喜寿庵で『撮り鉄』 Ⅱ
2017 JUN 28 20:20:22 pm by 西 牟呂雄
調子に乗って人並みに「撮り鉄」になった気分です。
今度はネイチャー・ファームから接写してみました。ネイチャー・ファームは線路わきの私有地ですのでこんな距離で撮れます。
レトロ型の特急ですが、クリックすると結構な迫力ですよ。
気が付いたのですが、プロの撮り鉄の人はあまりやらない『通過前』『通過後』という撮り方を編み出したので、JR直通のみの特急がやってきたので試してみます。これもクリックしてみてください。
これを撮ったときはネイチャー・ファームで農作業をしていたのですが、実は作業用のブルーのツナギを着ていました。するとその格好が余程マヌケに見えたのか、特急に乗っていた白人のグループがはっきりと私を指差し笑っていました。中にはスマホを向ける人も。
この会社は電鉄会社ではありますが、他にリゾート遊園地・バス運行・不動産開発と多岐にわたる事業を展開していて、鉄道売り上げは全体の数%にしかならないそうです。ですがこの路線は無くして欲しくないですので、セッセと撮り鉄を。
ブラリ途中下車の旅とか各駅停車のナントカで取り上げてもらえないものでしょうか。
この写真はフジサン特急の人気車種ですが、偶然駅で普通列車とすれ違うところをパチリ。かわいいでしょう。何とか盛り上げようといじらしい。
早朝の通勤時間帯と夜の帰宅時に1本づつ、オレンジ色の中央線がJR直通で通りますが今度チャレンジしてみたいと思います。
ところでネイチャー・ファームのほうはどうなっているかと言うと、今年で3年目のアグリカルチャーをセッセとやってます。
ジャガイモの花が咲きました。クリックしてみて下さい。
なんだかのんびりし過ぎてこんなのはいかがですか?
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
都議会議員選挙始まる (自民党惨敗7/3)
2017 JUN 25 16:16:54 pm by 西 牟呂雄
あのですね、僕の政治的立ち位置はブログの読者はご存知の右・保守派。すると最近の政治マターではすっかりマイノリティーになってしまって、書き残すと誰かに怒られそうなことばかり考えている。
例えば五つほど挙げてみる。
➀ 原発賛成。単にエネルギーの問題じゃない。最先端の物理科学の技術を磨くのに必要だと思っている。従兄弟の原子力屋は『今度こそ1万年安全な原発を作ってやる』と言ったが、大した技術屋魂だと感心した。勿論被害を受けた3・11の被災者は本当に気の毒で補償は手厚くし過ぎることはない。
こんなものが政争になるとは考えない。純粋に科学的な問題だ。
➁ 安保賛成。自主防衛をやってもいい日までこれで行くしかない。憲法改正大賛成。自主憲法制定まであと2年。平成のゼロ戦と原子力潜水艦があったほうがいい。
➂ 豊洲移転派。盛土の問題からおかしくなっただけ。あの空間があれば地下水がどう汚染されても地表には上がってこないから安全に決まってる。
東京湾には汚染されてない所などない、常識だ。
➃ 前川証人喚問必要ない。あれは本物でも意味がない文書。籠池は只の詐欺師。
⑤ 中国・韓国はほっておけ。北には圧力。商売をやる人はどうぞ。友達がいる人もお好きに。だが政府間は無視でいい。シャトル外交なんか10年やらなくて構わない。
今のところはこんなもんですかね。
それで都議会議員選挙なんですが、小池知事の東京大改革とは具体的に何をどういったステップでやるというのでしょう。
今月号の文芸春秋に『私の政権公約』という手記が乗りました。一読しての感想は、なんじゃこりゃ。
・都政の見える化としてネット公開と政党復活予算の廃止を上げている。ネット公開でコピー代の削減だと。
・政党復活予算は都知事が一人で決めていいのか。そもそも1件当たりついたのは全体予算の0.1%程度だからレンホーがやった仕訳程度の話。
・自民党本部の都連会議が灰皿だらけだったのを改革したというが、それがどうした。別にあなたが推進したとも思えない、ご時世なだけ。僕だって室内では大ぴらには吸わない。
