Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 202X年の怪

今が昔 (今昔物語逆バージョン)

2018 JUL 5 20:20:41 pm by 西室 建

 5年後の話です。即ち『今(現在)』が『昔(過去)』と言われる2023年はこんなに面白いようです。
 ある所に10歳の少年がいました。名前はジェイと言います。
 ジェイは無償化によって好きな学校に行けることになっていましたが、全く勉強をする気が無くて進学することを止めました。
 というのもジェイには学校に行かなくてもネットで何でもできる気がしたからです。義務教育は小学校の5年だけになり、科目は『読み書き』『計算』『日本』『世界』しかなくなってしまって、試験もタブレット持込可のために意味が無くなり(同じ答えが出るに決まっているため)、落ちこぼれが存在しなくなっていました。
 タブレットの機能は益々便利になり、同時にAIの進化はとっくに人間をこえました。すでに人間がAIを作るのではなく、どうすれば便利になるかをAI自身が考えるようになっています。
 もちろん全員が優秀になるはずもなく、アホはアホで天才は天才なのは変わりませんが、義務教育後のハイスクール(7年制)大学(5年制)も無償化されたのに進学しないのは普通のことになったからです。それでも誰でもが不自由なく暮らせる時代なのです。贅沢さえ言わなければ。
 語学でさえもAIによる自動翻訳機能で自由に意思疎通ができてしまい、興味の無い連中は選択しません。ただし正しい日本語教育が無ければならないので、読み書き音読教育だけは5年前とは違って充実したものになってきました。
 ジェイはこの読み書き音読はよくできて、決して頭は悪くないのですが、ちょっと変わっている子だったのです。皆と話していても一人だけ関係ないことを口走ったり、別のことをボーッと考えていたりでコミニュケーションが取れないのです。それに極端な人見知りで恥ずかしがり屋でもありました。
 御両親はやさしいお母さんと変なお父さんで、ジェイのことを大変に甘やかして育てています。同時にこの5年間の反グローバル・反成長の風潮に染まっていて大変な放任主義者のようです。

 ジェイは学校をやめて自宅から遠く離れたところに一人で暮らす事を決心しました。10歳の少年がです。自分で料理を作ってみたくなったからです。勿論収入なぞありません。しかし新たに導入された新アセット法によってベースの資産が国から支給されました。あらゆる物のコストも劇的に下がっていて、ネットで注文すればドローンが運送費無しでどんな所にも運んでくれます。住む家は高齢化が進んで田舎の方に空き家がたくさんあり、人口減少に悩む自治体がタダ同然でいくらでも選べました。
 更に政府の経済特区として自動運転導入特区が人通りの少ない地域で実験導入され、免許を持たない老人や子供がタダで利用できるエリアがS県の山間にできたのです。ジェイは両親とそこを見に行ってすっかり気に入ってしまいました。
 お母さんはさすがに心配して一緒に住むと提案したのですが、ジェイは大丈夫と拒否したのでした。
 お父さんは一番近所の家を訪ねました。近所といっても100mほど離れたところにお婆さんが一人で住んでいるだけでした。見た目100歳くらいの人で、
『あたしは50年以上ここに独りで住んでいるけど、事件も火事も災害も遭った事ないよ。時々様子を見てあげるよ』
 と最新式のセキュリティ・システムも紹介してくれました。このシステムはGPSで不審者や不慮の火事・事故、突然の体調悪化などをネットワークに繋ぐもので、御両親も渋々許すことになりました。
 そのお婆さんに時々面倒をみて欲しい旨、良くお願いもしました。おばあさんの家には表札もないので名前を聞くと、
「このあたりは皆おんなじ鈴木だから屋号で呼ぶんだけどウチは『家具屋』で通ってるよ。麓の方が『建具屋』『石屋』『薬屋』だね」
 だそうです。以後『家具屋さん』と呼ぶことになりました。
 ジェイは炊飯器・フライパン・洗濯機・タブレットを持ち込んで引越しました。

 10歳のジェイは一人で御飯を作り掃除をし洗濯をして暮らし始めます。おかずは初めはカップ麺や海苔の佃煮、卵焼きばかりだったのですが段々カレーライスや野菜炒めができるようになります。時々その家具屋のお婆さんに分けてあげるうちにお婆さんも漬物とか焼き魚をくれて、そういう時は一緒に食べました。
 タブレットで読書をします。そしてあることに気が付きました。子供の自分が読むものはあくまで子供向けに書いてあります。大人の読むものは分からない。大人が子供だった頃は、つまり今ほど便利ではなかった時代に流行った読み物ならわかるかも知れない、と。
 試しにお父さんとお母さんが生まれた頃、50年前の新聞を検索しました。
 驚いたことにその年までヴェトナムで戦争が続いて、南の方のヴェトナムが崩壊して統一されたという事が分かりました。信じられないことに肩入れしていたアメリカが撤退してしまう事態だったのでした。
 その頃の漫画『ブラックジャック』という医者の話にも夢中になりました。
 そこに家具屋のお婆ちゃんが様子を見に来て『そうそう、その頃は東西冷戦といってね』と複雑な国際関係や日本国内にも過激派というのがいたことを教えてくれました。その頃の25年前には日本は焼け野原になるくらいアメリカ相手の戦争に負けたのでした。
 何でそんなことになったのか、色々考えてジェイはもう50年前の事物を調べだしたのでした。
 1925年は大正4年という年です。
 ちゃんとした国会も裁判所もありましたが、なぜか公爵とか伯爵という貴族がいます。驚いたことに今の朝鮮半島と台湾が日本になっていました。
 車はまだあまりないようでしたが東京駅は出来ていました。
 さすがに服装は和装ですが銀座に『カフェ』というお酒を飲むバーがあるようです。
 するとこの時も家具屋のお婆ちゃんが来て
『うん、この時代は日露戦争に勝ったこともあってずいぶんと勢いがあったね。日本の文化と洋式が溶け合っていく過程に当たっていてハイカラな時代なの。竹久夢二っていうのが・・・(中略)。今で言う女性運動みたいなのも始まって・・・(後略)。』
 等と解説するのです。

 ジェイの様子を見にお母さんが来ました。ジェイは何と庭を耕しているではないですか。耕すと言っても小さいシャベルで掘り起こしているだけですが。聞けば料理の食材を作るのだ、とセッセと何かの種を蒔くようです。
 お母さんは暫くぶりなので御飯を作ってあげようと沢山のおかずを車で持ってきたのです。それを聞くとジェイは『家具屋のおばあちゃんも呼んでいいか』といい、夕御飯に招待しました。
 お母さんは家具屋のお婆ちゃんを見てチョットびっくり、前にあった時は小さい皺くちゃだったのに少し大きくなったような気がしたのです。色つやも良くなったというか、とても元気でした。
 そして二人はしきりに十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の話をしていて、タブレットを見ながら勉強をしているのです。『当時の言い方ではね』などとお婆ちゃんがジェイに古文の言い回しや古文書の解説をしています。オカミを風刺する川柳や滑稽本、浮世絵等を研究しているようでした。200年も前の歴史に夢中になっているのです。
 ジェイは上手に料理もしているようです。野菜スープが残っていたのですが、これがとても美味しかった。

 ジェイは12才になりました。AIとロボットが益々進化し、もう面倒な仕事というモノはずいぶん無くなってしまい言葉の概念も違って来ています。
『仕事に行く』とか『忙しい』という言葉は滅多に聞かれず、関西でも『もうかりまっか』とは言わなくなりました。『ちょいとヤボ用でね』とか『そこまでブラッとね』が挨拶になっています。
 久しぶりにお父さんがジェイを訪ねました。ジェイは背が伸びました。やせっぽちではあるのですが声も変わったようです。

