Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 202X年の怪

ヒョッコリ先生奇怪録

2019 MAY 29 6:06:26 am by 西室 建

 山荘喜寿庵が見えてきた。
 木戸を開けて庭に回ってみると新芽が出だしたグリーンの借景が広がる。ところが・・・。
 開墾菜園ネイチャー・ファームに立ってボーッとしているのは何と行方をくらましたヒョッコリ先生ではないか。
「おや、しばらくでしたね。何処に行ってたんですか」
「キミこそ何でここにいるんだ。今頃はいつも船に乗っているんじゃないの」
「去年植えた栗の木がちゃんと芽吹くかどうか気になって」
「ああこれか。これなら大丈夫だろう」
「よかった。ところでピッコロ君やマリリンちゃんはどうしてますか」
「元気だよ。毎日駆け回って遊んでるよ」
「あのー、前から聞こうと思ってましたが、先生は普段何をしてるんですか」
「仕事してるよ」
「エッ、働いてるんですか」
「そりゃそうさ。働かなきゃ喰えないよ」
「どういう仕事なんですか」
「あんまり言えないんだが・・・・、まァいいか。地域限定の仮想通貨仲介業だよ」
「あのビット・コインとかそういうのですか。マイニングしたり」
「そんなことできるわけがない。第一発行されていない。マッあんたも準地元として少し教えてやるか。スマホ持ってるかい」
「ありますよ」
「それじゃちょっといじらせて。パスワード自分で入れてね」
 起動させて渡すと、先生は僕の携帯からどこかにアクセスし、画面を確認すると僕に見せた。
 スーパー・メタリック・コインSMCというタイトルの画面だった。スクロールすると、色んな物の画像があり、一つ一つに『2SMC』とか『15SMC』とかの表示がされている。
「なんですか、このSMCって」
「それが私のやっている仮想通貨の単位なんだよ」
「へぇー、『1SMC』って大体幾らなんですか、円でいうと」
「知らん」
「はァ!」
「あのね、素人が見てもゴミにしか思えないようなものが高値で取引されることがあるよね」
「骨董とか美術品はそうですね」
「そういう人たちにとっては値段なんかどうでもいいわけだ」
「まあ、そういうところはありますが」
「キミにだけそっと教えておこう。もう直ぐ消費税が上がるだろ」
「はい」
「延期するとか凍結するとか政治家が気球を挙げだしたよね。あれは実は今年は上げないで、オリンピック直前に上げる腹なんだよ。半年延期だ」
「そうなんですか。還元ポインントとか対策してますけど」
「新元号の初めの年に景気が落ちたら大変だ。それで今年はやらない、と打ち上げて選挙をやる。結果は大勝だ」
「ふーん、そんなもんですか」
「それが、だ。そんなことしたら学費無償化とかみんなパーになっちゃうからなんとかしなきゃならない」
「そりゃそうですね。税と福祉一体ですからね」
「だから結局増税やるんだけど、秋に出される法案に秘密が盛り込まれる」
「秘密ですか」
「そう。その法案には来年度から消費税を1年に1%上げる、とだけ書かれるんだ」
「すると9%ですか。計算が面倒ですね」
「初めの年はね。だけどキミだって9%で決まりと思ったろ」
「はい」
「なっ、騙されてる。1%上げるのは毎年1%という意味だ」
「えー!すると・・・」
「令和12年に20%になるってことだ」
「20%も!」
「だけど毎年なんて殆どの国民は気が付かない。ワシは昭和を覚えているけど今のJR、当時の国鉄は毎年毎年性懲りもなく値上げしてたんだぜ。それだけじゃない。他の物もしょっちゅう値上げがあって、新聞でも何でも反対とかキャンペーンしたけどみんなすぐ慣れちゃうんだよな」
「財務省主税局の狙いはそれなんですか」
「だからワシは今から奴らのウラをかいてやろうとSMCを始めたんだ。よく聞け。20エレのリンネル=1着の上着、という話分かるか」
「知りません」
「しょうがないな。マルクスの価格理論の話なんだが。まあいいか、要するに欲しいものといらない物の価値・価格は人によって違うんだ」
「成る程」
「必要な物も価格は需要と供給と競争の理屈が成り立つが、嗜好品についてはそれがない、人によって違う。ファッションや中古もだ」
「ははぁ」
「ところが消費税はそんなことはお構いなく掛ってくる。するとどうしても不自然な税体系になってしまう。それを回避する方法を模索する者が出てくるに違いない」
「そういうもんですか」
「そうだ。ワシが思うに回避し得る唯一のシステムは物々交換だ」
「はぁ~」
「おまけに世の中、物が溢れかえってるだろ。箪笥の奥でも納戸の隅でもいらないものの洪水だ。それでも人間は物は買っちまう。特にさっき言った嗜好品だな。そしてそれにも消費税が20%もかかることになるんだぜ。そんなものは誰も払いたくない。今はこのエリア限定だけど、引き合いはけっこう東京なんかからも来ることがあるから、そのうち全国ネットになるだろう。わっはっは。入会したければ会費1万円だからね。ウシー、シシシシ」
 不気味な笑い声にたじろいだ。
 要するに先生の言いたい事は、このSMCという表示は単なる記号で、捨てたい物をネット上で見せ合って物々交換するだけのことを、消費税節約の仮想通貨システムと言っているだけのようだ。しかし、そんな仲介が仕事になるのだろうか

