Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 春夏秋冬不思議譚 四季編

いいものはいい 悪いものもいい (今月のテーマ 無為自然)

2016 MAY 10 3:03:25 am by 西 牟呂雄

yjimage[6]

 太極図をジッと見ていると落ち着きませんか。
 SMCの道士こと神山先生の「道元流 鬼谷子の帝王学」を読んだ時に妙に心惹かれた覚えがあります。太極図は完全な調和を意味した図案なんですね。白と黒はどちらが良くてどちらが悪いということはない、どっちかが美しくてどっちかが醜いということもない、善悪もない。
 この感覚、一神教の世界に住む人々には全くわかりづらいもののようです。
 キリスト教徒は『人間は原罪を背負ってこの世に生まれてくる』と信じており、イスラム教徒はアラーの神は絶対に性善説でありこれを妨げる者は同じイスラム教徒でも激しく排除します。
 それに対して、老荘学徒タオイストは『あるがままに』と無為自然を説きます。
 現実の宗教としての道教はチョット置きます。

 話は変わりますが、セッセと野菜作りに励んで自分では丹精込めたつもりだったのにキュウリは全滅し大根は出来損ないが4~5本採れただけ。さすがに『あるがままに』という心境には程遠かった。それでも大根に関してはヒョロっとした出来損ないをそのまま捨てる気にはなれず、水で洗ってかじったものです。このダメな大根にもピリッとしたところがあって捨てがたい。こいつがいるから出来のいい方の良さも際立つというものです。
 無論経済的には大赤字を蒙った訳ですが、今年もポツポツ再挑戦を始めました。ガラにもなく種を蒔いたりしていれば十分”無為自然”の境地に浸れます。
 もっとタオの修行にいいのはゴルフかもしれませんよ。自分のイメージ通りにはまず行かない私のようなゴルファーにとって、何処に飛んでしまおうが木に当たろうが”無為自然”に大地と戯れるのは誠に結構(しばしばそうでないが)。無為自然

 ペットを飼うのもいいですね。芸も何にも仕込まれていないペットはそれこそ”無為自然”。
 これはさる友人の飼っているワイルドな猫ですが、あまりのドヤ顔に記念に撮ってもらいました。しかしこの猫は何も欲しがっていないし、何も自慢をしている訳でもありません。
 多少ブサイクとの声も聞かれますが、この子に罪はありません。恐らく機嫌が悪いのでもないでしょう(そう見えますが)。人間と一緒にいて居心地がいいか悪いかも良くわかりません。多少飢えなくてすむのは確かでしょうが。これでメスだというのだから見事な無為自然ぶり。
 オマエは一体何かの役に立ってるのかい。

 共存するノウハウを持っているのは人間だけです。そして人間になってしまうといくら”無為自然”でもただぐうたら何もしなければいい、ということにならなくなる。ましてや”悪いものもいい”といって犯罪に手を染める事を推奨するなどとんでもない、ということなんですが。
 非常に優秀な人がいたとして、もし世の中にそういう人ばかりだったら個人は優秀でも何でもなくなるのです。

 さてさて、俄かにタオイストを自称して何をどうするかというと、これが特に無い。目の前のことを淡々と丁寧にやりましょうというつまらないオチでして。残りの人生トコトコやりながら考えてみようっというお話にお付き合い下さい。

 「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」 

何者だ

2016 MAR 21 12:12:07 pm by 西 牟呂雄

 喜寿庵の芝生で風で落ちた枝を見つけた。毛むくじゃらの蕾が付いていたので、捨てるに忍びなくジョウロに水を張ってさして置いた。おそらく木蓮か辛夷(こぶし)だろう。ビロードのような細かい蕾の手触りが何故か心なごむのだ。
 挿し木をしたらいいのか分からないまま、庭の一角に立ててみてそのまま忘れていた。

 ある日、もう枯れてしまったかと急に気になって早朝車を飛ばして行ってみると、枝を立てた一角に小人と言うかE・Tというか、ヒト型の生物がいるではないか。ワッとビックリしたが猿でない事はわかった。猿一族は武装した僕に『ネイチャー・ファームの戦い』で威嚇され(口では諭したが)暫く姿を見せていない。身長は1mくらいだった。

