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大相撲観戦記

2023 SEP 20 0:00:51 am by 西 牟呂雄

 いわゆるそのスジのこわもての人はケンカのプロなので、空手・柔道・ボクシングと心得のある人も多い。それがどの格闘技経験者が一番強いか、という問いには一様に相撲を上げるそうだ。僕としてはプロレスと言いたいところだが、ストリート・ファイトの場合下はマットではないので寝技には至らないし、バック・ドロップなんかは自分の頭もコンクリートに当たる。その点、ダウンしたら即負けの相撲取りは立ち続ける体幹能力と前に出るスピードがズバ抜けているとか。おまけにあの体型なので、蹴りでもパンチでもめりこんでしまってダメージは少ないらしい。昔、空手バカ一代に夢中になって、ブルース・リーにかぶれていた時は極真空手地上最強にも納得感があったが、ストリートでデス・マッチをやったらどうなのか。

ズラリ!

 どういう訳か、横綱不在の今場所の升席が手に入ったので昨日(18日)国技館に足を運んだ。向こう正面だったので、立ち合いの時に行司が邪魔なのが難点だが、バチッっとかドスッあるいはゴンッっといった音が聞こえるのは迫力満点である。
 何度か仕切り直しをしていると、見る見る力士の表情が強張り顔色まで変わる。これは土俵下からでないとなかなか伝わらない。テレビ中継はカメラが見下ろすような場所なので目線が高いのだ。
 つくづく相撲は日本の文化だと思う。厳しいく辛い稽古を続けて全力で戦い、一瞬で勝負が決まってしまう。無論これを毎日やるのは持続力も忍耐力も必要なのだが、この一瞬にかけて一勝負するのはプロレスともボクシングとも明らかに違う。例えは適切ではないかもしれないが、真珠湾である。そこで勝った気になった。兵站も戦略も戦争設計もしないで一度勝って・・・。

それっ

 それはさておき、もう一つは様式美。作法に従って礼を重んじ土の上で戦う、反則は一切なし。大好きなプロレスはそれが全部なくて、それはそれで鑑賞の仕方があるが(八百長が無くなった)相撲は相撲でいい、強い。
 贔屓の力士がいる場合は応援に熱が入る。翔猿という人気力士の染め抜きの浴衣を羽織った一団が右前の席にいて、取り組みの時の気合の入り方は尋常でない。するとつられて両隣の席までが声を出し、即席の大応援団が出現した。蹴手繰り・蹴返しと言った足技が多彩な力士だが、この日は負けた。すると中の女性は『ありゃ何だ』と烈火のごとく怒っていた。
 困ったことに(別に困らないが)桝席はお茶屋さんから注文を取りに来てビールや日本酒がいくらでも頼める。途中お弁当も食べるので、飲み食いに夢中になっていたりすると立ち合いを見逃す。酒やお弁当を裁っ着け袴(たっつけばかま)のアニサンが持ってきてくれるのだが、その時にチップを渡す。この時にポチ袋で渡したり財布を取り出してお札を抜き出すのはヤボで、上着のポケットなんかからシャッと千円札を出すと何故かカッコいいことになっている。すると『ヘイ、ゴッツアン』となって何回も聞きに来てくれる。このアニサン達は『出方(でかた)』と呼ばれ、かつては年3回の本場所だけで食って普段はブラブラ遊んでいる人が多かった。即ち年間45日しか働かない遊び人の代名詞で、僕の憧れの職業だったが、今は他に正業(自営業が多い)を持っているらしい。

 さあ、結びの一番は新大関豊昇龍と関脇琴ノ若。豊昇龍は今場所は調子が悪く、仕切りの間は噛みつきそうな表情である。 大歓声の中土俵際で豊昇龍が飛び込むように突っ込むと、琴ノ若はジャンプしたように見えた。豊昇龍の勝ちに見えたが即物言いがついて長いこともめた。
 何と行司差し違えで琴ノ若の勝ち。解説に寄ると豊昇龍の足の甲が既に返っていたので死に体と見なされた。よくわかったな、と感心していたら、ビデオ室からの画像で確認されたのだとか。おかげで立行司は進退伺を八角親方に出したらしい。
 ふーん、進化してるもんだな。
 ハッケヨーイ!

相撲の始まり

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Categories:プロレス

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