Sonar Members Club No.36

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魂が宇宙を漂う話 Ⅱ

2022 APR 10 1:01:32 am by 西 牟呂雄

『おい。おい』
『え、なんですか』
『オレだよ。しばらくだったな』
『あぁ、オマエか。いや、久しぶりだな』
『5年経ったんだよ。どうしてる』
『相変わらずだよ。ヤボな仕事したり船に乗ったり、そうそう野菜造り手掛けてるけど、忙しいんだかヒマなんだか。ちょっとオマエどこだよ。顔がよく見えない』
『バカ。オレは死んだだろ。顔はもうない』
『・・・そうだったな。もう5年か。お前からはオレが見えてるのか』
『見えるわけないだろ。視覚が無いんだぞ』
『それもそうか。待てよ、じゃなんでオレだって分かったんだ』
『こっちは真っ暗なんだよ。そこを歩いているような漂っているような感じだな。そしたら不思議なことに少し光を感じたんでそっちに行こうしてたらなぜか夢から覚めたように意識がはっきりしてあ~っあいつのことだな~という一種の覚醒があって今だな。オマエだってことはすぐ気が付いた』
『凄いな。死んでエスパーになったのか』
『いや、今オマエは寝てるんだよ。その夢の中に入ってこうして話をしてるのさ』
『夢か。どうりでハッキリしないと思った。するとオレが死んだらその真っ暗なところでオマエとまたこうして話せるのか』
『そうはいかない。だってオレは幽霊といえば幽霊なんだから夢なんか見ないし』
『なんだよ。それじゃオレも生きている奴の夢に入り込むしかないのか』
『どうもそうなっているらしい。死んでから5年経って初めてだ』
『ふーん。そんならそのうちまだ元気な息子さんや娘さんの夢でその後のことを聞きゃいいだろ。よりにもよってオレの夢じゃもったいない』
『無論オレもそう思うんだがうまくいかないもんだ』
『多分何かのワザとかコツみたいなものがあるかもしれないな。修行が必要か』
『さあな。こっちにきてからじゃ修行も何も、体もなけりゃ時間の感覚もない』
『苦痛もないんだろ』
『まあそうだ』
『だがオレの所にはうまく来れたな』
『腐れ縁だからな。別に来たくもなかった』
『待てよ。オレはまだ生きてるんだよな』
『そりゃそうだろ』
『するとオマエはオレの夢が勝手に作っている幻という事だよな』
『断じてそれはない。オレがお前の幻想などありえない。断じて認め難い』
『まあそうだろうな。オレだってやだよ、何が悲しうてお前の台詞を妄想しなきゃならんのだ』
『よし、オマエも死んで見りゃいいだろう』
『それは構わんが死んだ幽霊同士は会うことも話すこともできないんだろう』
『だからさ、二人で誰かの夢に忍び込むんだよ。そうすりゃ勝手に話せるだろ』
『ほう、それならいいかも知れんが、誰の夢に入るんだ』
『タカオでどうだ』
『おっ、そりゃいいな。あいつとは決着がついてないからな』
『ん?決着?』
『ほら、今から半世紀も前に大モメにモメたやつ』
『あー、あれか。明日のジョーは死んでたのか生きてたのか、のことか』
『そうだよ。オマエが息を引き取ってたんだ、って言い張ったあれ』
『それはあの時に論破したはずだが』
『バカ言え。一方的にオマエガ返事をしなかったのはすでに死んでいたからだ、と論争を打ち切ったんだよ』
『一方的とは何だ。タカオは答えられなかったじゃないか』
『アイツは一言、ジョーは白い灰になった、と言ったんだよ』
『それじゃオレが論破したことになる』
『ならない。白い灰が死んだことを表していない。死んでいるなら白い骨でなければならん』
『同じことである』
『いや、違う。骨は灰ではない。DNA鑑定ができる』
『バカなことを抜かすな。よし、それじゃ今からタカオの所に行くぞ』
『上等だ。早く行こうぜ』
『早く死ね』
『何だと』
『死ななきゃアイツの夢に忍び込めんだろう』
『そうか・・・。オレは生きてたんだ』

 ワッ! 危なかった。だけど死ぬのもこんなものかもしれんな。

魂が宇宙を漂う話

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可愛げというもの

2022 APR 1 7:07:18 am by 西 牟呂雄

正装のレイモンド君

 喜寿庵で地元の慶事があって正装して参加したところ、あのテキトーの塊であるヒョッコリ先生(推定95才)がレイモンド君を伴って現れた。先生は紋付き袴のいで立ちでさすがに浮いていたが、傍らのレイモンド君もご覧の正装でこれはなかなか可愛らしい、人気者になっていた。レイモンド君(推定2才)は友達になった僕をしっかり覚えていてニコニコ笑ってくれた。
 レイモンド君はなんでも一生懸命やる。
 トコトコ走って会場の端っこまで行くと、そこに小さな段差があるのに突進してベチャッという感じでつぶれる。しかし体が柔らかいのと体重が軽いのでダメージはないらしい。そして仰向けになると、起き上がろうとしているのかブリッジをするように反り返る。当然起きられないのでくるりと腹ばいになって頭を床につけてもがいているうちにデングリ返しになってしまった。
 そしてその間、保護者であるはずのヒョッコリ先生は全然面倒を見ないで、勝手に知り合いと挨拶したりビールを飲んだりしている。そうなると放っておけない、どこかに行ってしまわないようにレイモンド君を追い回すのはなぜか僕になってしまった。
 すると、司会者が先生を指名してスピーチになった。久しぶりのヒョッコリ先生節だ。例によって訥々と話し出したが、やはり何を言っているのかはよくわからない。元々支離滅裂な人だったのは知っていたが、今日のは特に『世界平和にとって』とか『我が国の将来は』と怪しげなことを喋っている。待てよ。いつもとチョット違うな。
 普段はものすごい早口なのだが今日はゆっくりと丁寧だ。さらに見ていると、実に一生懸命言葉を選んでいることが伝わって来た。つまり普段の口から出まかせではなく、考えながら話している。いや驚いた、そんな芸当もできるんだ(内容については最後まで聞いたがどうってことはなかった)。汗をぬぐっている姿に、不覚にも可愛らしさを感じたものだった。