「元気なのか」
「うん。お父さん僕のご飯食べてよ」
 フト机に習字の書き物が置いてあります。
『 紫衣の寺住持職、先規希有の事也。近年猥りに勅許の事、且つは臈次を乱し、且つは官寺を汚し、甚だ然るべからず。向後に於ては、其の器用を撰び、戒臈相積み智者の聞へ有らば、入院の儀申し沙汰有るべき事』
 墨痕鮮やかに書き下してありました。
「おい、なんだこりゃあ」
「あ、それはね、禁中並公家諸法度だよ。最近暗記してるんだ」
「はぁ」
「寛永の三代将軍家光公がね、朝廷が勝手に紫衣や上人号を授けることを止めさせたんだけど後水尾天皇は勝手にお坊さんに紫衣着用の勅許を出したんだ。そしたら幕府が怒っちゃって紫衣を取り上げた。これに抗弁した大徳寺の有名な沢庵和尚は出羽国に流される、という大事件になったんだって」
 聞いていたお父さんは腰が抜けそうになりました。
「お前そんなこと知ってどうするんだ」
 ジェイと食事をしていると家具屋のお婆ちゃんが訪ねてきて、お父さんは挨拶をしたのですが、顔を見てまた腰を抜かしそうになります。ややふっくらして皺も伸び、普通の白髪のお婆ちゃんくらいに見えるのです。二人の会話が聞こえて来ると、
「家具屋さん、ずーっと一緒にいられるといいね」
 等と言っているのです。
 二人はお婆ちゃんと孫といった趣で本当に家族のように見えました。こうして仲良く暮らしているのもいいのかなとも思いつつ、お父さんは息子は寂しくないのかと心配になったようです。
「友達がいなくても寂しくないのか」
「ちょっと前までSNSで意見交換したりしてたのは何人もいたんだけどみんな途中ではぐれちゃったんだよ」
「はぐれるって一緒に遊ぶ訳じゃないだろう」
「しばらく楽しくやってるんだけどそれぞれ興味のある時代に散っていくんだ」
「散る?」
「うん。例えば新撰組にひっかかってそっちの方になり切っちゃうとか関ヶ原まで行って帰ってこないとか」
「良く分からんが、おまえはどうなるんだ」
「僕は今、江戸時代の初めにたどり着いたけどどこまでいくのかなぁ」
 お父さんにはジェイが何を考えているのか、またこういった連中がいう”散っていく”意味がさっぱりわかりません。
「その”散る”というのは他のことが目に入らないバカみたいになることか」
「まあ近いけどちょっと違うね。真面目な奴は散らない。心配してるかも知れないけど僕達はまだいいよ。数学や物理に散って行ったのなんか変な仮説に夢中になって2~3ヶ月くらい計算式を組み立てているのがいるらしいって。あとスワヒリ語と日本語の区別が分からなくなったのがいたらしい」
「・・・・」

 ジェイは15になりました。世の中は進化型AIロボットが人間の代わりに殆んどのことをこなすようになりました。ジェイも安くなったAIロボを買い(こういうものでもドローン4台で宅配されるのです)畑を任せています。嬉しくなったジェイはそのロボットに「太郎冠者」と名前をつけました。「太郎冠者」は気候を判断し畑起こしから種蒔き、草取り、水やり、肥料などを自分で準備し(足りない肥料は発注までします)毎日働きます。最近はモグラの駆除までやっているのです。
 ある日お父さんとお母さんにジェイからビデオ・メッセージが入ります。なにかと思えばジェイが衣冠束帯姿でいるではないですか。そして、
「これより烏帽子親もないままではおじゃりまするが元服の儀つかまつり候」
 などと女性の音声が流れます。両親はヒマすぎてコスプレ趣味に走ったのかと仰天しました。それにジェイの後ろに家具屋のお婆ちゃんらしい人が十二単のような格好で映りこんでいるのです。それがジェイはかなり背も伸びて逞しさが出てきたのですが、お婆ちゃんもまたジェイのお母さんくらいの年齢にしか見えないのです。恐らく長く伸ばした髪のカツラでも着けているのでしょうが、本当に若返っているように見えました。
 あわてたお父さんとお母さんはジェイの所に飛んで行きました。
 家の前に車を停めようとしたところ中から鎧兜の武者装束の自足歩行型ロボットがやってきてロボットは即座に識別したようです。こういうロボットは既に社会の隅々にまで普通にいるのです。
「我があるじの親御様、遠路はるばるのお越し、出迎えもせず失礼をばもうあげソウロ。拙者太郎冠者と申しソウロ」
 一体どうなっているのか、室内に行くと開け放った座敷で机に向かって正座したジェイは一心不乱に筆で書き物をしていた。気が付くと『オォ、父上・母上』と佇まいを直した。そして傍らに居る妙齢のお姉さんに『家具屋殿、お茶を』等と命令する。そのお姉さんは例のお婆ちゃんに違いないのですが一体・・・、ますます若い、どうしたことか。
 机の上では何やら古文書を書き写しているようで、傍らに積んである和綴じの本は『太平記』とありました。今から700年前の物語です。その頃の生活を再現しようとでもしているのでしょうか。
 2025年になって世の中が便利になりすぎて一向に生活に困らないと、人間は、現実と乖離しても暮らせるようになり実際に起こっている事には関心がなくなるのでしょうか。
 それよりお父さんとお母さんにはジェイとお姉さん(この時点ではオバさんかも)と一緒に暮らしている親子か姉弟のように見えました。
 夕ご飯も当然のように一緒に取りました。そして良く観察していると、ズームやスカイプで話をする友達はいないでもないけど二人で暮らしているらしい、これはいい事なのか悪い事なのかわかりませんが放っておくしかないようです。

 2030年の新年にジェイからビデオ・メッセージが届きました。お父さんとお母さんは正月のお祝いでも言ってくるのかとワクワクしながら画面を見つめます。
 妙な節の雅楽が流れる中、女性の声で始まりました。
いまはとて 天の羽衣 着る折ぞ 君をあはれと 思ひ出でける
 続いてジェイと若い女性が平安時代もかくやと思われるきらびやかな格好で映りました。ジェイがやや高い声で続けます。
あはれとは おもわばおもえ 我もまた 天の羽衣 君と召すなり
 借景は輝かんばかりの月夜なのです。するとCGなのでしょうか、二人はユラユラと浮かび上がって行きました。そしてスーパー・ムーンのような山の端にかかる大きく赤い月に向かってスッと消えて溶け込んでしまいました。お父さんとお母さんは同時に『アッ』と声を上げました。
 というのもメッセージを繰り返し見ると麗しい女性は明らかに『家具屋』のおばあさんのうんと若い頃に違いありません、大変な美人ではないですか。
 両親はジェイの所に飛んで行きました。二人ともいませんが、家はそのままです。家具屋のお婆ちゃんの家は何ともぬけの空です。
 ジェイの机の上には色鮮やかな美しい『源氏物語絵巻』がプリント・アウトされていました。
 お父さんはお母さんに向かってつぶやきました。

『なんだかわからないけど、こう便利になると現実世界とは別に自由に身も心も飛んでいけるのかなァ。その方があの二人で幸せに暮らせるんだろうか・・・・。アッ、あのお婆ちゃんって「かぐや姫」だったのか』

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気を引き締めろ 危機に覚醒せよ

2017 SEP 10 21:21:49 pm by 西室 建

 水爆だと!いい加減にしてくれ。
 朝鮮総連の人達声を上げてくれ、あなたがたを見捨てるつもりだぞ。
 習近平よ、アレが北京に向いたらどうするつもりだ。
 プーチンよ、あなたがたも国境を接しているのだぞ。

