Sonar Members Club No.36

月別: 2014年11月

実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その1)

2014 NOV 9 23:23:33 pm by 西 牟呂雄

 一人旅といえば聞こえはいいが、できるだけ現金をケチってウロウロするのもこの年になると楽ではない。はっきり言って車上生活をしているホームレスと言われても仕方がない。夏場に宮城・福島でボランティアめいたアルバイトに精を出して少しは被災地に貢献しただろうから、小金を持って南下した。埼玉に入ったあたりで少し休みたいと、高速を降りネットで探した最も安い所にチェク・インした。田舎だな、あたりをブラッと歩くと家畜の臭いがするときがある。写真でみたホテルは何やらプチ・高原ホテルといった趣で、悪く言えばバブルの落とし子の行く末の典型だ。恐らくリストラを迫られたのだろう、使っている部屋は二階建ての下だけで食事もつかない。
 このあたりは水が少なさそうで、水田というより畑。それも恐らく昔は養蚕のための桑畑だった地域と思われる。少し広い所は耕作放棄地が草茫々になっていて、それはそれで古の荒地風情だ。もう少し行くと工業団地になっているらしい。
歩いていたら、麦藁帽子のオッサンが畑の隅に腰を下ろしてタバコを吸っているのと目が合った。ニッコリするので『コンチワー。』というと『ご苦労様です。』等と返事が返ってくる。更に『いや~、参っちまったよ。』と言う。傍らに小型耕運機があった。
「ナントカ原のカントカが行っちまってよ、けえってくるって言ったけどどーこ行ったかさっぱり戻って来ねえ。」
面倒だったので聞き返しもしないで一緒に腰を下ろしてタバコに火を付けた。
「いい天気だねー。」
と話しかけると、ゆっくりこっちを向いた。
「早く直してくれよ。おりゃ仕事になんねーよ。」
と困った表情を浮かべた。
「直すって?」
「来てくれたんだろ。これ直してくれに来たんだろ。」
えっ、何言ってんだオッサン、いやジイチャンだな。指差しているのは耕運機だ。
「これどうしたんだい?壊れたのかい?」
「ずーっと待ってたんだよ。」
とニコニコしている。何だよ。その耕運機(手押し型)の所へいってスターターを引っ張ってやるとすぐにエンジンがかかった。なんじゃこれは。するとジイチャンは満面の笑みを浮かべて、
「ありがとう、ありがとう。やっぱりユズルがやってくれると仕事が早い。」
ユズル?誰のことだ??まあいいか。ジイチャンは耕運機を押しながら畑の向こうまで行っては返ってくる。二往復くらいしたらエンジンを切った。
「ああ、疲れた。ユズル、帰って一杯やろう。」
「いや、オレはユズルじゃないよ。間違えてるんだよ。」
と言ったが構わずスタスタ行ってしまう。振り向いて、
「ホレ、早くしろ。焼酎やるべい。」
不覚にも『焼酎』の一言に吸い寄せられてくっついて行ってしまった。直ぐそこの田舎作りのそれなりの一軒家に入っていった。誰かバアさんでもいるのか。
上がりかまちから覗くと土間になっていてジイサンは上がって手を洗った。オレも洗う。一年中このままにしているような炬燵のところに茶碗を二つ持ってきた。
「ほれ、いっぱいやれや。」
と焼酎をドボドボ注いだ。
「よう帰ってきてくれたのう、ユズルがいると酒がうまいわ。」
「ジイチャン、オレはユズルじゃないって。」
「んー?早く飲めよ。」
「ユズルじゃないって。間違えてるんだよ(ガブッ)。ん、うまい。ユズルってジイチャンの何なんだ。」
「なーにが。息子の名前間違えるはずがない。ちょっと待て。」
息子!これジイサンはボケてるのか、だったらまずいぜ。ジイサンは立って台所に行き、漬物を切って持ってきた。
「ジイチャン、オレ息子じゃあないよ。通りすがりの者だ。(ガブッ)。」
「そうかそうか。この漬物うまいぞ。(ガブッ)。」
「あのさー、ジイチャン家族とかいないのかい。(ガブッ)。」
「ウロコ雲が出たからそろそろ霜にも気を配んなきゃな~。(ガブッ)。」
「あのさ、ジイチャン・・・・。まっいいか(ガブッ)。」
そうこうしているうちに、オレも酔いが廻ってくる。
「オオ、ニホンシリーズなんだ。テレビテレビ。」
二人で一緒にテレビを見る。するとジイチャンは阪神タイガースのファンらしくて、いつの間にかトラのメガホンを持ってきてセッセと応援しているではないか。癪に障ったのでホークスを応援する。ジイチャンは『ろーっこーおーろーしー』等と元気一杯に歌ったり、スタンドに合わせてメガホンを叩いたり。負けちゃいらんないからコッチも力が入る。その間ガブガブ飲む。
 二人で騒いでいたら何と西岡が守備妨害でアウトになってしまって、二人同時に『アーッ!』と声を上げた。この瞬間ホークスの日本一が決まった。
「ジイチャン残念だったな。ん?」
返事がないと思ったら寝てるじゃないか。しょうがないな、オレも帰ろう。