・子育て支援について『要は予算の確保である』と書いておいてすぐその後に『東京都で変えられない制度は、積極的に国への国家戦略特区を申請する』と記す。あちらを立てればこちらが立たない現実は国に丸投げか。第一そんなに急に増やして質は確保できるのか。まぁこれなんかやったほうがいいけどね、うまく。
・経済対策なんか以下の文言は全く無意味。『環境配慮型ビジネスモデルへの改革を促して、世界に羽ばたくベンチャー企業を創出する』『時差ビズ』どうせ誰かに書かせたのだろうが大したブレーンがいないのはミエミエ。
・日本新党を回想しているくだりがあるが、その後生き残ったのは数えるほどもいないだろうに。その後続いた小泉チルドレン・小沢ガールズ・大阪維新の会の大量当選者をみれば都民ファーストに群がったシロートの行く末だって知れたもの。皆さん経歴は立派だけどね。
・公明党に擦り寄った経緯については一言も触れていない無責任。
この人一体どういうつもりで都知事になったのか。オリンピックから豊洲にいたるドタバタだってコストかかったでしょうが、宮城県まで行ったり。
そしてツベコベ言った挙句に結局豊洲移転はやると。だけど両立って何事だ。食のテーマ・パークってふざけてるのか。しかも5年後は都知事かどうか。
築地活用でもブランド化でもいいけどグチャグチャと負け惜しみにしか聞こえない・・・。あれでよく都官僚が言う事を聞くな、というのが正直な感想だ。
敵を炙り出そうとしたら敵が見えなくなった感がある。というかジタバタし過ぎて後ろを見たら公明党しかいなかった、とでも言うことかね。
そして煽りを食ったのが民進党です。14人が見限って都民ファーストに雪崩れ込むという現象が露骨すぎて選挙になりませんね、逃げてきた時に面接とかはやったのか、思想信条とか。
私の地元でも、高学歴で若い都民ファースト、豊洲移転反対の美人民進、ドロドロ地域密着自民、の絵に描いたような三つ巴の戦いになり、駅前でガンガン始まった。
誰に入れるかと言うと、オットSMCは極端な政治談議は御法度だった・・。
なんだか都民は騙されそうだなぁ。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
6月28日追加アップ
ファイターズ 交流戦総括
2017 JUN 23 23:23:20 pm by 西 牟呂雄
まずはこの結果を見て欲しい。
対DeNA
負 加藤 0-3 ホームランなし
勝 斉藤 6-1 中田5打点
勝 中村 5-3 ホームラン 中田
対阪神
勝 玉井 4-2 ホームランなし
負 メンドーサ 2-4 ホームランなし
負 エスコバー 3-4 ホームランなし (9回に追いつかれ 延長でエラーがらみのサヨナラ負け)
対広島
負 宮西 3-4 ホームランなし (守備の乱れで逆転負け)
負 斉藤 3-8 ホームランなし (バチスタに2本も打たれる)
負 浦野 3-5 ホームランなし
対巨人
負 高梨 1-2 ホームランなし (巨人の13連敗を止めてオマケにこっちは6連敗)
勝 鍵谷 3-2 ホームラン 太田
勝 村田 5-1 ホームラン 西川 大田
ここまででよく分かったのは『ホームランを打てば勝つ』という実も蓋もない話で、名将栗山監督の差配も何もあったもんじゃない。弱いセ・リーグ相手に多少の貯金をもくろんでいた作戦がパーになってしまった。
去年の同じ頃を思い出す。
いよいよ栗山監督の決断の時が近づいた。
すると・・・・。
対中日
負 マーチン 5-7 ホームラン レアード・中田 (役に立たない)
勝 公文 7-5 ホームラン 中田(だけど相手のエラーで勝っただけ)
勝 宮西 5-4 ホームランなし
対ヤクルト
負 鍵谷 5-8 ホームラン 中田(ケタクソ悪い逆転負け)
負 メンドーサ 0-5 ホームラン なし
勝 有原 6-3 ホームラン なし
中田が打つと負けるようになってしまったではないか、このやろう。これは監督のせいではない、点の取られ過ぎだ!もうフォ-スも秘策もない。
来年は大谷はメジャーに行ってもういないんだぞ。借金も2つ増やした。
当初は優勝をねらってホークス戦は1勝2敗で行こうと考えたがそんな作戦どころじゃない。破れかぶれで博多決戦だぁ(すでに冷静さを欠いている)!