ちょっと違うんだが

ちょっと違うんだが

 しかも少し歩いたり動いている。顔は亀裂が入ったようなグロテスクな裂け目があって、大昔にウルトラQで見たケムール人のようだった。キョロキョロする目のようなものが左右非対称についていて、明らかにこっちを見ているのだ。
 両手を広げて攻撃の意志の無いことを伝えると、ある程度の知的生命体のようで向こうも両手をダラリと下げた。やたらと攻撃したり逃げたりしないほど洗練されたマナーがあるなら、それなりの生き物だということを私達の知性は知っている。しかしどうしたらコミニュケートできるのか。
「あなたは、誰ですか。」
 指をさして聞いてみる。
「フー・アー・ユー? キ・エ・チュウ? ニィ・シ・シェイ?」
 知っている言語はこれだけだが、反応がない。
「私はニ・シ・ム・ロです。」
 口が利けないのか。もしかして耳もないのだろうか。プレデターみたいに。
 少し後ずさりしても逃げない。不思議と恐怖感も湧かない、白昼の幽霊かもしれないのに。ヨシッ。
 どうせいつも一人だから退屈しのぎになるのかと考えた。戻って軒先にあるダンボールの切れ端とフェルトペンを持ってきてもまだそこに立っている。これらは宅急便にサインする時のために勝手口においてあった。私は『に し む ろ』と書いて読んで聞かせ自分を指差してみた。
 するとそいつはフェルトペンを持ち(持てた)アラブ文字ともハングルともつかない記号を書いて自分を指す。指は5本ある。
「ク・リ・ト・ン」
と聞こえた。文字を持ち、レスポンスもするなら文明を持っている種族に違いない。
 水を飲むかと野外の蛇口からジョウロに水をくんで来た。少し撒いて、手ですくって飲んで見せた。
「ギ、ギ、ギ、ギ」
 と言った。そしてジョウロを触ろうとする。
「くりとん、水が欲しいのか。」
「ギ・ジ・ブ・ロ、ギ、ギ、ギ、ギ」
 これは会話が成り立っているのように思える。取り合えず『くりとんちゃん』を奴の名前だということにした。そして奴がジョウロを手に取ろうとするので渡してやった。奴は小さいので大丈夫か心配したが上手に右手で持って左手に水をかけた。
「ギ、ギ、ギ、ギ」
 どうもこの”くりとん”は薄い何かを纏っているようで、良く見ると細かいウブ毛のようなものに覆われている。そういえば”口”がない。喋っているように聞こえるのはその纏っているものの中で何かが擦れた音のようなのだ。
「ギ・ジ・ブ・ロ、ギ、ギ、ギ、ギ」
 この”ぎじぶろ”は『にしむろ』と言っているのかも知れない。そして”ぎ、ぎ、ぎ、ぎ”は笑っているのではないか。試しに
「くりとん。はははは。」
 とやると。奴も
「ギ・ジ・ブ・ロ、ギ、ギ、ギ、ギ」
 そうだ、写真に撮って置こうとゆっくり後ずさりして携帯を取りに行き、急いで戻ってきて慌てて映したが何と言う事だ。写っていない。そして目を離すともう姿が消えていた。どこに行ったのか!

写ってない

 そして翌日、庭の一角を覗いてみると何とまたいた。ただ、昨日より明るく光っているような透き通っているような、ちょっと違う。
「くりとん。おはよう。」
「ギ・ジ・ブ・ロ。・・ギエルゴ。」
 声も違うようだが、昨日同様会話できている(意味は不明だが)。
 今日はもしかしたらと携帯を持っていたので、しゃがみこんで向けてみる。逃げないでくれよ、とシャッターを切った。すると、
「ギ、ギ、ギ、ギ。」
 と笑っている。
「水はいるかい。」
 とジョウロを指さすと聞いてみると、
「グ、ラ、デ、ン、ゲ。ギ、ギ、ギ、ギ」
 今度は意味不明だ。喜ぶかもしれないと取りに行ってやった。が、振り向いたらまたいない。どうやって移動するのだろう、空中に気配も無く飛んだというのか。
 じょうがないな、と携帯の画像を見ると!何も写っていない。
 いや正確には冒頭で言ったモクレンだかコブシの挿し木が写っていただけだった。そういえば、くりとんちゃんと話していた時にはちゃんと刺さっていたのだろうか。待てよ・・・・。

 薄気味悪くなった僕はその枝を掘り起こし東京に持って帰って花瓶にさしている。この写真がそうなのだ。良く見るとなぜか蕾は一方だけを向いている(上記写真の時もそう)。何か意味があるのか、くりとんはその後出てはこない。『ギッギッギッギ』が又聞きたいのだけれど。
こっこれは

ルンバ君(仮称)


「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

喜寿庵の夕焼け

2016 JAN 11 15:15:41 pm by 西 牟呂雄

 喜寿庵は四季を通じて朝日が上るところは、東の山に隠れて見えない。夕日が落ちるのも山陰に入ってしまうところに立っている。だがこの寒い季節、即ち冬至から二月までの間、山あいのポイントに日が落ちるのが楽しめる。
 夕方、夏よりも遥かに低い弧を描いた太陽が妖しい光を放ちながらヨロヨロ落ちて行くのはこの世の無常か、はたまた人類滅亡の前触れか。

射し込む西日

射し込む西日

 全身に浴びても暖かいとも感じられない光は、どうにも弱々しい。
 一人で見るからなのか、それとも色合いそのものが終末観を喚起するのか。
 これではいけない。

 今年は『夕日に向かってソレッ行くぞ!』とならなければ。夜行性の動物・人物に申し訳が立たない。
 走るには狭すぎる、叫ぶには静かすぎる、歌うには寂しすぎる。待てよ。都会の真ん中だったら「ソレッ、そろそろ飲みに行けるぞ」と高揚しているな。