 そこでハタと気が付いたのだが、前期高齢者の僕は体力・知力の衰え著しく、今まで何でも手抜き足抜きでやってきたというのに、今ではやることなすこと一生懸命感が満載。
 体力面ではゴルフ・クラブ(途中でメチャクチャになるのは前からだが)を振っても、ヨットで舵を取ってもスノボを滑っても、ハタから見れば『あのジイさん、一生懸命だけどよくやるぜ』と笑われているに違いない。フォームがなってない。そしてその姿は見ている側からはカワイくも何ともないことは容易に想像できる、はっきり言ってみっともないだろう。
 また、例えば英語を読むのにサッと読むことができない。単語を忘れ過ぎているからだ。もちろん英語を勉強していなかったせいもあるが、前は勢いで読めて喋れた。今では電子辞書なしではとてもとても。たまに知ったかぶりがバレた時のアタフタぶりはさぞ見苦しいことだろう。
 もっと言えば、歩き方、酔っぱらい方、笑い方、怒り方等、立ち居振る舞いの全てで可愛げのカケラも無いのが、なりたてのジジイというモノではなかろうか。もう少し枯れて動きが鈍くなった頃にやっと『あのオジイチャン、何かかわいいね』となると思う。実に面倒な年になったもんだ。
 逆に、今は何をやっても可愛いレイモンド君も少年になって生意気なことを言ったり考えたりするようになった日には一人前のクソガキになってしまうことは間違いない。その両者のカーブ(仮にカワイゲ曲線と呼ぶ)が交錯する年が将来訪れる日が来るだろう。それは3年後か5年後か(10年後ではこちらの脳がアヤシイ)。
 そうだ、その均衡時期が来たらレイモンド君を連れて旅に出てみよう。どこに行って何をするか今から計画を立てておこう。老後の楽しみができたぞ。

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どういうことだ 日本ハムファイターズ

2022 MAR 25 22:22:46 pm by 西 牟呂雄

 世情騒然としているが、人間は例えささいなものでも楽しみがなければ生きてはいけない。それはそれ、これはこれで野球の開幕が楽しみなのは別に罪ではない。普段、コロナだ戦争だと厳しい現実に対処しながらも、ファイターズ・ファンを止めるわけにはいかないのだ。
 キャンプ・ニュースを席巻したビッグボスがどれ程のものか、しかも開幕は宿敵ホークスである。昨年は共に不本意にもBクラスに(こっちはいつもだが)沈んで捲土重来を期す、相手にとって不足はない。
 ビッグボスは勢いのまま開幕になんとドラ8新人の北山だ。それなりに評価が高いが相手は千賀だぞ、本気か。さらに聞くところによると『遊んじゃいます』とバカ丸出しのコメントまでして、藤本監督は『一発で仕留めるように。こっちは真剣勝負』と応じたとか。
 長年の懸案だった中田を出し、ベテランも思い切って入れ替えた稲葉GMの手腕にビッグ・ボスが応えられるか、息を詰めて開幕戦に臨んだ。無論、フォースの準備のための缶式びいる弾の準備も怠りない。両監督の登場。ビッグボスは球場内に配置した『偽』ビッグボスにスポットライトを当てて盛り上げると、藤本監督は輿に乗って登場しプレイ・ボール!
 千賀は初めから158・160kmを投げて気合十分。返す刀でホークスは北山に襲い掛かり満塁にまでするが、北山も結構いい。25球も投げさせられたが凌いだ。そして2回までで、去年はショート・スターターだったミスター・スポック加藤に繋ぐ。
 あれ!石井が一発放った。あれは失投だな。
 加藤はすぐ代えて根本に、5回には何とエース伊藤大海まで投入。おいおいトーナメントの決勝戦か?
 サイボーグ千賀は7回に近藤に打たれたが、ピンチを交わしてマウンドを降りた。時々薄ら笑いまで浮かべて8Kの余裕の降板だった。
 一方ビッグボスは明日の先発を予告している堀を送る。これ、明日からどうするの。まさか本当に遊んでるんじゃないだろうな。この投手起用、長嶋監督がライオンズとやった日本シリーズを彷彿とさせる。
 8回、昨年の不振のA級戦犯である杉浦。案のでは定パカパカ打たれて満塁にされ、これまた出ると打たれる西村は代打で出てきた新外人ガルビスに逆転ホームランを喰った。杉浦ー西村で去年何試合落としたか知らないのか。
 結局、ビッグボスは楽しかったのだろうがドタバタのリレーをしただけで、試合は絵に描いたような力負け。メチャクチャだ。
 面白いといえば面白いが、バカみたいでもある。僕の頭にある不安が湧き上がってくる。ビッグボスは本当に何も考えていないかも知れない・・・。
 あしたは東浜が来る。

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ウクライナのスナイパー

2022 MAR 21 0:00:14 am by 西 牟呂雄

 別に戦争を煽るつもりはなく、ひたすら停戦・平和を祈っております。
 アンドレイ・スコベツキー少将
 セルゲイ・ポロフニャ大佐
 アンドレイ・コレスニコフ少将
 ビタリー・ゲラシモフ少将
 オレグ・ミトヤエフ少将
 いずれも今回の侵攻で戦死したロシア軍の高官である。侵攻とそれに至る国家の意思は邪悪かつ憎むべきものだが、戦死された人を嘲る気にはなれない。
 オシントから拾っただけで5人にも上る将官の戦士は、狙撃によるものと言われている。狙撃、すなわち遠距離からの高性能ライフルで仕留められた。
 通常このクラスの指揮官が最前線のコンバット・ゾーンに行くことは考えにくいが、そうせざるを得なかったのか、或いはウクライナのスナイパーがそこまで肉薄したのか。ちなみに先日閉幕した北京パラリンピックにおいて、ウクライナに最初の金メダルをもたらしたのはバイアスロン。ノルディック・スキーと射撃を組み合わせた競技だ。この国の射撃は伝統があるのだ。

