧みに宗教を隠れ蓑にしたため疑われることはない。
金正恩は餓死者も出かけている現状に一向に援助しない韓国新大統領を嫌っており、さらにチョロチョロするだけで全く役に立たない韓国の左派陣営にもうんざりしている。彼が個人的にも最も信頼しているのはトランプであり、大統領選挙には何とかトランプが復権できるべく大掛かりなサイバーテロを考えていた。
一方で、さかんに日本海にミサイルを撃ち込んでいるが、実は着弾距離は北京への距離にピッタリなのである。実は自分を小僧扱いして上から目線でバカにした態度の習近平も大嫌い。
情報機関を使い秘かに『北京は射程内で、いつでもミサイルの向きは変えられる』という噂をバラ撒いている。食糧支援が欲しいのだ。これすべてトランプ氏の入れ知恵。
怒られそうだからこれぐらいで止めよう。
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怪人 辻政信
2019 OCT 21 1:01:41 am by 西 牟呂雄

歴史探偵の異名を取る半藤一利氏は、現役時代に国会議員である辻を取材し、そのアクの強さと懸河の弁舌に気圧され「絶対悪というものが出現存在する気配にとらわれた」と感想を述べている。その後幾つかの新書等で、その取材の際に『オレの体には五カ国の弾が入っている』と上半身を脱ぎ、『これがノモンハンの時のソ連、これが・・』とやった、とも記している。
この五カ国とは察するに、ノモンハンのソ連、ガダルカナルの米、ビルマの英と、どこで喰ったか知らないが共産党の八路軍に国民党軍ということなのか。半藤氏は次に会った時は七カ国に増えていた、とも語っている。まあ、アジアでは日本が一人で戦っていたことは事実だ(現地ゲリラはともかく)。
辻はノモンハンに於いては、作戦参謀としてこう言ったことも活字になっている。
「傍若無人なソ蒙軍の行動に対しては、初動の時期に痛撃を加える以外に良策はない。またかくすることは関東軍の伝統たる不言実行の決意を如実に示すもので云々・・・」
物凄い気迫である。『不言実行』とは中央を無視した独断専行のことであり、石原莞爾以来の関東軍いつもの手だが、それを『伝統』とは恐れ入る。
ところでそのノモンハンは最近発掘された旧ソ連の文書により、言われているようなコテンパンの負けではなく、引き分けに近い終わり方だった。
彼我の戦力は比べようがないが、夜襲は相当な効果を上げており、第二次世界大戦のロシアの名将ジューコフ大将を散々悩ませている。夜襲で有名な第二師団(仙台)は、後にインパールで善戦した宮崎繁三郎大佐指揮の元、ドロト湖周辺からソ連軍を追い払った。翌日に大戦車部隊の反撃も食い止めている。
日本ではあまり人口に膾炙しないが、ロシアでは『ノモンハンジーキン』の言い方で有名な戦闘である。筆者(ワタシ)はCIS貿易関係者のロシア人と話している時に、”ジーキン”が”事件”のことであることが分からず往生したことがある(知らないフリをしたと思われたかもしれないが、友好的な物言いだった)。
陸士・陸大を通じて抜群の秀才であり、筋骨隆々たる強靭な体、不屈の闘志、といった部分は優れた軍人だったことを示している。
任官後に上海事変に投入され、帰国して参謀本部で東条英樹の下、一課(編成)や三課(輜重・兵站)をやり、かの満洲関東軍の作戦参謀でノモンハン事件に邁進する。上司であろうと怒鳴り上げ、自説をゴリ押しする危険な過激派であったろう。
ノモンハンでの中央指令無視等、独断指揮が問題になり左遷されるも、ゾンビのように大本営作戦課に舞い戻る。
参謀なのに前線に出たがり、そこで自分の目で見た状況から即断する為、司令部の方針・裁可を仰がずに指揮してしまうらしい。事実被弾もする。
赴任先の上官の伝票を調べ上げ、飲み食い・車の使用を掴んでは睨みを利かせるので、兵隊達からは慕われたようだ。実際本人は至って清廉潔癖だ。吝嗇もない。酒・女もない。
かのノモンハンも、爆撃編隊には同乗した。更に前線で弾雨の中に飛び込み負傷者を背負って帰る。
戦後に復活してから国政に立候補すると地元石川県で連続4回当選するが、彼の原隊でもある歩兵第七連隊(金沢)の票が磐石だったからだろう。戦犯も何もない。その後、岸信介と対立し辞職したが、参議院の全国区で簡単に返り咲いている。既に『潜行三千里』がベストセラーだったこともある。