 完全に日が落ちてからスマホで撮ったのが下の風景だ。太陽があるうちはウデが災いしてシャッターが切れなかった。 

夕焼けポイント


 山里の 夕日山派に赤々と
   落つれば 瞬時に 闇迫り来る

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

滋養神社 平成28年 10大お告げ

2016 JAN 6 22:22:38 pm by 西 牟呂雄

 

高さ1mくらいの手造り鳥居

高さ1mくらいの手造り鳥居

 私の信仰する『滋養様』から本年のお告げがあったのでここにご披露します。尚、滋養神社とは我が敷地にある私設の社ですので念のため。
 祝詞は
滋養様、滋養様 
御国(ミクニ)安んじさせ給え
身共 精進させ給え
 心  明るくさせ給え
滋養様 滋養様
 かしこみかしこみ
 お願い申し奉~る~
 と二回唱える。

 等とのんびり書き出したらいきなり某国の核実験のニュースを聞いておったまげた。三代目の誕生日に何かやるかも、と言われていたが予測不能だった(いつもだが)。
 これで中国も南も総連も怒り狂ってアメリカも相手にしなくなる。おそらく国内で何らかの対立が沸騰点に達してやらざるを得なくなったと考えられるが。漁夫の利は極東まで手が回らないロシアくらいか。5月の党大会が本当にできるだろうか。
 38度線と鴨緑江が緊張して、まさか一触即発ではなかろうが小競り合いくらいは覚悟しておかなくては大事になるかもしれない。それにしても習さん朴さん困っただろうに。中朝間は石油支援のパイプラインが通じているが、このラインしょっちゅう詰まる事で知られている。今回も又キュッとバルブを捻れば・・・。

 それはさておき。

1.二月頃に
 追い詰められたISが遮二無二テロ攻勢を始める。米・仏・露の都市部で爆発・銃乱射が起きて犠牲者が出てしまう。但し、死者は少ない。又、中国は春節を狙って西側で大規模なテロがあったらしいが、報道が規制されて規模はわからない。
 何故か摘発される犯人グループにウィグル族はいない。政府に反対する勢力をインターネットで吊り上げての事件と噂されるが実態はつかめない。
 英国は水際でテロ・グループを拘束していた、と発表した。

ヒラリー・クリントン氏

ヒラリー・クリントン氏

 

2.雪解け
 例の『慰安婦合意』で韓国の世論が沸騰する。朴大統領は国民に語りかけることをしない。その為総選挙前にメチャクチャな反日デモが起こり、合意は見送られる。さすがに国際世論も『あれは内政問題』と覚めた対応に終始して全米の慰安婦像は撤去される。
 尚、スーパー・チューズデイでいくら何でもの声が上がりトランプ候補が失速する。この時点で世界は時期大統領はクリントンだと確信する。

3.桜の咲く時期
 アメリカが再度利上げに踏み切り、円が下がると同時に日本は株高で2万5千円を越える。頃合やよし、とばかりに黒田ミサイルが炸裂。株価は更に上昇の気配で日本は一人勝ち状態。
 政府筋より消費税の増税は2年に渡って1%づつ上げる、という怪情報がしきりに流れる。ソフトに金がかかるものの公明党も水面下で握ったと言われて何故か自民党の支持だけが良くなる。
 日本はセミ・バブル状態で世の中は浮つく。

4.初夏
 サミット一色。どの国も日本に擦り寄りたいのが見え透いて安部総理の人気はうなぎ上り。
 この間、テロ目的で入国しようとした某国人が羽田・関空・福岡空港で摘発され、日本の治安能力が国際的に高く評価される。
 又、国籍不明の工作船が日本海、南シナ海に出没していたことが明らかになり、海上自衛隊に防衛発令がなされ、米第七艦隊の原子力空母ロナルド・リーガンは南シナ海に機動展開する。実は対潜哨戒機の協力要請が極秘になされたが安倍総理は拒否していた。

5.梅雨時ともなると
 突如プーチン大統領が来日する。何と3島を即時返還し択捉島に国境線を引くと発表して日本で大人気となる。巷に『プーチング』『ウラジミる』が流行語となり年末の流行語大賞になる。意味は不明。
 無論日本は制裁を解除し、欧米から嫌な顔をされるが安部総理は涼しい顔。
 プーチンは大相撲を観戦し懸賞金十本を出して喝采を浴びた後、講道館で山下泰裕と乱取りをする。更には馳文部科学大臣に案内され総合格闘技ヒョードルVSグレイシーの試合を観戦に日本武道館に姿を現す。
 安倍総理との友情は揺るぎないものになった。