リュドミラ・パブリチャンコ

 その昔、独ソ戦の時代に赤軍には2000人もの女性スナイパーがいた。
 その中でも飛び抜けて成果を上げた伝説の兵士がいた。リュドミラ・パヴリチェンコ少佐、その名の示す通りキエフ出身のウクライナ人女性である(~~~ンコとつくのは~~の子というウクライナ語)。
 若いころから競技としての射撃に打ち込み、キエフ大学に進学した頃に戦争が始まると狙撃手に志願する。トカレフを手に擬装を纏って長時間潜伏し、進軍した敵を背後から狙撃した、成功は数百人。
 連日ウクライナの士気の高さが報道される。女性もどんどん志願しているが、パブリチェンコの伝統を受け継ぐ人々だろう。
 彼女は戦場からは無事に帰れたのだが、赤軍の英雄として没後の遺体は皮肉にも現在ウクライナを侵攻しているロシアの首都、モスクワのノヴォヂヴィシエ墓地に埋葬された。
 狙撃手は敵中に孤立するケースが多く、2000人の女性スナイパーで生還できたのは1/4に満たない。リーザ・ミロノヴァ、モスクワ出身。ニーナ・ペトロヴァ、狙撃教官から48才で義勇軍に志願。アリヤ・モルダグロヴァ、カザフスタン出身18歳。ローザ・シャーニナ、入隊前は保母さん。いずれも名を成した狙撃手だったが戦死した。

 鮮やかに基地を叩いたロシア軍だったが、プーチンに上っていた情報の精度が悪すぎたのか、当初の戦争設計は成り立っていない。ロシアはその後の個別戦闘で押し込んだがそれで済むと思っていたのか。分割・傀儡政権、どちらのケースもウクライナ人の中に残り続ける憎しみを消すことはできず、仮にあの広い国土を占領するとしても今展開している以上の兵力を割けない。ロシア陸軍の常備兵力は27万人と聞く、半分以上を突っ込んでいてあれだ。
 このままでは長引けば長引くほど勝てなくなる。ウクライナはチェチェンやジョージアとは違う、どうやって統治するつもりだったのか。破れかぶれで核を使ってしまえば、(小型の限定核を無人の荒野に使うのだろうが)永久にロシアは破綻する。中国も態度を変える。
 偽旗作戦(false flag tactics)も既に見破られ、情報戦でも押され気味、サイバー戦もどうやら効果は限定的に見える。
 帝国陸軍が大陸で、アメリカがベトナムで、ソ連がアフガンで経験したことをプーチンが学んでいるとすれば、そろそろ国内に向けて恰好のつく落し所の結果を交渉するはずだ。

 待てよ。こうまで無理筋の戦争をプーチンが仕掛けた要因について、いかにもと言える合理的なものがない。真珠湾をやっちまった裏にハル・ノートがあったのだが、アメリカ人でその存在を知る者は皆無。我々の知らないハル・ノートをプーチンに突き付けた陰謀はないのか。
 例えばアメリカの圧力を受けたくない某国がNATOをそそのかし、ウクライナに核が配備されたとプーチンに吹き込んだ。或いは中国を追い詰めるためにウクライナのNATO入りを煽ってプーチンを切れさせ習近平に踏み絵を迫る。・・・・あんまりふざけてると顰蹙だから止めておく。

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ZOOMの向こうの悲しげな眼

2022 MAR 16 0:00:59 am by 西 牟呂雄

 顔はカメラの向けられず俯いていた。
「何てことをしてくれたのだ」
「皆さんに恥ずかしい」
「我が国は世界の信用を失った」
「何て事をしてくれたのだ」
「私があやまってもしょうがないが申し訳ない」
 憔悴し切った声には生気がない。
 相手はエカテリンブルグにいるロシア人。10年に渡るパートナーである。来日時には我が喜寿庵にも来て、たまたま来ていた学生たちと交流したこともある。
 大学工学部を卒業してエンジニアとしてスタート、ソ連が崩壊した。その後ジョブ・ホッピングした後に起業してあの国有資産のブン取り合戦のさなかで経営してきた。まじめでロシア人にしては珍しく酒が飲めない。個人的にはいかなる状況下でも、彼との友情に応えたいのだがやれることは狭まりつつある。手仕舞いか凍結か。日本は非友好国認定された。
 耳障りのいい情報だけに頼ってプッツンした大統領が悪い。クラスター爆弾、病院・学校空爆、次はマスタード・ガスか・・・限定的な核。
 核が使われたらNATOは黙っていない。核に対して核が使われなければ抑止理論そのものが破綻する。プーチンはそこまで狂ったか。もう他人事ではない。モスクワの地下ではすでに凄まじい情報戦が繰り広げられていることだろう。
 今もモスクワにいるさる日本人は侵攻直前まで、そんな心配はない、いったい何の大義があってキエフを攻めることができるのか、議会も機能している国でそんなことが始まるはずはない、西側報道はヒステリーだと断言してメンツを失った。現在は、これ以上経済制裁を受けてもっと酷いことをしでかさないか、と恐れている。
 街は警察官の数が目に見えて増え、おかげで治安は保たれているらしい。デモの光景が今までは放映されていたが、今後は見ることはできないだろう。報道規制が凄いことになりつつあるからである。あのロシアのスキンヘッド国連大使など、仕事とは言え全くの嘘っぱちを読み上げさせられているのは気の毒にさえなってくる。世界はカティンの森を忘れはしない。
 ロシア国内にはフェイク・ニュースが入り乱れ、国営テレビでは傭兵まで使うロシア軍は平和のために戦っているのだそうだ。ネットの統制も時間の問題だろう。ウクライナではお家芸である略奪・殺人・暴行が始まるに違いない。
 悲惨さ、非情さ、残酷さ、不条理さは今更ブログで私が書くどころではない。
 翻って、21世紀になってまでもあのような愚行が現実に起こり、それは我が国周辺でいくらでも可能性を秘めているという事実だ。前期高齢者である我が世代はイザという時に備えなければ。人間の盾にしかなれないだろうが、海に囲まれたわが国では子供がボート・ピープルになってしまう。
 無論プーチンは言語道断である。しかし、まともなロシア人も多いのだと付け加えたい。既読の読者もいるかも知れないが、あくまで冷静に思い出を記しておく。