 翌日、そのホテルをチェック・アウトしたのが昼時だった。フと気になって車で昨日の道をジイチャンの家の方に出した。すると驚いたことに昨日と同じ所に座っているではないか。
「おーい、じいさん、夕べは世話になったなー。」
「オオ!籠原のタケシじゃないか。良く来たな。」
「ん?昨日はユズルじゃなかったか?」
「なーに言ってんだ。ユズルはワシの息子だろうが。こう見えてもボケちゃいねーぞ。」
ボケてんだっつーの。まあいいや、と車から降りた。
「イヤー助かった。耕運機が動かねーんだよ。ちょっと見てくれよ。」
なんだよ、またかよ。はいはい、とスターターを引っ張ると直ぐかかった。
「ホレ、ジイチャン。」
「おーおー、さすがタケシだ。助かったよ。」
昨日と同じ所を耕運機を押して往復すると、オレを見てこう言った。
「よう、タケシ。せっかく来てくれたからウチに寄れよ。焼酎やるだろ。」
昨日と同じじゃないか。こりゃ本格的にイってるぜ。
「ジイチャン、オレ車だから飲めねーよ。」
「じゃ泊まっていけよ。」
なんだかデ・ジャ・ヴだ。こっちもヒマだけど・・・。
「分かったから車に乗ってくれよ。」

つづく

実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その2)

実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その3)

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外連(ケレン)の華 猿之助歌舞伎

2014 NOV 8 12:12:28 pm by 西 牟呂雄

 澤瀉屋(市川猿翁一門)見るのは先代猿之助の『ヤマトタケル』以来だから随分と久しぶり。別に歌舞伎座ばかりではなく、新橋演舞場もいいんですよ。私は正統も何も歌舞伎は面白けりゃいい、という方でイザとなったらどこかの田舎芝居でも構わない。
 前に見た時『ヤマトタケル』のときの最後に飛んでいく宙乗りの衣装が少々気持ち悪かった、と思い出してみると何と20年振りかな。
 今回(10月)は『市川猿之助奮闘連続公演』と銘打った四代目猿之助を初めて見ました。出し物は三代猿之助四十八撰の獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)、もちろん猿翁さんの演出です。
 これは原作が四世鶴屋南北で、この人は『化政の江戸』と言われた文化文政時代の爛熟期にメチャクチャな筋立ての通し狂言を書きまくった人だ。以前から言っているが歌舞伎の筋立てなんか荒唐無稽なものに加えて、早変わり有り、宙乗り有り、本水有り(舞台で実際の水を滝にして流す)のスペクタクルだ。仇討と宝物の奪い合いをからめながら五十三次を逆に京都から江戸までやってくる。結局何がどうなったのか良く分からないのだが、狂言回しみたいに弥次さん喜多さんも出てくれば、白波五人男の日本駄右衛門(実は別人)と弁天小僧まで出てきて物凄く早い。なにしろ四幕五十三場もあるのだからやる方だって大忙しの代物だ。
 途中の台詞なんかは現代口語で掛け合うから面白いの何の。
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 それで四代目さん、この人女形もやっていただけあって変わり身の女姿がいいですね。この化け猫の衣装の凄いこと、十二単です。これぞケレン。これで宙乗りをやったのですからそれは見ものでした。