6.真夏
 大方の予想通り衆参同時選挙となる。熱い中、安部総理は遂に『憲法改正は国民的議論の俎上に乗せる』と言い切った。しかし意外に世の中は淡々と選挙に突入。
 シールズはまた国会前に繰り出して大騒ぎを繰り返すが、大阪では橋下氏が安部政権を支えると言って立候補し再びブームに乗る。おおさか維新は衆参ともに大阪・奈良・兵庫・和歌山で全勝しその存在感を示すが、何故か京都では議席が取れなかった。
 結果は自民党の一人勝ち。電光石火で安倍・橋下会談が行われて世間は騒然となるが自・公連立は継続される。但し関係は微妙になった。 

7.赤とんぼが飛びはじめると
 リオデジャネイロ・オリンピックが開催される。始まってみるとあまりのチャランポランさに会場の不手際・予約の不備・競技進行のミス、挙句の果てに多数の誤審とブラジルの国際的権威が失墜する。
 ただでさえ資金の逃げやすい環境に拍車がかかり、新興国は軒並み通貨が大暴落。特にAIIBが空中分解しかけて中国はひどいことに。中国への輸出に頼っていた韓国も大変なことになる。両国とも内政の時期を迎えて対日世論は掻き消された。

8.刈り入れ時
 遂に英国がEU離脱を表明。実態はスコットランドが独立してEUとNATOに単独加盟する、という秘密協定がEU側から漏れてしまいロンドンの世論が収集がつかなくなったことが引き金。英国に新型右翼政党『ブリタニア統治党』が結成される。
 これは相対的に英国の地位を低下させてしまい、一方の大陸はドイツの植民地状態となる結果をもたらす。時を同じくして南欧の財政悪化がまた弾けEUは対応に追われるが、難民問題の顕在化でドイツもよその国の事を構っている余裕を失いつつあった。

9.紅葉が美しくなり
 言わずと知れたアメリカの大統領選挙で、何とヒラリーを破りジョブ・ブッシュが当選する!彼の『強く、頼れる、優しいアメリカの復活』というキャンペーンは大当たりし、まさかの共和党大統領となる。
 そしてブッシュ新大統領は電撃的にハワイで安部総理と会談し、日米同盟の絆を確認する。更にその足でモスクワに向かい、中東安定のための米露合同地上軍を侵攻させることを発表して世界をアッと言わせた。『ハラショー・ベリグー作戦』の発動である。これによりISは3週間で壊滅する。

番匠幸一郎氏

番匠幸一郎氏

 シリア・イラク国境は国連軍の管理となり平和部隊が派遣されるが、そこには信頼抜群の陸上自衛隊OB番匠幸一郎元陸将が司令官として赴任した。無論陸自の混成旅団も派遣される。番匠氏はあのイラクに派遣された一選抜のエリートである。 

10.年末にかけて
 選挙で大勝利した自民党はついに『憲法改正』『皇室典範改正』を軸にした国民投票に動き始める。
 最強安部内閣はおおさか維新に大臣ポストをエサにして橋下党首を取り込み、公明党を牽制しつつ着々と体制を固める。
 最早党内にも対抗しうる勢力は存在せず、次期総理候補は小泉新次郎と野田聖子に絞り込まれた感が漂った。

 全部当たりっこないけど年末のお楽しみ

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

2017年の予言のハズレ振り

夏本番 昭和は遠くなりにけり

2015 AUG 11 6:06:56 am by 西 牟呂雄

大声で 泣き出したくなる 帰り際
    かくも多くの 人といるのに

 先日コンクリートに括り付けられた女性の遺体があがった小網代湾にアンカーを打って小さなビーチを見ていた。 狭い砂浜が二つ。多くの家族連れの海水浴客がいて、はしゃぎ声が聞こえて来る。ユラユラ揺られながら見ていると、どうしたことか。
 人っ子一人いない、冬枯れの砂浜を幻視した。
 ついさっきまで仲間と喋ったり海に飛び込んだりしていたが。不可思議な心象風景だった。

 8月の航海のために船のメンテナンスをする。共同作業でロープを編み込んだり、エンジンオイルを替えたりした。物凄い熱さで日に焼かれ、全身ずぶぬれのように汗をかいた。すると上がって来たヨットから一人の女性がフラフラになって下りて来た途端に歩けなくなり、その船のクルーが駆け寄って日陰に寝かせているではないか。行くとガタガタ震えて『寒い』と言っている。熱中症だ。こんな若い人がやられてしまうのにビビッてオジサンはビールではなく塩を口にした。悲しいね。