いやしかし、今シーズンを諦めるにはまだ早い。オリックスと西武を食って何が何でもCSで今一度中島(影の)オーナー率いるホークスと決戦に持ち込まなければ(イーグルスなんかどうでもいい。勝手に優勝しろ)。有原も復活したし大谷も4番で復帰させて目に物見せてくれる。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
っと酔っ払って帰ってくると、中田が2発も打って軽くイーグルスを葬ってるじゃないか。
オレが見てる時にやれ‼️
ついに海老蔵 織田信長になる
2017 JUN 20 19:19:19 pm by 西 牟呂雄
出たぁ。成田屋ぁ!
あまりのストーリーのかったるさに暫く目もくれなかった『女城主 直虎』に海老蔵の織田信長が登場すると聞いて久しぶりに見た。
ところが登場したのは1シーンのみ、どうも製作者は出番を多くしないのだろう。主役が飛んでしまうからか。
映画「花戦さ」で中井貴一の信長を見て感心したばかりだが、やっぱり海老蔵は凄い迫力だ。難を言えば実際の信長の声はもう少しカン高いと思うのだが、本物を聞いたことがないので仕方がない。
実際にはこの時期の信長は30代の中頃で、しきりに美濃を牽制して上洛を目指しており、足元の尾張ー三河ラインを固める必要があった。武田などとも外交関係に腐心していた。
永禄十年頃には信長の娘五徳姫と家康嫡男松平信康との婚儀も整い三河との同盟は信長にとっても命綱であったから、映像で流されたような威丈高な態度ではなかったと思われる。
しかしそこはそれ、テレビ的にはああこなくては。
その昔、家康が織田に人質に取られていた時に信長と会ったという説があるが事実ではないようだ。
信長はこの織ー徳同盟(清州同盟ともいう)に随分救われているし、狂気じみてくるのはもっと後だから劇中の『豆だぬきめが』といった言い方はしなかっただろう。
ところでサボッている内にストーリーはどうでもいい具合に進んで、何やら盗賊集団が井伊家の家臣になりかけるが、そこにプロレスラーの真壁が出ているではないか、しまったァ!学生プロレスから新日本に入り、当初は地味なキャラクターだったがヒールに転向してブレイク。ゴツイ顔でキングコング・ニードロップやキングコング・ラリアット(ただのニードロップとラリアットだが)を繰り出すデス・マッチ・レスラーである。見ておけばよかった。
ちょと差がついたが、ライバルの棚橋が海老蔵と一緒にドラマに出てたっけ。
余談だが、尾上松也(まつや、これ”ま”じゃなくで”や”にアクセントを置いて上げて呼ぶんですよ、業界では)が演ずる今川氏真ですが、その後流転して京都で和歌など詠みながらつつましく暮らしたらしい。織田信長の前で公家達と蹴鞠をしてみせた記録が残っている。そして江戸初期まで生きており徳川幕府に高家(こうけ。諸大名に礼儀作法を教えたりする役職。吉良上野介も高家)の家となっている。
戦に負けた方としては上手いことやったクチだろう。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
映画 『花戦さ』
2017 JUN 18 15:15:30 pm by 西 牟呂雄
信長・秀吉・利休そして池坊専好。キャストは順に中井貴一・市川猿之助・佐藤浩一そしてご贔屓の野村萬斎ときてはこれ、見ざるを得ませんね。さるお見舞いの合間にチョイと行ってきました。
秀吉の狂気、利休との友情、意を決して秀吉に挑む専好。