 日本よ、慌てる事はないのだ、落ち着け。守りを固めよ。
 国連なんか当てにならないから、顔は立てるが別の知恵を絞れ。韓国・中国・ロシアに水面下で連帯せよ。
 そもそも分裂しているのが一番危ない。この国難に安倍総理以外に誰が頼りになるというのか。前原代表も小池都知事もミョーなことを言って足を引っ張るのをやめて頂きたい。
 こういったときに以下の言説を声高に弄するやからもまたヤバい。我々の防諜の一端を開示することにしよう。
① これ以上の制裁は返ってアノ国を追い詰めるからやめた方がいい。
② 拉致被害者が帰ってくる可能性がある。
③ 支持率が低迷する安倍総理は一発逆転を狙って訪朝すべきだ。
 これらの内容をマスコミを通じて流すような評論家・専門家はことごとく手が回って工作を受けているに違いない。相手にしてはいけない。
 ここは第七艦隊と戦略爆撃機のプレッシャーを飽きるほど繰り返し、潜水艦封鎖を1年以上続ける、日本は後方支援だ。これを日本海と東シナ海でやっていれば中国もロシアも重い腰を上げざるを得まい。
 しかしあんまり挑発が繰り返されると麻痺してくるのである。
 そしてこれは挑発する方も同じであることを肝に銘じておかなければならない。挑発が”通常”になると絶対にボケる。だから野党はあんまり政府批判をしていないで挑発を批判していて欲しい。
 因みに第七艦隊のイージスが海難事故に会ったが、まさかとは思うがブチ当てた船はどこかの息がかかって操船したんじゃなかろうな。
 安倍総理はトランプ・プーチン両大統領と電話会談に大童。特にプーチン大統領は中国滞在中であったことに注目したい。すなわち全部盗聴されているに決まっているからだ。何を話したか両者のトーンは違うが、そんなことはどうでもいい。盗聴されるのを知っている上で二人の外交がなされることが抑止力になるのだ。
 水爆ときては二発で日本は滅びるレッド・ラインどころかパープル・ラインを越えたぞ、アメリカは本気だ。
 ICBMは必ず撃つ。どうせならハッカー集団を総動員させて、無人のカムチャッカとか竹島にでもブチ当ててくれた方がいいのではないか。

 しかし私の懸念は別にある。
 私は御存知の通り保守派だが、世界の右傾化には警鐘を鳴らしている。米英の孤立化は全く好ましくない。
 しかし度重なる挑発行為に我が国がおかしな方に振れないか、である。
 外圧をモロに感じると必ず逆バネが効いておかしなのが出てくる。尊皇攘夷の天誅騒ぎや2・26を思い出してほしい。
 特にマスコミも冷静に報道だけしていればいい。いつもの煽り報道を続けていると必ず『来るなら来い』というのが出てきてしまう。
 以下はそういうケースのシミュレーションである。

202X年の怪 (日本侵略される!)

202X年の怪 Ⅱ(戒厳令ではない!)

202X年の怪 Ⅲ(何かおかしい!)

202X年の怪 Ⅳ(クーデター!)

202X年の怪 (エピローグ)


 こんなことになってからでは・・・。

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米・露はどう対応するのか

おじさんだって前向きに生きる 

2017 JUN 7 19:19:27 pm by 西室 建

 物忘れがひどくなってきて、つい最近のことやチョットした約束なんかは直ぐに忘れて不便な事おびただしい。
 しかしながら昔の自分の恥ずかしい過去やみっともない事跡だけが大脳皮質にこびりついているのはかなわん。脳科学者というのが最近大勢いるし、IPS細胞も飛躍的に応用範囲が増えるから、大脳のマズい記憶の部分を除去してイヤなことを思い出すようなことがなくなったらどんなにいいだろうか。
 昔の仲間四人で集った。
 こいつらと集ると『思い出したくもない』ことのオン・パレードだが、周知の事であるだけに話しもギリギリの寸止めで済む、お互い様だからだ。
 このメンツ、強いて言えばカタギは昔サラリーマンだった僕一人。他は皆自分でテキトーにそこそこやっている。そしてこの年になれば、だが全員ヤバい入院をしたりして危ないことおびただしい。
 一人はインドで犬にかまれて肝臓を患い、もう一人は心筋梗塞で3日程意識不明。僕はと言えばそこはそれ、酒に事故。現在は二人が睡眠障害で睡眠導入剤を使い、残りは時々15分ぐらい寝たりとか昼間フッと寝てしまうような奇怪な状態。泥酔して寝てしまうのと睡眠導入剤で眠りにつくのはどっちが体に悪いかでモメたが結論は出なかった。
 何れにせよこの年になると「今更」感が拭えず、今後は誰が生き残るかのサバイバル・マッチになることだけは確認された。そうなると俄然張り切る気になったものの、張り切ってどうする。もう手当たり次第とか、何が何でもといった惨めなマネはできないし、やり直しなんか絶対に間に合わない。
 結局どうするかと言えば、もうここまでヒネクレたオジさんは目の前にあることを丁寧やるしかないというドーデモいいオチになったのだ。それではあんまりだと色々話をしていると、どういう風の吹き回しか『これからは感謝の気持ちも込めるべきではないか』という驚くべきマトモな意見に集約される。
 この集まりには統計的に3シグマを外れて管理外のオッサン共の他に女性も一人参加していて(これもあんまり中央値ではなさそうだが)上記意見集約は意外だった。
 しかしですな、この年で夢のような目標を立てて計画倒れに終わるよりも、どうやったら楽しめるかの方に重きを置いたほうが楽と言えば楽。なにしろいつおかしくなるかは分からないのだから。
 いや別にヤル気のある人はやればよろしい。
 そして男と女では捉え方に違いがあるらしい、となった。男は過去の栄光にすがり、女はいつでも未来を目指すがアホな目標を立てるような真似はしない。これ私が言ったんじゃない、どっちが優れているという事でもない。ただ話の流れでそうなっただけ。

 去年死んだ親友は『引退したらやりたいことのオン・パレード』とうそぶいていた。それが何だったのかは聞かなかったが思い出すたびに煽られるような気がしていた。
『感謝の心』と言っても別にお国や社会に感謝するわけじゃない。人によっては宗教に当たるのかもしれないが我々にはそのカケラもない。強いて言えば『こんなオレ達でも何とかなっているのはやっぱり周りの皆様にでも感謝くらいしといた方がいいのではないか』程度。
 感覚的に近いのは映画『イージー・ライダー』のヒッチ・ハイクで拾ったヒッピーがいたコミュ-ンで貧しい食事に捧げる感謝の気持ちだろうか。もっとも彼らは”神”に感謝していたが。

 それで何をやるか、については飲み過ぎて結論を誰も覚えてなかった。
 

病室にて


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202X年型犯罪

2017 MAY 21 14:14:00 pm by 西室 建

 身代金請求型のサイバー攻撃とは、あまりの高度化に(僕は)ついていけない。ビット・コインで払え、というあたり益々怪しげだが、ビット・コインを買ったこともない身としてはどうしたらいいのか。
 こういった犯罪は生活が便利になればなるほど増え続けるだろう。
 犯罪組織にヒントを与えるつもりではなく身の安全を確保するため、将来の犯罪を考えてみた。

 自動運転が一般に普及し、免許も何にも無い人までが拠点間なら車で移動できるようになっている、ボケ老人でもだ。そこに目を付けたハッカー集団がシステムに侵入し、本人の行きたくないところまで自動的に身柄を運んでしまい、営利誘拐をしてしまう。
 考えてもみて欲しい。ヘラヘラ車に乗って行き先を入力しのんびりと外を見てフト気が付くと全然関係ない方に向かっていくのだ。無論GPSでどこにいるのかは管理されている。
 ところが高速のパーキングエリアに入っていって駐車するとドアが開く。屈強な男達が車を取り囲むと、もうあなたは為すすべがない。
 即、車を乗り換えさせられて拉致監禁。ネットで身代金の要求が載せられる。これは海外のインチキ・サーバーをいくつも経由しており出所は分からない。更に何者かの手によって拡散されて秘匿操作はできない。ケイマン諸島の謎の会社に送金せよ、とだけの表示で家族は慌てる、マスコミも嗅ぎつける、期限は後数時間しかない。金額も百万円程度だからサッサと払ってしまえ。
 しかし子供ならともかく、僕がボケてこの犯罪に巻き込まれたとしても、家族や知り合いは絶対に払わずに厄介払いができたと知らんぷりをきめこむだろうから犯罪が成り立たないのではないだろうか。