 この人、今月(11月)には明治座の花形歌舞伎で従兄弟の市川中車と通し狂言をやるのですが、市川中車ってあの香川照之さんですよ。そういえば萬屋の中村錦之助・隼人親子も出てました。獅童の従兄弟だったかな。
 澤瀉屋の芸風は大道具も演出も常に大胆に進化する。これ猿翁さんが昭和の頃から盛んにやっていたのですが、基本を押さえているところが一時の流行物とは違って飽きられない。『革命』とは優れて進化と捉えらがちですが、恐ろしいことに『革命』の語感にはどうしても破壊衝動があり、しばしば「古いもんは何でも壊しゃいい。」となってしまう。後に残るのは得てして理想とはズレた荒涼とした物となりがちだ。
 一方では伝統墨守のガチガチでは、時代とともに当初の感動は薄れていくものではないか。保守は保守で鍛えに鍛えて行かなければ先に光明は見えない。これ、SMCでのクラシック談義で繰り返し東 兄が指摘している所に通じます。そして新たな解釈を加えながら生まれ変わることのできる『いいもの』だけが生き残る。

 と大げさな話になりましたが、画像の化け猫だけでも見る価値ありますよ。

 荒事の華麗な芸

九月花形歌舞伎

九月大歌舞伎 千穐楽

猿之助四十八撰


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日露ビジネス・ダイアローグより  

2014 NOV 6 18:18:03 pm by 西 牟呂雄

撮影 小野ともひで氏

撮影 小野ともひで氏

 
 皆様はじめまして。わたしの方からは日本の地方企業がロシアに、色々悩みながら合弁会社を設立した話を紹介します。クライアントは、この中の皆様は恐らく聞いたことの無い会社です。企業規模は大きくはありませんが、再来年に100周年を迎える中堅の会社であります。
 まず、時節柄政治的な話はさけたいと思います。主催者の趣旨もそうだ、と聞いております。
 一概に中小企業の進出、と括るのに幾つか定義したいのですが、まず銀行団の支援が得られるような規模ではないこと。更に様々な行政のサーヴィスが長期に渡って受けられるようなプロジェクトでないこと。正に民間と民間で、失敗すれば我々は逃げて来なければならない覚悟を持ってやる仕事、とご理解下さい。
 きっかけは、地方行政が地元産業振興のため地元企業保有技術の海外への事業展開を政策として推進しており、一方ロシアとの貿易促進の外郭団体様が日露ビジネス・マッチングを企画されていた、この二つの動きに乗っかって訪問ミッションに参加したことです。今から七年前のことでした。
 ただこの動きはその後のリーマンショックでいったん止まります。
 2009年に再度ミッションが訪露し、先方からも産業視察団が来日しました。その中で先方の我々と同程度の会社様が興味を持って頂き、互いに協議を重ねた訳です。
 随分と時間が掛かり、二回ほど双方譲らずデッドロックに乗り上げました。
 難しかったのは、やはり我々にロシアに関する知識が全くといってもいいほど無かった事で、やはり『寒い国』『怖い国』の印象のままやや腰が引けていた。しかし先方の、日本の技術を導入して事業を拡大する、といった熱い情熱が強いインセンティヴでありました。結果双方対等の50:50という合弁会社を昨年発足しました。
 50:50というのは、決定効率・後処理等を考えると止めたほうがいいと散々言われるものですが、現地の事情も考え(モスクワから1600km時差2時間)あえて踏み切ったものです。
 交渉に当たって経理概念が少し違っていることにも気が付きました。既に計画経済を脱して20年以上立っていて、グローバル標準の会計システムも整備されている訳ですが、ロシアの人々は非常に物持ちがいい。長く長く使うのです。そして償却後の評価はあまり重きを置いてない。『今で言えばいくらの資産』ということは若いロシア人でも飲み込めていなかったようです。同じように棚卸仕掛かりへのコスト参入も普段はやらないようでした。これからの問題でしょう。
 又、我々の使う日本語は形容詞とテニオハでいくらでも繋げることができます。一方のロシア語は個々の単語が長い。どんなに優秀な通訳を頼んでも、双方3分以上喋ってから通訳してもらうと微妙なところでズレていました。話は短く切らなければいけません。

