Sonar Members Club No.36

カテゴリー: アルツハルマゲドン

ブログスペースを借りました Ⅱ  

2017 FEB 11 10:10:21 am by 西 牟呂雄

 又、西室さんの許しを得て書き込んでいます。
 ここに引っ越してから一月が経過しました。ジッと芝生にうずくまっているという暮らしを続けています。あっ自炊しています。
 すると本当に猫がやってきて、目が合ったのです。さすがに夜は母屋で寝ますが(今は寒いもので)夜はもっと頻繁に来ているようです。
 来る猫は3匹いて、白・アメリカンショートヘア風茶色・頭の黒い奴です。そして二匹は頭の黒い奴を苛めているように思えました。そこで何か言いたくて声を出したところ、例によって「ミヤァ!」と言ってしまい、二匹は逃げてしまいました。それで残った猫と仲良くなることができたのです。

友達

友達

 その話を西室さんにすると「あー、こいつか」と写真を送ってくれたのですが、この猫でした。勝手に『シナシナ二世』と名付けたそうです。

 ところで最近、実に視力が落ちてきているのを実感しています。ただ前回白状したように全く運動というものができないので、視力といっても動体視力のような機能ではなく見えるものが見えないのです。
 もっと詳しく言うと視力機能がコントロール出来ていないようで、実際にある物が暫く認識できていない、そしてそれが突然回復するといった感じなのです。
 シナシナ二世も突然視界に入ってきたり消えたりしています。近くまで来てくれるのは嬉しいのですが、発症中はなでてやったり出来ません。それはいいのですが薄目を開けてウトウトしている時に突然顔がワッという感じで視界に入ったりするとびっくりしてしまいます。それまで見えていなかったのでしょう。
 いや、もっと言えばこの猫の実態は写真と一致するので間違いないのですが、私が発症しているときに猫が見えても、本当にそこにいるのかどうか。何しろ触っていないので幻覚かもしれないのです。無為自然

 不安に駆られているときに西室さんがやってきたのでその心配ごとを打ち明けました。すると
 「いよいよヤバいな。実像が認識できないとそれは人間ではない、というのと同じだ。」
 とあっさり言います。
 私は益々恐くなり、一緒に本当のシナシナ二世がいるのか確かめてくれるように懇願したのです。
 「あいつがいつここへ現れるなんて分かるわけないだろ。それじゃ、ホレ、これがオマエだ」
 とシャメを撮って私に見せました。それを見て恐怖のあまり『わーー!』と叫んだのですが口から出た音は「ニャ~~!」だったのです。

 暫く失神していたようでした。目が覚めると西室さんはいません。気を失う直前の記憶まではしっかりしていましたので、何が起こったのか覚えています。慌てて鏡を見に行くとチャント私でした。
 一体何であんな姿で映ったのでしょうか。皆目検討がつきません。視覚が完全におかしくなったのでしょうか。
 二日ほど途方に暮れていると、毎日のように起こっていた症状が出ないのです。そこで食料の買出しに行ったり掃除をしていました。
 夜、メールが入りました。
「先日は目の前で気を失ったので驚いてそのまま帰った。どうも見せる写真を間違えて猫の写真を見せたようだ。スマンスマン。」
 と書いてありました。正直ホッとしました。ところが直ぐ次に送られてきたメールは「本当に写したお前のシャメはこれだったよ」とあって、以下の画像が添付されていたのです。IMG_0298

 ここで初めてあの人の悪意が分かりました。
 親切そうに山荘を貸してくれるフリをして私を観察し、症状が悪くなるように仕向けていたに違いありません。
 私はあの人にいいようにされて精神がボロボロなのに、出て行くところもないのです。
 このブログを読まれた方、できれば精神医療にお詳しい方、どうか私を救ってください。助けて下さい。

 今ではもう私自身があの悪魔のような人の想像の産物、架空の人格のような気さえして来ました・・・・。

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ブログ・スペースを借りました Ⅳ

ブログスペースを借りました 初めまして

2017 FEB 11 10:10:58 am by 西 牟呂雄

 私は西室さんの許しを得て匿名でブログ・スペースを借りて書き込んでいます。
 SMCの会員に入ることを勧められたのですが、実名・顔出しが原則だと聞いて遠慮しました。というのも私のことに気が付いた人が出て来ると困ったことになりかねないので、SMCに迷惑がかかるリスクを避けたのです。
 理由はすべて私の奇妙な精神疾患のせいなのです。
 今では『性同一性障害』とか『多重人格』が病理的に研究されるようになりましたが、以前は社会的に排除されていました。しかも私の疾患はもっとひどいのです。なかなか人に言えなくて苦しんでいたのですが、偶然このブログを読みました。

2030年 認知症で自由になる

 私は驚き、そしてこれを書いた西室さんに連絡をとりました。実は私の疾患とは動物、それも犬とか猫になりきってしまうのです。
 別に裸になって四つん這いでウロつくことではありませんが、二足歩行ができなくなってしまいます。そして通常の高さの視線に耐えられず、地べたの高さになりたがります。最も楽なのは寝転がる事ですが、屋内では落ち着かないのです。表情はなくなり、更に困ったことに喋れなくなるのです。口に出せるのは擬音だけで「みゃあ」とか「きゃん」となってしまいます。発作が収まるまでジッとしていなければなりません。誰かに話しかけられたりすると大変な事になるので人の目に付くところにはいられません。一度私が具合が悪くなったのではと気を使ってくれた若い女性に変態か痴漢にまちがえられました。以前覗き目的で側溝に潜り込んだ人が逮捕されたこともありましたね。
 意識は人間のままです。発作の間の記憶も残ります。人の話し声も分かりますし色んなことを考えることも普段通りです。試しに簡単な二桁の暗算をしてみましたが大丈夫でした。
 ただやたらと五感が冴えて来ます。特に研ぎ澄まされるのは私に敵意を持っているか愛情を持って接するのかのカンです。人間はまず愛情を持って接してくれません。うずくまって薄気味悪い男に愛情を持つ人はいません。すると私に寄って来るのは犬と猫ばかりなのです。そして犬はほとんどが繋がれていますから、せっかく興味を持ってくれてもリードを持っている人が怪訝そうに引っ張っていってしまう。したがって公園のベンチや多摩川の河川敷に寝そべっている私の側でジッと私を見たり隣で昼寝をしたりするのは猫ばかりです。猫はよほど人間に慣れていないとある距離を持って近づきません。飼い猫はこちらが動かないでいると少し寄って来てこちらを見たりします。中には30分以上目を合わせているのもいて、そうしていると孤独な自分が癒されたような機がしてきます。