 色んな物のコストが安くなるにつれ高度に福祉が発達して認知症の老人も苦も無く暮らせるようになる。喜ばしいことだ。
 するとそこに目を付けた『成りすましアルツ老人』が出現する。「名前も分からない。自宅も分からない」とうそぶいてボケたふりをして保護される。そこでまがりなりにもタダメシを食って寝る所も確保できるとなると、僕がホームレスなら見逃さないぞ。今でさえ泥酔すれば『ここは、どこ』くらいのマネはオチャノコ・サイサイなんだから。
 ただしこれは元犯罪者にはできないだろう。指紋や将来の顔認証システムにより一発で身元が割れてしまう。僕は交通違反以外の犯罪で挙げられたことはないから、こっちの方なら結構イケるかも知れない。
 しかしもしどこかでボロが出て、単なるボケたふりであることがバレたら、その場合は何の罪に問われるのだろう、詐欺罪か。懲役はいやだな。

 メール乗っ取りも進化するだろう。メールが来るとする。いつもの相手だから普通のやりとりをする。返信が来た。『了解した。ところで』アレッ文章が切れてる。空白が続くのでスクロール・ダウンすると突然赤い文字になって・・・『 あなたのお蔭でとうとう体を壊し女房・子供とも別れて一人さまよい苦しんだのだ』などと綴られている。
 別にあいつは離婚もしてないしオレを恨むはずも・・・。
 わかった、思い当たるのは別の〇◎野郎がとうとうおかしくなってハッキングでもしてるのか。イチャモンを言ってきたのだな。
 すると不思議な事にあなたも返信しているではないか。
「そういうお前はなにかにつけて文句ばかり言っちゃーしょっちゅうキレてみせてたじゃないか」
キレるように見えたのはあなたが自分勝手なことばかり言って人の話を全然聞かないからだ
「たしかにお前の話はロクに聞かなかったが、それはお前の話が無内容だったからだ」
私以外の人間もみな影ではあなたの傍若無人に迷惑をこうむっていた。ウソだと思うなら添付のメールのやり取りを読んでみよ
「なんだこれは。どうせお前がバラ撒いたデマだろう。アホらしい」
別に信じてもらはなくても構わない。スクロール・ダウンしてもこのやり取りは永久に続く
「何が永久だ。お前がクタばったらそんなモン誰が読む」
私は既にこの世にいない
「冗談じゃない。出て来い」
 思わず声を上げた。

この時点であなたは人から常人とは思われないだろう。これはあなたの人格へのサイバー攻撃だったのだ。

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202X年の怪 (エピローグ)

2014 SEP 29 19:19:35 pm by 西室 建

「おい、村中。いつでもできると大口を叩いた割りにその時はちっとも来ないじゃないか。結局俺達は退役してしまった。」
「そう言うな、南。時はいつか来る。平和な証拠だ。そういう時にこそ我々同志で結束し引き締めていなければそもそもの意味が無い。」
「だが大室よ、田母神閣下も引退されたし、参謀役の後継者もいない。」
「そんなこと言ったって石原先生も佐々先生ももう完全にボケて使いもんにならん。第五次安部内閣は磐石で上手くいってるんだから。」
「大体村中、お前が前回の時2.26だの切腹だの物騒なことを口走って安部総理に嫌われたのがケチのつけはじめだろう。」
「今上陛下への上奏の随行も叶わなかったな。」
「ところで南よ。例の極秘計画は進んでいるのか。」
「勿論だ。愛子内親王殿下にふさわしい、旧伏見宮系の血を引くお方に内諾を取っている。後は今上陛下、皇太子殿下、そして何より内親王殿下ご本人の了解を得るだけだ。」
「バカ!それが一番大事なんだろう。そっちの工作は進んでいるのか。」
「それがどうにもこうにもガードが固くて・・・・。学習院ルートは頓挫したし、雅子様ルートもはかばかしくない。妹さん達の御一家にさんざん工作したんだが。」
「しょうがないな。何とかしろよ。大室のほうはどうだ。」
「例の光格天皇の御落胤の血筋のお方は確保して、通称『筑波仮御所』に匿われている。こちらのいいところはお顔立ちが先帝陛下にそっくりなことだ。もう一つの南朝正統のお方も『大和仮御所』におわすのだが、こちらは困ったことに素行がね。皇統の安寧は頭が痛い。」
「やっぱり民間暮らしを百年単位でやってしまうと帝王学の方は厳しいか。」
「フーム。我々の工作が実を結ぶようなことは無い方がいいのだが。親王殿下お一人ではお気の毒だ。」
「そろそろ後継者を育成しなければ、オレ達も年だ。この秘密結社も資金が続かなければ終わるぞ。」
「後を託すのは身内が一番いいのだが、オレは娘しかいないしお前等の息子は全く興味がない。」
「ウチでちょっとサワリを話したが相手にされずバカにされた。やっぱりあの後選挙なんかに持ち込まずに力押しすればと悔やまれる。皇居を確保できていたんだからな。」
「その代り陛下の怒りを買って死刑だったろうがね。」
「それでもやっておきたかった・・・・なぁ。」

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202X年の怪 (日本侵略される!)

202X年の怪 Ⅱ(戒厳令ではない!)

202X年の怪 Ⅲ(何かおかしい!)

202X年の怪 Ⅳ(クーデター!)

202X年の怪 Ⅳ(クーデター!)

2014 SEP 27 9:09:31 am by 西室 建

5日目
 朝の大本営発表に安全保障会議の四大臣と石原本部長、佐々議長、村中大佐が並んだ。野田総理大臣がしっかりした目線で始めた。
『お早う御座います。実は昨日ヒラリー・クリントン大統領と電話会談を致しました。我が国の冷静な対応を支持し、日米は全面的に協力することで合意しております。ロシアのコテルニコフ大統領とも電話で約10分会談しております。冷静な対応を高く評価する、とのお話でした。また、中国の劉建国家主席とは本日電話対談の予定です。我が国周辺は平成を保っており、国民の安全はひとまず確保出来ていることに変わりはありません。防衛・治安については大本営より発表です。』
 例によって石原本部長が目を瞬かせながら喋りだした。
『えー、ワタシの方からは二つ。周辺海域の防衛作戦は継続中。しかしながらどうも追加攻撃の可能性は限りなく低くなっております。政府と周辺国、即ち排他的経済水域を接している国家との対話は友好に継続されており、外交上の問題はない。次に、政府機能は既に通常状態に復帰しており、国民生活は平成を保っております。金融関連も昨日システム復帰し、決済・引き出しは正常に行われます。治安に関しては佐々議長から。』
この日は佐々議長は機動隊員の制服を着込んでいた。
『佐々です。まず昨日の一次的な電波ジャックについて、テロによるものと断定しました。その時点で都心部ローラー作戦を執行中ではありましたが、犯人逮捕には至っておりません。尚、捜索中の謎のゲリラ部隊についても同様に捗々しくありません。それから昨日都心部及び大阪で銃撃音が聞かれたという噂がネットを通じて広がっている模様ですが、そのような事実はなかった、と申し上げておきます。今後の展開については村中大佐から。』
驚いたことに村中大佐は第一種礼装に身を固めている。
『今後の方針についてお知らせする。昨日行われたローラー作戦を各地エリアを変えて実施する。エリアについては秘匿情報なので申し上げられないが、自衛隊車両を見ても決して慌てることなく粛々と行動されたし。公的機関は全て通常に戻るため、人通りは戻るので混乱することの無いように。自衛隊はあくまで治安のサポートだがこの国難に万が一のことが無いとも限らない。最高の緊張を持って国境を守る所存だ。総理の指揮の元、石原本部長、佐々議長の命令で一糸乱れず作戦を推進する。士気は極めて旺盛。以上。』
 自衛隊員が集団で街を闊歩していたり、特殊車両が行き交う事に国民は慣れてきているようだった。頭上には大型ヘリも飛び交う。
 心なしか村中大佐の発言が高揚しているのが多少危なげな・・・・。