撮影 小野ともひで氏

撮影 小野ともひで氏

 ところで、実際に始めてみて驚いたことが二つありました。一つは我々パートナーに恵まれたのでしょうが、ロシアの人は一度約束したことを身を切ってでも守ってくれました。具体的にはお客様の支払い条件がモメたのですが、彼らは契約通り払ってくれました。ロシアにも義理人情の世界があるのでしょうか。
 もう一つ、内陸部は大変に親日的です。様々な理由があるのでしょうが、その一つは日本のアニメかもしれません。
 お客様の工場に訪ねた際のエピソードです。商談が済むと先方のマネージャーがおもむろに、
「娘が日本語を勉強しているが、日本人と話したことがない。話してやってくれ。」
と言い出しました。日本語学校も無く日本人もいない所で英語版のインターネットで学習しているらしい。理由はアニメで、当地では(モスクワから200km)全て吹き替えですが、主題歌だけは日本語の字幕付きでそのまま流れます。その歌を日本語で歌いたくて一人で勉強しているのだそうです。独学ということで、どんなメチャクチャな日本語かと身構えたところ、
「ワタシノナマエハ アリョーナデス。」
ときれいな日本語が聞こえてきました。聞けばまだ15才とか。是非勉強を続けて、できれば日本で合いましょう、と約束しました。楽しみにしています。以上です。

ロシア東方シフトは本物か


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円安と株高

2014 NOV 5 11:11:20 am by 西 牟呂雄

 自信満々の黒田総裁の異次元殺法がさく裂して株価は前場で一時1万7千円の壁を突き破り、円は110円/$を飛び越えて113円だ。この市場ショックを見極めて、安倍総理は消費税増税の決断をしなければならない。じつに効果的なタイミングだと思う。恐らく財務省はこれで消費税アップは安泰と祝杯をあげているだろうが、ちょっと待てよ。そんなに単純か。安倍総理はあと6年を狙らっているのだから、役人に煽られて遮二無二3党合意に乗っかる舵取りをするほどヤワじゃない。現状は国債を日銀が一手に引き受けてしまい、ろくすっぽ市場に出なくなったため政府の方は日銀に対する返済をすればいい。即ちどうにでもなる。一応禁じ手とされるがもはや多いか少ないかの話。
 一方である程度の株は輸出型大企業が核になって業績が潤って見えるのだが、企業の収益力を示す株価を現在の為替ドル表示で冷静に見てみると概算で20%程度の上昇しか見られない。これはほぼ円安による手取り現金の上昇にリンクする。
 しかも国際情勢の不安が大きすぎて、予測はどっちに出るか予断を許さない。
 まずはイスラム国の大暴れ。石油価格とテロのリスク。二つ目はエボラ出血熱。どこに飛んでくるか分からない恐怖。第三にウクライナ情勢。プーチンのブラフかと思っていたが、双方引っ込みがつかなくなってしまわないか。そして香港。何かの力が働いていなければ、あのスピードでマスクや傘が行き渡るとも思えない。心配なのは香港のキエフ化だ。場所柄第三勢力が入り込みやすい。
 これらはむしろ円の安全性が評価される方向が一般的だが、アメリカの緩和出口政策の前の絶妙なタイミング、黒田総裁乾坤一擲の勝負と評価したい。

 今後については突発的な例外を排除していくつかのシナリオを考えてみる。
シナリオ1
 消費税増税時期延期 ドル150円 株価 19,000円台
 7~9月の統計を見て判断するとすれば、それ程アクティヴではなく、年内に来年の10%への上げは難しくなる。しかし三党合意によって法制化されているため、財務省系の猛烈な圧力が安部政権を揺さぶる。そこで、執行時期を半年~一年延ばす、あるいは1%づつ2年に渡ってあげる。インフレ目標は達成される。