その『潜行三千里』によればバンコックで敗戦を迎えた。潜行してベトナムに渡り、更に中国本土の当時の国民党首都である重慶までたどり着いた後に帰国する、という内容を実に緻密な筆致で綴ってある。描写、分析、抑揚、日常の細かい部分等、作文能力は高く、参謀として作戦計画を資料に纏め上げるのはさぞ上手かったろう。
蒋介石の有名な『以徳報怨』は大陸に居る百万人の日本軍をおとなしく武装解除させるための詭弁だと見抜いている。或いはその国民党の上から下までの悪習である汚職・腐敗に対しても嫌悪感を抱いていた。
しかし日記でも持ち歩ける状況でもないのに実に正確に日付、人の名前等が記される。この内容は全て記憶に基づいて書かれたのだろうか。実際には南京に辿り付いた時点から緻密な日記を書いているので概ね正確だと言われているが、驚くべき記憶力である。
潜行の理由については、英米の手に落ちるより国民党に協力しアジアのための闘争を継続する為、と読み取れる。対蒋介石政権への窓口として藍衣社(国民党情報機関)の華僑工作人脈に頼ったことにしているが、藍衣社と言えば工作・暗殺なんでもありの秘密警察だ。
確かに、すぐに国共内戦が始まったため、押され気味の国民党軍は旧日本軍の協力を仰いだ例はある。山西省で「山西王」と呼ばれた閻錫山の配下に支那派遣軍北支那方面軍第1軍の一部が協力して残留した。共産党側にも万単位でいたことも確認されている。しかし直前までやり合っていた有名な参謀に気脈を通じることに疑いを待たないはずは無かろうに。
そして中国語(北京語・広東語も含め)も喋れずに華僑相手にそんなことが通じるだろうか。無論タイ語もベトナム語もダメ。幼年学校は独語・仏語・露語だから多分英語にもうといはずである。中華圏では筆談をした、とあるがその場合は椅子に座って時間を掛けて漢文を書いて相手に推量してもらったのだろう。しかしいかに華僑が跋扈していたインドシナ半島とはいえ、あの終戦ドサクサで良く命永らえたものだ。
更に坊主に化けた時点で資金を失っていたはずだが、延々重慶までたどり着く間にどう賄ったのか。いっそのこと最初から国民党のスパイだったと考えた方が合理的にさえ思える(まさか、だが)。
潜行過程は後に公開されたCIA機密文書と国民党の報告の突合せで概ね事実とされているが、個別の記述には多少の疑問が残る。
帰国してからはさすがに転々として身を隠した。小城炭鉱で鉱夫をしていたのは50近い年齢のはずだから、やはり超人的な体力の持ち主だ。
1950年に戦犯解除された時点で上記『潜行三千里』で復活し、二年後には衆議院議員となりおおせるのだ。何らかの軍人グループ、右翼団体の支援を受けたのであろう。この時点で反省とか後悔のカケラもないことを大っぴらにしている。
当選すると自民党鳩山派に属し、なぜか外遊してエジプトのナセル、ユーゴのチトー、インドのネルー等大物と会っており、甚だしきは周恩来にまで面会した。何を話したのか寡聞にして知らないが、欧米の悪口を言いつのったに違いない。
思想的なバック・ボーンは反米・反共程度だろう。
人間には稀に自分の痛みに鈍感で、自分が負ける(色んな意味で)ということが分からないという人がいて、武闘派に多い。こういうのはやたらと戦闘能力が高く、闘っているうちに益々強くなってしまい、終いに止まらなくなる。ふやけたチンピラがヤキを入れられると途端に強くなるのもそれだ。
辻は自分も何度も被弾したがどうってことなかったのだろう。嬉々として次の戦場に行く。躊躇なく戦場を求めたのだ。
計見一雄の『戦争する脳』を読んでみるとよく分かる。ヤタラと優秀な頭脳の持ち主が戦争がしたかった、という一種の病に罹ってい続けたとも考えられる。
最新刊の文庫に、秘かに親族に宛てて送られた6冊のノートの一部が『我等は何故敗けたか』としては収録されている。重慶~南京時代に秘かに書いたものだろう。息子に向けて『父は』という文体で構成されている。
敗戦の要因を八項目挙げていて至極真っ当な批判をしている部分も多い。
第三項で外交の失敗を挙げていて、ドイツと組んだことを批判している。ところが批判しているのは、当の本人がノモンハンの拡大の最中だったにも関わらず、同時期にソ連と不可侵条約を結んだヒトラーを批判しているのだ。