10日目
 官邸地下に設置された大本営に安全保障会議並びに石原本部長・佐々議長・村中大佐が談笑していた。更に石原本部長付きの南大佐と諜報担当官の大室大佐が加わっていた。石原慎太郎がにこやかな表情で一同に語りかけた。
『いや総理はじめ各大臣、ご苦労様でした。計画通りに進みました。』
これまた満面の笑みをたたえた野田聖子総理が返す。
『石原本部長、佐々議長そして村中大佐、お疲れ様。いやはや名演技でしたね。』
『いやいや、役者がそろった今だから出来たんですよ。私が都知事になったのはこの計画のためでしたからね。』
『僕が言っただろう。いざとなったら日本は大丈夫なんだよ。このガバナビリティーを見ろよ。』
『石原さんと佐々知事や田母神さんが計画を打ち明けた時は正直冗談かと思いましたよ。』
『発案はこの村中君ですがね。大した男ですよ、実際。』
『小官は田母神閣下の部下時代に本作戦の根幹を着想しておりました。しかしチャンスが来ない。野田総理が安全保障会議担当大臣を全てしっかりした女性で固められ、田母神閣下が福島県知事に、佐々先生が都知事に当選されたのを見て今しかない、と思料いたしました。』
『まず地方をガッチリ固めてから首都を中心に警察と協力して制圧する。米軍の協力を仰ぐ。凄い着想ですね。』
『小渕先生、仰る通りであります。申し上げにくいのですが2・26の失敗に学びました。』
『いや、実際には犠牲者は一人もいないのですからね。初めの秘匿潜水艦隊からのミサイル発射も全く外さなかった。空砲とはいえ狙いの正確さはさすがに錬度世界一の海自だ。』
『オイ!村中!そう軽々しく口に出すもんじゃない!』
『総理、ローラー作戦中に威嚇射撃で多少のケガ人は出ました。何しろ右も左も過激派は根こそぎやりましたからね。暴力団もほぼ壊滅でしょう。現場は多少荒れたようですが、テレビを封鎖したり偽の画像をバラ撒いたり。戦車部隊の首都侵攻やF35まで飛ばして陽動作戦をやったのが効きました。第七艦隊を洋上に追っ払ったのも良かった。』
『現場で挙げた奴らは全部それをテロリスト対策として始末したんだから完璧ですよ。いずれ発表しますがね。心配の種だった岩国と沖縄の海兵隊が中東に行っていたのもいいタイミングだった。三沢の空軍は自衛隊とはズブズブの関係ですしね。』
『わたしと佐々は人生最後に夢を見られたので悔いはない。弟の歌ではないが、我が人生に悔いはない、だな。』
『慎太郎さん、じじいは引っ込みましょう。これで日本は一万年安泰だ。』
『いざ本当に我が国にどこかが侵攻してきたらもう一度これをやればいいのですから。何ならいつでもやってのけてご覧にいれます。』
『村中!そんなことお上が許すはずないだろ!研究するのはいいが2.26の時の先帝陛下のお怒りを忘れたか!バカ者め。』
『ところでチルドレンにしろ野党にしろアホ政治家は本当に何の役にも立たなかったわ。ため息が出るというか少しは知恵をめぐらせたり自分で情報を普段から取るなりしていればと・・。手応えないのねぇ。』
『ですが総理、残された大仕事が三つ残っておりますぞ。』
『わかっています。それこそまず陛下への上奏。そしてヒラリー・クリントンン大統領へのお礼と十分な安保条約堅持の説明。そして一か月後の参議院選挙に合わせて衆議院の解散をして衆参同時選挙に持ち込む。フゥ、大変だわ。断固やり抜かなければ。山谷大臣、早速アメリカに飛んで下さい。』
『かしこまりました。お任せ下さい。』
『それにしても上奏は気が重いわ。陛下はお厳しいから。まあ、私の内閣も総辞職でしょうね。後は・・。』
『イザという時はこの村中が皇居前で腹を切れば済むことです。』
『やめなさいよ、村中大佐!そんなことしたらバレちゃうでしょ。』
『村中君、そんなことしたらメディアの格好の餌食だぞ。アメリカだって気味悪がる。ここは先帝陛下に習い、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んでこそだ。あくまで民主的にやらねば。』
 その時扉が開いて一人の男が姿を現した。皆が拍手を持って迎える中、にこやかに挨拶しソファに腰を降ろした。
『安倍先生、お待ちしておりました。』
『総理、お疲れ様でした。皆さんもご苦労様でした。』
『去年の禅譲・後継指名はこの為だったのですね。私達最初はすっかり体調を崩されたのかと思いました。』
『前回の内閣で、このままではどうにもならない、ということが良く分かったからね。綿密に計画し、一切洩れなかったのが良かった。外圧を演出するしかなかったんだよ。アハハハ。』
『選挙後のプログラクは大丈夫ですか。再登板で第5次安部内閣の発足ですよ。』
『石原先生の「ひまわりの党」と連立して組閣します。維新の会も期待空しく無くなっちゃったからね。石原先生は自主憲法を言いふらして選挙を戦って下さい。ズバっと連立しますから。』
『任せておけよ。だけど最近は聖徳太子の17条憲法と五箇条の御誓文だけでいいやって考えだからな。そんなに細かくいらないだろう。』
『ところで、侵入テロリスト部隊は民間軍事会社への委託だったんですか、村中さん。』
『エッ!違いますよ。私の方はブラック・ウォーター社を使おうとしたのですが東洋人の数が確保できずに断念しました。石原先生が手配されたのでは・・・。』
『何言ってんだ。僕の方はロイヤル・グルカをスカウトしそこなってアメリカから日本語の喋れない連中を一個小隊手配しただけだぞ。佐々さんだろう。』
『冗談じゃない、日本人を使ったらあとでペラペラ喋られて大変な事になる。私の方こそブラジルの日系人コンバット・ゲーム・マニアを一個小隊手配しただけですよ。』
『なんですって!それじゃあの大部隊は・・・・。』
『えっ。』
『まさか・・。』
『総理!』

おしまい

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202X年の怪 (日本侵略される!)

202X年の怪 Ⅱ(戒厳令ではない!)

202X年の怪 Ⅲ(何かおかしい!)

202X年の怪 (エピローグ)

202X年の怪 Ⅲ(何かおかしい!)