 帰りの電車で眠い目をふと開けると横浜の手前で、突然この辺りに住んでいた人を思い出した。

 そして横浜で乗り換えた時の横浜駅の猛烈な雑踏に足が止まる。『ワー!』と叫び出したい衝動を抑えるためだ。オジサンが遊んで暮らすための最重要ポイントとして今年から鍛えている『孤独耐性』が途切れかけたか。立ち止まっているのは僕一人。これはいかん。
 トボトボという感じで広いコンコースを歩いていたら独り言を喋っているではないか。ついに気がおかしくなる日が迫ったかと怖くなり、エーチャンの歌を口ずさもうとハミングしたのは『苦い涙』。失恋モノで更に落ち込んだ。『お願いだ。この電話を。切らずにいてくれ。』何だってこんな歌を思い出す、と少し怒る。

 先月は週イチのペースで極親しいメンバーと偶然のタイミングで会合が重なり、旧交を温めたがそれぞれまだ活躍している。仕事で大変に忙しい(ひどい目に合っている)後輩、体調の悪い(腰痛)奴、大病をして手術した奴、相変わらず飄々としたマイペースの先輩、概してみんな楽しそうに思えた。それもそうで、ドン底の状態になっていれば人になど会いたくもないだろうから。

わずかばかり

わずかばかり

草むしる 手を休めつつ 問いかける
  日は熱くないか 色夏野菜  

 喜寿庵の夏野菜、我がナスとピーマンはそろそろ収穫期が終わる。返す返すもスタート時の手入れの悪さでキュウリを全滅させたことが悔やまれる。来年の課題だ。
 それにしてもこの歩留りは悪すぎる。ジャガイモはたくさん採れたのに。やはり無農薬には限界があるのかペイ・ラインは遥かに遠い。飛び地の開拓計画は全て白紙に戻った。

 畑の横に栗の木が立っていて、栗の実が毎年落ちるのだが、拾って剥いて見ると全部虫に食われている。今年は落ちるところを狙ってやる。
 立秋。暑いには暑く汗まみれにはなるが空の色は変わった。
 午後3時の影が長い。
 
 吉祥寺駅を下りたところで、再び大群衆に囲まれた。信号待ちの人数がハンパないのだ。
 一瞬全員がこちらの私を見ているように見えた。携帯で撮っている人もいる。
 私の回りで犯罪でも起こったのかと見廻すが何も無い。これも幻視か。

 長いこと全力疾走などしていない。一念発起してジョギングをすれば、井の頭公園でもっとも足の遅いランナーだった。つまり誰にも追いつけないどころか、ほぼ全てのランナーに抜かれた。しかもセッセと走りながら『空挺・落下傘(クーテー・ラッカーサンと発音)』とか『万朶の桜か襟の色(歩兵の本領)』等と掛け声をかけているではないか。インパール撤退作戦かとギョッとして止めた。この前からロクな歌を思い出さない。

 そうか、これが還暦というものなのか。

 分かれば早い、これからは幻視と共に生きていくことにしよう。それもいいか。

透き通る桜の開花

行く春や 昭和は遠くに なりにけり

行く春や 昭和は遠く なりにけり Ⅱ

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

行く春や 昭和は遠く なりにけり Ⅱ

2015 APR 25 0:00:44 am by 西 牟呂雄

 山嗤う まだら模様の 甲州路
   散り残りたる 花吹雪舞う

 中央高速を飛ばしていると、冬枯れの山に新芽が噴きだして、雑木林なぞは樹木によって色合いが違っていてみどりのまだらが目に美しい。そしてそんな山の中に誰かが植えたのかそれとも自生したのか、綿帽子のように山桜がポンポンと咲き残っていた。恐らくソメイヨシノじゃないだろうが、標高が高いので今頃散っていて(4月18日)ハンドルを握るフロント・ガラスにサァーッと舞っていった。
 喜寿庵ではこの時期、芝生に小さな穴をポコポコ開けてエア・レーションをするのだがこれが一苦労。ゴルフ場ではトラクターのようなヤツでやってしまうが喜寿庵では手(足?)でやる。そして目土をセッセと入れる。本来芝面を平らにして養生するためなのだが、不思議なことにいつまでたってもデコボコが直らない。

 風強く せせらぎの音 なお騒ぐ
   山猛々しく  あおくなる前

 若葉は柔らかいが、ガーッと緑が濃くなるとむしろ猛々しいというか生臭いというか(嫌じゃないけど)チカラが漲ってくる感じがして、僕としては『海』の青さが恋しくなる時期だ。ただこの時期は相模湾は風が悪くてヨットはきつい。

 最近突然思い付いた、かの親鸞上人の歎異抄にある『善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや。』 について。
 この『悪人』は無慈悲で自分勝手で我儘で人を騙したり盗んだり苛めたり殺すような『悪人』ではないのだ。そういうワルではなく、一般人が色々苦しんでどうにもならなくなったギリギリの時にフッと手を染める悪事を指すのではないだろうか。そしてそのことを生涯悔やむような人。
 苦しまずに易々と犯罪に手を染めて涼しい顔をしているような輩は、いくら親鸞上人といえども救うことはできまい。年寄りの病的な万引きなんかどうしようない。
 僕はこの思いつきを誰かに言いたくてたまらなくなり、当ブログに書く前に友人に話した。すると、
「お前も、うといな。あの時代仏教なんかを有り難がっていたのは貴族だけで農民クラスは地元のカミサマを拝むのがせいぜいのところだ。だから親鸞クラスから見りゃ無教養且つ信仰心のカケラもない悪人って意味なんだよ。悪いことすりゃいい、なんて誰が諭すんだ。」
だってさ。信仰心のない馬の骨は現代もいくらでもいるだろうに。