「ワタシの名前はアリョーナです」
「こんにちわ。日本語が上手ですね」
「・・・・」
 同行のアレクサンドルが慌てて何か言った後、教えてくれた。
「彼女、『じょうず』がわからなかったんだよ」
 訪問先のマネジャーが『ウチの娘が日本のアニメが好きなんだがセリフは吹き替えだ。ところがテーマソングは日本語で流れて日本語の字幕が映る。それを覚えたくてネットで日本語講座を見つけて勉強しているんだが、日本人とナマの日本語を話したことがない。電話するから話しかけてやってくれ』と言って受話器を取ったのだった。
「おとなになったら日本に来てください。待っています」
 あれから10年。きっと飛び切りの美人になっていることだろう。

 気が重い。平常心を保ちつつウクライナの安寧を祈る。

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半藤一利さんの予言

2022 MAR 8 0:00:11 am by 西 牟呂雄

 先般亡くなった昭和史の泰斗である半藤一利さんは、2015年時点の著作のあとがきで不気味な予言をされている。40年サイクル史観である。
 1945年のボロボロになった敗戦の40年前1905年。日露戦争に勝利した年がピークであり、その時点から破滅への序章が始まったと仮定する。その40年前は慶應元年で、この年に朝廷の勅許を得て国策としての開国が決まった。即ちそこから維新を経て日本が必死にのし上がってくる期間である。
 一方敗戦の後に占領が6年続き、1951年から再び経済発展をやってのけて勃興したものの40年後の1991年にバブルが弾けて長い下り坂となる。デフレによって失われた20年も含まれ、2030年までは何をやってもダメという仮説だ。あと8年かかることになり、筆者は古希を過ぎて生きているかどうかもわからないという絶望的な話である。
 それとは別に72年サイクル説というのがあって、この説は開戦の1941年を軸に、72年前の1869年は明治2年。この年、維新が成って東京遷都が決まり明治天皇が京都から江戸へと移ってこられる。五稜郭が落ちた年でもあり、藩籍奉還が施行された。まぁ、この頃は毎年いろいろ起こったので何とでもいえるのだが。で、72年後はというと2013年だが、アベノミクスの最終兵器、黒田バズーカが炸裂し大っぴらに緩和政策が始まった。日本が既に落ち目になり果てたドン底だったとも考えられる。オバマ大統領の二期目や北朝鮮の原爆実験をしたことが印象深い。また、ロシアで隕石が落ちた。ま、こちらの仮設では現在勃興期に入っているはずが実感はない。どうでもよい、僕が考えたサイクル説だから。
 冒頭の半藤仮説に基づくと後8年で再びドン底に落ち、そこから再出発する。恐らくその立ち上がりを見ることはできないが、ドン底はいかなる状況だろうか。
 まず心配なのは大陸勢力の台湾進攻が現実のこととなり、巻き込まれてしまうことだろう。その地ならしのための工作はすでに始まっていることは間違いない。いつやるのかはさすがに分からないが、その戦略を練っていることは確かだ。
 次は同盟関係にあるもののアメリカに再びねじ伏せられるケース。僕はマネー敗戦とも言われたバブルの崩壊はアメリカの陰謀とも考えている。神奈川大学の教授だった元興銀マン、吉川教授のインペリアル・マネー・サイクル理論を支持している。若い現役はあのバブル崩壊の後遺症を知らないのだろうが、弾けて10年後には銀行負債は増え続けたのだ。その後リーマン・ショックまで我が国は蹂躙され続けていたのが事実である。
 いずれが8年後に日本をドン底に落とすのか分からないが、たったの8年だ。それが必然であるならば(仮説だが)、ポスト・ドン底のために準備しなければならない。
 僕は現在の円安は危険水域だと思っている。しかしながら今、緩和政策を止められないのも確かだ。するとやれることは予算配分の長期視点からの配分しかない。
 憲法改正ができるかどうかも分からない中で、ポスト・ドン底後に国の足腰を強くする提言が二つある。

