イヨッ!高麗屋三代同時襲名
2018 JAN 21 11:11:08 am by 西 牟呂雄
まずは重鎮の山城屋・扇雀。そこから向かって右に述べて行き、一番はじっこに弟の吉衛門。今度は左側から「よろしく御願い申上げまする~」とやっていよいよ襲名口上。
左から金太郎改め染五郎、真ん中染五郎改め幸四郎、右に幸四郎改め白鸚の晴姿。
白鸚って二代目なんですね。
新染五郎はまだ12歳とのことで声変わり中のようなのはご愛嬌。高麗屋にしては細面で将来が楽しみです。この後勧進帳で義経を演るのですが、女形もイケそう。
さて口上はそれぞれの役者の持ち味が醍醐味ですが、何と言っても以前からご贔屓の高島屋・市川左團次。この人は面白いアドリヴを必ず入れるのですが今回もやってくれました。
「二代目白鸚さんは、私の暁星学園の後輩でして、こちらが不良をやっていた頃には常に級長か副級長をやっておられた秀才でした」
確かにこの人のチンピラ振りは有名でロクな高校生じゃなかったことは確認されてますが、当意即妙の鮮やかなモノでした。
ところで初めて知ったのですが、高麗屋の屋号を早口で言うと『こりゃいいや』になるんですな。
演目は『双蝶々曲輪日記』と『勧進帳』。
『双蝶々曲輪日記』は色んな人のを見てますが、今回の与五郎(アホボン)と放駒長吉を替わりでやった愛之助がピッタリ嵌りました。この人関西ですから浪速モノのイントネーションがいい。
『勧進帳』では新幸四郎の弁慶が見事に跳び六方。
あと一週間ですよ!もう見られませんよ!
ところで国立劇場では音羽屋・菊五郎一門が『小栗判官』をやってますが、こっちは空いてるみたいですぞ。
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十二月大歌舞伎 玉三郎艶(あで)やかなり
2017 DEC 14 19:19:08 pm by 西 牟呂雄
いやはや、舞台を見て思わずアッと声を上げそうになりました。
以前から玉三郎さんが京劇も熱心に研究していることは知ってはいましたが『楊貴妃』を見るのは初めてです。
本当に才能のあるひとですなぁ、この人。
この演目は能にもありますが、歌舞伎は夢枕獏の原作です。
筋なんかどうでもいい、とにかく艶やか(あでやか、つややかではありません。念の為)。
一幕ものの「踊り」で振り付けは梅津貴あき(永ヘンに日)ですが、おそらく玉三郎自身の考えも入っているはずです。
唄がありますが演奏は三味線ではなく、何と琴に胡弓。
ところがですな、申し訳ないが相手の方士は澤瀉屋・市川中車、即ち香川照之。この踊りがマズい。
この人、父親の猿之助が離婚して25歳で芸能界入りするまで会っていないとか。多分小さい時から芸事を仕込まれてないかもしれません。俳優としてはイイ味出しているのだから何もよりによって澤瀉屋に。おかげで右團次さんが弾き飛ばされてしまいました。
一幕だけの『幕見』(千円!)ですから気付かなかったのですが、今月は昼夜の二部制ではなく三部になっていてその内3幕に中車が出ています。二部の一幕目に落語『らくだ』の酔っ払い、三部は『瞼の母』で番場の忠太郎、そして『楊貴妃』の方士。
それで『瞼の母』のおっかさん役が玉三郎、やりすぎでしょう!
昼間は他に松緑や愛之助。まさか回転を良くするために三部にしたんじゃないでしょうね。
それでですね、周りの自称ツウの中の通しで観た連中が声をひそめて言うのです。
「あの『瞼の母』、大和屋(玉三郎のこと)は思いっきり手ぇ抜いてやがる」
そりゃ地味目のおっかさん役じゃ華はないけど・・・。あの方は手抜きはしません、天才ですから。
その代わり下手なことすると恐いんだそうですよ。下っ端なんか、申し訳ありませんでした、と楽屋に誤りに行くんだそうです。すると・・・。
『あたしはいいけど・・・・。マズいお芝居を見せられたお客様はどうなる』
コワーイ。中車は無事だったのか・・・・。
それはともかく『楊貴妃』はお勧めです。まだ間に合うしここだけの話し、空いてますよ。夜の部最終幕、たったの千円!