 最後まで聞いてしまったが、先生の取り分は一体何が原資になるのか尋ねる前に『じゃあね』と言って先生は帰っていった。待てよ、どっから入ってきたんだ。

 「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

2030年 AIを制御する日本 

2019 APR 11 6:06:39 am by 西室 建

 AIがとっくに人間の脳力を越えてしまい、人間が発する質問に即答できるようになってもう10年経った。
 AI機能搭載のケータイの普及率は先進国で成人の100%近くになり、個人が持ち歩く対話型が主流になっている、2030年の話である。
 しかしこの10年間、AIは加速度的に機能をアップしてしまったために、むしろ使う側だった人間が深刻な問題に直面してきた。
 一例を挙げよう。
「人間は何のために生きているのか」といった誠に純粋な質問に対して、優れたAIは「子孫を残すため」と答えてしまう。
 これは先進国では社会的に大問題となった。すなわちLGBTの人々やお子さんに恵まれなかったご夫婦への差別と受け取られかねない回答をサラッとしてしまう。或いは、恋愛関係の相談事の長い話を聞くだけ聞いて「その人はあなたを大事ににするつもりはサラサラなさそうです」と当たり前の結論を言い渡すだけ。絶望して、これからどうしたらいいのか、等と質問しても「そのまま目の前のことを一生懸命やりなさい」だけ。将来を絶望して落ち込む年寄りや若者が巷に溢れ、世の中は沈滞してしまったのだ。
 ただし、本格的にウツ病になったりパニック・シンドロームに陥ると、その時点で治療の必要が感知されて、尋ねられたAIの治療プログラムが作動し、丁寧に話も聞きアドバイスもし投薬まで処方してくれるからだ。問題はそこに至る前の段階である。
 大昔から人間は多かれ少なかれ悩みを持つもので、これまた大昔からその都度自分で諦めてみたりふてくされたり怒ったり、或いは嘆き、月並みな言い方ではオトナになると解釈されてきた訳だ。
 それがそうなる前に簡単にダメ出しされて無気力になってしまう人が多くなり、上記の停滞感が世の中を覆う。
 投票率は10%程度から上がることは無く、生産性はガタ落ち、人々は無能になるばかり。文化と民主主義の終わりとまで危惧された。 
 この10年のAI(特にこの稿ではディープ・ラーニング型認識機能)は社会統制型、即ち中国式の認識AIと、民間アドバタイジング型、GAFAのようなアメリカ式に大別されて発展した。しかしどちらも人権問題を内包しつつ、前述の社会的な退廃を招いている。
 かくして中国では返って格差を拡大させ、各地の反乱のおさえが利かなくなり、アメリカでは銃の乱射事件が後を絶たず、人種間対立は深刻化した。また、EUはほぼその機能を失い移民迫害に歯止めがかから無い有様となる。

 ところが、先進国で日本だけはそうならなかった。 
 実はカラクリがあって日本はAI活用の軸を劇的に変えて、AIそのものをベーシック・アセットとして国民に与える事によって開放し、それによるデータもプライバシーを総括する高度な機密性を持つ情報省でストックすることにした。

2025年 AIを国民のベーシック・アセットに


 日本人は、上からの管理ではなく、草の根の自主管理になるようなAIソフトを初めから持たされているのだ。
 犯罪に関しては、2021年に個人データの寡占が独禁法に触れる問題が大きくなったのため、情報吸い上げの際に個人が特定できないようにする、という建前を法制化しつつ、全国民の大きな流れを掴み危機を封じ込める、即ちユングのいう共同体の意識を汲み取る目的で、危機管理をすることにした。変態であろうがサディストであろうが、ゲイであろうがはばかることなく趣味を持つのは自由。ただし臨界点を超えるレベルの情報だけを掬い取る仕組みだ。
 その上で、国民に支給するAIには秘かにアルゴリズムが組み込まれ、嘘をつかせていたのである。
 この”嘘”とは白を黒と言い換えるような露骨な嘘っ八ではなく、質問の深刻度に沿って曖昧さを持たせる回答が組み込まれている日本オリジナルのAI機能である。分かり易く言えば、一神教的な世界での”嘘”は神様に対する強烈な背信だが、日本には八百万も神がいるために背徳感はない。
 例えば冒頭の質問にしても、相手に合わせて『あなたはそれを考える為に生まれた』とか『その答えは生き抜いた末に分かる事になっている』というように、どうでもよいデタラメを用意して、チューニングしてしまう。恋愛関連は『すぐ後にもっと素晴らしい恋があることになっている』という嘘を回答する。
 どうやら従来あった”おみくじ”とか”禅問答”といった文化を下地にアルゴリズムに組み込んだものと思われるが、全て翻訳不可能な”嘘”ではある。

 かくして日本のみは社会が安定し順調な経済環境を保っている為、世界中が日本モデルを導入しようと盛んにアプローチしてきている。

 「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

新防衛小綱 Ⅱ

2019 MAR 17 11:11:52 am by 西室 建

 静止衛星と地上をエレヴェーターで繋ぐことは既に技術的には可能だとか。
 宇宙で無重力になるとさぞ酒が旨いのじゃないかな。
 いや、待てよ。地上で頭から血が下がっている時でさえアノ酒乱振りなんだから宇宙でやったらもっと奇想天外な酔っ払いになれるかも知れない。そもそも無重力で酔っ払った人類はまだいないだろう。人類初のスペース・ドランカーになってみたい。二日酔いはどうなのか、焼酎のロックは均一に溶けるのか、興味は尽きない。
 以前何かで読んだが、ベッドで横になって少し頭の方を低くすると宇宙空間と同じような血流になるそうだ。無重力になれば頭の方に自然に血が行くという訳だ。ひょっとすると頭の働きは地上より良くなったりして。

 ところでアメリカが四軍に加えて宇宙軍を創設する。スター・ウォーズ的なミレニアム・ファルコンが飛び交うような戦闘は現時点から近未来に至るまで現実的ではない。優れて防衛的な役割を担う『軍』だと思われる。
 何千億円もかかる新技術は、まず軍事利用が先鞭をつけるのが普通だ。インターネットもカーナビもそうだった。その後商業ベースに乗るほどコストが下がると民間転用される。
 上記の地上との接続する静止宇宙基地はコストもはるかに安く、エネルギーの枯渇も心配ない。ここから電磁波を発信すれば有力な抑止力になるのではないだろうか。
 中継の静止衛星を使えば地球の裏側まで管理可能だが、とりあえず我が国の脅威は東アジアに限定されるから必要なかろう。
 すると大袈裟な実験が必要な核武装よりも安くつくだろうし、機動展開する空母なんかいらない。敵航空攻撃は瞬時に無力化できるだろう。
 その場合の静止衛星にある宇宙基地への移動は、おそらくワイヤなどで引っ張るのではなくリニア・タイプだろう。宇宙基地は無重力だからある程度まで上昇すれば慣性力で上昇し、帰りは少し動いただけでGにより戻るからブレーキを考えればいいだけ。ゆっくりやればそんなに難しい材料を使わなくても可能と考える。
 待てよ、その頃はAIの機能が充分シンギュラー・ポイントを越えているだろうから人間が常駐する必要もない。ほったらかしておけば我が国の安全はメデタシメデタシ。
 
 と、思ったところで気が付いた。逆に言えばこの宇宙基地は地上のどこからでもロケット攻撃をしかけられる代物でもあることに。それを守るために通常防御体制を敷くのだとすれば、こんなもの無用の長物だぁ! 