「いやしくも池坊を名乗るなら、花の力で世を正そうぞ」
手練れの芸達者がズラリと並んでさぞや。それがですねぇ、どうも脚本がメメしいんですよこれ。
萬斎さんの坊主頭が似合わないんですな。
初めに出てきたアップが何ともマヌケ面に見えて笑えたし、人の顔と名前が覚えられないというコミカルさを狙ったキャラの設定がチョット。
それでもこの一見ボケ芸がクライマックスで生きる、という演出なのでしょう。
冒頭の信長に松を活けるところ、中井貴一はさすがでした。
「見事なり!池坊」
信長の登場はこのシーンだけでしたがかっこいい。そしてあの役者だったらどうやったろう、などと思いを巡らすのも一興です。まず考えたのは勿論成田屋の海老蔵。
そしてクライマックスは豊臣秀吉VS池坊専好。歌舞伎VS狂言の芸の打ち合いといった趣です。そこは見てのお楽しみ。
ところで池坊は聖徳太子建立の京都六角堂のお坊さんです。
如意輪観世音菩薩をご本尊にしています。
作中で萬斎さんがしばしばお経を読むのですが、これが聞いた事もないお経なのです。
いったい何経なのでしょうか。
検索してみるとどうやら『光明真言』のようです。
「オン アモ キャーベー ロシャノウ マカボダラ マニハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン」と言っているのだとか。
サンスクリットではと表記して、不空なる御方よ 毘盧遮那仏(大日如来)よ、偉大なる印を有する御方よ 宝珠よ 蓮華よ、光明を 放ち給え という意味のようです。
猿之助ファン、萬斎ファン、並びに生け花関係者にはお勧めですが、某映画館はガラガラでしたね。
ところで池坊はこの映画にいくらスポンサードしたのでしょうか・・。
戦国三部作を貼っておきます。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
七条油小路
2017 JUN 14 20:20:54 pm by 西 牟呂雄
「ふざけやがって!」
局長近藤勇がドスの聞いた声を絞り出した。
新撰組から分派した御陵衛士が長州藩に対し寛大な処分を、と建白したというのだ。
「歳、どうすんだ」
傍らにいる土方に向かって聞く。
「どうするもこうするもねえ。あんたはいつもそれだ。決まってんだろ、殺る」
「どうやって」
「いいから何とか理屈をつけて伊東を呼び出してくれ。北辰一刀流は理屈が好きだからな。全く藤堂まで」
藤堂とは試衛館以来の盟友、藤堂平助である。元々は千葉周作の玄武館で剣を学んだ後、試衛館の師範代になった。隊士募集の際に北辰一刀流門下で面識のあった伊東甲子太郎を紹介したのも藤堂だった。
しかし伊東が門弟を引き連れて入隊すると、当初の同志である天然理心流一派より伊東の言説に共鳴し、とうとう御陵衛士に合流してしまった。理由はやたらに人を切りたがる近藤一派の野蛮さに辟易したからだ。
伊勢津藩主藤堂高猷公の落とし胤、とホラを吹いていたが貧乏旗本の三男である。
剣は、強い。
近藤は早速妾宅で酒宴を催し、したたかに飲ませた伊東を待ち伏せした大石鍬次郎の槍で突き殺した。土方の下知だ。
土方は伊東の死体を検分すると目を閉じたまま言った。
「こいつを油小路に捨ててこい。それで山崎、配下の連中を高台寺のあたりにやって伊東がやられたと言い振らせ」
監察、山崎丞(すすむ)は頷くと姿を消す。土方は幹部を前に更に指示する。
「永倉、原田、隊士を連れて待ち伏せして皆殺しにしてやれ。島田と大石、お前等も行け」
