Sonar Members Club No.36

月別: 2016年6月

トランプ 五番勝負

2016 JUN 5 15:15:55 pm by 西 牟呂雄

 本当に大統領になるのだろうか。アメリカは反知性主義の塊にでもなって、もう冷静さはなくなってしまったのか。モンロー主義に戻って籠もるつもりか。それともアメリカは本当は怒り出したのだろうか。興味の尽きない選挙まで後半年。
 数々の勝負に勝ってきた男、ドナルド・トランプとは何か。その勝負の軌跡を別の切り口から拾って遊ぼう。

一番勝負 トランプ 髪切りマッチに勝つ
 実はトランプは大のプロレス好き。アトランティックシティのトランプ・プラザではWWEの祭典レッスルマニアが開催された。それどころか2007年、WWEオーナーで億万長者のビンス・マクマホン会長にビデオレターで宣戦布告をした。無論業界で言う”アングル”(やらせによる客寄せ)である。
 「ファン感謝祭」では会場の天井から本物の百ドル札を降らせて突然トランプが登場。この百ドル札は確かに本物で皆持ち帰っていた。これに対しマクマホンが双方の髪の毛をかけての対決を申し入れるという実にふざけた企画なのだ。二人ともヅラ疑惑があったため髪切りマッチという筋書きだ。無論本人達は直接はやらず、指名したレスラーに戦わせた。
 当然受け狙いの演出は万全で、場外ではトランプがマクマホンにアックスボンバーを打ちパンチを連発する。
 結果はトランプ側のラシュリーがマクマホン側のウマガに勝利し、マクマホン会長はリング上バリカンで丸坊主に。今でもYOU・Tubeで見られるが面白いの何の。
 今回連発している暴言はこのノリの延長線みたいで、本当に大統領になっていいのか疑問を持つ事請け合いだが、不思議な事に少しもそうならない。
 因みにこの試合のレフェリーをやったのはアクション俳優として映画にも出る”ガラガラ蛇”オースチンで、帰り際にスタナーをトランプに喰らわせている。

二番勝負 トランプ バカラで勝つ
 山梨の不動産業兼貸金業社の柏木昭男。彼はバカラのプロとして世界的に有名なプレイヤーである。オーストラリアで29億円を勝ったこともあった。
 前述トランプ・プラザはカジノも併設しており、初めはそこでしこたま金を搾ってやろうとトランプ側が招聘した。これを受けてバブルの真最中の1988年、柏木氏はバカラのテーブルにやって来た。
 1回の賭金が20万ドルというケタ違いのバクチなのだが、柏木氏はたったの2日で600万ドルも稼いでサッサと帰国した(税金はどうしたのだろう)。
 3カ月後、再び柏木氏が姿を現す。2度目の勝負は一週間続き柏木氏は最終日に925万ドル勝っていた。ところがバクチは恐ろしい。それから10時間もの間柏木氏が負け続け、最後に1000万ドル負けて終了。負けが込んでいた時点でトランプ側が一千万ドルまでで勝負を終えようとオファーしていた。オッソロシイ。
 尚、柏木氏はその後自宅で惨殺されたが犯人は迷宮入りである。負けを払わなかったからだと言われている。

三番勝負 トランプ破産に勝つ
 さすがに失敗もある。イースタン航空のシャトル便路線を買収したがうまくいかなかった。巨額の債務によりカジノやホテルも倒産した。 1994年に飛行機事業から撤退。マンハッタンの物件も売却した。
 ところが個人資産はガッチリ確保しており、その後マンハッタンに高級マンションを建設したりホテル・カジノをオープンして「アメリカの不動産王」に復活する。
 そしてまた、サブプライム・ローン破綻やリーマンショックからもさすがに逃げられず、社債の利払い不能になったトランプ・エンターテイメント・リゾーツ社は2009年に連邦倒産法の適用を申請している。上記のWWEもバカラもこれらの危機の直前の話であることに注目したい。
 にも拘らず相変わらずケタ違いの大金持ち振りは相変わらずで、その辺のカラクリは良くわからない。おそらくヤバい部分があるに違いない。
 常に復活を繰り返しながら、不採算事業はすぐに手放している。

四番勝負 トランプ予備選に勝つ
 過激な暴言で注目を浴び、主流派が割れて戸惑っているうちに勝利を手にした。ウォールストリート・ジャーナルやワシントン・ポストがケチョンケチョンに書いても気にもかけない。差別的な表現、下品な表現、非人道的表現、何でもござれ。それが予備選では連戦連勝した。以外と巧みな選挙戦術があったのかもしれない。
 共和党主流派は一体どこで何をやっていたのか。その主流派の本命は誰だったのか。
 筆者はジョブ・ブッシュだったと見立てていたのだが・・・。
 トランプの戦術は『当面の敵』を言葉巧みに煽り立てて潰してしまう、というものだったと思われる。
 ルビオはヒスパニック系だがネオコンみたいなところがある上にカトリック。ウォール街の献金も多い。クルーズはティーパーティーの流れを組んでいる共和党一の嫌われ者。ブッシュは兄貴も親父も戦争をやった。これらをうまく突いて引っ掻きまわし、主流派が慌てているうちに次々と他候補者を潰していった。確かにアメリカの選挙はネガテイヴ・キャンペーンありだから、サシの勝負に持ち込んであいての悪口を言い浴びせて葬ってしまったのは見事な戦術ではあった。