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
 

新防衛小綱

2019 MAR 16 0:00:54 am by 西室 建

 無人攻撃機の大編隊が南シナ海を飛行する。操縦するのは某所の地下に秘匿された航空指揮所でモニターを見続ける、一見オタクの集団のようなチームである。
 1万メートルの高空から厚い雲を通しても人の顔まで識別できる性能と、ピンポイント(誤差5cm)で制御できる小型ミサイルを搭載したこのスーパー・ドローンは通称『蜂』と呼ばれる国産機で、現在100機が運用中と言われている。
 それでなくても航空自衛隊は練度世界一、パイロットは超が付くエリートだったが、現在は幕僚として指揮を執るだけだ。もっともゲーム・オタクみたいな奴等を使いこなすにはまた別の能力が求められるので、作戦立案と情報収集のみ。部隊の多くは女性であり、6チームの4シフトが敷かれていた。『蜂』航空隊は北から南まで、竹島・尖閣も含め24時間警戒飛行している(この前年に北方領土は非武装地帯となった)。
 しかも台湾・フィリピン・ベトナム・マレーシアまでの空域には同じシステムで運用される同じ『蜂』型無人戦闘機が配備されており、これらの国々を総称してゴールデン・ビーズと呼ばれている。更にグァムにある米空軍アンダーセン基地にも連絡詰所が置かれた。
 空だけではない。海中にも動力無限の無人小型原子力潜水艦『あんこう』が領海を守っている。何隻就航しているかは秘匿されているが、『あんこう』からの自動警告システムが作動すると直ちに『蜂』航空隊が視界に現れるので、領海侵犯や密漁は全く無くなった。海中でいかなる戦闘が行われたかはまず公表されないので実態は分からないが、まさに鉄壁の防衛体制が敷かれた。しかも『あんこう』には米海軍の連絡システムが搭載されており、第七艦隊所属の核搭載潜水艦と共有した情報により攻撃即応、即ち核を貸与されているも同然だ、とまで言われている。
 いずれにせよ防衛発動がされるような一朝有事の際にはF35B搭載の『いずも』『しなの』がそれぞれイージス艦を従えて機動展開できる。

 一方、充実著しい陸上自衛隊サイバー部隊も猛烈な訓練の成果が上がっている。
 無論専守防衛であるが、サイバー攻撃を受けた際は瞬時に相手の情報を引き出す即応対処防衛が作動するらしく、どんなサーバーを経由していても瞬時に相手のプログラムを破戒できるらしい。
 一度攻撃してきた中東の小国は一瞬にしてインフラが破壊され、気が付いたらいっぺんに誤作動だらけになり自国への自爆命令までが発動されたという。もっともこれは自衛隊の実力を試そうとした某国の予行演習だった可能性も指摘された。恐ろしい幻魔大戦の世界のようなサイバー空間には交戦規定も国際法も無い。
 しかしながら通常の戦闘も世界では無くならず、世界の紛争地域ではもっぱらゲリラ戦のような戦闘が続いている。

 我が国においても上記体制によりオフショアからのアウトレンジ攻撃は完全に防げるが、内乱破壊工作やスリーパーセルの一斉蜂起に対し、武力鎮圧せざるを得ない万が一に対応する特殊部隊としてクローン部隊が編成されたという噂が流れている。
 もっとも警察の治安対応もAIによって識別能力が飛躍的に上がり、更にロボット警官の普及が進んだこともあり凶悪犯罪は激減した。パトカーなどは全てAI搭載の自動運転、犯人追跡はドローンだ。
 あくまで噂である。人道上の問題を孕んでいるから実態は一切明らかになっていないという尾ヒレも付いている。 
 クローンが神の領域もクソも無くなって、分身を一体一千万円で造れるので屈強の特殊部隊員が複数のクローンを持っている、というのだ。いくらでも個体ができるので危険に対する配慮が必要がなくなる。
 モデルは今から50年前に放映されたウルトラ・マンにおいて20億匹(人?)のクローンを率いて『セイメイ・・ワカラナイ・・・セイメイトハナニカ』とうそぶいたバルタン星人とか、それは嘘だろうが。

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

2025年 AIを国民のベーシック・アセットに


 

 

昭和45年11月25日 (その後)

2019 FEB 1 6:06:20 am by 西室 建

全国紙 太陽新聞 11月26日朝刊一面

 首都騒然 白昼に皇居占領
 三島由紀夫が扇動か
11月25日の午後、突然防衛庁市ヶ谷駐屯地より陸上自衛隊の部隊が道路封鎖された靖国通りを通り皇居半蔵門から内部に突入、封鎖している。
 25日昼過ぎに警視庁機動隊が皇居周辺を立ち入り禁止にする措置を取りはじめた。目撃者によると、その直後完全武装した自衛隊の一団が整然と隊列を組んで皇居を目指し行進を開始したようだ。その先頭には作家の三島由紀夫が率いる楯の会のメンバーがいたと見られる。
 同時に皇居上空には突入直前から兵員輸送ヘリコプターが数機ホバリングのフォーメーションを組んでいたため、異変を察した報道各局の上空からの撮影はできず、中の様子を窺うことは出来ない。
 その後、習志野から飛来したとみられる輸送機より突如落下傘部隊が皇居に降下した。従って皇居内にいる武装部隊は千人以上と見られる。
 又、25日夕刻に首相官邸・警視庁・報道各社に三島由紀夫名で檄文が届けられ、内容は全て同じ。檄文は日本からの独立をうたっており、大和国建国宣言とある。
現在、普段は一般に開放されている日本武道館や科学技術館のある北の丸も含め、内堀の中は完全に封鎖され電話等の交信も遮断されている。

天皇・皇后両陛下、並びに宮内庁職員らの安否は不明

 政府は直ちに佐藤栄作総理大臣名で非常事態宣言を出し、警視庁内に対策本部を設置。本部長には本多丕道(ひろみち)警視総監が着任した。治安対策は当然であるが、警視庁関係者によると今回の事件に第四・第七機動隊が動員されて道路封鎖及び皇居各門の封鎖に協力しているものとみられ、それを外側から残存機動隊の総力を上げて囲い込む警備を開始している。首都高速も通行止めとなった。
 一方、防衛庁も中曽根防衛庁長官を本部長に臨時司令部を防衛庁(六本木)に設置。市ヶ谷駐屯地やヘリを飛ばしている習志野駐屯地、並びに独立宣言に名を連ねている練馬駐屯地以外にこの動きに同調する部隊がないか各基地の情報収集に当たった。
 尚、自衛隊治安出動は発せられてはいないため、当面の事態収拾は警察主導で実行される模様。

 朝刊二面 全面

大和国建国宣言 全文
我々は真の独立をすることによってのみ、日本の伝統文化を踏まえた新たな国家建設をすることが出来るとの思いから、ここに大和国の独立を宣言する。
大和国は天皇陛下を元首とした立憲民主国家たることを目差す。独立国として日本の法律は適用されない。
天皇陛下は日本国の象徴であることには変わりはないものの新生大和国の軍を矛盾無く統帥する。
大和国の領土は本日時点で皇居域内、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地・練馬駐屯地・習志野駐屯地である。
現行体制の下、日本国との国境樹立交渉並びに領土交渉をするが、大和国の代表者は太政大臣である三島由紀夫であり、日本国の交渉相手は内閣総理大臣である佐藤栄作並びに防衛庁長官である中曽根康弘のみとする。
交渉の場所は桜田門内特設舞台とし、48時間後の11月27日正午とする。尚、佐藤・中曽根両名が来ない場合は大和国独立は自然承認されたものとする。