 第一に防衛力の強化であるが、今から間に合うのはサイバー戦力を飛躍的に向上させること。これは防衛ハードのコストは大したことはないので予算化もしやすい。僕の見るところでは8年後の戦場は一変しているはずだ。日本も世界のトップを走っている量子コンピュータの実用化によって今の乗数倍のスピードで産業の在り方を変え、サイバー戦力を変えて行く。
 このサイバー戦という概念は時間も空間もない。瞬時に相手の軍事インフラに止めを刺せる。しかも我が国は他国を侵略することはないので、その後侵攻する地上部隊は必要ない。おまけに攻撃を受けた側はどこから誰が仕掛けたのかもわからないだろう。
 何しろ今でさえ北の国やら大陸やらの攻撃は続いており、ある意味もはや戦場なのだからこちらからの攻撃が問題にはならないのである。僕は同盟国からの攻撃も受けているのではないかとさえ疑っている。すなわち専守防衛の概念すら存在しない。
 問題は、このサイバー戦を仕切る将官がいないことだ。現在のオッサン達、並びに8年後に指揮する年代では使い物にならないと思われる。従って今から防大・少年工科学校生徒の中からスジのいい学生を専門官に育成すれば8年後にはそれなりの指揮官になるだろう。天才はある確率で出るからいまから8年もかければ必ずモンスター級の人材が確保できるはずだ。兵士クラスは引きこもり・オタク層に年齢を問わずに高い給料を提示すれば間に合う。
 次に、戦略科学技術の育成である。『2位じゃだめなんですか』以来、削りに削られていた科学技術予算を大幅に増やすことだ。どの位の貧弱さかというと、例えば防衛関連で見ると日本の政府開発予算4兆円のうち防衛省に回るのはたったの2千億円。アメリカの国防関連予算は12兆円。これでは上記サイバー戦開発につぎ込むどころではない。GAFAの合計開発費は20兆円と見積もられるらしいからもはや国家並みだ。防衛予算にばかり話が行ってしまうが、他の基礎研究も推して知るべし。
 特に政府の研究開発の仕切りには反自衛隊・反自民党に凝り固まった日本学術会議が深く関わっており古色蒼然とした体質を保持し続けている。
 しかし、僕が以前携わった新材料開発に関してアメリカはこうだった。無論初期の材料コストは開発も含めて汎用品より遥かに高い。それでも機能が高ければ採用をしたのは軍事産業だった。すなわちコストは5倍だが敵より攻撃・防御能力が倍に上回れば採用される。すると約10年を経て量産化されコストも下がってくると民間でのアプリケーションが可能になってきていた。もっともアメリカでは、だ。
 第二に教育への傾斜投資を考えたのだが、ゆとり教育の失敗とかいう話ではない。 僕は長く海外業務に携わっていながら、だからこそ『グローバル化』だの『新自由主義』といった風潮に苦々しい思いを持ち続けてきた。別に海外で稼ぐことに文句があるのではない。そういった風潮を煽る輩が調子に乗って伝統破壊をあたかも錦の御旗のように言い立てるのが嫌なのだ。
 インドだろうがベトナムだろうがフィリピンだろうが、そこにはそこの作法があり伝統もある。異国である日本人としてどう接するか。それなりの矜持を持つのは当然としても、相手のある限り日本を背負って接しており、どんな相手にせよ向こうは『日本人』として見ているのだ。『日本人』とは突き詰めて言えば日本語である。日本語で考え日本語で喋り日本語を読んで暮らしているではないか。
 確かに日本語は情緒的ではある。だが論理的に喋ることも書くこともできる(拙ブログのことではない)。例えば鍛え抜かれた霞が関の官僚の文章。役人の書いた国会答弁などは(嚙み合っているかどうかはさておき)十分論理的だ。スキを突かれないように揚げ足を取られないように練られているので読んでも面白くも何ともない。
 普段の日常会話においても、何を言っているのか分からない輩は何を言われているのか理解しているのかも怪しい。そんなオッサンが山ほどいるのに小学校の国語の時間を減らしてまで英語を教えて何か意味があるのか。そんなことをしても英語が上手くなる奴は限られていて落ちこぼれが増えるだけだろう。
 作家の佐藤優氏の検証によれば、国語力(この場合マザー・タング=母語)が弱くなると数学力も弱くなる、即ち言語的な論理と非言語的な論理は相関関係がある。あいまいな表現しかできなくなり、論理的な物事を咀嚼できなくなる。
 まっ、日本語を乱しまくり駄文を書き連ねている僕の言うことでもないが、国語力を鍛えておくべきなのだ。八年後にはその教育を受けたフレッシュマンがオッサンを駆逐し始めるだろう。

 さて、モリ・カケ問題で未だに尾を引いているにもかかわらず、経産キャリアの持続化給付金詐欺、国土交通省の統計改竄、いったいどこの国の話だ。半島や大陸、はたまたアフリカならいざ知らず、お上がこれでは民間だってデータ改竄、横領、ハラスメントはもっと酷いに決まっている。上から下までこれではモラルの国とは言えたもんじゃない。
 政治家に至ってはアフガニスタンの混乱に自衛隊機を飛ばしそこないかけた外務大臣、人権蹂躙の中国に対する対中非難決議を封じ込んだ幹事長、どちらも茂木敏光だ。エラソーなハラスメントで有名なくせにそんなことも決断できない(やらないとは決断したが)根性のないエリートだ。
 責任の取り方がなってない。森友問題について言えば自殺までして抗議した気の毒な犠牲者に指示した人間は存在し『私が忖度して改竄を指示しました』と明らかにするのが筋だろうに。総理が知らなかったのは明白だ。佐〇(当時)理財局長あたりが腹を切るくらいでなけりゃ納得感などあったもんじゃない。嘘をついているのは誰だ。それをはっきりさせないからSNSでバカな炎上騒ぎになる。罰則がなければ知らんぷりで通せると思ってるのか、モラルの問題だ。恥を知れ。嵩にかかって野党の福〇瑞穂や森〇子が自殺前日に近畿財務局に乗り込んでガタガタ追い詰めたら悲劇が起きた。
 2030年まで残り8年だ。堕落論ではないが、落ちる所まで落ちて膿を出し切って出直せ。僕はその頃古稀を超え、アルツハルマゲドンと闘っているだろうから、落ちていくのを見届けられるかどうかわからない。