 ところで最近『反知性主義』なる言葉を目にする。ワン・フレーズ・ポロティクスの小泉元首相や橋下大阪市長のように学者・文化人を『自称インテリ』と一括りにして、他人の意見を聞かずにウケを狙う原理主義者風の流れを指すようだ。本来はアメリカの福音原理主義者のように進化論も受け付けないような、要するに生真面目な人々とでも言おうか。だがこの気質は過激になりやすい。要するにイスラムだろうが共産主義だろうが右翼だろうが自分以外の意見は聞くのもイヤっといった具合だ。
 政治討論番組が視聴に耐えないのも、常に是々非々の話にはならず初めに賛成・反対ありきで主張を繰り返すだけでは面白みも発見もなし。見ることもないが朝生なんかで結論が出たのを知らない。
 そしてそういった過激発言に入れ込んでしまうのが橋下市長のいう「フワッとした民意」で、小泉劇場・民主党政権・大阪都構想と流れができる。
 大阪の人、本当の所を教えてくれ。

 それで恐ろしいことにそういう凝り固まっている人々の目というのは、どうも親鸞上人の言うところの悪人に見えて来る。本人一生懸命だから余計にマズい、というオチでした。

透き通る桜の開花

行く春や 昭和は遠くに なりにけり

夏本番 昭和は遠くなりにけり

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
 
   

行く春や 昭和は遠くに なりにけり

2015 APR 13 21:21:39 pm by 西 牟呂雄

 また一つ『春』が過ぎた。初夏になり梅雨になる。
 僕はガサツな人間であることを自覚はしているが、たまにシンミリ・シミジミしたくなることもね。

散る桜 花の下にて 悪酔えば
  水面に歪む  上弦の月

 この湖面は井の頭公園のことで、先年池の水を抜いて底ざらいをしたから透明度が上がっている。心なしか映るお月様もきれいになったような。ブルー・シートの場所取り、今年も又たくさんやっていた。新入社員がスーツで大勢正座しているグループもあって、大変そうというか可哀想に。

桜咲き 梅を愛しむ 人もなし
  わずかな新芽 かすかにあおし

 実は個人的今年のテーマの一つに『かわいげ』を掲げている。これ将に今更であるが、シンミリ・シミジミを傍から見ていると『かわいげ』に繋がるような気がしている。或いはできもしないことをセッセとやっている姿は(僕はともかく)いいもんじゃないか。思わずニッコリするような・・・。ダメか。
 ところで芝生や土の上に散ったり、池に漂っている桜の花びらというのはそれなりの風情なのだが、アスファルト・コンクリートに埃のように吹き溜まっている場合は気の毒なほどきたならしい。あれじゃゴミだ。桜に怒るわけにもいかず、舗装するなとも言えず、ただ悲しくなるばかり。

身をすくめ 歩み進める 待ち合わせ
  寒風に押され イルミネーションかすむ

 歩いても~歩いても~、という石田あゆみの歌があったが『寒い!』という感覚はハラハラ・ドキドキ感に近い。一種の緊張感と言うのか。
 この情景は夜だが、時間に遅れそうになって小走りになった時に詠んだ。だが今から考えると『かすむ』は単に年を取って目が悪くなっただけだったりして。華やかなイルミネーションがボウッとしか見えなくなったのは去年からだ。なんだか今年の冬は寒かったような。

一周忌 遺影は我を  見据えつつ
  こんなはずじゃぁ なかったという
  
 そりゃそうでしょう。僕だってこんなになるつもりもなかったんだけど。
 ただ自分自身で考えると流れにまかせて来るところまで来てしまった。結果はマズかったとは思うがそのくせ面白おかしく暮らしているのは喜劇か悲劇か。
 さてどうしたものか。
 
 『取り敢えず』という言葉が嫌いで、なぜかというとものすごく嫌いだった奴の口癖だったからだ。タレントですけどね。仕事でもこの言葉を使うやつは本気でやるつもりはないのだな、と思って聞いていた。だから僕は今更ながらできることを一つずつ丁寧にやろうとしている。
 
 どうですか『かわいげ』が感じられますか?  