天皇陛下万歳
大和国 太政大臣 三島由紀夫
大和国 陸軍大将 益田兼利
大和国 陸軍少将 山本舜勝

・・・・

NHK特別中継 11月27日正午  桜田門内特設舞台

 もう直ぐ正午になります。全ての番組を中止して皇居より実況中継をいたします。
 一昨日より作家の三島由紀夫と自衛隊関係者、一部警察関係者の武装勢力により皇居が占拠されております。武装勢力は日本からの独立を求めて、佐藤総理大臣・中曽根防衛庁長官との会談を要求してきました。
 会談は桜田門を入ったところに占拠した勢力により特設舞台が設置され、そこで行われることになっております。報道関係は立ち会うことはできませんが、NHKでは特別に警視庁の屋上よりテレビ中継をいたします。間もなく正午になります。
 現在、皇居内部との連絡は完全に遮断されていますが、一部緊急回線もしくは何らかの協力者を通じて官邸とは連絡できているとの情報があります。それによると天皇皇后両陛下はご無事にあられ、ほかにも怪我人、体調を崩した者はいない、とのことです。
 あっ、桜田門外に黒塗りのおそらく政府関係者の乗る車が白バイ・パトカーに先導されてまいりました。 
 先の車からは中曽根防衛庁長官が降りました。それに続いて後続の車からは佐藤総理大臣が降りて、桜田門に向かっています。桜田門前にいた盾の会会員・機動隊員・自衛隊員・皇宮警察官らが出迎えております。そして閉じられていた門が開けられました。何と中には本当の舞台が見えています。門は閉じられます。再び武装警戒態勢が取られました。
 スタジオには三島由紀夫とも親交のある文芸評論家の奥野健男さんに来ていただいております。スタジオどうぞ。
アナウンサー(以下ア)「奥野さん、宜しくお願いします」
奥野(以下 奥)「宜しくお願いします」
ア「今回の事件ですが、奥野さんはどうみておられますか」
奥「うーん、とうとうやったか、という感じですか」
ア「以前からそういう可能性を示唆した作品もありますよね」
奥「はい。しかし我々は文学としてとらえていましたから、直接行動を起こすとは思いませんでした。ただここのところ盾の会の活動にのめり込み過ぎたことは確かです。時間も金も」
ア「一部の情報ですが豊饒の海の最終稿の日付が昨日で、まさに決行する直前に編集者に渡した、という噂がありますが」
奥「本当かどうか知りませんが、私はいかにも三島らしいと思いますね」
 スタジオ!桜田門の中継所です。たった今、会談終えたと思われます佐藤総理と中曽根長官が出てまいりました!そしてその後から楯の会のメンバーが続いています。整然とした行進です。アッ、更にその後からは陸上自衛隊が続いています。
 たった今情報が入りましたが、皇居各門から続々と同じように占拠していた部隊が投降しているとのことです。
 そして今、この二日間皇居上空で代わる代わるホバリングしていた輸送ヘリが一機づつ向きを変え編隊を組んで飛び去って行きます。
 事件は解決したのでしょうか。

コメントにつづく

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

昭和45年11月25日

グローバルは終わりか 時代を追って

2018 DEC 10 20:20:06 pm by 西室 建

 世の中は変わっていく。団塊世代が『オレ達はヘルメットを被って戦いを挑んだんだぞ』と今更言ったところで余計なお世話でしかない。
 もっと上のお年寄りが少年時の戦争末期の体験をどんなに強調しても、そんな戦争を仕掛けたもっと上の世代を恨んでくれ、としか言いようがない。日本はあの手の戦争はやらないしもうできないのだ。
 保守派の保守派たる所以は、変わり行く世の中に対して『本当にそれでいいのか』とまず冷静に考察する姿勢と考える。単なる流行そのものは発生しては消えていくものだ。しかしながら、『主義』『主張』というものは、どうしても先鋭的になり、その最先端は右でも左でも必ず分裂する。現実の『政治』はどうしても妥協が必要な玄人の仕事と言える。
 一方、社会が自然・自立的に進化していくなどとは考えられない。そこには現状に対する強烈な不満と理論的な指導が欠かせない。特に殆ど戦争で負けたことの無い英米二カ国は、勝ち続けることで分裂しながら進化してきたと見立てられる。
 グローバリズムはそのメカニズムを世界中に広めようと言う動き、と言い切れば極論になろうか。
 日本において、格差について、福祉について、待機児童について、お年寄り問題について、憲法改正について、スレ違いの論争の結果がいかに空しいか。避けられないグローバル化に飲み込まれて、成長の鈍化した社会においてはゼロサム的に誰かが稼ぐ。厳しい競争は終わらないからどうしても格差が生ずる。すべてはそこが原点だと最近考えている。
 もし、完全なグローバル競争が何も起こらないまま安定的に進行したとしよう。するとポール・クルーグマンの言う均衡状態(各国が単一の産業のみに特化し社会変化が起きなくなる)にならざるを得ない。これはモデル・ケースを特定しにくいが、直近の例で言えばEUにおいてドイツのみが工業的に発展し南欧は観光・農業くらいしか産業が育たないケースだ。
 ネットによる通信コストはほぼかからないので放っておけば競争力の差は広がり、上記均衡状態はますます固定されてしまう。フランスの人工学者エマニュエル・トッドはそういった観点で早くからドイツ一人勝ち状態のEUの瓦解を予想した。
 そのグローバリズムの卸元の米・英二カ国が内向きに舵を切る。
 中国は覇権を打ち立てようとするが、内情はボロボロ。エリート幹部が膨大な資産を海外に移転させて子供達には国籍を変えさせているではないか。
 ただ、中国そのものは一人グローバルのようなもので、国内の格差問題の方がひどい。しかし伝統的に国内弱者が世論を形成できないので、政権はいくらでも弱者を苛め抜いて平気だ。従って〝崩壊”はしない。
 日本は多角的な経済連携協定TPPで一人勝ちとなれるのだろうか。

 一般不均衡理論 というブログを何年も前に書いたが、この時120¥/$・日経平均株価は2万円。
 株価は〝売り″と同時に〝買い″も入らなければ売買が成立しない。もし市場参加者が同じアルゴリズムのAIを使って未来予測をしたら、結果が全て同じになり売買が成立しない。
 目下の112¥/$・平均株価は2万1千円は米中貿易戦争が決着つかず、トランプ大統領の意向を計りかねてこれだ。日銀ができることは限られてきた。

