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ウクライナ投票後

2014 MAY 27 10:10:55 am by 西 牟呂雄

 たいへん慌ただしく投票が終わってしまい、東部二州の投票率は妨害によって20%以下とも言われている。そもそも選挙妨害が露骨に行われていること自体が、問題の根幹だが。武装勢力の中心にはロシアの一部勢力が相当入り込んでいるのはミエミエだがプーチン大統領は放置している。
 ところが、ウクライナ民族主義者の方もツッコミどころ満載で、ティモシェンコ元首相は評判はイマイチ。追放されたヤヌコービッチ大統領の蓄財も凄かったらしいが、同じくらいダーティーだったと言われてしまう始末。キエフの暫定政権には右派と言われるイケイケの武闘派が入り込んでいて、ロシア語の禁止まで言ったのでは怒る人も出るだろう。民兵があんな重装備ができるもんじゃない。煽った奴は誰だ。対する親ロシア派もロシア至上主義という意味で右派であり、右も左もあったものではない。それじゃ左派はどうしたのか、と言えばちゃんと元共産党員のシモネンコ氏が立候補していた。もはやイデオロギーの問題は無くなっている。
 ウクライナは世界で3位の穀物輸出国で、日本にも飼料用のトウモロコシを中心にアルゼンチンに次いで年間100万t程度輸出している農業国。東部の工業地帯は冶金が盛んだが、資産24億ドルでウクライナ3位の大富豪、コロモイシキー氏は所有の製鉄会社をロシアのグループに売却しており、関係悪化が望ましいはずがない(もっともこの人、東部ドニプロペトロウシク州の知事)。
 それにしてもプーチン大統領は鮮やかというか、自身に満ちており、ガタガタ言うなら中国があるぞとばかりに欧米をあざ笑うように合同軍事演習だ。何と言っても事実上クリミアに軍事侵攻したのだから。ひょっとしたら本当にドンパチの覚悟を決めて後ろを固めたんじゃないだろうな・・・・。どちらも引っ込みがつかなってもNATOじゃ手に余るし、アメリカだって本気にゃなれない。
 日本の場合もここまで来たらアメリカにベッタリとは言わないまでも、反米なんて言ってられなくなる。中国機の自衛隊機への接近だってどっかで誰かが操っているに違いない。北方領土も集団的自衛権も自主独立も大事だが、下手にすり寄ったって足元見られるのがオチだろう。返って中露の間に楔を打ち込むような奥の手はないか。中国だってベトナムとイザコザしてるくせに、クリミアの住民投票をチベットや新疆でやられたら目も当てられんだろう。テンヤワンヤで気の毒な韓国海洋警察の足元をみて漁民はやりたい放題だそうじゃないか(中国はいかなる投票もしたことはないが)。世界は同時多元的に動いてる。よく考えなくては百年間違えるぞ。しかし戦争はしませんので、念の為。
 当選したポロシェンコ氏もウクライナ7位の金持ちであり、資産は16億ドルくらい。48才だそうだからソ連崩壊時には青年で、あの国有財産の分捕り合戦の勝ち組オルガリヒだが、親欧州で大丈夫か。国を立て直せるか。ただ、プーチン大統領はもう係り合いたくはないのじゃないか。メルケルあたりと落とし所を話してたりして・・・。
 先日、少しでも情報が欲しくて都内のあるロシア人を訪ねたが、その際に言われた。その人はウラジオストック出身の白人なので「私は仕事柄ロシア派なんです。」等と軽率なことを口走った。するとその人、ニッコリ笑って
『西室さん、ロシア人とウクライナ人の区別がつきますか?』
と聞くではないか。わからない、と答えると、
『私は母がウクライナ人で、父はポーランド人なんです。あのあたりは昔からグチャグチャなんですよ。』
と言われてしまった。ヨーロッパは奥が深い。

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Categories:ロシア残照

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