それが第八項では、その後日本も不可侵条約を結んでいるにも拘らず、その条約をヒトラーと同じように無視し、共にソ連を攻めるべきだった、とも書く。ドイツと組んでインドに進出しスエズを目指せ、と。第八項は軍上層部の戦略の無さを嘆いているのだが、自分は大本営作戦課にいたではないか。陸軍大学の模範解答がそれだとは到底思えない。
『一個の軍人として戦い抜いた過去に悔いを残していない』
『日本を再建し、その上に中国と一体となり東亜連盟を結成することが後半生の父に与えられた使命と信じ』
一読、純真で壮健な青年の熱意にも思える話だが、50を超える年季の入った元参謀が主張して良い見識ではないだろう。
この人が参議院議員の身分のままビルマで消息を絶つのが、我々の年代が小学生になった頃であることを思うと、辻の遍歴は近現代における歴史であり、今日に於いては若くて優秀な議員先生が『戦争によって取り返す』などと軽々しくツィートしたら十分に警戒すべきなのである。
実は辻が消えたこの時期、ベトナム戦争の導火線になる個別のドンパチは始まっており、一丁アメリカに一泡吹かせてやるか、と思わなかったか。
もし、かの頭脳が今の平和ボケ時代だったら一体どうしただろうか。ユニコーン企業の創業者にでもなって一世を風靡したか、官僚から政治家に転身したか。防衛大学を出て、北の国と対峙したりしたらチョットこわい。
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あの移民キャラバン・・・
2018 NOV 6 12:12:03 pm by 西 牟呂雄

インタヴューには「犯罪から逃れて仕事を求めて来た」と答える。
初めは160人(誰が数えたのだろう)くらいだったのが今や数千人になってメキシコ国内を移動中。パスポートも無さそうな集団が、ホンジュラスからメキシコにはどうやって入国したのか。
あんな大集団では食料の確保も簡単ではなかろう。しかし何故か飢えた様子が見てとれない。金なんか持ってなさそうなのにメシはどう調達しているのか。
子供もいる、乳母車を押している夫婦もいる。
夜はどこで寝ているのか。雨は一度も降らないのか。
時にアメリカ中間選挙直前。この時期になぜ突如発生したのだろう。
おまけにやけに統制が取れているのも不思議だ。整然と進むにあたっては誰かが『出発』の号令くらいかけているはずだ、ハーメルンの笛吹きみたいに。
メキシコ政府が冷静なのもよく分からない。難民として受け入れるつもりなのかアメリカに追っ払うつもりなのか。直近の報道では首都のスタジアムを開放して食料を提供しているらしい。
トランプ大統領は軍を出動させ、国境を固めるという。まるで戦争準備ではないか。これ、ある種のアメリカ人に受けないはずがない。「壁を作れ」で当選してしまったのだから、公約を忠実に実行することにもなる。
そして中間選挙になってしまった。
大統領は精力的にスピーチをこなすが、会場は典型的なレッド・ネック(白人のこと)ばかりで大歓声。なぜか大都市には行かない。
対する民主党は嫌われヒラリーを出す訳にもいかず、オバマ元大統領が孤軍奮闘するが、迫るキャラバンを止めることなんかできない。
これはどこかの陰謀ではなかろうか。
「お前ら、金をやるからアメリカに向かって進め。途中から幾つかの集団が合流スル手はずだが決して争うな。ナニちょっとしたピクニックだと思えばいいさ。食い物は何とかするからテキサスを目指すんだ。なんでこんなことをするのかとCNNのようなマスコミがインタヴューしたら『国は犯罪とテロばかりで仕事も無い。アメリカに移民したい』と言いふらせ。特にテレビカメラが取材に来たら大げさにやれ。11月6日までにメキシコシティーを出発したら後はもう好き勝手やっていい。帰りのヒッチハイクは手配する」
と囁いて、あたかも大集団がテキサスに押し寄せる画像を写し、今頃はSNSを駆使して『実はあのキャラバンには凶悪な武装集団が混じって入国しようとしている』とフェイクを蔓延させる作戦だったりして。
秘かに選挙に介入するロシアか、ナリを潜めていたあのバノン氏か。
というのは冗談だとして、このタイミングでは共和党に有利に働く気がする。
気の毒な人々の行く末を祈らずにはいられない。
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