シナリオ2
 予定通り増税    ドル105円 株価 15,000円台
 結局三党合意のまま来年10%になる。一方で国際マーケットは円の安定感を重視して円買いに進み、100~105円に落ち着く。結局第三の矢が短期的に景気を押し上げる力にはなり得ず、格差は縮まらない。奥の手は復興を中心に大幅予算をつけてメデタシメデタシくらいか。ただ日米金利差が拡がると130円くらいになる。

シナリオ3
 消費税大幅延期 衆議院解散  ドル 180円 株価 11,000円
 各種数字が悪いところへ持ってきて沖縄知事選で負けてしまった安部総理は衆議院を解散する。泡を食った野党は当然敗北し、自民党圧勝するも消費税は『時期を見て』と玉虫色にされる。アメリカが金融緩和を縮小した時点で円暴落。物価は上がり株価も下がる。ただ国債は暴落しない。政府は強権的になる。日本TPP交渉から離脱。

 どうせ当たりっこないけど、言ったもん勝ちで・・・・。あしたにも訂正したりして。

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車というオモチャ

2014 NOV 3 19:19:49 pm by 西 牟呂雄

 今の若い方は車をあまり運転しないと言われている。時代が変わったのだろうな。僕達の感覚では車は時代の先端を走っているように見えた。車種で言えばスカGとかRX7、セリカXX(ダブル・エックス)の時代くらいまでだった感じか。僕は母親の趣味でオペルとかワーゲンがハンドル握りの始めだった。車道楽の友達の中にはカマロとかトランザムといったアメ車を(親が)持っているのがいて、乗ってくると先を争って借りては2~3日乗り回して遊んだものだった。その頃の仲間とはこの年になって会っても『今、何乗ってる。』が挨拶代わりだ。ヒマに任せてダブル・クラッチやヒール・アンド・トゥの練習をさんざんやって誰が一番上手いか競った(バカ)。そういえばマニュアルだったな。
 
 その後、先ほどのXX(ダブル・エックス)を手放した頃からコロッと趣味が変わって、セドリック二台とクラウンを乗り潰した。その間に実は三ヶ月だけベンツが挟まっている。
 そのベンツはヘッド・ライトが縦目になっている型式の古いやつで、一目惚れして手に入れた。ところがいつもいつもトラブル続きで、変な異音はするし終いにはファンベルトが切れたり。車検が購入価格並みの見積もりで腰が抜けるほどビックリして売った。随分自慢して表参道を10往復くらいしたんだが。一時は売れるかと環八の中古屋に片っ端から『もう乗り飽きたから100万なら手放そうかと思うんだ。』と売り込んだがディーラーは不愉快そうに『レストアするんですか。』等と言うばかりだった。

 近年のハイライトはシトロエンだった。油圧サスペンションの乗り心地は格別で、気に入っていたのだが、この車も故障が多い。特にヨーロッパの寒冷地仕様だから夏場がひどかった。そしてシトロエン業界は東京でも狭くて専業は二軒しかなかった。そしてその内の一軒のディーラーが車と一緒に引継ぎされた。あまりの修理費にグチをこぼすと、そのアンちゃんは『これぐらいじゃ一流のシトロエン乗りとは言えません。むしろ壊れたら喜ばなくちゃいけない。』等とほざくのだ。この車は最期サス・オイルが漏れるようになり往生した。修理屋の部品取りにでもと引き取ってもらったが、その時もカモがいなくなると思ったか『いい出物があるんですよ~。ニシムロさんなら50万でいいですよ。』とヘラヘラしてみせたが、さすがにビビって止めた。

 その次はグロリアだったが、これはターボチャージャーでムチャクチャ速かった。走り屋じゃないからそんなに飛ばさないが、時効だから白状すると大手町から名古屋南の東海まで2時間45分で行ったことがある。その場所は新幹線で行っても名鉄の乗り換えが時間を食うためドア・トゥ・ドアで3時間かかっていたから『新幹線より速い男』を自称した(バカ)。東京からずっと渋滞がなかったのでスイスイ行けたが浜松を過ぎたあたりで、このペースだと3時間を切ると気が付いて頭に血が登り、アクセルを踏んづけたら前述の記録が出たのだ。スタートも凄くて、試してみたがスタートから時速100kmまで3秒くらいだった。