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あかあかや 華厳
2017 NOV 13 19:19:47 pm by 西 牟呂雄
あかあかや あかあかあかや あかあかや
あかあかあかや あかあかや月
一瞬、真っ赤な月でも幻視した狂人の歌と思った人、違います。
この『あか』はレッド=赤ではなく『明るい』の『あか』。
華厳宗中興の祖、明恵(みょうえ)上人の作です。
京都栂尾(とがのお)にある高山寺で教学研究や厳しい修行中に詠んだのかも知れません。それにしても、そこら辺の子供が初めて詠んだような無邪気さというか楽しさというか。
座禅修行で考えに考え抜いてまだ悩み経典を読み込んでフッと見上げると輝くような満月が目に飛び込んで来る。えもいわれぬ充実感に満たされて、さてもう少し研究してみようか、こんな心境が想像できます。
華厳教学はこの世の森羅万象がことごとくバタフライ効果のように作用しあっているが、修行によってそれが妨げあわず共存することのできる境地に至る、と教え(るのかな?私なんかに分かるわけない)数ある仏の中で盧舎那仏をひたすら信仰する。
この『作用しあっている』は僕の造語というか、まぁテキトーに考えた概念だが、素粒子論でいう粒子と反粒子が衝突によって消滅し2mc²のエネルギーを放出、それがまた粒子・反粒子を生成し・・・といった感覚のことでしょう。
すると絶対善である盧舎那仏とはブラック・ホールのことで・・、うっもういいや。
明恵上人は紀州の生まれで、高雄山神護寺で華厳五教章を始めた。東大寺(盧舎那仏の大仏ですね)で戒律を、仁和寺で真言密教を極め、栄西から禅まで学んだ。途中紀州で隠遁修行したりインド行きを企てたりしする、大変な学僧なのです。修行中に激情にかられて右耳を切り落とした、という話があったと記憶しますが出典を思い出せません。もしかしたら別の人かもしれないですね。
そういう偉人が冒頭のような無邪気な歌を詠むのは微笑ましいを通り越して結構鬼気迫る。
どうも明るい月の光に何かを刺激される感性の人らしく”月”を詠んだ歌を多く残した。代表的なのをもう一首。
くまもなく すめる心の かかやけば
我が光とや 月おもふらむ
僕も影が出来るほどの月の光を浴びるのが好きで、夜中に喜寿庵の庭に出てしばらくボーッとしている事が。特に泥酔して見上げているとこのまま宙に浮くような気がします。一度そのままひっくりかえって頭を打ち、翌日畳に血溜まりができるほど出血したことがあったっけ(酔い過ぎて翌日までケガに気が付かなかった)。
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月窓寺 薪能
2017 OCT 17 7:07:29 am by 西 牟呂雄
かれこれ二年振りですか、地元の薪能を見ました。
狂言の『六地蔵』とお能の『橋弁慶』です。
『六地蔵』は田舎から地蔵を作ってもらおうと都にやってきたおじさんを詐欺師が騙そうとするお話で、その詐欺師(すっぱ)を野村万作さんがやります。
三人のオッサンが地蔵に化けるのですが、依頼は六地蔵ですので一人二役をしなければならず、おかめみたいな面を付けてジタバタしてみせます。言ってみれば元祖ドリフのようなお話を人間国宝の万作さんがやるのですね。
以前に比べると万作さんの声が枯れたような。
『橋弁慶』の弁慶をその万作さんの弟で、やはり人間国宝の四郎さんがやりました。野村家は和泉流ですが、四郎さんは能の観世流を継いでいます。
この話は”京の五条の橋”で弁慶が牛若丸に負けて家来になるところです。おとぎ話では弁慶が刀狩をしていて、千本まであと一本となった時に牛若と出会うのですが、能では逆に牛若が千人切りをしていることになっています。どっちでもいいですけど。
そして弦師(つるし)が出ます。間に狂言が入るのです。
牛若に切られかけた男が逃げて来てコミカルなドタバタ劇をするのですが、それを萬斎さんがやりました。
この人は華があるし立ち姿が美しい。
声もいいです。