2014 SEP 25 12:12:43 pm by 西室 建

3日目
 警察官大量動員による山狩りは徹夜で行われたようだが、何のニュースも入らない。東北・北陸およびその他数県で県警に迷彩色の自衛隊員が常駐する画像が流れるばかりで、肝心の山狩りの成果はさっぱり伝わってこない。
 新設の大本営統合会議は朝から非公開で行われており、午前9時に記者会見が行われた。野田聖子総理を中心に安全保障会議の小渕優子官房長官・小池百合子防衛大臣・山谷えり子外務大に加え新設「大本営」の石原慎太郎特命本部長が驚いたことに迷彩服を着ている。またしても佐々淳之東京都知事の姿が見えた。野田聖子総理がマイクの前に立つ。
『一昨日に一連の海上及び陸上への攻撃について、現在分かっていることは極めて正確なミサイル攻撃であったことが判明しました。どこから飛来したものかはただいま調査中。不正確なことは申し上げられません。但し標的であった可能性の非常に高い各所の稼働中の原発について、操業に支障をきたす物的人的被害は出ておりません。放射能の漏えいもなし。電力の不安は全くありません。東京をはじめ各所で起こった磁気爆弾の爆発は明確なテロ行為と判断し警察総力を挙げての捜査中。人的被害は軽微とは聞いておりますが、大量のテータが破壊されておりバックアップ体制が間に合いません。今以上の混乱を拡大させないため、1昨日申し上げた金融・株式市場の閉鎖は続けざるを得ません。従って大都市部はカード決済もできずスイカ等も一部機能は失われています。混乱をこれ以上拡大しないため、本日は全ての公的機関を休み。国民の皆様には今少し辛抱をお願いします。但し、物資の流通は政府が万全を期しており生活に不安は生じません。今しばらく待機下さい。』
続いて石原本部長がマイクを握り締める。
『えー、現在進行中の防衛作戦について説明します。米第七艦隊及び護衛艦隊は日本領海内で作戦行動中。場所は申上げられません。ところで護衛艦隊は第一郡・第二郡の二つで別々の海域に展開。第一郡の旗艦は新型の垂直離陸可能型F-35改を搭載した「いずも」。第二郡は同型艦の「かしま」。それぞれオスプレイを搭載した「ひゅうが」「いせ」を配備しました。それから海上保安庁所属の一部とイージス艦「みょうこう」は沖縄方面を厳重警戒中です。もう一つお知らせします。テロ行為をし得る進入部隊の山狩りについて、都道府県知事並びに各県警本部との連絡体制を構築中と昨日申上げたましたが、一元的に管理するため暫定的に大本営に直属した「治安統合連絡会議」を設置し議長に佐々淳之都知事を任命しております。これによって防衛・治安の一体化が図られ、より早く国民の安全が回復されるものと考えます。それでは佐々議長から。』
『急遽議長を拝命した佐々です。全警察総力を挙げての山狩りでの逮捕者は全くございません。ただこの画像をご覧ください。』
会見場に映し出されたのは山の中の景色だ。
『これは某県の山中のものです。鑑識の分析では24時間前には30人程度が潜伏していた形跡があります。毛髪・指紋・排泄物が確認されておりますが、人種、性別、年齢は明らかになっておりません。次の画像。このミニ・バンの車列は昨日東北自動車道で確認されたものです。ネットで寄せられたものですが、次のこの写真、もう一つ、すべて同じ車列でNシステムでもヒットしました。明らかに組織的な行動です。同様の事例は中国自動車道、中央自動車道でも確認されています。従って正体不明のテロリスト集団が既に都市部の繁華街周辺に潜伏している可能性、更には国内にこの集団を支援する団体が有り得るということです。治安連絡会議は仮にそのような事態があるとすれば、断固として破防法の適用を執行します。更に深刻なのはサイバー攻撃を受けていることです。磁気爆弾テロ後、防衛・治安・公安関係に被害が出ております。初めて明らかに致しますが、政府内部での連絡はすべてアナログ通信に切り替えました。国民の皆さんにおかれてもネットでのやり取りは非常に危険です。一両日中には現在の山狩り体制から、地下に潜ったと思われるテロリスト捜査に切り替えます。警察の総力はそちらに傾注しますが、治安は引き続き陸上自衛隊の協力の下大本営の指揮下にあるとお心得下さい。ご安心ください、私には遥か昔ではありますが、浅間山荘で連合赤軍と対峙した経験があります。』
あまりの迫力に質問は出ず、水を打ったように静まり返った。大本営発表以外ロクにニュース・ソースがなく、又唯一の情報元のネット・SNS等も危ない、となっては何が何だか誰も本当の事を知り得ない事態となる。いつのまにか不審集団はテロリストと呼ばれるようになり、国民は現金が底を尽きかけ、自衛隊は生活空間で可視化され、海も空も封鎖され、大本営の呼称は違和感がなくなった。おまけに海上自衛隊がヘリ搭載空母にF-35まで載せているとは、野党が活発な頃には大問題となりそうな話もなし崩し的に受け入れられてしまう。更に不思議な事に一人の犠牲者もいないのだった。
 新聞は情報を載せられず、論評も出来ず、テレビは娯楽番組(アニメ等)を流す以外することがなくなり、NHKは大本営発表に備え静止画に音楽を流し始めた。
 夕刊が出た。一紙は裏側が印刷されていない。ある紙は『首都 さながら戒厳令』と打った。又、『テロリストどこに消えた』とやったところもあった。更には『どこに行った政治家』の記事も出た。確かに情報もなく、官僚も寄って来ず、指揮する組織も無いチルドレン議員は衆参ともに何の役にも立たず、テレビにも呼ばれない。この非常事態に頼りにならない、とばかりに軽んじられるばかりだ。
 しかし、一般の日本人は別に大慌てでパニックに陥ることなく淡々と日常を過ごしていた。農村部に至っては、この騒動の影響が全く無いと言って良かった。度々の大災害の時と同様で、ましてや暴動など起きない。国民は緊張しつつも寝苦しい夜を過ごした。自主休業した都市部の繁華街はともかく、地方ともなるとさすがに客足は落ちたものの飲み屋は平然と営業していた。因みにプロ野球は全試合中止された。

四日目
 この日は6時に大本営発表が始まった。国民は固唾を飲んでNHKを見た。今回は石原本部長と佐々議長だけの発表だった。石原本部長がまず登壇する。
『おはようございます。私から申し上げるのは防衛作戦継続中ということだけです。』
こう言ってマイクを今は『車椅子の議長』となった佐々淳之議長にさっさと渡す(シャレじゃない)。
『まことに遺憾ながら山狩りの成果は全くありませんでしたので作戦終了しました。テロ部隊は既に都市部に移動していると断定しました。たったの四日でこうも機動力があるのは、ある種の軍事訓練を受けていることは間違いありません。本日よりは公安捜査中心に切り替え、具体的に言えば国民の皆さんの隣りに紛れ込んでいるテロ集団を摘発するローラー作戦になります。御協力をお願いします。特に滞在中の外国人等の方々、不快に思われれるかもしれません。ですが国家存亡の危機といっても大袈裟ではありませんですぞ。一時滞在中・長期滞在中・特別永住者等の皆さんは、積極的に協力をむしろお願い申し上げます。尚、関係各所の懸命な努力により、本日より株式・金融・公的機関を再開させます。ただ、空港及び海上の海外との出入国はまだです。当面は貿易閉鎖。失われたデジタル通信機能は徐々に回復しておりますが、万全ではありません。又、海外でもこの事態について報道がなされております。日本がテロに乗っ取られた、日本で革命が起こった、ひどいのは日本が侵略を始めた、と言ったような風評を流している形跡が確認されています。従って外国人記者クラブにて大本営からの正式発表を致します。本日の午前11時です。以上。』

 外国人記者クラブに詰めかけた報道陣の前に現れたのは、大本営報道官の村中大佐と名乗る軍人だった。流暢な英語で以下のような内容を伝えた。注)東京オリンピック時点で自衛隊の階級は旧軍の呼称が復活していた。
『日本版NSCの指揮の元、都市部に流入したと思われるテロ・ゲリラ部隊の摘発は順調とは言い難く、警察当局だけでは人手が足りません。従ってまず東京23区・名古屋市・大阪市・広島市・福岡市を封鎖し、自衛隊も動員させて大ローラー作戦を行います。首都圏をはじめ各地の高速道路出入り口は封鎖、一般道路にも交通を制限、各外国機関の出入り封鎖、宗教団体へも協力を願います。しかしこれは法令に基づく調査であって、対テロ封じであることをご理解されたし。12時を以て作戦開始。尚、報道は自由ですが捜査の邪魔になることは避けていただきたい。質問を多少受けます。』
『AP通信のライマンです。どの程度の期間になりますか。』
『できるだけ速やかに、としかお答えできない。』
『ワシントン・ポストのリューゲですが。どういった勢力の侵入と考えられますか。』
『全く分からない。敵対勢力なのかどうかも不明。』
『ロイターのマンソンジュと申します。指定された都市部以外への同様の作戦はありますか。』
『勿論だ。西へも東へも北へも南へも、日本中隈なくである。失礼。これより作戦行動に入ります。』
会場はざわついた。村中大佐の声が次第に高揚してくるのが画面を通じて国民に伝わった。

 午後から自衛隊の走行車両と兵員輸送車が轟音を上げながら現れた。首都圏に限っては実際には環状八号を、大阪地区は大阪環状線を、他地域も県庁所在地及び市庁舎を中心に、繁華街を囲み込んだ様だった。
 この時第二のテロが起こってしまった。
 テレビの全画面が砂嵐状になり、ラジオからは物凄いハウリングが溢れ出す。何がしかの電波ジャックが起きたらしい。国民は一瞬情報難民となったようだ。
 この間30分程、不思議な時間が過ぎた。どうも電波ジャックを受けたのは在京キー局のみだったようで、キー局配信の番組は写らなくなったが、地方のテレビ及びBS・CSは見られた。地上波も直に回復したが、その間唯一の情報共有手段となったネットに流言飛語が飛び交った。警告にも関わらず多くの人はSNSを使い、実際一部を除いては繋がりにくい程度の支障のため、不自由は感じていない。噂の類は様々で、都心で機関銃の乱射音が聞こえる、UFOの目撃情報が多数アップされる、某国が日本上陸の準備中だ、揚陸艦が接岸した、在日米軍が横田基地から逃げ出した・・・・。

 深夜、都内某所で声を潜めた会話が交わされた。
「なあ、テロだか何だか知らないけどあれだけ撃ち込んで来て一発も当たらないってよっぽど下手なのか。」
「死傷者ゼロのテロって何だろうな。」
「上陸部隊って何するんだろう。本土の実効支配ったって現実味ないよな。」
「オレたちこうして酒飲んでるもん。」
「そろそろ仕事しないとまずいぜ。」
「うん。」

つづく

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202X年の怪 Ⅳ(クーデター!)

