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夢のアルツハルマゲドン 

2014 DEC 12 16:16:24 pm by 西 牟呂雄

 身の回りが青く広がっている。ブルーな世界だが透明感に包まれている。どうも宙に浮いているようで、気が付いたら足は地面を踏んでいない。息は普通にできているし手足も動く。
 だんだんあたりが暗くなってくる。ブル~からブラック、色の無い世界にゆっくりと変わってくる。すると遠く、距離がどのくらいか見当もつかないような遠くの方にチラチラ光が見えてきた。それは前後左右上下と球面体のように広がっていて、体は自由に動くのだが重量感は感じられず、宇宙の真ん中を漂っているようなのだ。しかし先ほどから呼吸は不自由ない。そして重力を感じないせいで上下左右の感覚もない。漂っているのだ。
 漆黒の空間に稲妻のような裂け目が走った、と思ったらガバッといった具合に水の上に頭が出た。今まで泳いでいたのか。いや、足が着いている。更に驚いたことに全然広くも無い水溜りのような池に立っているではないか。水は緑色に濁っていて下半身は見えない。出ようとして縁に手を掛けたらガサッと崩れて、同時にトイレが流れるときのように足元から吸い込まれて落ちていく。
 転がり出た先は今度は何だ。緑色のタイルがモザイクのように敷き詰められただだっ広い部屋の中だ。ツルツルする手触りがあった。寝ていたのだ。ゆっくりと起き上がってみると体育館よりも広い。重力が感じられた。東京ドームがこのくらいなのだろうか、たった一人で寝ていたようだ。立っては見たが足元が滑って歩けない。しょうがないから四つんばいになって進もうとしたが、どっちへ行けばいいのかが分からない。滑りつつもセッセと這うことを繰り返したが、進んでもいない。上を見ると床と同じ色の天井が遥か高いところにあるのが分かった。ここは一体どこだ。
 するとその部屋だか何だかがゆっくりと回転を始めた。体が少し滑るので分かる。そして平面方向だけでなく3次元軸も回転を始めた前後左右に滑り出したのだ。更にだんだん速度が速くなってくる。タイルの目地がぼやけて全体が緑の空間のようににじんで見えてくると、不思議な浮揚感に包まれ体の重ささえも感じられない。今は緑色の球の仲で浮いているような感覚になってしまった。手足の感覚がない。
 いや、見ようとしてみると手も足も無い!無いというより見ることができないというか、肉体がどうも無くなった。緑の球になったころからだ。さっきまで四つん這いになっていたのに。
 しかし何故だか『焦る』とか『困る』といったハラハラ急き立てられる感じがしない。この訳の分かんない状態は一体何なのか、どうしてこんなことになっているのか、全て分からない。それどころか、この緑の空間というのは僕に見えている”何か”なのか。肉体が無いというのは痛いもかゆいも疲れたもないので多少の陶酔感すらある。もしかしたらこの緑の空間が僕の『意識』かも知れない。
 だんだん暗くなってきた。僕はズーッとしたを向いているらしい。下の方に下がって、いや落ちて行っているのだ、うわー・・・。真っ暗になっちゃったよ。

 薄目が開いたように少し視界が利いている。声も聞こえるみたいだ。ぼんやりと人影も見える、動いている.『おじいさん、息して!』うるさいな、息なんかしなくても苦しくも何ともないんだよ。誰だあれは。見たことあるけど。もう目を開けるのも面倒だ・・・。あれ、オレは・・・・今まで何だったんだろう。人間だったかもしれないが、もう口が無いので言葉も発せられない。アッ目ももう無いようだ。瞬きしようとしたが瞼がない、目がなくなっているのだ。周りからはオレはどう見えているのか。オレ・・・・死ぬのかな・・・・。

実験ショート小説 アルツハルマゲドン(オレは誰なんだ!)


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Categories:アルツハルマゲドン

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