半藤一利さん

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プーチン・プッツン

2022 FEB 28 1:01:43 am by 西 牟呂雄

 全くひどい話だ。外交も何もない。気に入らないからいきなりブッ放しキャタピラ音を鳴らしながら首都に侵攻。
 直前まで『部隊は撤収する』などと三味線を世界中に吹聴しながらいきなり開戦だ。これでは会談に奔走した仏独首脳は単なるコマ使い。筆者はハンガリー動乱やチェコに侵攻したソ連を思い起こす。
 プーチンは会見では原爆の使用体制を取ったとまで発表した(特別態勢のこと)。しかし一体どこに撃つのか、まさか自国の兵士がいるウクライナの都市ではあるまい。アメリカ?まさか。現ウクライナ政権をナチ呼ばわり(ロシア系住民をジェノサイドしたというフェイク)。映像を見るとやや太り、その目はイッている。体調に異変をきたしておかしくなったのではないのか。
 このナチ呼ばわりには伏線があって、ウクライナの2014年政変(親ロシア大統領追放)の際、その後の政権中枢にネオ・ナチ一派がいたことは本当だ。このことはロシア国内で思いきり報道されモスクワでは常識となっている。しかもその一派はアゾフ連隊として武装し、東部親派の支配地域で対峙している。その源流を辿ると大戦時に親ナチだったグループに行きつく。だがゼレンスキー大統領はユダヤ系なのだ。東部でロシア系住民を虐殺したと言うが、大きな声では言えないがこの8年というもの、東部ではそのアゾフ連隊とロシア派がズーッとドンパチはやっていて犠牲者も出ていた。
 キー・ワードはNATO。ウクライナの現政権はNATO加盟を謳っている。既にバルト3国がNATO入りした現在、プーチンにとってベラルーシとウクライナのNOTO入りはどうしても阻止したい。冷戦中は16ケ国だったのが今や倍だ。
 ロシア人の国境感覚がそうなのだ。ロシアの国境のロシア側には何にもない。20kmくらい寒々とした荒野が広がっているだけだ。モンゴルとも中国ともそう。そういう緩衝地帯がないとロシア人は落ち着かない。NATO加盟国と国境を接するなど以ての外という考えである。筆者はかつて日ロ合弁会社を立ち上げ、現在もロシア人との交流は続き、普通のロシア人の善良さをよく知っている。上記の国境感覚も彼らと話していて気が付いたことだ。北方領土の問題に一般のロシア人が関心がないのはそれが『島』だから。アッチラ大王に攻め込まれ、ジンギス・ハーンに蹂躙されたことがDNAに沁みついていて、中国人をキタイ・スキーと呼ぶのは契丹のこと。広大な緩衝地帯がなければいられない。
 それにしてもアメリカからあれだけの警告を受けたにもかかわらず、たった100発のミサイルでガタガタになったのはどうしたことか。ベラルーシから入って来た部隊は、遠く極東から移動して演習に参加していたことは確認されていた。今更、予備役招集、志願兵募集・外人部隊とか言っているが、何も対策していなかった、勇武のコサック発祥の地だというのに。8年前にほぼ無抵抗でクリミアを取られて東部を実効支配されながら何をやっていた。無論サイバーもフェイクも工作も(クリミアの時もやった)何でもやられ放題だったにせよ、こんなに脆いとは思わなかった。或いは首都籠城を決め込んで墨子の戦いでもするつもりだったのか。
 ついでに言えば、頭のおかしくなったプーチンにウクライナが蹂躙されている時に、アメリカもNATOも成すすべがないことをジーッと見ているのは大陸と北の国。ウクライナはソ連崩壊の際に保有していた核を手放した。台湾ははるかに小さい。放ったらかしにして見殺しにした場合、ニンマリするのは〇近〇と刈り上げデブだ。さっそく一発撃って見せた、こっちも向いてと言いたいらしい。
 一方、欧米がSWIFT排除まで踏み込んだ。ルーブルは暴落するだろうが、こっちも返り血は浴びる。例えばエネルギーが高騰する。合弁事業はどうなるのか・・・。モスクワ在住のロシア通日本人は『自分の人生が否定されたようだ』と嘆いた。彼はほぼ完璧にロシア語を理解するため、ロシアのTV・新聞ばかり見て普段はかなりバイアスのかかった意見の持ち主だが、さすがに落ち込んだ。
 ウクライナもウクライナで、2004年の通称オレンジ革命でEU寄りを主張したユシチェンコ政権は内部抗争に明け暮れ2010年時点ではロシア寄りのヤヌコーヴィチに選挙で負ける。オレンジ革命そのものもジョージ・ソロスに操られたものだと囁かれていた。

ユーリア・ティモシェンコ

 その頃、首相として人気のあった美人のティモシェンコは、後に逮捕される程利権を漁りまくった腐敗政治家。2014年にユシチェンコを引きずり下ろしたポロシェンコも大金持ちで、オレンジ革命を支援していたが実態は不正蓄財に励むマムシのような大統領だった。要するにロクな政治家がいたためしのない国家なのである。

 ところでこの電撃侵攻は(全く認められないが)見事の一言に尽きる。ウクライナはまだNATOではない、バイデンは部隊を派遣しないと言った、EUは簡単に騙せた、オリンピックは終った(パラリンピックはこれからだが)、相手はまさかと思っている、大地が凍って戦車が移動しやすい、今しかない、というタイミングを選んだ。アッという間に防空システムを破壊し、3方面からの侵攻を開始し首都を包囲する。
 東部でブラフをかけて主軸は北と南から、しかも主力は今なお温存している。
 そこから『非軍事化』と『中立化』を条件に話し合う、と誘いをかける、うまい。非武装中立とは恐れ入る。九条でも押し付けるつもりか、満州国でもつくるつもりか。
 ゼレンスキー大統領は前提条件なしでの交渉に応じるとか。核にビビッたか。
 その間、制裁は厳しくなり、ロシアの孤立感はますます募るだろう。だがプーチンはそんなことは織り込み済みで怯まない。多少の返り血は覚悟の上だ。国内のデモなんか知ったことか。
 それから感心したのは、SNSでも意識したのか攻撃対象を軍事拠点に絞り込んでいる(当然誤爆もしているが)。ロシア軍がアフガン(撤退を余儀なくされたが)やシリアでやったことは(シリア軍がやったことになっているが)皆殺しである。やってることは20世紀・昭和丸出しだが、戦術は今世紀・令和ということか。
 気になることが三つ。あの気が遠くなるほどの渋滞の中、トイレは大丈夫なのか?
 密集する両軍にオミクロンは蔓延しないのか。
 国連は話を聞く機関に過ぎないのか(そうなんだけど)。

 さて、NATOとロシアに挟まれた国。大国の思惑により攻撃を受ける国。言うまでもなく米・中の力比べのただなかにある我が国と台湾の置かれた状況と同じなのだ。この事態を見て大陸が台湾領の島を取りに行く、アメリカは辛くも助けて戦闘になる、自衛隊が周辺事態としてサポートし実弾攻撃を受けて巻き込まれる、大陸の意を受けた北の国がミサイルを100発我が国に打ち込む、安保条約発動の全面戦争、核!
 まだある。安部ートランプだったら有り得ないが、バイデンの裏切りだ。民主党は昔から大陸とツーカーだ。冷戦時代はソ連に大陸をけしかけるため密かに協力をしていた可能性が言われている。
 世界は中露・日米欧・インド(今回国連の理事会で棄権)・イスラム教国家・どうしていいか分からない国、の五つに分かれていくだろう。
 さて、どうする。核武装しますか、岸田総理!