202X年の怪 (エピローグ)

202X年の怪 Ⅱ(戒厳令ではない!)

2014 SEP 23 15:15:30 pm by 西室 建

 二日目
 朝6時、NHKは政府特別放送を発表するとテロップを流した。
 今回は小渕官房長官だった。石原本部長が脇に控える。何故か佐々淳之東京都知事の姿もあった。
『総理は官邸危機管理室に詰めておられます。私の方からはまず、金融・株式市場の閉鎖は明日一杯で、本日も決済は行われません。もう一つは本日衆参両議院の本会議を召集します。若干の不備があるやもしれませんが、午前11時から衆議院、午後3時から参議院の本会議です。討議はもちろん公開されます。くれぐれも本日中は国民の皆様の安全を確保するための緊急処置としてご理解下さい。冷静な行動をもって待機して下さい。具体的には石原本部長より発表します。』
 石原慎太郎がゆっくり登壇した。
『えー、これは戒厳令ではありませんよ。』
と笑いを取ろうと笑って見せたが、これは完全にスベった。
『只今から3時間後に全ての民間機の航空機の離発着を禁止します。続いて船舶についても入港出港を禁止。海上保安庁の全艦艇をもって臨検を実施します。アメリカ第七艦隊は海上自衛隊護衛艦隊と有機的に連絡を取りつつ、既に索敵を含めた作戦行動に移っており出動を完了しています。この一連の作戦は他国への領海侵犯及び侵攻を目的としておらず、集団的自衛権の憲法解釈範囲内であります。尚、不測の事態に備えるため特殊車両の市街地通行を許可すべく、道交法の改定を強く進言します。付け加えると昨日以来多数目撃されている、国籍不明の小隊は現在の所在が確認されていない。それこそ目的も何もわからない正体不明の部隊で、治安対策をどうするかここにいる佐々淳之都知事の意見を参考に各道府県知事と連絡体制を構築中。佐々知事、詳細をお願いします。』
車椅子の都知事、佐々淳之がマイクを握った。
『石原本部長の仰る通り、これは戒厳令ではありません。報道も規制されておりません。取材は自由でありますが、各人の安全を最優先すべきことをご理解の上で取材をお願いします。市民生活の安全が確保できるまでは気を付けていただきたい。ご覧ください。』
特別に据え付けられたスクリーンに各地から寄せられたメール等SNSの画像が映された。
『初めの画像は典型的な迷彩服に目出し帽の集団であります。小火器を携行していますね。こちらはGパンの集団ですが、ここを見て下さい、拳銃携行している可能性が高い。又、こちらは背中に背負っている荷物は野営の準備でしょう。目撃されたのは東北から日本海側の各県、北海道、太平洋側は茨木・千葉・静岡・紀伊半島・高知・宮崎・沖縄島嶼部。その後の行方は不明。最悪の想定はこれ等の集団がテロ行為を行う可能性があります。連合赤軍以来の国内での銃撃戦になり得るということです。従ってこれを排除、場合によっては制圧するため、各県警及び警視庁は総力を挙げていわゆる”山狩り”を行います。よろしいですか、警察による治安維持活動です。間違えないように。その間対象からの攻撃への備え、或いは都市部における通常治安維持に齟齬をきたさないよう、陸上自衛隊各県の普通科・施設科連隊を配置し総予備として当たります。その際市街地では軽武装。更に北海道等広範囲にわたる場合は特車連隊の展開が不可欠なので、先ほど石原本部長の言われた『道路交通方』の改定を待って速やかに出動させます。繰り返しますが警察警備行動の範囲内で、個別自衛権並びに集団的自衛権の憲法解釈を逸脱してはおりません。ところで官房長官以下国会の準備もありますので、会見は打ち切り、我々も移動し指揮を取ります。失礼。』
 11時、開催に合わせて議員達が国会議事堂にアタフタとやって来たが、一様に驚きの表情となる。議事堂が昨日はいなかった自衛隊員に護られているのだ。警官の姿も混じっているが遥かに少ない。迷彩服に身を固めた2千人ほど、習志野の精鋭空挺師団が堂々大型のバートルから落下傘降下して来たのだった。水も漏らさぬ布陣に普段はふんぞり返って議場入りする議員達もオドオドしながら入場した。前日、極秘に国会対策委員長会議が行われ、自民党高市早苗委員長から「この事態に国会として対処せざるを得ない。各委員会を開催している余裕はない。」の意見に押し切られ、各国会議員に非常呼集がかかったのだ。ただ、国会対策委員のいない共産党は欠席した。
『ギチョーーーー。本日は、最近のわが国領土への実態のある攻撃及び潜入部隊に対処すべく、状況報告並びに関連法案の審議を、ネガイマーーーース。』
独特の開会の掛け声と共に衆議院議長の指名を受けて野田聖子総理大臣が演説した。趣旨は状況説明以外に目新しいことは無い。最後には、
『何がしかの組織が我が国の安全を脅かしていることは明らかです。実は今まで報道されておりませんが、政府機関、防衛機関、金融機関等、国家の中枢への膨大なサイバー攻撃がなされております。我が内閣は各種関係先と歩調を合わせ、断固としてこれを阻止し、国民を守り抜きます。尚、これらに対する無慈悲な報復を持って対処することは考えておりません。』
と締め括った。準備も何もできていない野党陣営に質問で切り込めるはずもなく、騒然としたまま終わってしまった。もっとも情報の無さは与党も同じで、そもそも『道交法』が採決されたことに殆どの議員が気が付かなかったのだ。続いた参議院本会議は更に盛り上がりに欠けた。
 
 午後3時に、航空自衛隊浜松基地から早期配備されたF-35が次々にスクランブル発進を始めた。この時点の配備は未だ20機だが、3機編隊で轟音とともに離陸する。又、北海道の陸上自衛隊上富良野駐屯地から第2師団戦車連隊が小樽と根室に、静岡駒門駐屯地から第1師団戦車大隊が東京へとキャタピラ音と伴に出動を開始した。道交法改正の狙いはこれだったのである。これらの動きは専らテレビのニュースではなく、ネットへの画像アップにて国民の知るところとなる。又東京に限って言えば、2020年のオリンピックの為に整備された東京の都心インフラ整備によって、全ての高速道路は人知れずヒトマル戦車の通行が可能になっていたことは誰も知らなかった。改正道交法により駒門の戦車大隊はまっすぐに皇居に向かい堀端に配置された。照明に浮かび上がる戦車はさすがに不気味で、近寄る野次馬も出なかった。
 NHKの放送は中継以外に特に流すものが無くなったため、撮り貯めした番組は流せたがライヴ映像はない。泊まりこんだアナウンサー以外は局に来ることも出来ず、警戒に当たっている自衛隊員やヒトマル戦車、時々上空を行く自衛隊機を映す程度だ。駆り出される放送記者や評論家もステレオタイプの「軍国主義復活批判」のコメントは出せない、何しろ攻撃は起きてしまったのだから。夜中12時に石原本部長からブラック・アウトは解除の発表があり、各局も番組は流せたがタレントが集まらないためにバラエティ系の半組は全滅状態、ヘラヘラしている場合ではなくなってしまった。。

つづく

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202X年の怪 Ⅲ(何かおかしい!)

