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小倉記 再会編

2015 APR 20 20:20:33 pm by 西 牟呂雄

  門司の北端、すなわち九州の北端に和布刈(めかり)神事で名高い『和布刈神社』があり、その一角は割に由緒ある料亭になっています。和布刈神事は厳冬の旧暦元旦の深夜に神職が関門の海に入って、松明に手鎌でワカメを刈り取る儀式のことで、和銅時代には朝廷に献上もした由緒ある行事です。
 この料亭でメシを食っていて気付きました。関門海峡は西にむかって一度蛇行して小倉の方へ曲がりS字のように玄界灘に通じます。夕陽を眺めながら飲んでいますと、何と九州から見る夕日が本州に落ちていくのです。正確には彦島ですね。馬関戦争でやられた後、危うく香港のように外国領土になりかけたのを、高杉晋作がツベコベ言って何とか繋ぎとめました。高杉晋作はあの写真の顔があまり好きになれないのですが(ファンの方ごめんなさい)大したものです。
 私の知り合いに元小倉藩士の子孫がいて、大変変わった苗字です。小倉城主は礼法宗家の小笠原氏ですが、信濃から国替えでやって来た時に藩主に付いて来た一族です。その彼、幕末の長州戦争・小倉口の戦いで高杉晋作の部隊に軽く負けたことを今でも恥じていて『博多の黒田が助けに来るはずが裏切られて負けた。』と黒田藩を逆恨みしています。恨むなら奇兵隊を率いた高杉を恨みなさいよ、といったところなのに。

 ところで小倉に行きまして。インド人とドイツ人が一緒に来るという奇怪な日程にあわてて足を延ばし再会しました。連中とは10ヶ月ぶりですかね。両人とも実は偉い人で大金持ちです。そしてなかなかのタフ・ネゴシエーター、尚且つユーモリストでもあります。
 話していると、ドイツ人のここ一番の集中力とインド人の譲らなさにはしばしば『もう分かった。』と妥協しかけたものの、黙り込むのも技の内。
 その後食事にディナーに誘うとにこやかに応じてくれました。ただインドの方はビーフはだめです。『ヒンドゥーか?』と聞くと『私はブラマンだからね。』とウィンク。初めは何のことかわからなかったのですが、これ日本ではバラモンと教えられた最上位カーストのことでした。彼は上級バラモンで先祖以来ビジネスに手を染めたのは父親の代からだそうです。さすがに肌は黒いのですがジョニー・デップに似た男前。
 彼の地元に行った時にまるで国会議事堂のような建物がありましたが、なんとあのサイババが建てた病院でした。もう亡くなった有名なサイババは初代サイババの生まれ変わりと称していて、ただ彼の説明では初代は元々イスラムの異端で、あんなものニセに決まっているといっていましたね。どうでもいいけど。
 ドイツ人はデカくてゴツくて、昔のサッカー・ナショナル・チームにいた名キーパー、オリバー・カーンにそっくりで強そう。アジア中にビジネス・ユニットがある連中だから日本食もお箸も慣れたものでした。最後の桜に喜んで携帯でたくさん写していました。
 それで食事した後にカラオケに連れていくと、奴等面白がっていましたねぇ。
 カラオケは英語縛りでやりましたが、彼らはビートルズ、私はプレスリーばかり。インド人はパフォーマンスはよかったがリズム音痴というやつで歌が合いません。ドイツ人は真面目にやり過ぎてビートルズというより男性バロック音楽のコーラスみたいになってしまいました。
 このドイツ人はお母さんが先日 国境を考える Ⅱ で書いたカリーニングラード(旧ケーニヒス・ベルグ)の出身でした。ここの出身者の話になってイマニュエル・カントやオイラーの名前を出したら『よく知ってるな』と受けました。
 二日の話し合いでおぼろげながら着地点が見えてくるのですが、その後のスケジュール感が微妙に違う。ドイツ人はここから加速するように次々と目標を前倒しにしようとします。インド人は『これからのインドは凄いことになる。中国なんか問題にならない。』と張り切ります。日本側のハラが試されることでしょう。

 ところで、帰る時に以前九州で研修していたロシア人とバッタリ羽田で会ってビックリ。別のプラント・メーカーと商談していたそうで(私の件とは別に)旧交を温めたのですが、始めに『ヴィー・ゲート・イーネン(数少ない使えるドイツ語)』とやってしまい怪訝な顔をされました。ここはロシア語で『カクダィラ』と聞くべきでした。
 別れ際にはカンが戻って『ダスヴィダーニャ』がスッと出ましたが付け焼刃ではこんなもの、まだまだですな。
 
世界は狭い!

インド高原までやってきた


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Categories:インド, 小倉記 東京より愛を込めて

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