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真冬の富士と魔王天神社

2022 FEB 24 0:00:08 am by 西 牟呂雄

 性懲りもなくスノボに行く途中に富士山のヴュー・スポットがある。
 曇り空にうっすらと富士山を見るとなんか変。ぼやけた写メで見にくいだろうが、山頂がすっぽりと雲に覆われまるでお椀を被ったようだった。
 これは「富士山が笠をかぶれば雨が降る」と古くから言われている笠雲で、検索してみると事実冬場では70%ほどの確率だそうだ。
 この日は寒い曇天で、降れば雪。車はノーマル・タイヤだから下手すると遭難。這う這うの体で帰ったらやっぱり降った。富士山の言い伝えありがたや。

山中湖にて

 このところ山荘暮らしが長いので(テレ・ワークのせいで)、休日には富士五湖をひとつづつ一周するドライブを今年から始め、西湖・河口湖・山中湖と回った。どこからでも富士は見えて観光客もオフ・シーズンとコロナのおかげで少ない。
 こちらは山中湖からの富士だが、山裾から湧き上がっているような光景が珍しいので納めた。
 こんなに晴れているのにあの雲の下は風が舞っているのだろうか。

 先日、西村さんの初詣ブログに第六天魔王についてコメントしたが、第六天魔王とは別にサタンではない。仏教における天のうち、欲界の六欲天の最高位(下から第六位)にある他化自在天のことであり、日蓮などは修行者を堕落させる者と説いた。
 かの織田信長が叡山を焼いた後、正覚院豪盛等が武田信玄を頼ったため信玄から信長宛てに書状が届くが、「天台座主沙門(しゃもん) 信玄」とあったため、その返信に信長が「第六天魔王信長」と署名し叡山残党への恫喝の意味を込めたとされる。但しその書簡はいずれも現存せず、宣教師ルイス・フロイスの報告書にあるだけなので疑う声もある。だが世間でそう言われたり噂されていたのだろう。フロイスの書簡を見たことはないがアルファベットで『ダイローテンマオ』と読めるそうだ。

うわぁ

 一方、仏教の世界観を表す名称を持つ神仏習合の神社はその伝承はともかく多く、五湖の西湖の近くに魔王天神社はある。
 いつも行くスキー場の入り口だ。
 この日、また性懲りもなくスノボをやりに行って恐ろしい目に合った。ボードを抑えるビンディングは樹脂でできていて、固くシューズを固定しているが、3本目を滑ろうと締め始めたら『パリッ』と音がして、左足の甲の所が飛んでしまった。もう20年も使ったから来るべきものが来たのだ。仕方なく足首だけ固定して降りてきたがヤバいの何の。それにしても・・・。以前スキーでも似たような目に合ったことがある。

春夏秋冬不思議譚(ゲレンデに砕けたスキー靴)

 
 あまりのことに、お祓いがてら魔王天神社をのぞいてみた。山が神体というので長い階段があり、見上げてみるとこのおどろおどろしさはどうだ。
 そしてたまたま通りかかった人に聞くと地元での呼び名は「オダイローサマ」。まさにフロイスが聞いた通りの第六天魔王そのものだった。よいこらしょっと登ってみると何と石段は108段!

オダイロー様

 ヒイヒイいって上ると質素なお社があり、まさしく『魔王天神社』なのである。
 覗くと御神体はなく、奥は吹き抜けになってその先への階段があるだけだった。
 人っ子一人いない狭い境内で、おもむろに10円玉を放り込み、本日起こった不幸を払い年末から続く諸々の厄災を報告し、家内安全世界平和商売繁盛、祓い給え清め給えカシコミカシコミ申し上げ奉りました。

舞殿

 ふと見ると、参道の前にかわいらしい神楽殿があったから、ついでに大魔王踊りでも奉納しようかと思ったが『不審者を見た場合は村内放送の上通報します』などと書かれていたのでさすがにやめた。

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モデルナ戦記

2022 FEB 19 0:00:17 am by 西 牟呂雄

 3回目のワクチンを打った。前2回はファイザーだった。諸説あってそのままファイザーで行くかモデルナにするか迷ったが、ファイザーの方は予約が一月先になりそうだったので思い切ってモデルナでハイブリッド型を選択した。
 前2回とも腕の痛みも熱も出ず、どうってことなかった。今回もどうせそうさ、とホイホイ打ったのだ。
 会場で問診を受ける。
「アレルギーはありますか」
「ありません」
「服用中の薬は」
「××〇◎▽を服用してます」
「アルコールは大丈夫ですか」
「毎晩やってます」
「そうじゃなくて、消毒用のアルコールに被れたりしたことはありますか」
「全然ありません」
「ハイハイ」
チクッ、イテっ、でおしまい。今日はお風呂と酒はダメらしい。
 夜になって少し腕が痛いような気がしたが、まあいいや。
 翌朝、何事もなく目覚める。二日酔いもないしきょうも元気だ、タバコがうまい。
 ところが昼過ぎ、突然異変が起こった。首筋を風で冷やされた感じ。ヤバい!
 大事を取ってテレワークをしていたので慌てて体温を測ると38度。しまった、ナメていた。急いでスキーのインナーに着替え、タートルのセーターを着込む。まだ寒い、ジャケットも羽織りまるでゲレンデに立つようないで立ちに身を固めた。
 そういえば昨日『水分を多目に取って』とアドバイスされたのを思い出し、お茶のペット・ボトルをガブ飲みする。食欲はない。
 夕方、日が落ちてくると寒さが厳しくなったような、体温は同じだ。
 ここで僕は気合を入れる。司令官の僕(すなわち脳)から体の各部部隊長に総攻撃態勢を伝達することにした。