202X年の怪 Ⅳ(クーデター!)

202X年の怪 (エピローグ)

202X年の怪 (日本侵略される!)

2014 SEP 20 12:12:11 pm by 西室 建

一日目 
 北陸の某所、午前11時。原発が再開されたことにより、人の流れが戻った地方都市の沖合いに轟音とともに水柱が上がった。数発連続して爆発した後一瞬静寂が訪れが、直に数倍の規模の水柱が立ち、山間部でも煙が上がった。住宅街の市民も作業中の農民も、仕事を放っぽり出して逃げ惑った。ただ、作業中の発電所職員は、徹底した危機管理マニュアルに従って通常運転は粛々と続けられた。
 同じ頃、北海道・東北数箇所でも似たような水柱がいくつも上がり、何者かによる攻撃があった模様だが、何れも30分もしないうちに第一波が終わり、近隣の人々からのツイッター・SNS等でネットに攻撃時の動画や被害状況がアップされ、騒然となった。
 ところが実際の事変が全て人里離れたところばかりでテレビ・クルーが間に合わず、ヘリを飛ばした頃には海面は穏やかに、山間部には白煙が登るのが少し写される程度の画像しか撮れない。
 臨時ニュースがテロップで入った。どの局も進行中の番組を打ち切り、のんびりした映像の前で『何者かのテロ行為の可能性があります。』とアナウンサーが伝えた後に、あわてて体育館等に避難した人々の『いやもう物凄いキーン・バーン・ドーンという音に慌てて逃げ出したんだけど。』というインタヴューが流されるのみで、一体何が起こっているのか、誰にもわからないのだ。
 午後1時頃から、又ネットに奇妙な画像が現れた。数名の目出し帽を被った武装集団が隊列を組んで駆け足で移動しているのだ。ビデオに撮られた映像では、どこに行くのか整然と走っていく姿が映り『何かあったのですか。』などと言う質問には一切返事をしていない。すばやいテレビ局はその映像を流し始めた。
 午後2時、県庁所在地と東京、大阪、名古屋、横浜、神戸、博多で爆発が起こった。こちらはいずれもほぼリアル・タイムで報道され、焼け焦げた事務所等の画面とともに『同時多発テロ』という言葉が飛び交うようになる。日本中が騒然となった。
 爆発のあった大都市ではそれまで普通に機能していたインフラが一斉にダウンした。特に爆心に近い所で全ての家電やATM・カードが機能しなくなり、パソコンから携帯から全部駄目である。中心部はパニックになった。
 無論、官庁も企業も警察も全部だ。事態を重く見た野田聖子総理は急遽安全保障会議を招集。そのころ原発を抱える地方首長から、風評により治安維持が困難との報告が寄せられ始めた。
 安倍内閣から後継指名を受けて、盤石の船出だった野田総理は慌てていなかった。驚いたことに官房長官・小渕優子、防衛大臣・小池百合子、外務大臣・山谷えり子、の四大臣会議メンバーが全て女性であることに多くの国民は『アッ。』と息を呑んだ。そして、
『いずれかの国家および組織のテロ攻撃の可能性を捨て切れない。国民の皆様におかれては、どうか冷静に対処願いたい。国家の安全は全く問題ない。』
との声明が出された。
 午後五時、警視庁は大都市の一斉テロは時限型磁気爆弾の爆発、という見方を発表した。官邸と警視庁は磁気爆弾の影響はシールドされて無事なのだが、パニックに陥った人々には伝わらない。しかし郊外の周辺部や地方は何の影響もなく、日常が進行しつつあったが、各紙夕刊は『日本に本格的同時多発テロ』の見出しを打ったが、不思議なことに実際の死者・けが人といった犠牲者は殆ど存在しないようなのだ。
 大都市中心部は帰宅困難者で溢れかえり、警視庁機動隊の出動が時の首長『車椅子の都知事』こと佐々淳之から命令された。同時に佐々知事より自衛隊に治安出動要請があり、練馬と朝霧の普通科連隊が皇宮警察との協力の元、皇居と官邸の警護が始まった。何故か国会議事堂は警備対象から外された。
 ほぼ同じ頃、原発を抱える各県の知事から、地区自衛隊への治安出動要請がなされた。村井宮城県知事、田母神福島県知事はじめ、自衛官出身の知事が多いことに気が付いた人はあまりいない。各地では原発の内部・敷地内に各普通化連隊を中心とした部隊が配備され、周辺を機動隊が警備活動をするシフトが整然と敷かれた。
 午後7時、沖縄地区警戒活動中の海上自衛隊のP3Cが墜落したと政府が発表した。緊張は一気に高まり、メールが飛び交って全国民の知るところとなった。
 野田総理以下、安全保障会議の四大臣はNHKの画面に現れた。
『複数の発電所付近に原因不明の着弾と、国籍不明の武装部隊の目撃が報告され、また大都市部に機能麻痺を狙ったかと思われる磁気爆弾が爆発しました。被害は調査中ですが、国民の皆様の安全を確保するため自衛隊の治安出動をかけ、警察警備も全力を挙げて展開中です。どうか冷静な対応をお願い致します。必要ない外出は控えて頂きたい。尚、明日から公的機関・小中学校並びに高校大学・各種専門学校等、金融関係、株式取引は当面2日間を目途に休止。役所、製造業は2日間は必要最小限の出勤とします。通勤、通学の安全が確認でき次第早急に平常に戻すべく新たに布告致します。』
 一気に喋ると、続いて小池防衛大臣が登壇し、
『事態を収拾するために、安全保障会議に海上保安庁を管轄する国土交通大臣と警察を管轄する国家公安委員長を加えた「大本営」を設置し、その下に在日米陸軍・空軍・第七艦隊・海兵隊並びに自衛隊統合幕僚会議を並列して大本営作戦本部とし、石原慎太郎衆議院議員を特命本部長とすることにしました。事態の進展に逐次政府発表をお待ちください。』
と締めくくった。石原慎太郎議員は既に90歳を幾つも超えていて、会見場はどよめきが起こった。
 その後、さすがに中心部の盛り場の表通りは人通りが減っって夜が更けていくが、よく見ると飲み屋は普通に繁盛しており、パチンコ屋もゲーム・センターも普段と変わらず営業している。地方都市では何の変化も無かった。
 しかし真夜中12時に突然「緊急政府発表」のテロップが流れ、再び野田総理が画面に現れた。
『容易ならざる事態が進行中です。但し、良くお聞きください。現在何者かの攻撃があることが想定されていますが、現実に十分なる抑止がされて国民生活になんの支障もきたしておりません。しかしこれから24時間を情報遮断、ブラック・アウトと致します。なお各社の報道は規制されませんが、通信障害を起こすので地上波は随時制限させていただきます。以下具体的な状況は石原本部長より申し上げます。』
代わって石原慎太郎がスックと立ち上がる。例によって偉そうにマイクの前に歩いてきて目を瞬かせた。
『まぁ戒厳令などと言えば騒ぐバカもいるかも知れんから、外出控え勧告ぐらいに思ってくれ。各地に攻撃を受け、一部ゲリラ部隊の侵攻があったやもしれないのだが、確認に至っていない。被害状況は現時点では極めて微小。しかし万が一に備える意味でも慎重に行動して頂きたい。尚、自衛隊全部隊に出動準備命令を、在日米軍に緊急即応準備要請、海上保安庁全艦船に出港待機、警視庁並びに各自治体警察に機動治安体制発動、全消防に防災体制準備発令。交通規制はしないが、24時間の情報遮断。即ち地上波の一部使用禁止だな。娯楽番組を止めろ、なんて言わないから。次の発表を待っていてくれ。NHKは自主報道と政府発表のため、私のところで管理せざるを得ない。答えられないことが多すぎるので、質問はなし、だ。』
 画面は解説者とアナウンサーのスタジオに切り替わったが、結果として何がどうなっているのか誰にも分からなかった。

つづく
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