能の弁慶物は子方が出ます。牛若・義経の役は中学生未満の子供さんが勤めるのですが、やはり後継者難だそうで、上演される回数が少ないと言われています。谷本悠太郎君という子が一生懸命やっていて微笑ましい。どうも小学校高学年のようで、少し声変わり気味なのがかわいそう、でも間違えずにできましたよ。
この子は確か観世流の谷本健吾さんの息子さんじゃないですか、応援してます。
以前みた『船弁慶』を見たときの大島伊織君なんかもう青年になってしまったでしょうか。
一応照明も準備されていますが、灯は5つ立てられた薪。
漆黒の闇にチラチラと揺れる炎が影を織り成します。
そこに切り裂くような笛の音と鼓の乾いた音。
アッ雨が顔に当たった。
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映画 『花戦さ』
2017 JUN 18 15:15:30 pm by 西 牟呂雄
信長・秀吉・利休そして池坊専好。キャストは順に中井貴一・市川猿之助・佐藤浩一そしてご贔屓の野村萬斎ときてはこれ、見ざるを得ませんね。さるお見舞いの合間にチョイと行ってきました。
秀吉の狂気、利休との友情、意を決して秀吉に挑む専好。
「いやしくも池坊を名乗るなら、花の力で世を正そうぞ」
手練れの芸達者がズラリと並んでさぞや。それがですねぇ、どうも脚本がメメしいんですよこれ。
萬斎さんの坊主頭が似合わないんですな。
初めに出てきたアップが何ともマヌケ面に見えて笑えたし、人の顔と名前が覚えられないというコミカルさを狙ったキャラの設定がチョット。
それでもこの一見ボケ芸がクライマックスで生きる、という演出なのでしょう。
冒頭の信長に松を活けるところ、中井貴一はさすがでした。
「見事なり!池坊」
信長の登場はこのシーンだけでしたがかっこいい。そしてあの役者だったらどうやったろう、などと思いを巡らすのも一興です。まず考えたのは勿論成田屋の海老蔵。
そしてクライマックスは豊臣秀吉VS池坊専好。歌舞伎VS狂言の芸の打ち合いといった趣です。そこは見てのお楽しみ。
ところで池坊は聖徳太子建立の京都六角堂のお坊さんです。
如意輪観世音菩薩をご本尊にしています。
作中で萬斎さんがしばしばお経を読むのですが、これが聞いた事もないお経なのです。
いったい何経なのでしょうか。
検索してみるとどうやら『光明真言』のようです。
「オン アモ キャーベー ロシャノウ マカボダラ マニハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン」と言っているのだとか。
サンスクリットでは
と表記して、不空なる御方よ 毘盧遮那仏(大日如来)よ、偉大なる印を有する御方よ 宝珠よ 蓮華よ、光明を 放ち給え という意味のようです。
猿之助ファン、萬斎ファン、並びに生け花関係者にはお勧めですが、某映画館はガラガラでしたね。
ところで池坊はこの映画にいくらスポンサードしたのでしょうか・・。
戦国三部作を貼っておきます。
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猿之助四十八撰
2017 APR 19 21:21:25 pm by 西 牟呂雄
楽しみの「熊谷陣屋」を吉右衛門・幸四郎ブラザーズと猿之助がやると聞いてイソイソと歌舞伎座に行き、プログラムを買って席でパラパラめくってアッと驚いた。熊谷陣屋は昼の部で、僕は間違えて夜の部に来たのだった。マヌケ。
帰るわけにもいかず、自分に腹を立てながら芝居を鑑賞。
何度も見ている『傾城反魂香』が始まる。吃音の絵師が執念を込めて医師の手水鉢に自画像を描くと、その絵が表に抜けて現れ本願成就するという近松の浄瑠璃である。この絵が抜けると「か、か、抜けた~」と科白が入るところが見所だ。
ところでこの芝居「どもり」だの「かたわ」だのといった、現在使いづらい言葉が頻繁に出てくる。ポリティカル・コレクトネスもクソもあったもんじゃない。
これ、その昔の日本人はやたらと弱者を蔑んだかといえばそうではなかろう。今日の我々が想像するのは難しいが、浄瑠璃・歌舞伎が流行った江戸時代は身分制度はあったものの、それなりに障碍者も大らかに生きていたと思うのだ(無論厳しいものだったが)。盲人の保護などは検校制度としてかなりしっかりしたシステムなのが知られている。