透き通る桜の開花

行く春や 昭和は遠く なりにけり Ⅱ

夏本番 昭和は遠くなりにけり

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

透き通る桜の開花

2015 MAR 28 9:09:24 am by 西 牟呂雄

 喜寿庵の裏木戸の所に梅の古木がある。この老梅はもはや支えがないと倒れてしまうらしい。それでもチラチラと花を咲かせるが、この一本だけなぜこんなに樹齢が古いのが不思議だった。それがどうやら造庭の際に『一本梅が欲しい。』と先々代あたりが言い出したため、あの時代のことだからヨイトマケが大勢でどこからか引いて来てたものだということがわかった。法事で来た叔母が証言したのだ。
 梅が細かい花を付けているのを見ながら『寒いなあ』と思いながら歩いていた。梅の花は香りが漂うので風で感じることもできる。そして散りだすのだが、そのことを注目する人は少ない。南の方から早咲きの桜のニュースが押し寄せてくるからだ。
 
 

見上げる三分咲きの桜

見上げる三分咲きの桜

 日一日と開花が進む桜の季節。蕾が恐るおそるという具合に開いていく。
 この時期の桜の中身というか蕾の芯の色をご覧になったことはお有りか。開いた淡い色とは大違いの物凄い濃い色なのだ。文章というのは便利ではあるがこの色を表現するには見てもらうしかない(しかも私は色覚異常)。言い過ぎかもしれないが実に毒々しい色合いである。煮締めたようなピンクで日本っぽくないような・・・。
 花染めという技法があってちゃんと桜色も出せるが、その際はこの蕾を使う。開花してからでは色が着かないのだそうだ。咲く前の花の命が最も旺盛な時期でなければ綺麗に染まらないとは何がしか示唆を物語っているような気がしてならない。
 蕾が少しづつ開き出すと今まで桜の枝を通して見えていた風景が遮られていき、直ぐに満開を迎える。満開は満開で結構至極であるが三分咲きの2~3日が大変に儚げで、散り出した後の風情とはまた違うのだ。コレカラ感が健気だ。
 もっとも満開~散り初め~葉桜のプロセスも悪くなく、その頃には柳の新芽が出だす(繰り返すが私は色覚異常)。葉桜にもなる。この色合いは何故か助け合っているような錯覚を引き起こす。桜のバックにはあまり猛々しい色は似合わないのかもしれない。今年も九州だったか少し咲いた桜に季節外れの淡雪が積もった画像があったが、寒そうなもののえも言われず風情があった。逆に真っ赤な緋毛氈や漆の上だったらハラリと散っている程度がよろしい。
 私自身が身に着ける普段着は原色を好むが、風景としてはこちらの淡色も捨てがたいのだ。
 災害に合った方々にはそれ所じゃないという感想をもたれる方も多いだろうが、調和しているときの日本の自然の色は概してやさしい。

冬枯れとのコントラスト

冬枯れとのコントラスト

 枝垂桜の地面に着きそうな枝のドームの中で、ソメイヨシノよりも更に小さい蕾を下から眺めていると軽い陶酔感があるが。これは二日酔いなのか夢なのか。

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」

行く春や 昭和は遠くに なりにけり

行く春や 昭和は遠く なりにけり Ⅱ

夏本番 昭和は遠くなりにけり

冬至・天皇誕生日・クリスマスソング

2014 DEC 23 3:03:50 am by 西 牟呂雄

 昨日は冬至。一番夜の時間が長いらしいが、占星術的にも何かの節目になるだろうか。いい方に変わっていってくれる予兆はまだない。
 そして本日『日嗣ーのー皇子は、お生まれなーた』と(嘗ては)歌われた天皇誕生日。お休みです。
 それであしたはクリスマス・イヴ。待ち遠しくも無いけど。

 ここ何十年もこの時期に町中で山下達郎の名曲「クリスマス・イヴ」が流れる。確かCMに使われてましたが、いい曲ですね。聞いていて気が付いたのだが、この歌詞には女性の固有名詞が四人も入っている。『雪絵』さんと『時美』さんに『佳苗』さんと『君枝』さんだ。そこでいつものゴロ合わせをやってみたのだが、今回は全くうまく行かなかった。題名からなにかお目出度い『お題』を期待した皆様、あまりにも下らないのでマジメな方は以下を読まないで下さい。読むならイア・ホンでこの歌を聴きながらにしてください。 

*雨は夜更け過ぎに 雪へと変わるだろう
(あれは 老け過ぎに  雪絵 とか ワルだろ)
Silent night Holly Night
(サイレン 無い ほーら 無い)
きっとキミは来ない 一人きりのクリスマス・イヴ
(キス 時美は しない 左ギッチョ リース麻酔)
Silent night Holly Night
(サイレン 無い ほーら 無い)

心深く 秘めた想い
(ここで不覚 姫は重い)
叶えられそうもない
(佳苗 は 躁病)
必ず今夜なら
(ならず者 いやなら)
言えそうな気がした
(いえ 損な 怪我した)
Silent night Holly Night
(サイレン 無い ほーら 無い)