 この症状をメールで西室さんに訴えたところ『一種の運動障害シンドロームじゃないか』といい、医者に行く事を勧められました。
 絶対にイヤです。
 以前一度精神科医に飛び込みで行ったところ、医者の私をバカにしたような態度と、何か新しい病名がつけられるか、あるいはどんな薬を処方できるかといったことにしか興味のないような不真面目な態度に我慢できませんでした。
 人前には出られない私の窮状を見かねて、西室さんは富士山の麓にある山荘にいても構わないと言ってくれたのです。好きなだけ猫でも犬でもなっていればいい、ただしご家族が一緒の時はマズい、と言うありがたい話でした。
 ですから必死に別の避難場所を確保しました。一日中寝そべっていて誰からも不審に思われない場所、なかなかありません。一番手っ取り早いのはキャンプ場です。何もしないでテントの中にいればいいのですから。私は車の運転ができないのでバスを使って移動できる所を見つけました。もう一つ、夜に絶対人が来ないのはお寺です。これで何とかなると思い西室さんのいうダーチャ(山荘のことのようです)に引っ越しました。
 以前は猿が現れた事もある、とのことですが最近は見かけないそうです。そして猫が時々来るとも言っていました。
 もう一つ。私の見聞きしていることを正直にブログに書くように勧められました。この障害が何か精神的な疾患であれば書くことで治療になるかもしれないそうです。更にこのブログを読んで親切なお医者様が何かの処方をしてくれるかもしれない、とも。

 ここまで書いたら物凄く疲れました。もう止めますが、今後とも宜しくお願いします。
 

2030年 認知症で自由になる

ブログスペースを借りました Ⅱ  

ブログ・スペースを借りました Ⅳ


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人類小型化計画

2016 DEC 10 2:02:47 am by 西 牟呂雄

 2020年で低炭素社会を実現し水素社会への移行を実現した人類は、残る人口問題に本格的に取り組み始めた。しかも極秘に、である。
 音頭を取ったのは二期目に入ったトランプ大統領が、ローマ法王、日本国天皇陛下に呼びかけて話し合った『地球延命プロジェクト』だった。人口問題は優れて食糧問題でもあり、地球規模で喫緊の課題となっていたのだ。
 既にロボット技術と人工知能の急速な発展で、一部を除いて戦争の危機はない。未だにテロだ紛争だとやっているのは中東の一部だが、もはやアメリカもロシアも匙を投げ勝手にしろ状態、調停も仲裁もしなくなってしまった。

 コトが事だけに国連などで討議してはそれぞれのエゴ丸出しで大事になってしまう。そこで各国の秘密機関から選ばれた者が検討することになったらしい。まさか中絶を奨励するわけにもいかない。倫理的にも難しい問題を内包しており極秘のプロジェクトが発足したようだ。
 誰が、どこで、何を検討しているのかは誰も分からないが、プロジェクトが発足したことは一部マスコミに漏れ、ネットで騒がれた。しかしいつの間にか忘れ去られ2025年になった。

 世界の人々はおかしなキャンペーンを目にするようになる。
『恐竜は大きくなり過ぎて滅んだ』『放っておくと人類は恐竜化する』『小さいことはビューティフル』
 同時にペットの世界で不思議な事が報告される。大型ペットが育たなくなったのだ、というより大きくならない。大型犬の子犬が親のサイズになる前に成長が止まってしまうのだ。

 2030年、衝撃的な統計数字が明らかになった。思春期の子供の身長が5cm縮んだ。それも直近のデータほど急激で、このペースで行くと5年後の人類の平均身長は50cm以上縮みそうだった。

 2035年、ある一人のバイオ科学者と称する者がSNSを通じたある告発がネットに流出して大変な騒ぎになった。女性の筆致だった。

『私にはもう耐えられません。何年も悩み苦しみ悩み、自ら命を絶とうとさえしました。このままでは人類は間違った方向に進んでしまいます。そしてもう引き返せない所まで来てしまいました。
 ある日、私の研究内容に興味を示したある人がスポンサーに名乗りをあげました。ペットの小型化を模索している、遺伝子レベルでできるようになれば例えば絶滅が危惧される像のような動物も小型化させて救うことができる、という触れ込みでした。
 その人はSMCのニシムロ社長と名乗ったのです。ローマ法王庁やアメリカ大統領、果ては皇室とも繋がっているという、今から考えれば胡散臭い人だったのです。
 その頃私の研究は動物が内分泌するホルモンを遺伝子レヴェルでコントロールできるのではないか、というところまで来ていました。そこで成長促進ホルモンをある程度抑える遺伝子の配列を試してみたところ、マウスでは良好な実験結果が得られたのです。
 ニシムロ社長はその結果を持って突然別の事を口走りました。
 現在の食糧危機を乗り越えるには個体×重量がもっとも大きい人類を小型化しなければならない。その生存適正サイズは現在の1/3だ、と。
 私の研究がそれとどういう関係があるのか、その時は分からずに研究結果を彼に伝えてしまったのです。彼は直ぐに姿を消し、以後音信不通となりました。
 すると2025年頃から大型ペットが大きく育たなくなったのです。私は直ぐにピンときました。おそらくどこかの製薬会社に持ち込んだ彼が暗躍していたに違いありません。その後結果が出たので今度は人類に・・・。
 初めて気が付きました。SMCとは『スモール・マン・コミットメント』の事だったのです。
 彼が今どこで何をしているのか全くわかりません。彼は嘯くでしょう。「人類を存続させる為にはこれしかない」と。
 神の節理に反する事を恐ろしいことに平気でやる人間なのです。
 そのようなことで人類の存続を図るとするようなことは許されません。そんなことをするなら滅びた方がマシだとさえ考えます。
 どうかあの悪魔を見つけ出し、彼の陰謀を阻止して下さい。』