脳「各部隊長集合せよ。訓示を達する」
 神経を通じて前線から部隊長たちがやってきた。
「これより我が軍は総攻撃をかける。目下の苦戦は敵ウィルスを撃退すべくm-RNA作戦を展開中であるが、ここが戦いの分岐点である。各隊、『抗体』の防衛線が構築されるまであと少しの辛抱だ。勝利を信じて全力を上げるべし」
「隊長」
「何だ。腕少佐」
「我が部隊は昨日の左翼からの攻撃により消耗著しく、目下痛みに耐えるのが精一杯であります」
「それは織り込み済みである。残存兵力を率いて右展開せよ」
「隊長」
「腎臓少佐か」
「揮下、膀胱小隊も隊長の『お茶がぶ飲み作戦』遂行中につき疲労著しく、戦闘継続不能ー」
「却下。引き続き戦闘に従事せよ。もういいか」
「隊長ー」
「何だお前達まで。肝臓・膵臓両少佐。何か不満か」
「わが部隊は連日のアルコール攻めに壊滅寸前であります」
「分かっておる。大腸隊を見てみろ。癌攻撃も癒えていないのに健闘しているではないか。最後まで戦ってくれ」
 戦闘はその後も続き、火ぶたが切られてから8時間を経過した。もはや限界と言えよう。私は決断した。
「参謀長。小脳参謀長」
「はっ」
「戦局我に利在らず。最後の突撃を命ずる」
「お待ちください。友軍は現在も奮闘中です」
「時間の無駄だ。最後の突撃を決行する」
「隊長。早まってはいけません。何をなさるおつもりですか」
「小官自ら禁断の『びいる弾』を使用し、特攻突撃をする。全軍に通達せよ」
 現場からは悲鳴が上がった。特に肝臓少佐は『一命に代えても踏み止まっていただきます』と意見具申してきたが無視した。
「食道・胃・十二指腸・小腸の部隊の損傷はなお一層苛烈なものとなることを覚悟せよ」
「隊長ー。おやめくださいー」
「すでに大命は下った。諸君、靖国で待つ。突撃にー、前へー」
 号令とともにプシュッという音がして缶式びいる弾が発射された。

 翌朝、我が部隊は何故か何事もなかったように配置についまま目覚めた。戦闘は終了し、我が軍はかろうじて戦線を維持、即ち勝利した。私の脳裏にはその喜びは湧かず、軽い頭痛が残った。待てよ、若干の吐き気もある。戦闘の後遺症か、そういえば缶式ビイル弾に加えて焼酎ナパームも投入したのだった。人、これを二日酔いと言う。

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スキー競技の張家口

2022 FEB 12 8:08:27 am by 西 牟呂雄

 現在オリンピックのスキー競技が行われている所は北京の北180km、万里の長城の要害である大境門の外側に位置している張家口である。この地で平和の祭典が執り行われることに筆者は特別の感慨がある。
 昭和20年8月15日。日本が無条件降伏をした時点で、かの地は内モンゴル(当時は蒙古聯合自治政府)であり帝国陸軍駐蒙軍(関東軍ではない)が駐屯していた。民間日本人4万人もいた。
 千島列島の占守島と同じく、降伏を無視したソ連軍の侵攻はここでも起こった。この地を守っていた根本博中将は「理由の如何を問わず、陣地に侵入するソ軍は断乎之を撃滅すべし。これに対する責任は一切司令官が負う」と果敢に突撃を命令、ソ連軍の猛攻を跳ね返した。更には八路軍のゲリラ攻撃(彼らは山中ゲリラ・街中テロしかやらない)をしのぎつつ、4万人の民間人とともに長城を越え脱出・帰国したのである。民俗学者の梅棹忠雄や版画家の池田満寿夫はこの一行の中にいて生還できた。根本の決断は北海道をソ連から守った第五方面軍司令官、樋口中将に被る。

ヒグチのリスト


 尚、駐蒙軍は国民党軍とは戦闘しておらず、根本は帝国陸軍にあってはいわゆる支那屋の中国通で、国民党軍の傅作義とも交流があったためスムースに引き揚げられたものと思われる。
 その縁なのか根本は戦後奇怪な行動に出る。蔣介石が日本軍の引き揚げに協力的だったことを徳と考え、大陸の足場を失いアメリカからも疎まれ孤立無援だった国民党を支援しようと台湾に密航する。
 この時無一文に近かったため、明石元長の援助を受けるが、この明石は台湾総督を務めた明石元二郎(日露戦争の時に後方攪乱工作をした情報将校明石大佐)の息子、かつ現上皇陛下のよき相談相手でもある明石元紹の父である。
 当初は拘束されるが、身元が明らかになり「顧問閣下」として遇された。そして人民解放軍との決戦となった金門島の戦いを指揮してこれを撃退する。今日の台湾の地位を保全したことになる。根元の行動は日台両国ともに長く極秘とされ2000年代まで表には出ていなかった。尚、日本人義勇軍と言われた富田少将の白団(パイダン)とは関わっていない。
 検索していたらもう一つ面白いエピソードがあった。中佐時代の陸軍省新聞班長だった時、かの2・26事件に遭遇している。根本は統制派として決起将校からは狙われており、決起部隊の一部は、当日未明から根本の陸軍省出勤時に襲撃する計画だった。が、二日酔いで寝過ごして助かったらしい。そして「兵に告ぐ、勅命が発せられたのである」で始まる戒厳司令部発表を、拡声器を使ってガンガン流し部隊の動揺を誘っている。

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