まだ消え残る 君への想い
(まだ木へ登る 君枝の思い) 
夜へと降り続く
(寄る と 振り続ける)
街角にはクリスマス・ツリー
(待ち か とは リッスン・トゥー・ミー)  
銀色のきらめき
(任意の 閃き)
Silent night Holly Night
(サイレン 無い ほーら 無い)

*リフ
クリスマス・イヴ 山下達郎
・・・・。おそまつでした。尚、歌詩の中の固有名詞は作者と何の関係もない想像上の人です。

「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
 をクリックして下さい。」

 

春夏秋冬不思議譚(熱すぎる夏に干からびる恐怖)

2013 OCT 9 17:17:22 pm by 西 牟呂雄

 暑い暑い夏に一人で油壺のハーバーに来て、もう2週間になる。それにしてもこの熱さシャレにならない。どこかの港まで行ってもいいのだが、もうこの年になるとちょっと荒れた海に出るのが面倒だし、逆に全くの凪だとエンジンをかけてセールも上げない。結局入り江の入り口で舫いを取って風に吹かれながら酒を飲む。こう熱いとビールは旨くない。汗が出すぎて脱水症状みたいになるからオン・ザ・ロックのウィスキィか焼酎。恰好はと言えば若い連中と違い肌を露出して焼けすぎると火傷のように腫れ上がって皮膚癌にでもなりそうだから長袖のジャージにキャップを目深に被ってサングラスという変質者のようないでたち。たまに海に飛び込んで涼をとると、もう眠くなってしまい昼寝。食欲は無いから、ハーバーに帰れば定食で済ませてしまうし、大体1日1食で事足りるから金も殆どいらない。先週は週末に友達が遊びに来ていたので少しセーリングしたが、それ以来人と喋っていない。デッキで寝転んで本を読みながらガブリとジャック・ダニエルのロックを一口、まずい。氷がすぐ溶けてしまって薄くなっている。あわててボトルからドボッと注ぎ足しでもう一口。やっぱり凄く汗が出てくる、まるでサウナだ。2-3ページめくるとのどが渇くのでまたガブリ。もう氷が溶けている。

 パラパラッと音がしたような。青空の遠くに入道雲、こんな時に天気雨か、フッと顔をあげて水面を見るが波紋はない。おかしいなと身を乗り出して船体から海面を見た。すると夏にしては透明度の高い海中を銀色の魚影がスーッと横切った。シイラだ、あれは。普通こんな湾の入り口まで来ることはないが、どうした風の吹き回しか迷い込んできたようだ。悪食のグロテスクな魚だ。疑似餌を引きながらセーリングすると時々掛かるが、刺身にはならない。釣り上げると暫くして魚体が緑色がかってマッサオになるのが不気味であるが。見えなくなって暫くすると又戻ってきた。なんだこいつは。

「ハグレモノメ。」

ん?どうした?周りにはアンカーを打っている船もない、磯釣りの人影もない。

「ハグレモノメ。」

え?海から聞こえる。シイラが喋ったのか。ギョっとして海面を覗き込むとあのシイラがやや横に寝ているようにユラユラ漂っていて、そして目が合った。シイラはそのままジッとしているようだった。何だか腹が立ってきた、浮浪者(はぐれもの)だと!               「オイッ、そこに居ろよ。」                                     と魚を怒鳴りつけてキャビンに降りて銛を取ってきた。驚いたことにまだこっちを見ている。ヨーシ、銛の柄のゴムを一杯に引き絞って先端の狙いをつけた。          「死ね、このシイラめ!」                                     と銛を放つと、ジャボンっという水音とともに泡が立った。消えて波紋が納まるとそこには何もいなかった。不思議な気持ちでいると今度は船首のほうから魚影がまた寄って来た。平気なのか。なめてやがる。もう一度キャビンに行って水中眼鏡を取ってきた。見ると同じ所にまたいた。アタマに来たので目の前に飛び込んでやった。海中で睨みつけるとシイラはこっちを見ている。しかし魚は目が横についているくせに正面からこっちを見据えて、何なんだ。

「ヨワムシ。」

はっきり聞こえた。不思議なことに海の中なのに体が浮き上がらない。普通は足があがってしまうのだが。

「ヒトリボッチ。」

もう外さないぞ。魚なんかにナメられてたまるか。                                          「この野郎!」                                           あれ、声が出る。あれ、水中を歩けるぞ、・・・・。

 

 

「ねぇ、あのヨット昨日からあそこに泊まってない?」                     「そうだな、だけど誰も乗ってないみたいだよ。あそこのポイントって係留禁止じゃなかったかな。乗り捨てしちゃったのかな。あれオーナーは誰だったっけ。」          「あの物凄い変わり者のおじいさんだよ。」                          「あー、分った分った、あの人ね。」

 

春夏秋冬不思議譚(春の桜に愕然とした日)

春夏秋冬不思議譚 (秋の日に慌てた少年)

春夏秋冬不思議譚(ゲレンデに砕けたスキー靴)

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/
をクリックして下さい。

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