 とんでもない者がいたもんである

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ルンバ君(仮称)

2016 FEB 13 14:14:40 pm by 西 牟呂雄

 我が家に新しい家族がやってきた。自動走行掃除機『ルンバ』である。
 使ってみると実に健気にアッチに行ったりコッチに来たりして一生懸命埃を吸ってくれる。少々の障害物は(さすがに段がついているのは無理だが)乗り越えてしまうのに感心した。
 セッセと働いている姿に感動した僕は『ルンバ君(本当は違うのだが恥ずかしくて仮称とする)』と命名した。
 ルンバ君は人の言う事は基本的に聞かないし言葉も分からない。アチコチに行くだけだ。しかしそう広くも無いスペースで物にぶつかると、暫くジタバタ考えて別の方向に移動し始めて結局何回も同一点を通過する。試しにコーヒーカップを載せてルンバ君に「コーヒーを持って来い」と呼びかけるとちゃんと来るではないか。
 以前ヒト型ロボットを家族の一員のようにしている特集を見たが、その時はバカみたいだと思った。ところがルンバ君と暮らしていると何と似たようなことをしているではないか。神は細部に宿る。
 因みに、室内犬をペットにしている知り合いによると別に生き物として認識してじゃれて遊ぶようなことはしないそうだ。セッセと掃除しているルンバを無視してガツガツとペット・フードを食べているらしい。犬の知的好奇心が希薄なのか、僕の情緒が犬以下なのか。猫はどう反応するのだろう。まぁ犬は嗅覚で”生き物”ではないと分かるのだろう。

 その内オフィス・スペースの掃除などは全てこういったマシンがやることになるのか。現時点ではルンバ君は「物をどける」とかはできないが、近い将来は配線を巻き込むことも無く軽い静止物を弾き飛ばすこともなく、休日の間なんかに全てきれいに掃除をしてくれるかもしれない。いや、業務時間中も稼動して、かえって人間の方がルンバ君が寄って来るとじゃまにならないように『ごめんね。』とか言いながら避けることになるのではないかな。

ルンバ君の顔

 こういう機械を擬人化して遊んで暮らせたら小倉の単身赴任時代はどんなに心慰められたことだろう。ルンバ君は絶対に逆らわない上に余計な理屈も言わないから、同居には最適だ。
 そしてこういった擬人化の遊び心はエスカレートする。ルンバ君も顔がないのがかわいそうだと思い、試しに僕の写真のコピーを張り付けてみたが、同居人一同から「バカみたいだからやめろ。」と拒絶された。仕方なく適当なキャラクターを買って来て「これをルンバ君と呼べ。」と言い渡した。
 これはキャラが可愛いので何とかなったが『ちょっとアブナイんじゃないのか。』と顔に書いてあった。

 もし、スヌーピーとかを乗っけて遊び出したら・・。それは本当に終わりの始まりかもしれない。
 昨日帰宅した際に『ただいま、ルンバ君』と声を掛けてしまった。コワい。
 

何者だ


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「あの日」 異変が生じた Ⅱ

2016 FEB 1 0:00:49 am by 西 牟呂雄

 頭を掻きむしっていてあることに気が付いた。抜けていくのが白髪ばかりなのだ。僕はまだ半分以上黒いが不思議な事に落ちるのは白い毛だけ。痒いのは朝晩シャンプーしても止まらない。一方で体の蕁麻疹はキレイになくなってしまった。
 頭を10日ほどガリガリやっている内に指先に違和感がある。チクチクと毛が生えているではないか。そうか、抜け替わっているのか、これも新陳代謝なんだろうか。
 おまけに心なしか老眼用の眼鏡が合わなくなったと思ったら、とうとう裸眼で近くも遠くも見えるようになった。気のせいか肌のツヤも良くなったような。何が起きているのだ、さすがに気味が悪くなってきた。
 前回のように健康診断を受け、例によって診療室のパソコンに向かって訴えた。
「何だか体に異変が起きているようです。大丈夫でしょうか心配になりました。」
 すると又同じようにドクター・ルームに行くように指示され、入ると今度は初めからオビナタ先生が座っている。
 データに目を通していた。
「アッ西室さん。お待ちしていました。どうですか。」
 と柔らかく聞く。
「それがですね、変なんですよ。えー、今度は頭です。頭が痒くて、それに目が良くなったように感じるのですが。視力が戻るなんてあるんですか。」
「アラッ、すごーい。ステップ現象の効果が出てますよ。」
「それっていいことなんですか?」
「そりゃ~そうですよ!女性なんかみーんなそう在りたいって思ってますよ。若返りですぅ、そう思いません?」
「いや、まっそうスね。それで体の方は少し収まったんですが。」
 オビナタ先生は覗き込むように僕の頭を見て言った。
「西室さん。白髪が減ってると感じませんか。」
「えっ!どうしてわかるんですか。白髪ばかりが抜けます。」
「ステップ現象は代謝促進だけではありません。細胞が分裂を繰り返して活力を生み出していくんです。おそらく白髪が抜けて黒い髪が生えてきてるんじゃないでしょうか。」
「・・・・。それはあの万能細胞みたいなモノですか。」
「あっちょっと違いますけど。内服効果はこちらの方が効くと思ってます。手術の必要もありませんからね。ほほほほ。」
「・・・・、もしかして新しい発明なんじゃないですか。ノーベル賞クラスとか。」
「私達はそう思っています。」
「えっ!!凄いことじゃないですか。特許とか取られたんですか。」
「ええ、まぁ。ただプレスには出さない方針ですから。あくまで効き目を信じて下さる方に役に立てれば、という考え方です。」
「へえ、そんなものですか。」
「ハイ。そういうものです。」
「あのー、私ブログやってるんですけど、このこと書いてもいいですか。」
「えーと、それはムサシ先生に確認しましょう。」
 この日はそれで帰った。