五番勝負 トランプはヒラリーに・・・
 トランプは単なるバカではない。押し寄せる難民、財政の悪化に対してのアジア防衛費用の削減、アメリカの復権、といった言葉を並べてプア・ホワイトの票を固める。返す刀でクリントンのあることないことまくし立ててインテリの弁護士上がりをうんざりさせるだろう。その挑発にのって”ため息”をついたり”涙ぐんだり”したらもう負けだ。
 おまけにヒラリーはもう女性であることは何の集票力にもならないし、固い保守層からは嫌われに嫌われている。、
 だがこの半年のうちに変な事が怒らないとも限らない。イスラム過激派のテロ、北の国の暴走、中国の挑発、ヨーロッパの不安、これらはいずれもアメリカ回帰発言を繰り返すトランプに有利に働くだろう。

 でっ、本当になったらどうする、どうする。

トランプ10番勝負

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普通であるということ  (今月のテーマ 無為自然)

2016 JUN 2 0:00:58 am by 西 牟呂雄

 僕は動物ドキュメントが大好きで「アニマル・プラネット」をズーッと流していたり、NHKの「ダーウィンが来た」は欠かさず見ている。古くは「生き物バンザイ」なんてのもあったな。
 時に可愛らしかったり(ワニのようなものでも)いじらしかったり(ゴリラでも)。
 そして自然と言うものはよくできており、そのバランスを専ら人間が破戒・蹂躙しているという思いを深くする。
 ところで、サブ・タイトルでよく使われるフレーズに気が付いた。『過酷な自然の中で懸命に生きる』『極寒の環境を耐えて生きる』といったパターンが多用されている。
 画像は物凄い乾いた土地、極北の凍土、恐怖を感じる岩山、といった ”人間にとって” 厳しい場所を映している。そりゃ撮影している人は『過酷な』環境だろうが、被写体の動物はそれで死ぬわけではない。無論、不慮の事故・天敵によるアタックはあるだろうが、それは映していないときも普段から起きている事象にすぎない。それはそれで『過酷』ではあるが、自然現象として当然のことでもある。動物達はその環境に合うように進化し、独自にその環境で生き抜く術を身に付けていると言えよう。
 撮影者・視聴者には耐えられない寒さや渇きもその生き物にとっては『普通で』あると見立ててみる。

 いきなり話が飛ぶが、その感じで混迷を極める中東を俯瞰してみるとどうなるだろうか。残酷行為を我々は嫌悪するが、石打の刑罰を平気でやり銃刀法も何も無い武装勢力が入り乱れる砂漠の民。民主政権なんぞは頼まれても欲しくもない、とアラブの春を葬り去った。〇〇派と◎◎派がいがみあい、それとは別のイスラエルが実際には核武装して対峙している。サウジはイランと断交してロシアに原発を発注。アメリカがイラクを潰してしまったらゾンビのようにISが跋扈し出して、あれは元バース党だと見当がつく。ロシアはISたたきを口実にミサイルを撃ち込み戦闘機を飛ばしたところ、トルコが撃墜。
 かつていくつかの大帝国が誕生したこのエリアはもう一つにまとまれない。ここまできたらいくつかの勢力がISを潰した上でシリアを分割統治するまで殺し合いを止めないのではないだろうか。
 大国が手出しをして収まるポスト・モダンが冷戦終了により新秩序に脱皮する過程とでもいうのか。
 一般の人々があの戦乱の最中に傷つこうとも宗教間の差別に苦しみながらも戦線は瓦解しないのは、戦士は生きがいを感じ神の愛を自覚するからなのか。
 それで本当に食う事もできなくなった難民は大変な苦労を強いられながら移動せざるを得なくなる。
 好ましくないことであるが、現時点の戦乱はあのエリアの『普通の』状態なのかもしれない(これは上記、シリアを分割統治するまで殺し合いをやめない、の意)。強烈な専制政治の元でゆるやかな部族社会を営んでいた方が自然だったかも知れない。concept_img01-400x488[1]

 翻ってこの平和な日本の『普通の』状態とは何をすることなか。
 日本の凋落、失われた20年、この間は筆者の現役時代とまる被りする。バブルがはじけてジタバタした挙句、その多くを失敗した後の視点からみると良く分かる。その頃から日本中が大して働かなくなってきていることが。
 本当は必死に働くことではないのか。巷間言われている”ブラック企業”は大して働かないその皺寄せを弱い部分が受けている状態を現していないか。
 通信機器がこれだけ発達して且つコストも安くなり、更に日本人がいきなりバカになったとも考えられないのに、ホワイト・スタッフの生産性が上がっているようには見えない。このグラフは10年前のデータだが、その後アメリカとの差は開く一方なのだ。
 可処分所得が上がらないのに休日ばかりが増えて、生産性を落としていれば消費が上がるはずもない。
 これはどういうことか。筆者の仮説ではもっとも稼ぐポジションの企業がムダな会議ばかりやったり、インチキをやったりしては何度もバレているからじゃないかと疑っている。これでは『一億総活躍』どころではない。
 
 それでは何かを造らなければならんのか、と野菜を去年から育ててみた。しかしキュウリと大根は失敗したし、茄子・ピーマンも結果として買ったほうが安かった。

 無為自然とはどういうことか考えたくて書き始めたら、例によってバカなオチになってしまった。普通にセッセと働く事にしよう。

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