そう言えば歌舞伎の舞台で煙管にタバコを詰めてはバカバカ吸い、酒を飲んでは暴れまくる出し物も多い。世間様はこういうのまで規制しろとは言わないでくださいよ。
さて澤瀉屋の猿之助が狂言師を演ずる『奴道成寺』では華麗な踊りが披露される。もっとも歌舞伎座ですから宙乗りはやらないが。
「聞いたか聞いたか」「聞いたぞ聞いたぞ」「聞いたか聞いたか」「聞いたぞ聞いたぞ」
と所化(しょけ・修行中の坊主。必ず小坊主が一人)がゾロゾロ花道を出て来る。こ奴らは花見に来ては酒を飲んで浮かれるという半人前。そこに白拍子に化けた猿之助が現れる。
華やかな舞台でおかめ・ひょっとこ・御大尽の面を早変わりし、廓の遊女・幇間・客を演じ分けます。
そして花四天(はなよてん・歌舞伎に出て来る赤い鉢巻きに襷の捕り手)が出て来ると大鐘が下がってきてそれによじ登る。「娘道成寺」ならば安珍・清姫がやるシーンだ。
ところでこの猿之助が演ずる狂言師は「左近」という名前だが、尾上右近という役者が所化の一人で出ている。もう一人二代目市川右近というのもまだ子供だがいて、これは澤瀉屋の猿之助一座なのだ。それもそのはずで右近君のお父さんの初代右近は、現在高島屋の市川右團次を名乗っているが三代目猿之助(現猿翁)の一番弟子だった。澤瀉屋も四代目になって、香川照之が市川中車を名乗ったりで居場所を失ったのではないかとされた。
プログラムを見るとその市川右團次は昼の部で出てますな。
関係ないけど僕は高島屋の市川左團次の大ファンだから二人で同じ舞台に立って市川左右團次(そうだんじ)と名乗りを上げるのもありか・・・いや、ない。
この『傾城反魂香』と『奴道成寺』はいずれも提題の猿之助四十八撰の演目で、三代目猿之助が撰した澤瀉屋・市川猿之助家のお家芸。通し狂言を復活させたり得意のスーパー歌舞伎から取っている。化け猫モノの『獨道中五十三驛』(ひとりたび ごじゅうさんつぎ)なんかがそうだ。
先代猿之助は自分の作品以外では江戸後期の作家鶴屋南北(四代目)の演目が好きなようで『ひどく惚れ申し候』と記している。
日本橋生まれの遊び人だった鶴屋南北は、奇怪なストーリーと毒のある風刺をごちゃ混ぜにして笑いを取る一種の天才だが、どうもホラ吹きも相当だったと推察する。
『オイラぁ字が書けないし本を読むのが嫌いだ』と周囲に言いふらしていた。嘘である、当て字ばかり書いていたが。
まだ間に合いますよ。
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三月大歌舞伎
2017 APR 3 20:20:07 pm by 西 牟呂雄
大河ドラマで海老蔵さんが信長をやると知ったら居ても立ってもいられやしねえ。
行っちまいました、歌舞伎座に。夜の部の”助六”を見たかったんだけど、大入り満員で全然席が無い!仕方なく昼の部で成田屋が出る『どんつく』の幕見を覗いた。
三月大歌舞伎は故十代目坂東三津五郎さんの三回忌追善公演で、この『どんつく』を長男の二代目坂東巳之助さんが踊る。
亀戸天神で芸を見せる遊び人達を見物する話ですが、”どんつく”は調子乗りで田舎者の荷持ちという設定。見物人は『大工』『若旦那』『町娘』『太鼓持』『田舎侍』『白酒売』に『大神楽の親方』と『太鼓打ち』といった連中だ。この役どころイキだなあ。
ところが脇がすごいんですな、これ。大工は音羽屋の菊五郎さんで、若旦那が海老蔵さん。
「どんつくどんつくどんつくどんつく、どどんがどどん」
故三津五郎さんは本当に踊りの名手で、業界用語で”腰が座る”というが頭の位置が全然動かない(踊りの最中に上下に)。実は三津五郎さんは短足で元々ぶれない体型だったというのが私の見立てなんだが、息子の巳之助さんは今時のプロポーション。もっと修行しないとダメだよキミィ。
しかし菊五郎さんの存在感は図抜けているね。歯切れのいい江戸弁がはまって実に聞き応えがある。チョイ役なのに全く手を抜かないところがさすがに当代きっての名優振りだ。
