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せせら笑うポルシェ

2015 AUG 26 18:18:53 pm by 西 牟呂雄

 すいている中央高速の上りを好い調子で飛ばしていた、無論十分な車間距離を取って。
 バック・ミラーの遠くに一台の速い車が追いついてくる。白いスポーツ・タイプに見えた。『何をムキになってんだ、あの野郎』と思う間もなくアッと言う間に近づいてピタリと後ろにつけられた。空冷水平対向6気筒のバケ物ポルシェ911だ。

悪魔のポルシェ

悪魔のポルシェ911

 前を空けてやってもいいが、ガラガラとは言え私の前にも車は続いていてしょうがないだろう。と、ちょっと考えたが、まあいいやと車線を譲る。するとスーッと隣に並んできた時にドライバーと目が合った。年恰好は同じくらいのオヤジがサングラスをしていて、白い歯を見せてニヤリとしたような。『ご苦労さん』とでも言われた気がして思わずムッとした。
 実は1964年にデヴューした時点では「ポルシェ901」という名称だったのだが、プジョーが真ん中に0の入った3桁数字をすべて商標登録していたので「911」と変えさせられたという因縁がある。そして現在の我が愛車はプジョー407。
 とにかくやり過ごして後ろに捻じ込んだ。むこうも気配を感じたか、バック・ミラーでチラリと見た。
 しかし、先行している車が私の時とは違って次々と道を譲るのだ。あのケロヨンみたいな面に臆するのか。何しろアウト・バーンを我が物顔に走るBMWやベンツも250km/hのリミッターは義務付けられているが只一社例外とされている悪魔である。そう言えば昭和亜空間戦争で平将門に憑依されたと表現したかの白洲次郎が80歳まで乗り回したポルシェ911だ。悪魔的なのも頷ける。
 前がズーッと空いた頃合いを見たのか、ポルシェはグングンスピードを上げた。
 私はフランスの著名な人口学者エマニュエル・トッド氏の言説に大いに影響を受けている。氏はEUをドイツによる一極支配体制と喝破し、EUのユーロ体制の崩壊を予言している。特に現仏政権の独スリ寄りを批判する自称親米左派。

我がプジョー

我がプジョー407

 その気になって愛車をアウディからプジョーに変えた私としては、このまま置いていかれるのは我慢ができすに敵わぬまでも意地になってアクセルを踏んづけた。
 ちなみに以前のアウディに関してはワーゲン・BMW・アウディ・ベンツすべてハッチ・バック車の『ドイツ機甲師団』を編成する、と言い出したバカに譲った。

 私が精一杯アクセルを踏み込んで、多少車間が近づく。再度バックミラーでこちらを伺ったような気がした刹那、空冷エンジンのバリバリ音が上がりバック・ファイアを吐きながら物凄い勢いで加速した。コッチのメーターも〇〇〇kmを越えてコーナーはもうヤバい。向こうはまるでせせら笑っているようにいきなり400mくらい離されて追いかける気力を失った。悪魔め。
 こうなったらこっちはゾンビになって10年後にポルシェに乗ってやる(現在還暦)。

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Categories:遠い光景

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