 しかし帰って鏡を見ると確かに若返っているかもしれない。ガサガサの顔までがツヤが出ている。
 しかしこのまま若返ってしまったとしたら、それは本当にいいものなのだろうか。体が若返るにつれ、まさかと思うが脳までいたらなくなってしまったら困るのではないか。昔のようなバカなことを又繰り返さないとも限らない。それはとんでもないことではないか。
 そういえば仲間達からの連絡がパッタリ来なくなった。
 
 みんなで一緒に年をとって、ヤレ具合が悪いだの最近物忘れがひどい、といった話題から取り残されて一人浮いてしまうのも何だかこわい。やぱりみんなと同じがいいよ。最後になって、仲間もいないのに一人若返り長生きなんて、いやだ。
 外見が若返ってもやることも違うのだから、若い人の話題にはついていけないだろう。本当の若い人が仲間になんか入れてくれっこない。
 集合写真も明らかに僕だけ変だ。
 このまま薬を処方され続けて・・・・まさか人間モルモットじゃないだろうな。

 又、身体検査の日がやってきた。しかし気が進まない。進まないが行かざるを得ない。
 いつものようにカプセルに入り、検査を済ませてちょっとトイレに行った。出ようとした時に人の話し声が聞こえてきて、なぜかドアを開けるのを躊躇した。何かが知らせたとしか思えない。男女の会話だ。
「あのニシムロさんっていう被験者、自分でブログ書いててこの体験を載せていいか聞くんですよ。」
「大丈夫だ。事前に調査してあるよ。アノ人のブログの読者は誰も書いてあることが本当のことだと思ってないそうだ。」
「そうなんですか。普段から嘘ばかりついているんですか。」
「普段はどうだか知らないけど、ブログは僕も読んだが支離滅裂だよ。心配ない。」
「この組織の秘密は大丈夫かしら」
 僕のことじゃないか。僕が何を喋ろうが書こうが誰も信用しないから組織の秘密が守られる、とは何事だ。そもそも本当だったら大発明のような事を言っておいてなるべく秘密を保ちたがるのはどこかで特許破りをしているのか。或いは将来新興宗教のようになってボッタクる計画でもあるのか。もっとも僕は被験者ということで今は金を払ってはいないのだが。
 なんだかヤバい。そういえばオビナタ先生はショートカットで眼鏡をしているが子供みたいだ。しかもどこかで見たような気がしてならない。
確かに僕のブログを真に受ける人は少ないだろうが、初めからそこまで調査して引っかかったとすれば・・。全てが仕組まれたことだとすれば・・。

 待てよ。オビナタ先生って名札には 小〇方 っ書いてあったな。ステップ現象もEをAに代えれば・・・。まさか!

 僕は逃げ出すことにしたが。しかし個人情報の殆どを知られていて、逃げ切れるだろうか。あの秘密組織はきっと社会的にはじかれているオレを使って臨床実験を繰り返していたのに違いない。逃げ出すにも逃げ出す先もないじゃないか。ヤバいぞ、ヤバい!

おしまい

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「あの日」 異変が生じた Ⅰ

「あの日」 異変が生じた Ⅰ

2016 JAN 30 23:23:14 pm by 西 牟呂雄

 実は正月早々に体に異変が生じた。蕁麻疹ができたかのようにあちこちが痒い。そしてバリバリ掻くと少し赤くなって蚊に刺されたような後が残り、30分位で跡形も無くなる。
 それはある薬を飲むようになってからだ。その薬の名前は教えられないが、ある団体から被験者の依頼があってそれを飲む事にしたのだ。長年ブログを書いていると色々面白いメールを貰うことがあり、その中にわりと熱心に医療の研究を手伝って欲しい旨の内容があった。先方は私を良く知っていたそうだ。
 差し障りがあるので詳述は省くが薬を飲んで毎週身体検査を受けることになった。トータルで人間を活性化するような触れ込みで、体力の衰えを実感していたから一石二鳥のつもりで受けた。昨年末から飲みだした。
 すると年が明けて痒くなったのだ。腫れは直ぐに治るのだが引っ掻いているので皮膚がポロポロ落ちる。お風呂に朝晩二回入ることにしたがキリがない。何だか脱皮するようだ。
 身体検査を受けるために団体事務所に行くのだが、不思議な所で殆ど人に会わない。検査も全部自動化されている。受け付けも無人でディスプレイにタッチして指紋認証をすると『お部屋にどうぞ』と女性の声がして診察室に入る。そこで衣服を脱いで検査カプセルに入る。中は青く暖かい液体が満たしてあり狭い空間に入るとフンワリと浮く。自分でジタバタしないように両腕を肘掛のようなところにもたれかけて横になる。ハッチが閉じられ外観から遮断されると自然に眠っているように漂った感じがして、柔らかい音楽が聞こえてくる。そしてこのフロート・システム浸かっていると、勝手に身長、体重、血圧、採血、胸部レントゲン、どうやっているのか知らないが胃・大腸ポリープの内視鏡、心電図とやってくれているらしい。
 終わった後に診察室のパソコンに向かって問診めいたことをやる。そこでいつもは『お変わりありませんか?』等と女性の声の質問に『あまり良く眠れません』とか『酒に弱くなってます』等と答えていたのだが、今回は必死に訴えた。
「何だか蕁麻疹みたいに全身が痒くてしょうがありません!」
 すると又女性の声が
「診察室を出て右側億にある3番のドクター・ルームにおいでください。ムサシ先生が往診します。」
 と言った。急いで服を着て出てみると右側の廊下の奥に厳かな感じの厳重な扉あって、ドクター・ルームとあった。ノックして入ると照明がついた。誰もいない、しょうがなくて立っていた。
 するとノックがあって白衣の先生が二人入って来た。一人は女性だ。
 入会する時に面接があって、その人とは違う。
「あっおまたせしました。ムサシです、どうぞおかけください。」
「どうも、お世話になってます。」
「えーと。早速ですが湿疹が出ていますか?」
「そりゃもう。ホラッ見てください。」
 僕は両腕を捲り上げた。内側にポツポツと蚊に刺されたような跡がある。瘡蓋になっているのもあって痛々しい。が、ムサシ先生は
「ハッハー、出てますな。オビナタ先生サンプル採りますか。」
 オビナタと呼ばれた女性は
「そうですね。やっと効果が出だしましたね。」
 とーいいつつピンセットで腕の瘡蓋をピッピと採取して何故かガラスのケースに入れる。ここで僕は少しムッとした。言い方も言い方だがオビナタ先生のいかにも機械的なやり方もだ。第一サンプルとは何だ、人間様に向かって。オビナタ先生は僕の瘡蓋を持って出て行ってしまった。
 暫し沈黙の中、ムサシ先生は僕の数値データを見ながらパソコンに何かを打ち込んでいる。
「先生。効果って何ですか。」
「はい、簡単に言うと代謝が物凄く良くなってるんです。」
「老廃物が排出されるんですか。」
「もっと言うと患部でフレッシュな新細胞が分裂を繰り返して治癒できる、ということです。」
「ハァ~。万能細胞みたいですね。」
 ムサシ先生の顔がピクッとしたような気がした途端、オビナタ先生が入って来た。
「やっぱりステップ現象が起きていますね。」
「ああ、そうですか。ようやく効き出したようですね。」
 ステップ現象って何なんだ。まぁ体にいいことが起きているような説明ではあるが。
「それじゃあ西室さん、もう少し続けて飲んで様子を見ましょう。」
 