一方で海老蔵さんは若旦那で出て来るがはあんまり似合わない。役柄からナヨナヨした感じで演ずるのだが、海老蔵っぽくねえや。やっぱりこの人、派手な役柄で大見得を切って欲しい。そして化粧のせいか少しやつれて見えるが。やはり心労とかあるのか心配になった。夜の部の助六はおそらく大見え切っていることだろう。
この舞台3月に見たのだが、容量オーバーで暫く投稿できず今頃になってしまい皆さんにお勧めできないのが申し訳ない、もう終わってしまった。
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源実朝の嘆き
2017 MAR 7 0:00:43 am by 西 牟呂雄
この将軍は何かと気になる。
文学への思慕、立場の煩わしさ、身内の裏切り、家族の不幸、そして暗殺、と決して恵まれなかった28年の生涯は儚い。
それでも僕は幾つかの挿話にこの若い将軍の少年のような感性と、同時に何やらアヤしげな運命を強く感じる。
こういう逸話がある。
子供の頃から夢でお告げ受けたと寺社に参詣したり、夜に怪しげな女性や光を目たと招魂祭を催している。
ある夜、不思議な夢を見る。夢中に高僧が現れ、汝は宋の霊山医王山の長老であった、と。時を経て将軍となった実朝に、来日した宋人・陳和卿が面会すると涙を流しながら三度拝みこう言った。「あなたはかつて宋朝医王山の長老。時に我その門弟に列す」。
自分の見た誰も知らない夢の内容を言われ、コロリと信じ込む。それだけではない。医王山を訪ねようと本気になり、陳和卿に船を造れと言い出した。
実際に建造された船は浮かばずそのまま朽ちた。陳和卿は焼損した東大寺大仏の鋳造と大仏殿の再建に来日した実在の人物だが、徳の高い僧でもなく造船技術も何もなかった食わせ者だったのではないだろうか。おだてられて目の前で泣いて見せる外人に、フトそう言えばとその気になるタイプだったかもしれない(サイコ・パス型の人に多いとされる)。
しかし可愛げがあるではないか。
あるいは旱魃に苦しむ中降雨を祈り法華経を唱え続けると、その二日後に雨が降る(これも事実)。
また、長雨で洪水に見舞われればこう詠いあげる。
時により 過ぐれば民の 嘆きなり 八大龍王 雨やめたまへ
この『八大龍王 雨やめたまへ』のリズム感とダイナミックさはどうだ。
水神は龍の姿をして現れ様々な呼称があるが、実朝には「はちだいりゅうおう」の語感以外に使う言葉はなかったはずだ。
そもそも都に比べ著しく文化程度の低い鎌倉で、和歌が味わえる者など周りにはいないのが気の毒である。
藤原定家に自らが詠んだ和歌三十首の添削を頼むなど、いじらしくさえある。
この天才振りは賀茂真淵や正岡子規が評価していなければ少年将軍のお遊びとして誰にも顧みられなかったかもしれない。
趣味が昂じて『金槐和歌集』を編纂するが、坂東武士の冷ややかな視線を感じたはずだ。
次から次から起こる煩わしいナントカ合戦だのカントカの乱、おびただしい政務に疲れたときは鎌倉の海をながめてはさぞ嘆いたことだろう。
辞世とされる歌は
出でいなば 主なき宿と 成ぬとも 軒端の梅よ 春をわするな
但し、辞世として詠んだのではなく、先に作ったものの結果として辞世だとされた、という説に後世の偽作説もある。
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中村芝翫 息子3人との「連獅子」
2016 DEC 1 21:21:18 pm by 西 牟呂雄
芝翫・橋之助・福之助・歌之助と親子四人の同時襲名披露。
「誠に大きな大きな名跡でございますが、先祖の名を汚さぬようなお一層芸道に精進いたします。ご贔屓ご後援のほど、ひとえにお願い申し上げ奉りまする~」
となるとこりゃー見ねえ訳にゃー行くめーよ。
おまけにオマイさん、四人揃っての連獅子たぁー滅多にあるもんじゃねぇ。
それでイソイソと幕見に行きました。幕見は四階席直行ですからお土産を買いに行ったりお弁当を食べたりできませんがね。
『祝勢揃壽連獅子(せいぞろいことぶきれんじし)』
成駒屋ぁ!