名前を呼ばれた永倉新八は眉をひそめて土方に言った。
「副長。平助が来たらどうします」
「何だそれは。お前が敗けるとでも言うのか」
「いや。ただ」
「ただ、何だ。切られてくるか。迷うようなら局長にでも聞け」
「副長は行くのですか」
「馬鹿野郎!御陵衛士の5~6匹殺るのにいちいちオレが行けるかよ」
土方さんらしい、と永倉は原田左之助に目くばせして屯所に向かった。あの人は本音が言えない、山南の時も沖田に行かせた。
すると物陰から一人の男が前に進み静かに進言した。
「拙者も参ります」
土方はさすがに驚いた表情になった。
「斎藤か。貴様は平気なのか」
斎藤一。新撰組屈指の使い手である。秘かに言い含めて御陵衛士に潜り込ませたのは土方だ。建白の秘密情報を持ち込んだのも斉藤なのだ。
「今更どうしました。服部武雄・毛内有之助もかなりの遣い手。まさかの時は・・」
「ケリをつけたいのか。勝手にしやがれ」
果たして高台寺の伊東一派は激高した。藤堂平助は体が震えた。また例の手を使ったか。だから罠だと言っただろうに。おのれあの百姓上がりども、それでも武士のつもりか。
紅顔の美少年と言われた平助の眉間から頬のかけて池田屋の時に負った向う傷が凄味を帯びていた。
「きたない奴らめ」「しかも遺骸を路上にさらし者にしているとは許しがたい」「とにかく伊東先生の御遺体を」「おうっ」「おうっ!」「行くぞ!」
立上がる中、一人服部武雄が声を掛けたが。
「御一同。相手は新撰組ですぞ。必ず切りあいになりましょうぞ」
服部が鉢金を巻いて支度をする間に他の六人はその声を無視して飛び出して行った後だった。
息せき切って御陵衛士七人が油小路にやってきて伊東の遺骸を見つけた途端、いきなりジャラジャラと音を立てて抜刀した新撰組に包囲された。こういう時に新撰組は誰も口を利かない。御陵衛士側も直ぐに刀を抜いた。藤堂が一歩進んで低く呟いた。
「やはりな」
切っ先を上下させながら歩を進めると、囲みの中から一人の隊士が対峙した。その顔を見て藤堂の表情が引きつる。永倉新八である。長い付き合いの永倉を向けるとは、しかも近藤も土方も沖田も、天然理心流は高みの見物か。おのれ。
永倉もすぐには切り掛かれない。互いに手の内を知り尽くしているのだ。藤堂の眉間の切り傷をみて、永倉はフト思った。
この怪我以来こやつの心根が変わったのではないか。しかし切らねばやられる。
永倉はツツッと体を交わす素振りをした。平助、逃げろ、とは思わなかったか否か(近藤がそう意を含んだと後に永倉は維新後証言している)。
刹那、背後に回った三浦常三郎が切り掛かった。『むぅ!』と藤堂が声を上げると取り囲んだ隊士が一斉に刃を振り下ろし、藤堂は即死した。
その刀音が合図になったかのように、まず御陵衛士、富山弥兵衛が示現流のトンボの構えから「チェーストー!」と裂ぱくの気合を発して囲みに突っ込む。富山は薩摩の出身で、入隊の時点から間者の疑いを掛けられていたが伊東が斡旋していた。
必殺の切り込みに新撰組も一呼吸置かざるをえなかった。二人ほど太刀を払いかけるが富山もこれを膝を折るように刀を振り下ろして叩き落す。三人が後に続いて血路を開いた。篠原泰之進・鈴木三樹三郎・加納道之助である。
しかし二人遅れた。いや居残ったのかも知れない、後に引けずに。
毛内有之助は武芸十八般何でもござれの達人で、更には和漢の経典を講ずる文学師範や諸士調役兼監察までこなし「毛内の百人芸」と言われた。切りかかってくる新撰組の攻撃をかわしにかわし、遂に大刀が刃こぼれすると小太刀を振るって奮戦するも多勢に無勢。原田左之助の槍の餌食となった。