 しばらくすると体の方は少し収まったが今度は何とも無かった頭がかゆくなり、のべつまくなしに頭を搔きむしるようになった。体のほうは次第におさまったと思っていたらいきなりだ。ガリガリやっていると髪の毛が抜ける。年だから仕方がないがいい気持ちはしない。
 
 新年会に行った。同年代の仲間が集ったのだ。「おめでとう」とか「久しぶり」と挨拶していると、一様に相手がちょっと変な顔をして僕を「西室だよな」と確認する。そりゃ相手も中には相当頭が後退した奴も多いからこっちだって念の為名前を呼んで確かめもするが。そしてやたらに「お前は元気そうだ」とあきれた顔になるのはどういう訳だ。
 後日集合写真が送られてきた。それなりに懐かしい思いで眺めていると、いいお爺が写っている中に一人子供みたいな奴が混じっている。なんだこいつはとよく見たところ、驚いたことにそれは僕ではないか。 

つづく

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「あの日」 異変が生じた Ⅱ

2030年 認知症で自由になる

2015 AUG 1 8:08:09 am by 西 牟呂雄

 お医者様が仰った。
「ニシムロさん。あなた軽い認知症です。」
 オレは内心ふざけるな!と思ったが一応メモに書いておいた。最近物忘れは確かにひどい。一応書いておく癖をつけないと。
 毎日未だに仕事が忙しい。いろんな人が訪ねて来るのでいちいち相談に乗ってあげている。未だにオレを頼ってばかりの人に囲まれて困ったもんだ。
 昨日も知らない人が訪ねて来て昔はどうでしたか等と聞くので、関東軍の将校で硫黄島でアメリカ海兵隊をやっつけた話をしてあげたら喜んで帰って行った。
 そういえば何か頭のおかしそうな若い女性が『お父さん』等と呼ぶので、どうもお金を借りに来たのだと直ぐに見破って『僕は結婚したこともない。しかもゲイだったからお父さんと呼ばれる筋合いはない。』とよく叱っておいた。
 ところで最近周りの人の頭が随分悪くなったような気がする。何回丁寧に教えて言っても『さっき聞きました。』とか『もう5回めですよ。』とか言って自分が忘れていることの言い訳する奴ばかりだ。
 古い友達に安倍晋三君という総理大臣をやったのがいるが、彼の相談に乗ってやった秘密の話をしてしてやっても誰も驚かない。皆知らないのだ。TPPも安保法制も本当は僕がレーガンや中曽根に根回ししてやったことを。
 待てよ、結婚したことも無い、と言ったが何故か時々家族がいたような気がする。あのちょっちゅうイチャモンを言っていたのはカミさんという人だったかも知れない。たまに訪ねてくる胡散臭い男も自分は息子だと言うのだがあれは何かの勧誘に違いない。

 一番困るのは僕の身の回りの物をかたっぱしから誰かが盗ってしまうことだ。眼鏡とかは特にどこかに隠されてしまって必要な時に手許にない。お金もだいぶやられたみたいだが、幾ら持っているのかさっぱりわからないから誰にも訴えることができない。警察を呼ぼうとも思ったが、証言してくれる人も廻りには居そうもないのであきらめた。

 今日は随分気分がいいので、久しぶりに部屋から出てみた。部屋にばかりいると結局テレビばかり見てしまうので体にも悪いだろう。しかしやたらといる医者は、オレの体のどこが悪いかは誰も教えてくれないのだ。
 テレビはテレビでいつもアクション映画や旅の番組を見ても全部知っていることばかりなので面白くない。体を支える変なボディ・スーツを着させられているので思ったほど早くは行けないのだがズルズルと庭に出てみた。yjimageCAP86K3S

 すると見上げた、と言ってもちょっと首を上に向ける程度の高さのブロック塀の上に猫が昼寝をしているじゃないか。そのまま見ていると気配を感じたのかめんどくさそうに目を開けた。首輪も何も付いていないところを見るとノラの地域猫なのか。こちらの老人用ボディ・スーツが珍しいのかまるで静止物を見るように眺めている。
「認知症なんだって。」
 何だ。誰が喋っているんだ。不自由な首を回しても普段ギャアギャア言ってくる奴等はいない。猫はこちらを見たままだ。脅かしてやろうか、と口を開いたら、
「にゃ~。」
 というマヌケな声が出た・・・。
 次の瞬間、オレの視線が突然その猫の目になってしまって、塀の上からオレを見下ろしているではないか。元のオレはぼんやりとオレを見上げているではないか。そして『猫のくせに偉そうにしないでコッチに来い。』等とそれこそエラソーに言っている。