いやモウあでやかなの何のって、そりゃ凄いモンでした。
三男の歌之助なんてまだ中学生でしょう。オジサンはハラハラしながら見ました。
アァッその立ち居地では近すぎて毛振りで当たっちまう。もっとしならせて振らないと首が持たねぇ。
オイオイ、最後長男の橋之助遅れ気味・・・・。
終わったところで席を立ったら三田寛子さんが甲斐甲斐しくご贔屓筋に挨拶をして回っていたが、アノ人あんまり変わらねーなー。
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忠臣蔵 全部見るぞ
2016 NOV 24 4:04:50 am by 西 牟呂雄
国立劇場は十月から月替わりで年末までに仮名手本忠臣蔵をやってます。私は一念発起して三か月かけてこれを全部見ることにしました。国立劇場ですから一日に一興業しかしません。十月は四段目の 扇ヶ谷塩冶館花献上の場・判官切腹の場・表門城明渡しの場まで。そして何とあの悪役・高師直をご贔屓の高島屋市川左團次さんがやりました。どんなに憎たらしいかワクワクもんです。
10月の大星由良之助を大名跡高麗屋松本幸四郎さん、11月は吉右衛門さん。月替わりで七段目までやって師走に討ち入りです。
三ケ月に渡って全段を通しでやるのは久しぶりとのことで、中には何年もやっていないモノが復活していると聞きました。
さて、早速いそいそと塩冶判官が高師直にいじめ抜かれて刃傷に及び切腹になるところまで見ると、
ありましたね、掘り出し物が。塩冶判官の家老加古川本蔵の娘役をやる播磨屋の中村米吉さん。ご覧の通りの美貌です。この人の娘役は殺気のような色気と純情な部分が一体化されて何ともいえない妖しさが出てます。玉三郎クラスの実力者になっていくでしょう。
一方高島屋の左團次さんは松の間の刃傷の場面で『こいつまだ怒らないか。じゃこれではどうだ。ありゃ、まだか』とイジりにイジって上手い!
ところで四段目の『判官切腹』は別名『通さん場』と言って途中席を立つことは控えなければならないのですが、いいおばさんが出て行ったのは頂けませんな。
もう一つ、切腹の際に駆け込んで来た大星に向かって判官が「遅かりし由良之助ー」と言って息絶えると人口に膾炙されているが、歌舞伎にその台詞はありません。切腹に当たって何度か「由良之助は・・・まだか」とか細く聞くと大星力也が「未だ参上仕りませぬ」と答えるだけなのです。長く親しまれている演目なので観客の思いが架空のシーンに託された都市伝説ですね。同じく時世を読む所もありません、現代劇中の創作です。
さてさて11月には私の大好きな 祇園一力茶屋の場 まで。何度も演じている播磨屋中村吉右衛門が酔っ払うシーンですね。「手の鳴る方へ、手の鳴る方へ」と芸子たちに囃し立てられて「とらまよ、とらまよ」と目隠しをした由良之助がヨロヨロと・・・。こういうのやってみたいなぁ。
前から不思議でしたが「手の↑鳴る方へ」と関西風に言うのです。他の京の都の廓話でも江戸弁の啖呵を切ってますがねぇ。
ここではいつも『見立て』の遊びで時節の話題を取り入れてウケを取りますが、今回は渋谷のハロウィンの話でした。さすが歌舞伎!
そして遊女おかるになって出て来るのが先日襲名したばかりの雀右衛門さんでした。この人『情けない』顔が似合うんですけど。
坂東亀三郎が面白かった。
さて、来月は討ち入りに。
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