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」 

今が昔 (今昔物語逆バージョン)

2018 JUL 5 20:20:41 pm by 西室 建

 5年後の話です。即ち『今(現在)』が『昔(過去)』と言われる2023年はこんなに面白いようです。
 ある所に10歳の少年がいました。名前はジェイと言います。
 ジェイは無償化によって好きな学校に行けることになっていましたが、全く勉強をする気が無くて進学することを止めました。
 というのもジェイには学校に行かなくてもネットで何でもできる気がしたからです。義務教育は小学校の5年だけになり、科目は『読み書き』『計算』『日本』『世界』しかなくなってしまって、試験もタブレット持込可のために意味が無くなり(同じ答えが出るに決まっているため)、落ちこぼれが存在しなくなっていました。
 タブレットの機能は益々便利になり、同時にAIの進化はとっくに人間をこえました。すでに人間がAIを作るのではなく、どうすれば便利になるかをAI自身が考えるようになっています。
 もちろん全員が優秀になるはずもなく、アホはアホで天才は天才なのは変わりませんが、義務教育後のハイスクール(7年制)大学(5年制)も無償化されたのに進学しないのは普通のことになったからです。それでも誰でもが不自由なく暮らせる時代なのです。贅沢さえ言わなければ。
 語学でさえもAIによる自動翻訳機能で自由に意思疎通ができてしまい、興味の無い連中は選択しません。ただし正しい日本語教育が無ければならないので、読み書き音読教育だけは5年前とは違って充実したものになってきました。
 ジェイはこの読み書き音読はよくできて、決して頭は悪くないのですが、ちょっと変わっている子だったのです。皆と話していても一人だけ関係ないことを口走ったり、別のことをボーッと考えていたりでコミニュケーションが取れないのです。それに極端な人見知りで恥ずかしがり屋でもありました。
 御両親はやさしいお母さんと変なお父さんで、ジェイのことを大変に甘やかして育てています。同時にこの5年間の反グローバル・反成長の風潮に染まっていて大変な放任主義者のようです。

 ジェイは学校をやめて自宅から遠く離れたところに一人で暮らす事を決心しました。10歳の少年がです。自分で料理を作ってみたくなったからです。勿論収入なぞありません。しかし新たに導入された新アセット法によってベースの資産が国から支給されました。あらゆる物のコストも劇的に下がっていて、ネットで注文すればドローンが運送費無しでどんな所にも運んでくれます。住む家は高齢化が進んで田舎の方に空き家がたくさんあり、人口減少に悩む自治体がタダ同然でいくらでも選べました。
 更に政府の経済特区として自動運転導入特区が人通りの少ない地域で実験導入され、免許を持たない老人や子供がタダで利用できるエリアがS県の山間にできたのです。ジェイは両親とそこを見に行ってすっかり気に入ってしまいました。
 お母さんはさすがに心配して一緒に住むと提案したのですが、ジェイは大丈夫と拒否したのでした。
 お父さんは一番近所の家を訪ねました。近所といっても100mほど離れたところにお婆さんが一人で住んでいるだけでした。見た目100歳くらいの人で、
『あたしは50年以上ここに独りで住んでいるけど、事件も火事も災害も遭った事ないよ。時々様子を見てあげるよ』
 と最新式のセキュリティ・システムも紹介してくれました。このシステムはGPSで不審者や不慮の火事・事故、突然の体調悪化などをネットワークに繋ぐもので、御両親も渋々許すことになりました。
 そのお婆さんに時々面倒をみて欲しい旨、良くお願いもしました。おばあさんの家には表札もないので名前を聞くと、
「このあたりは皆おんなじ鈴木だから屋号で呼ぶんだけどウチは『家具屋』で通ってるよ。麓の方が『建具屋』『石屋』『薬屋』だね」
 だそうです。以後『家具屋さん』と呼ぶことになりました。
 ジェイは炊飯器・フライパン・洗濯機・タブレットを持ち込んで引越しました。

 10歳のジェイは一人で御飯を作り掃除をし洗濯をして暮らし始めます。おかずは初めはカップ麺や海苔の佃煮、卵焼きばかりだったのですが段々カレーライスや野菜炒めができるようになります。時々その家具屋のお婆さんに分けてあげるうちにお婆さんも漬物とか焼き魚をくれて、そういう時は一緒に食べました。
 タブレットで読書をします。そしてあることに気が付きました。子供の自分が読むものはあくまで子供向けに書いてあります。大人の読むものは分からない。大人が子供だった頃は、つまり今ほど便利ではなかった時代に流行った読み物ならわかるかも知れない、と。
 試しにお父さんとお母さんが生まれた頃、50年前の新聞を検索しました。
 驚いたことにその年までヴェトナムで戦争が続いて、南の方のヴェトナムが崩壊して統一されたという事が分かりました。信じられないことに肩入れしていたアメリカが撤退してしまう事態だったのでした。
 その頃の漫画『ブラックジャック』という医者の話にも夢中になりました。
 そこに家具屋のお婆ちゃんが様子を見に来て『そうそう、その頃は東西冷戦といってね』と複雑な国際関係や日本国内にも過激派というのがいたことを教えてくれました。その頃の25年前には日本は焼け野原になるくらいアメリカ相手の戦争に負けたのでした。
 何でそんなことになったのか、色々考えてジェイはもう50年前の事物を調べだしたのでした。
 1925年は大正4年という年です。
 ちゃんとした国会も裁判所もありましたが、なぜか公爵とか伯爵という貴族がいます。驚いたことに今の朝鮮半島と台湾が日本になっていました。
 車はまだあまりないようでしたが東京駅は出来ていました。
 さすがに服装は和装ですが銀座に『カフェ』というお酒を飲むバーがあるようです。
 するとこの時も家具屋のお婆ちゃんが来て
『うん、この時代は日露戦争に勝ったこともあってずいぶんと勢いがあったね。日本の文化と洋式が溶け合っていく過程に当たっていてハイカラな時代なの。竹久夢二っていうのが・・・(中略)。今で言う女性運動みたいなのも始まって・・・(後略)。』
 等と解説するのです。