オレ

介護スーツを着せられたオレ

 すると、二人の若いお姉さんが『ホラ、もうどこにいるのかわかんなくなっちゃって。』と言いながら元のオレのところにやって来るではないか。『敷地から出たらダメっていつも言ってるじゃないですか。』等と言われて『ニャー、ニャァ。』と答えている。オレはいつもあんな訳の分からない受け答えをしているのか。これは本当に医者の言うとおり認知症だったんだな。
 どうやらオレの意識は猫の体を借りているらしい。しかしこのサイズでいると認知症の脳でもコンパクトに正常には判断ができるらしい。何しろ喋らなくて済むのだから楽なもんだ。説明責任も無い。元のオレがあれこれ怒られながらあっちに行くのを見てムックリと起きてみた。何と軽やかなんだ。いままで介護スーツを着させられていた時のモタモタ感に比べれば空を飛ぶほどの感覚である。
 そのまま塀の端っこまで行って高さに少し躊躇したが、思い切って飛び降りて見るとヒラリと地上に立てるではないか。
 人間なんざ不自由なもんだ。オレはこの猫のまま人生を安らかに全うしよう。いや猫生か。
 認知症は感情が希薄になると言われていて、確かにオレも面白くも楽しくもなくなっていたようだが、この猫の体を借りて喜怒哀楽までが蘇ったようだ。
 なにしろこのサイズと身軽さだ。人間の視線では分からない、狭い所も何のその。都心の無機質な摩天楼群の中ならいざ知らず、住宅街のこの辺は言ってみればスカスカの抜け道だらけでどこへでも行ける。どこかのウチの飼い猫のフリでもしてメシにありつこうか。ともかくオレは自由になったのだ。

「ニシムロさん!何が『ニャー。』ですか。猫のふりなんかしちゃって。」
「ほんのさっきまでこんなじゃなかったのよ。相変わらず嘘ばかり言ってたけど。」
「ミャー。」
「何。今度は甘えたフリして。」
「騙されちゃダメよ。この前は犬になってたんだから。」
「困るわねぇ。認知症になっても変なこと考えつくってどういう人格なのかしら。」
「だからこういう人格なのよ。ご家族も持て余してたんだから。」
「どうせなら兎とか鳴かない動物にでもなってくれればいいのに。」

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矛盾を矛盾と感じるのは常識という感情

狂い死に

2015 JUN 6 17:17:51 pm by 西 牟呂雄

 ここのところボケ・アルツハイマーの症状を研究しているが、そんなものは昔からあって、耄碌(もうろく)したとか狐付きとかで済ませていた。
 精神医学も発達した今日では脳科学者や精神科医が様々な分類を行いモデル化するために、色々複雑な状況になっている。
 実際に発症された方やご家族は大変だろう。それぞれの症状に合わせて投薬・ケアをしなければならず、社会問題化することもある。
 昔は分裂症(現統合失調症)と躁鬱病(現在は幾つかに別れている)の二つ程度で、他はオバカくらいの分け方だった。特に躁鬱病は作家北杜夫氏の一連のユーモラスな作品でポピュラーなものになった。株投資で破産したり何年もドローンと落ち込んでいたりしてご家族は冗談じゃなかったろうが。

 それで色々検索してみると、どのケースもしまいに幻覚・幻聴・妄想に苦しめられると書いてある。もちろん僕はそんなモノ見たことはない。ところが、これまたほぼ共通して『行動的な障害を伴う患者は、ストレスが原因で普段とはかけ離れた著しい行動に出ることがあるが、患者本人はそれらの行動の変化に懸念や自責の念を持たないことが多い。それらの行動の具体例としては、アルコール依存・・・。』という説明がある。なんだこれは。酔っ払った時の僕のことではないか。

 提題に戻って『狂い死に』であるが、狂ったことで死ぬことはできない。結局自殺してしまうか何かの病気を併発して死んでしまう。そこで巷間狂って死んだことになっている幾つかのケースを分類してみよう。

突発的変人自殺型
 世の中から『あれは少しおかしい。』と言われている変わり者が前触れもなく自殺してしまう。普段から変わり者、がミソ。
 秀才の場合は大体つまんない恋愛沙汰が多い。
 歴史上こういった例ではバイエルンの狂王と言われたルートヴィッヒ二世だろうか。あまりにも有名なので詳細は省くが、弟オットーは本当に発狂している。湖で水死体となって発見されているが狂った後の自殺だろう。ちなみにワグナーのスポンサー(途中でケンカ別れ)。
 躁が昂じて止まらなくなったのが三島由紀夫、鬱でやってしまったのが恐怖症・芥川龍之介、秀才型が心中中毒・太宰治、と言ったら研究者に怒られるだろうか。ただこの三者は狂い死ににはならないか。

アル中型
 死因は肝硬変だ心不全だと色々あるが、基本酒の飲み過ぎ。心の病だろうが何だろうがアル中はそりゃ死にますよ。
 中毒するくらいだからまぁ悩みは多いでしょう。
 日本史の中では関が原の裏切りで終生苦しんだ小早川秀秋がこのパターンで狂い死にしたとされる。秀吉の甥(ねね殿の甥にあたる)金吾中納言である。寝返りを食い止めようと立ち塞がった名将大谷吉継が「人面獣心なり。三年の間に祟りをなさん」と言って切腹し、祟りによって狂死したと噂された。確かに2年後だった。当時は祟りも信じられていただろうから、ガバガバ呑んだ時は恐怖でうなされたことだろう。

