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不思議な子供の目線 Ⅱ

2020 FEB 8 1:01:32 am by 西牟呂 憲

 ヨッコラショッ、と言った感じで喜寿庵にやってきてみれば、裏木戸が開いていて何やら声がする。子供の声だ。何事かと庭へ廻ると何と7~8人のガキが遊んでいるではないか。
「コラーッ、勝手に入ってきちゃダメじゃないか。帰んなさい」
 ガキは一斉にこちらを見てビックリしている。そしてその中にピッコロ君とマリリンちゃんがいた。この子がつれて来たのか。私が教えて少し日本語の会話ができるようにはなったが、いきなりこんな仲間ができたことにこちらも戸惑った。ガキ等は口々に
「何だよ。自分ちだっていうからついて来たのに」
「せっかく遊んでやってるのに怒られちゃったじゃないか」
等と言いながらゾロゾロ出て行こうとした。
 私はそれを聞いて少し慌てた。ひょっとして友達になろうとしてガキ共を呼び込んだのじゃなかろうか、自分のウチと言って。とっさに
「いや、この子達の家も同然だけどオレがいない間に人を連れてきてはいけないんだ」
と取り繕って追い払った。そしてピッコロ君とマリリンちゃんに
「ほら、こっちにおいで」
と手招きして家に上げた。
 火の気のない屋内はシンッと冷えていて急いで暖房を入れ、雨戸を開けた。二人は黙って座っているのでチョコレートを開けて紅茶を入れてあげた。その後の指導で紅茶に砂糖を入れてかき回して飲む、というところまではできるようになった。何しろ国籍不明・言語不明瞭・住所不定の子供だ。私の私設寺子屋で行儀を教えているくらいだから、まさか地元の子供とコミニュケートできるとは思ってもみなかった。ただ、私設寺子屋を始めて、かろうじてたどたどしく喋れるのだとは分かってきた。それから色々テレビを見せたり歌を聞かせてボキャブラリーを増やしている。
「なんで自分のウチだなんて言ったの」
 返事はない、下を向いているのでマズいとは思っているようだ。
「何して遊んでたの」
 これも無言。こういう時に怒ってはいけない。
 仕方がない、早速私設寺子屋を開いて『嘘をついてはいけない』を教えることにした。
 ところが、まず『嘘』はなにかわかるか、ときいても覚束ない。
「本当じゃないことをわざと言うことだよ」
「ホントウ・ジャ・ナイ」
 うーむ。ピッコロ君はお兄ちゃん、マリリンちゃんは妹。これがホントウで、ピッコロ君が妹とかマリリンちゃんがお兄ちゃんは嘘。このバージョンを男・女とか大人・子供で教えてみた。カードも作った。初等教育とはなんと難しく手間のかかるものだろう。小学校の先生の苦労が今頃わかった。
 子供たちも面白がって暫くやっていて、ヤレヤレ先が思いやられるな、と庭に目をやった。

ハマユウのピラミッド

 毎年ハマユウを藁で冬囲いしているのだが、今年は時間がなくてできなかったな、と思っていたら、そのハマユウのある所に枯葉のピラミッドがあるではないか。なんじゃこりゃ。
 そういえば去年落ち葉を掃いていたと時に、この子達は正四面体のピラミッドを作って遊んでいたのを思い出した。
「あれはあなたたちがつくったの?」
 と聞くと、また何か怒られると思ったのか怯えたような目つきで見上げている。そしてポツリと言った。
「ハマユウ、サムイ」
 えっ、はまゆう?浜木綿が寒い?これは浜木綿だと教えたことはあったかな。そうだ、暖かい所から来た植物だから寒さに弱いことを言ったかもしれない。それでこの子達なりに落ち葉を摘んでハマユウを囲ったのか。
「寒いから葉っぱを被せてあげたの?やさしいね」
 と言ってもキョトンとしている。それから、これは怒ってるのじゃなくてほめてるんだ、優しい気持ちとはそういうことを言うのだ、と説明するのに又1時間を費やした。二人は最後にニッコリ笑ってくれてホッとした。我が寺子屋も多少の効果があるのだろうか、今まではいつの間にか消えていたのが『さようなら』と言って帰っていった。

ワッ

 するとどうだ。果たせるかな夜中から雪が降って、朝にはこんなに埋もれてしまった。あの子達ひょっとして・・・・。

不思議な子供の目線

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Categories:遠い光景

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