 ジェイの様子を見にお母さんが来ました。ジェイは何と庭を耕しているではないですか。耕すと言っても小さいシャベルで掘り起こしているだけですが。聞けば料理の食材を作るのだ、とセッセと何かの種を蒔くようです。
 お母さんは暫くぶりなので御飯を作ってあげようと沢山のおかずを車で持ってきたのです。それを聞くとジェイは『家具屋のおばあちゃんも呼んでいいか』といい、夕御飯に招待しました。
 お母さんは家具屋のお婆ちゃんを見てチョットびっくり、前にあった時は小さい皺くちゃだったのに少し大きくなったような気がしたのです。色つやも良くなったというか、とても元気でした。
 そして二人はしきりに十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の話をしていて、タブレットを見ながら勉強をしているのです。『当時の言い方ではね』などとお婆ちゃんがジェイに古文の言い回しや古文書の解説をしています。オカミを風刺する川柳や滑稽本、浮世絵等を研究しているようでした。200年も前の歴史に夢中になっているのです。
 ジェイは上手に料理もしているようです。野菜スープが残っていたのですが、これがとても美味しかった。

 ジェイは12才になりました。AIとロボットが益々進化し、もう面倒な仕事というモノはずいぶん無くなってしまい言葉の概念も違って来ています。
『仕事に行く』とか『忙しい』という言葉は滅多に聞かれず、関西でも『もうかりまっか』とは言わなくなりました。『ちょいとヤボ用でね』とか『そこまでブラッとね』が挨拶になっています。
 久しぶりにお父さんがジェイを訪ねました。ジェイは背が伸びました。やせっぽちではあるのですが声も変わったようです。

「元気なのか」
「うん。お父さん僕のご飯食べてよ」
 フト机に習字の書き物が置いてあります。
『 紫衣の寺住持職、先規希有の事也。近年猥りに勅許の事、且つは臈次を乱し、且つは官寺を汚し、甚だ然るべからず。向後に於ては、其の器用を撰び、戒臈相積み智者の聞へ有らば、入院の儀申し沙汰有るべき事』
 墨痕鮮やかに書き下してありました。
「おい、なんだこりゃあ」
「あ、それはね、禁中並公家諸法度だよ。最近暗記してるんだ」
「はぁ」
「寛永の三代将軍家光公がね、朝廷が勝手に紫衣や上人号を授けることを止めさせたんだけど後水尾天皇は勝手にお坊さんに紫衣着用の勅許を出したんだ。そしたら幕府が怒っちゃって紫衣を取り上げた。これに抗弁した大徳寺の有名な沢庵和尚は出羽国に流される、という大事件になったんだって」
 聞いていたお父さんは腰が抜けそうになりました。
「お前そんなこと知ってどうするんだ」
 ジェイと食事をしていると家具屋のお婆ちゃんが訪ねてきて、お父さんは挨拶をしたのですが、顔を見てまた腰を抜かしそうになります。ややふっくらして皺も伸び、普通の白髪のお婆ちゃんくらいに見えるのです。二人の会話が聞こえて来ると、
「家具屋さん、ずーっと一緒にいられるといいね」
 等と言っているのです。
 二人はお婆ちゃんと孫といった趣で本当に家族のように見えました。こうして仲良く暮らしているのもいいのかなとも思いつつ、お父さんは息子は寂しくないのかと心配になったようです。
「友達がいなくても寂しくないのか」
「ちょっと前までSNSで意見交換したりしてたのは何人もいたんだけどみんな途中ではぐれちゃったんだよ」
「はぐれるって一緒に遊ぶ訳じゃないだろう」
「しばらく楽しくやってるんだけどそれぞれ興味のある時代に散っていくんだ」
「散る?」
「うん。例えば新撰組にひっかかってそっちの方になり切っちゃうとか関ヶ原まで行って帰ってこないとか」
「良く分からんが、おまえはどうなるんだ」
「僕は今、江戸時代の初めにたどり着いたけどどこまでいくのかなぁ」
 お父さんにはジェイが何を考えているのか、またこういった連中がいう”散っていく”意味がさっぱりわかりません。
「その”散る”というのは他のことが目に入らないバカみたいになることか」
「まあ近いけどちょっと違うね。真面目な奴は散らない。心配してるかも知れないけど僕達はまだいいよ。数学や物理に散って行ったのなんか変な仮説に夢中になって2~3ヶ月くらい計算式を組み立てているのがいるらしいって。あとスワヒリ語と日本語の区別が分からなくなったのがいたらしい」
「・・・・」

 ジェイは15になりました。世の中は進化型AIロボットが人間の代わりに殆んどのことをこなすようになりました。ジェイも安くなったAIロボを買い(こういうものでもドローン4台で宅配されるのです)畑を任せています。嬉しくなったジェイはそのロボットに「太郎冠者」と名前をつけました。「太郎冠者」は気候を判断し畑起こしから種蒔き、草取り、水やり、肥料などを自分で準備し(足りない肥料は発注までします)毎日働きます。最近はモグラの駆除までやっているのです。
 ある日お父さんとお母さんにジェイからビデオ・メッセージが入ります。なにかと思えばジェイが衣冠束帯姿でいるではないですか。そして、
「これより烏帽子親もないままではおじゃりまするが元服の儀つかまつり候」
 などと女性の音声が流れます。両親はヒマすぎてコスプレ趣味に走ったのかと仰天しました。それにジェイの後ろに家具屋のお婆ちゃんらしい人が十二単のような格好で映りこんでいるのです。それがジェイはかなり背も伸びて逞しさが出てきたのですが、お婆ちゃんもまたジェイのお母さんくらいの年齢にしか見えないのです。恐らく長く伸ばした髪のカツラでも着けているのでしょうが、本当に若返っているように見えました。
 あわてたお父さんとお母さんはジェイの所に飛んで行きました。
 家の前に車を停めようとしたところ中から鎧兜の武者装束の自足歩行型ロボットがやってきてロボットは即座に識別したようです。こういうロボットは既に社会の隅々にまで普通にいるのです。
「我があるじの親御様、遠路はるばるのお越し、出迎えもせず失礼をばもうあげソウロ。拙者太郎冠者と申しソウロ」
 一体どうなっているのか、室内に行くと開け放った座敷で机に向かって正座したジェイは一心不乱に筆で書き物をしていた。気が付くと『オォ、父上・母上』と佇まいを直した。そして傍らに居る妙齢のお姉さんに『家具屋殿、お茶を』等と命令する。そのお姉さんは例のお婆ちゃんに違いないのですが一体・・・、ますます若い、どうしたことか。
 机の上では何やら古文書を書き写しているようで、傍らに積んである和綴じの本は『太平記』とありました。今から700年前の物語です。その頃の生活を再現しようとでもしているのでしょうか。
 2025年になって世の中が便利になりすぎて一向に生活に困らないと、人間は、現実と乖離しても暮らせるようになり実際に起こっている事には関心がなくなるのでしょうか。
 それよりお父さんとお母さんにはジェイとお姉さん(この時点ではオバさんかも)と一緒に暮らしている親子か姉弟のように見えました。
 夕ご飯も当然のように一緒に取りました。そして良く観察していると、ズームやスカイプで話をする友達はいないでもないけど二人で暮らしているらしい、これはいい事なのか悪い事なのかわかりませんが放っておくしかないようです。