梅毒型
 病気が病気だけに臨終直前の幻聴・幻覚は恐ろしいものがあるだろう。何故か大作曲家にこのテがいる。ロベルト・シューマンはカルテもあるそうだが梅毒による障害がひどく、幻聴で聞こえた天使の合唱を五線譜に書いた後、ライン川に投身自殺をしようとしたとか。しかも当時は梅毒の治療に水銀を処方したそうだからこれも体にも悪かった。怪物に襲われる幻覚やA音の幻聴に悩まされた、とクララ夫人の手記にあるそうだ。
 実は若死にしたシューベルトも梅毒だったし、本当かどうかベートーベンの聴覚障害も(否定されているようだが)梅毒説があったらしい。
 もう一人付け加えたい。日本の思想家で、東京裁判民間人唯一のA級戦犯容疑者になった大川周明(笹川良一もそうだったが不起訴)。極東裁判での奇怪な振る舞いにより松沢病院に入院させられ、梅毒による精神障害と診断されている。この人については改めて別途述べたい(入院した後にコーランの翻訳などしてかなりアヤシい)。

本物型
 医師がそうだ、と診断したケース。結局肺炎とか栄養失調で死ぬのだろう。本当になってしまったら通常の生活はできないから、周りの介護がなければ悲惨だ。
 今では読む人もいないだろうが、大正期の作家島田清次郎は精神分裂病と診断されて死んだ。
 『地上』という自伝的作品がベスト・セラーとなり、一時は『島清』と称されたアイドル的人気があった小説家である。ロンドンの第一回国際ペンクラブ大会に於いて初の日本人会員になったりもした。しかしピークは僅か4~5年で、女性関係、虚栄、傲慢が次第に人を遠ざけて、ファンだった女学生とのスキャンダルで転落する(僕の母親の母校の生徒だが)。警察に保護された際支離滅裂なことを口走って鑑定したところ、正真正銘の精神分裂病であったために巣鴨庚申塚の保養院に収容された。多少執筆もしたが、直ぐに結核で死んでしまった。

 さて、もし危なくなって狂い死ぬとしたら僕の場合圧倒的にアル中型なのだろうが、25才で急性膵炎をやった時に医者から『アル中にもならずに良くこんな病気になった。』とほめられた位だからこれも難しい。やっぱり自然体アルツハイマー型ボケ死にがふさわしいのだろうか・・・。

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2035年 わっ 大変だ !

2015 JUN 4 22:22:28 pm by 西 牟呂雄

人工知能編
 このところどうもおかしい。僕がヨレヨレになって人工知能付きライフ・スーツを2千5百万で買ってからどうも面白くないのだ。僕は今80歳だが75歳の時に原因不明の奇病を発症し、身動きが取れなく認知症も出た。ところがその頃から異常に発達した人工知能、生命工学および介護医療機器のおかげで何不自由なく暮らせるようになってしまった。
 ライフ・スーツはワイヤーを使って駆動させることが基本だが、皮膚へのダメージや感覚をソフトにするための多くの新開発が盛り込まれ、僕が買ったものはグローブタイプといって指先までカヴァーされているが暑かったりかゆくなったりしない。そしてあらゆるポイントにセンサーがついていてこちらが『立ち上がりたい』とか『歩きたい』『コップを持って水を飲みたい』と思うとそれに合わせた動きをしてくれるのだ。目の動きと神経の伝達を人工知能が感知して動くらしい。歩いているのはフワフワと腰掛けている感じだ。
 腰を悪くした人は若い人でもヒップスーツなどを着用している。これにより介護の負担は大幅に低下し、ライフ・スーツの売り上げは年間1兆円の巨大マーケットとなった。
 しかし愛用しだしてから、どうも自分で考えないでも人工知能が勝手にモノを食べさせたり排泄させたりしているような気がしてならない。認知症が進んできているのは記憶障害があったり言葉がすぐ出なかったりと自覚はしているのだが、最近はこのスーツのおかげで思考することができなくなったような気がしてくる。
 ウッ先程空腹感もないのにモノを勝手に食べたような気がしたが・・。待てよ、その後何を考えたんだっけ・・・。話そうとしたが何を言えばいいのか分からない。目の前の人は誰だ。
 これは・・・僕は生きていると言えるのだろうか・・。死ぬことはできるのだろうか、それとも死んでいるのか。
 待てよ!実験されてるとしたら・・・わっ大変だ!

鏡 子供編
「ほら、この鏡をもって三面鏡に映してごらん。鏡の中に鏡を持った自分が映っていて、そのまた映った鏡のなかにもズーと映っているだろ。」
「ホントだ。すごーい。どこまでも続いていて最後は点みたいになってはじっこで消えちゃうよ。その先はどうなってるの。」
「それはズーッと続いているんだけど、目と鏡に角度がついてるから見えないんだ。目が鏡の中に入っちゃわないと見えないよ。」
「へー。じゃ目が鏡になれば無限の奥まで見えるの。」
「そりゃそうだけど。目が鏡になっちゃったら見えなくなるんじゃないの。」
「アッ。」
「どうした。」
「見て見て。てまえから五番目に映ってる僕が動いてる。」
「何言ってんの。手がずれたか、自分で動いたんだろ。」
「違うよ。見てよ、5番目だけ横向いてる。ホラ、見ろよ。」
「何だよ、手動かすなよ。アッ本当だ。オイッお前目を離すなよ。コッチを見た。」
「わぁッ、本当だ。そっち見てる。」
「おい、手を振ってるぞ。オレを見てる。」
「痛い!」「痛い!頭ぶつかっちゃった。」
「こっちも手ぐらい振らなきゃ。」
「アッ、僕が横向いた。」
「エッ、お前今オレのこと見てるじゃないか。」
「いや、鏡から目が放せない。」
「何言ってんだよ、鏡の中じゃなくて今こっち向いてるじゃないか。」
「違うだろ、鏡の中の5番目のお前のことを見てるんだ。お前も写ってるじゃないか。」
「おい、変だぞ。オレ目が鏡になっちゃったんじゃないか。」
「僕も変だ。お互い鏡の中に・・・。目が鏡になっちゃったよ!」
「わっ大変だ!」