 そして今乗っているアウディにした。乗り心地はシトロエンより落ちるのだが車重1.5トンの安定感は素晴らしく出足もいい。しかしさすがにこの重量だとガスは食う、ハイオクですぞ今時。この円安は本当に堪える。ただあのボディの強さは万が一の時でも助かる確率は高い。重いだけあって高速の安定性は抜群でとても気に入っている。

 現役で車で遊べるのは後10年あるかないか。すると車検のたびに乗り換えても後三台ぐらいか。乗ってみたいのはジャガーなんだが、どなたか譲ってくれる方はいませんか。言い値で引き取りますよ。その後は車高の高いピックアップトラックに乗って、最後はかわいらしい軽自動車がいい。その頃は軽のデザインももっと垢抜けして斬新なモノが出ているのじゃないだろうか。

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異邦人のあれこれ

2014 NOV 1 14:14:34 pm by 西 牟呂雄

 先日、昼メシを食べた後に事務所に帰るので歩いていた所、インド系と思われる二人組みに話しかけられた。
「Can you speak English?」
いきなり何で僕にと思いつつ答えてやるとused electric parts が欲しいという。ハハァー、アキハバラに行きたいのか。それはあそこに見える東京スターションから山手ラインでセカンド・ステーション、と教えてやった。やはりインドから観光に来たそうだ。そして
「Anything to see around here?」
と聞くので、あの角を左に真っ直ぐ行くとエンペラー・パレスだ、と言うと「ウヮーオ!サンキュー。」とか喜んで嬉しそうに行ってしまった。マッ行けば分かるだろう。
 銀座で中国語が飛び交うのも珍しくなくなってきたし、この前は台湾人のオニーチャンを道案内した。英語も覚束なかったがあれで大丈夫だろうか。

 ところがその直後、世にもケッタイな外人に遭遇した。
 地下鉄の駅でキョロキョロしている小柄な眼鏡の白人が、突然
「タカラチョウ、ギンザ、イチデスカ?」
と大声で言っている。何だか危険な匂いがしたので無視していたら、僕の前に来て再度「タカラチョウ、ギンザ、イチデスカ?」
をやるのだ。宝町に行くには銀座線の1番線か、と聞いている様なので、
「Yes, Ginza line number 1 platform.」
と応えたら何と怒り出した。
「ワタシ ニホンゴデ キイテル。」
「Great!」
「アッ マタエイゴツカッタ。」
こいつ酔っ払ってるのか、目を剝いて怒っているのだ。まくしたてる内容は、日本語で話しかけられたら日本語で返事をするのがグローバルのルールだ、と主張した。あ~はいはい、と放っぽりだそうとしたら、止めの一言が妙に気になった。
「ソウシナイト、ソフトサベツニナルヨ。」
ほうっ、ソフト差別ねぇ。少し考えさせられた。

 仮に僕がロシアで道を聞いて日本語で説明されたら、それはまずホッとして嬉しくなるのじゃなかろうか。最近多い中国人・韓国人観光客が日本語で訪ねて母国語で答えられたらそれを差別だ何だとイチャモンをつけるか。ソフト差別とは何か・・。
 もしかするとその白人、自分の日本語に強烈な自信を持っていたのに僕にバカにされたと思ったのか、いやそれ程の日本語じゃないよな。或いは日本人に合わせてやってるのに英語で喋るのはそいつが僕を差別することになるからヤメロと言ってるのか。
 ヨーロッパ経験の長いSMCの皆様、これどうなんですか。フランス人がスペイン語で質問してきたらフランス語が喋れてもスペイン語で返事しなけりゃならないのでしょうか。

 ひょっとしてあの外人、イタリア人かなんかで英語全然喋れなかったりして。

春夏秋冬不思議譚 (これはグローバルか)


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