 2030年の新年にジェイからビデオ・メッセージが届きました。お父さんとお母さんは正月のお祝いでも言ってくるのかとワクワクしながら画面を見つめます。
 妙な節の雅楽が流れる中、女性の声で始まりました。
いまはとて 天の羽衣 着る折ぞ 君をあはれと 思ひ出でける
 続いてジェイと若い女性が平安時代もかくやと思われるきらびやかな格好で映りました。ジェイがやや高い声で続けます。
あはれとは おもわばおもえ 我もまた 天の羽衣 君と召すなり
 借景は輝かんばかりの月夜なのです。するとCGなのでしょうか、二人はユラユラと浮かび上がって行きました。そしてスーパー・ムーンのような山の端にかかる大きく赤い月に向かってスッと消えて溶け込んでしまいました。お父さんとお母さんは同時に『アッ』と声を上げました。
 というのもメッセージを繰り返し見ると麗しい女性は明らかに『家具屋』のおばあさんのうんと若い頃に違いありません、大変な美人ではないですか。
 両親はジェイの所に飛んで行きました。二人ともいませんが、家はそのままです。家具屋のお婆ちゃんの家は何ともぬけの空です。
 ジェイの机の上には色鮮やかな美しい『源氏物語絵巻』がプリント・アウトされていました。
 お父さんはお母さんに向かってつぶやきました。

『なんだかわからないけど、こう便利になると現実世界とは別に自由に身も心も飛んでいけるのかなァ。その方があの二人で幸せに暮らせるんだろうか・・・・。アッ、あのお婆ちゃんって「かぐや姫」だったのか』

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

気を引き締めろ 危機に覚醒せよ

2017 SEP 10 21:21:49 pm by 西室 建

 水爆だと!いい加減にしてくれ。
 朝鮮総連の人達声を上げてくれ、あなたがたを見捨てるつもりだぞ。
 習近平よ、アレが北京に向いたらどうするつもりだ。
 プーチンよ、あなたがたも国境を接しているのだぞ。

 日本よ、慌てる事はないのだ、落ち着け。守りを固めよ。
 国連なんか当てにならないから、顔は立てるが別の知恵を絞れ。韓国・中国・ロシアに水面下で連帯せよ。
 そもそも分裂しているのが一番危ない。この国難に安倍総理以外に誰が頼りになるというのか。前原代表も小池都知事もミョーなことを言って足を引っ張るのをやめて頂きたい。
 こういったときに以下の言説を声高に弄するやからもまたヤバい。我々の防諜の一端を開示することにしよう。
① これ以上の制裁は返ってアノ国を追い詰めるからやめた方がいい。
② 拉致被害者が帰ってくる可能性がある。
③ 支持率が低迷する安倍総理は一発逆転を狙って訪朝すべきだ。
 これらの内容をマスコミを通じて流すような評論家・専門家はことごとく手が回って工作を受けているに違いない。相手にしてはいけない。
 ここは第七艦隊と戦略爆撃機のプレッシャーを飽きるほど繰り返し、潜水艦封鎖を1年以上続ける、日本は後方支援だ。これを日本海と東シナ海でやっていれば中国もロシアも重い腰を上げざるを得まい。
 しかしあんまり挑発が繰り返されると麻痺してくるのである。
 そしてこれは挑発する方も同じであることを肝に銘じておかなければならない。挑発が”通常”になると絶対にボケる。だから野党はあんまり政府批判をしていないで挑発を批判していて欲しい。
 因みに第七艦隊のイージスが海難事故に会ったが、まさかとは思うがブチ当てた船はどこかの息がかかって操船したんじゃなかろうな。
 安倍総理はトランプ・プーチン両大統領と電話会談に大童。特にプーチン大統領は中国滞在中であったことに注目したい。すなわち全部盗聴されているに決まっているからだ。何を話したか両者のトーンは違うが、そんなことはどうでもいい。盗聴されるのを知っている上で二人の外交がなされることが抑止力になるのだ。
 水爆ときては二発で日本は滅びるレッド・ラインどころかパープル・ラインを越えたぞ、アメリカは本気だ。
 ICBMは必ず撃つ。どうせならハッカー集団を総動員させて、無人のカムチャッカとか竹島にでもブチ当ててくれた方がいいのではないか。

 しかし私の懸念は別にある。
 私は御存知の通り保守派だが、世界の右傾化には警鐘を鳴らしている。米英の孤立化は全く好ましくない。
 しかし度重なる挑発行為に我が国がおかしな方に振れないか、である。
 外圧をモロに感じると必ず逆バネが効いておかしなのが出てくる。尊皇攘夷の天誅騒ぎや2・26を思い出してほしい。
 特にマスコミも冷静に報道だけしていればいい。いつもの煽り報道を続けていると必ず『来るなら来い』というのが出てきてしまう。
 以下はそういうケースのシミュレーションである。

202X年の怪 (日本侵略される!)

202X年の怪 Ⅱ(戒厳令ではない!)

202X年の怪 Ⅲ(何かおかしい!)

202X年の怪 Ⅳ(クーデター!)

202X年の怪 (エピローグ)