魚眼 編
 夜の桟橋でライトを射し込んだらゴンズイ玉がウネウネと漂っていた。色が不気味な緑色だったことを覚えている。この際哺乳類の鯨・イルカは別にして、魚は大きくとも小さくとも頭脳の程度は同じだとすると水の匂い、流れ、水圧、そして魚眼から見る風景といったものを感じて本能だけで生きていると考えて差し支えないだろう。更に光の届かない深海では物をみることも無いから、その辺で生きている魚類の視覚はかなり退化していると思われる。
 しかし僕たち人間は自力の移動について地表を二次元的にしか動けないが、魚は三次元移動可能だ(水の中だけではあるが)。海底や川の底に腹這いになる種類もいるだろうが、大体は陸上のいかなる動物より(鳥だって寝るときは地上か木の枝にとまる)自由に上下左右前に(中には後ろにも)移動していられる。
 それにしても魚眼は360度の視界で、魚は目が横についているからほぼ全方位を見ているのではないか。あの小さい脳の中でいかなる画像処理ができているのか。
 実は生命工学の発達により、現時点では人間の目の機能を体の別の部分に移植することは可能になり、十分に脳との信号のやり取りができることが確認されている。一応の倫理規定があるが、中国では手の平に目を移植した事例が報告されている。また、一時はまがいもの扱いされたSTAP細胞もその後に彗星のように現れた天才科学者、大日向霧子博士により見事に再現(というより発明)された。これによって臓器はおろか器官までどこにでも付け替えられるのも時間の問題だ。
 だから見た目を気にしなければ耳をウサギみたいに頭のてっぺんに移植して、目を顔の耳の部分に移植し左右別々に見えるようにすることも自由だ。その眼も何色にしようが魚眼レンズにしようがお望み次第。が、横についていて魚眼だったら人間の視界は脳内でどのように画像処理されるのか・・、意外とプレデターの見る画像に近かったりして・・・わっ 大変だ。

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酒 考(反省)

2015 MAR 4 22:22:00 pm by 西 牟呂雄

 小倉のバカ飲みの言訳ではないが、今では生活の一部と言っていいだろう。『酒』である。
 そもそもウチの家系は父方も母方もまるで優性遺伝でもするように血の繋がっている者は例外なく酒が強く、且つ好きである(男女問わず)。僕の酒癖の悪さは何度かブログでも紹介した(小倉分含めて)。そして色々なことに巻き込まれているが、僕以前に親族が若い頃にやらかした恐ろしい話はいくらでもある。幾つか証拠を挙げてみよう。
・ 泥酔して本郷の交番にストームをかけて保護されたがお巡りさんが名前を誤記して無罪放免になった。
・ 酔っ払ったその日に国電の大事故があり、家族が死体安置所にまで行った頃朝帰りした。
・ 京浜東北線で寝込み2往復した。
・ 常磐炭坑節をがなりながら某ターミナル駅前の交番で保護されていた。
・ アメリカ出張の際にお土産に買ったはずのウィスキーを飛行機で全部飲んでしまった(3本?)。
・ 朝起きたら会社の前に停まっていたトラックの荷台で目が覚めた。
これらは1960年代に目撃された事例だ。
 尚、当時の戦後社会もそういう風潮ではなかったか。小林秀雄の伝説に『酔っ払って水道橋のホームから落下したが(高架で結構高い)無傷だった』『鎌倉で待合だと思って上がりこんで酒を飲んでいたら人の家だった』といった類の話が英雄譚的に伝えられている時代だ。

しかし時代を越えて
・ 新宿西口交番でゲロまみれになって保護されたが、あまりの悪臭に交番の外に座らされた。
・ マンションのエントランスで発見されたが完全に意識がなく、どこの誰だか分からず放置された。
・ 本人から『いくら歩いてもウチに着かない。どうなってるんだ。』と携帯から電話が入った。
といった報告が現役から来ている。僕の話じゃないですよ、念のため。

 概して一族は明るい酒で、何かの折に一族が集まって飲み始めると何が楽しいのか『ウワハハハハ』『ガハハハハ』といった荒々しい笑い声が響き渡る。冠婚のときの親族の席は一際目立つ。半世紀も前の事、家で宴会が始まると当時は日本酒をいちいちお燗していたから母親が席の暖まる間もなく、お銚子を並べたお盆を持って台所と何十往復もしていた。座敷の壁際に空いた一升瓶がズラーッと並んで行く。僕はそのたくさんの一升瓶を並べたり転がしたりして遊んだ。
 既に小学校には上がっていたかと思うが、子供心に『オトナは宿題やれ、とか早く寝ろ、とか言われないであんなに楽しそうに酒という物を飲んでいる。早くオトナになってああやってみたい。』と思い、その酒というものはああやってガバガバ飲むもんだ、と刷り込まれた。どちらも大間違いだったのだが。
 こっちは実際に見たことないが、母方の祖父が義弟達を集めてやる酒宴も物凄いモノだったらしい。手元が狂って女学生になりたての僕の母親が床の間まで吹っ飛んだ話は一度書いた。それどころじゃない、床の間に活けていた花を酔っ払って食べてしまったり、みんなが被って来た帽子を重ねてパンチで底を抜いたり。こういう人々が高級官僚だったり海軍軍人だったり、果ては裁判官までいたのだから恐ろしい。

  長じて最も反省させられるのは、キリがないことだ。僕は酔ってくると物凄く早口になるらしい。後から考えるとその時点で意識は飛んでいるから何を喋ったか忘れるのだが、周りには泥酔していると気づかれない時間があってやっかいだ。物を忘れることも多すぎる。先日も携帯を失くした。
 しかしあの痺れるような味がする飲物があったとしても全く酔わなければあんな量を飲み干すことはできないだろう。目下の心配は『自分』まで失くしてしまい、そのまま頭でも打ってアルツハルマゲドン状態になってしまうことか。
 先日都内某所で今から35年から40年前のバカバカしい行状を白状して笑われた。まぁ実際当時ですら『オレはもしかしたらヘッポコ探偵小説の主人公なのではないか』とため息をつくような暮らしをしていたっけ。翌日さすがに『昨日の話は全て消去、デリート、あれはウソです。』と言ってみたけれど。ドルフィンの皆さん信じて下さい、あれはウソです。

 気が付けば今夜も酔いの中・・・・。いやだな。

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