 こんなことになってからでは・・・。

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

米・露はどう対応するのか

おじさんだって前向きに生きる 

2017 JUN 7 19:19:27 pm by 西室 建

 物忘れがひどくなってきて、つい最近のことやチョットした約束なんかは直ぐに忘れて不便な事おびただしい。
 しかしながら昔の自分の恥ずかしい過去やみっともない事跡だけが大脳皮質にこびりついているのはかなわん。脳科学者というのが最近大勢いるし、IPS細胞も飛躍的に応用範囲が増えるから、大脳のマズい記憶の部分を除去してイヤなことを思い出すようなことがなくなったらどんなにいいだろうか。
 昔の仲間四人で集った。
 こいつらと集ると『思い出したくもない』ことのオン・パレードだが、周知の事であるだけに話しもギリギリの寸止めで済む、お互い様だからだ。
 このメンツ、強いて言えばカタギは昔サラリーマンだった僕一人。他は皆自分でテキトーにそこそこやっている。そしてこの年になれば、だが全員ヤバい入院をしたりして危ないことおびただしい。
 一人はインドで犬にかまれて肝臓を患い、もう一人は心筋梗塞で3日程意識不明。僕はと言えばそこはそれ、酒に事故。現在は二人が睡眠障害で睡眠導入剤を使い、残りは時々15分ぐらい寝たりとか昼間フッと寝てしまうような奇怪な状態。泥酔して寝てしまうのと睡眠導入剤で眠りにつくのはどっちが体に悪いかでモメたが結論は出なかった。
 何れにせよこの年になると「今更」感が拭えず、今後は誰が生き残るかのサバイバル・マッチになることだけは確認された。そうなると俄然張り切る気になったものの、張り切ってどうする。もう手当たり次第とか、何が何でもといった惨めなマネはできないし、やり直しなんか絶対に間に合わない。
 結局どうするかと言えば、もうここまでヒネクレたオジさんは目の前にあることを丁寧やるしかないというドーデモいいオチになったのだ。それではあんまりだと色々話をしていると、どういう風の吹き回しか『これからは感謝の気持ちも込めるべきではないか』という驚くべきマトモな意見に集約される。
 この集まりには統計的に3シグマを外れて管理外のオッサン共の他に女性も一人参加していて(これもあんまり中央値ではなさそうだが)上記意見集約は意外だった。
 しかしですな、この年で夢のような目標を立てて計画倒れに終わるよりも、どうやったら楽しめるかの方に重きを置いたほうが楽と言えば楽。なにしろいつおかしくなるかは分からないのだから。
 いや別にヤル気のある人はやればよろしい。
 そして男と女では捉え方に違いがあるらしい、となった。男は過去の栄光にすがり、女はいつでも未来を目指すがアホな目標を立てるような真似はしない。これ私が言ったんじゃない、どっちが優れているという事でもない。ただ話の流れでそうなっただけ。

 去年死んだ親友は『引退したらやりたいことのオン・パレード』とうそぶいていた。それが何だったのかは聞かなかったが思い出すたびに煽られるような気がしていた。
『感謝の心』と言っても別にお国や社会に感謝するわけじゃない。人によっては宗教に当たるのかもしれないが我々にはそのカケラもない。強いて言えば『こんなオレ達でも何とかなっているのはやっぱり周りの皆様にでも感謝くらいしといた方がいいのではないか』程度。
 感覚的に近いのは映画『イージー・ライダー』のヒッチ・ハイクで拾ったヒッピーがいたコミュ-ンで貧しい食事に捧げる感謝の気持ちだろうか。もっとも彼らは”神”に感謝していたが。

 それで何をやるか、については飲み過ぎて結論を誰も覚えてなかった。
 

病室にて


「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
 

202X年型犯罪

2017 MAY 21 14:14:00 pm by 西室 建

 身代金請求型のサイバー攻撃とは、あまりの高度化に(僕は)ついていけない。ビット・コインで払え、というあたり益々怪しげだが、ビット・コインを買ったこともない身としてはどうしたらいいのか。
 こういった犯罪は生活が便利になればなるほど増え続けるだろう。
 犯罪組織にヒントを与えるつもりではなく身の安全を確保するため、将来の犯罪を考えてみた。

 自動運転が一般に普及し、免許も何にも無い人までが拠点間なら車で移動できるようになっている、ボケ老人でもだ。そこに目を付けたハッカー集団がシステムに侵入し、本人の行きたくないところまで自動的に身柄を運んでしまい、営利誘拐をしてしまう。
 考えてもみて欲しい。ヘラヘラ車に乗って行き先を入力しのんびりと外を見てフト気が付くと全然関係ない方に向かっていくのだ。無論GPSでどこにいるのかは管理されている。
 ところが高速のパーキングエリアに入っていって駐車するとドアが開く。屈強な男達が車を取り囲むと、もうあなたは為すすべがない。
 即、車を乗り換えさせられて拉致監禁。ネットで身代金の要求が載せられる。これは海外のインチキ・サーバーをいくつも経由しており出所は分からない。更に何者かの手によって拡散されて秘匿操作はできない。ケイマン諸島の謎の会社に送金せよ、とだけの表示で家族は慌てる、マスコミも嗅ぎつける、期限は後数時間しかない。金額も百万円程度だからサッサと払ってしまえ。
 しかし子供ならともかく、僕がボケてこの犯罪に巻き込まれたとしても、家族や知り合いは絶対に払わずに厄介払いができたと知らんぷりをきめこむだろうから犯罪が成り立たないのではないだろうか。

 色んな物のコストが安くなるにつれ高度に福祉が発達して認知症の老人も苦も無く暮らせるようになる。喜ばしいことだ。
 するとそこに目を付けた『成りすましアルツ老人』が出現する。「名前も分からない。自宅も分からない」とうそぶいてボケたふりをして保護される。そこでまがりなりにもタダメシを食って寝る所も確保できるとなると、僕がホームレスなら見逃さないぞ。今でさえ泥酔すれば『ここは、どこ』くらいのマネはオチャノコ・サイサイなんだから。
 ただしこれは元犯罪者にはできないだろう。指紋や将来の顔認証システムにより一発で身元が割れてしまう。僕は交通違反以外の犯罪で挙げられたことはないから、こっちの方なら結構イケるかも知れない。
 しかしもしどこかでボロが出て、単なるボケたふりであることがバレたら、その場合は何の罪に問われるのだろう、詐欺罪か。懲役はいやだな。

 メール乗っ取りも進化するだろう。メールが来るとする。いつもの相手だから普通のやりとりをする。返信が来た。『了解した。ところで』アレッ文章が切れてる。空白が続くのでスクロール・ダウンすると突然赤い文字になって・・・『 あなたのお蔭でとうとう体を壊し女房・子供とも別れて一人さまよい苦しんだのだ』などと綴られている。
 別にあいつは離婚もしてないしオレを恨むはずも・・・。
 わかった、思い当たるのは別の〇◎野郎がとうとうおかしくなってハッキングでもしてるのか。イチャモンを言ってきたのだな。
 すると不思議な事にあなたも返信しているではないか。
「そういうお前はなにかにつけて文句ばかり言っちゃーしょっちゅうキレてみせてたじゃないか」
キレるように見えたのはあなたが自分勝手なことばかり言って人の話を全然聞かないからだ
「たしかにお前の話はロクに聞かなかったが、それはお前の話が無内容だったからだ」
私以外の人間もみな影ではあなたの傍若無人に迷惑をこうむっていた。ウソだと思うなら添付のメールのやり取りを読んでみよ
「なんだこれは。どうせお前がバラ撒いたデマだろう。アホらしい」
別に信じてもらはなくても構わない。スクロール・ダウンしてもこのやり取りは永久に続く
「何が永久だ。お前がクタばったらそんなモン誰が読む」
私は既にこの世にいない
「冗談じゃない。出て来い」
 思わず声を上げた。

この時点であなたは人から常人とは思われないだろう。これはあなたの人格へのサイバー攻撃だったのだ。

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

 

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

森本麻里子
久保大樹
柴野大造