服部武雄は毛内と同じく諸士調役兼監察を勤めた。並外れた体格と怪力で二刀流の剛剣を遣う。塀を背にして半円形に取り囲む隊士を全く寄せ付けなかったが、半時ほどの戦闘に力尽き猛烈な切り込みを受けて死ぬ。
二人とも遺体はズタズタに切られていたのだった。
土方は幹部の多くが妾宅を構えるなか、相変わらず屯所の離れで過ごしていた。
この晩は寝付けなかったので居室から障子を開けて屯所に戻ろうとしてギョッとした。体調を崩して臥せっていた沖田が厠に立つところだった。胸を患い顔色は悪い。黒目がちの光る眼がこちらを見ていた。
「土方さん。きょう藤堂さん達をやりましたね」
「なにィ」
「さっき永倉さんが局長の所に来てましたよ」
「それがどうした」
「いや。僕も元気だったら行けたなって思って」
「総司・・・・」
「え、何のことですか」
「いいからさっさともう寝ろ!」
「はいはい」
屯所への渡り廊下から青白い満月が照らしている。今日一日で一体天下の何が変わったと言えるのか。土方は無言で仰ぎ見た。そして二尺八寸の愛刀・和泉守兼定を抜き、月光にかざして見つめた。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
喜寿庵紳士録 ピッコロ君
2017 JUN 11 11:11:01 am by 西 牟呂雄
ある日の昼下がり、門の前の道を掃いていたら『やあやあやあ』と声が掛かったので顔を上げるとあのヒョッコリ先生が子供を連れて歩いて来た。
「どうだい。ジャガイモくらいは蒔いたのかい」
「ええ。ピーマンとナスも苗からやってます。その子はお孫さんですか」
「いや、孫じゃないんだけどチョット面倒見ているんだ」
「ボクはお名前は何ていうの」
すると学童前くらいのその男の子は先生の後ろに隠れてしまった。恥ずかしいのか恐いのか。
上目遣いになったその子は小さい声で言った。
「ピッコロ」
「ピッコロ君なの!」
「ハッハッハ。自分で『ピッコロ』って言ってるんだよ」
「へぇー、自分で考えたのか。すごいねピッコロ君」
「あっ調度いいや。僕少し用事があるんでこの子と遊んでてくれないか」
「・・・いいですけどどれくらいですか」
「いやほんの30分くらいだよ。すぐ帰ってくるから頼むよ」
「は・・・・い」
先生はそのままスタスタ行ってしまった。ピッコロ君は不安そうに見送っていた。
「じゃあピッコロ君、お庭に行って見ようか。おいで。お花が一杯咲いてるよ」
しょうがなくて二人で門をくぐって庭に廻った。
芝生を張った前庭に連れて行って『ほーら、これはつつじの花だよ』と教えてやると、いきなり花びらを掴んでちぎってしまい慌てた。
「コラコラ!そうやって取ってしまったらお花が死んじゃうじゃないか。ダメ」
ピッコロ君はムッとした顔になってトコトコ走って行く。
「オイオイ!そっちは崖になって落ちたら大怪我するよ」
今度は鬼ごっこのつもりか『きゃー』などと言ってはしゃいで芝生に転がって見せた。どうも躾けのなってないチビだな。そして腹ばいになってジーッと地面を見ている。丁度いいやとほったらかしておいた。
ところがそれっきり動かない。どうかしたのかと行ってみると、小さい芋虫をたくさんの蟻が運んでいるのを見つめているのだった。そういえば僕も子供の頃に蟻の行列をずっと見ていた記憶がある。
そこで割り箸をたくさん持って来て
「ピッコロ君、オジサンが時間を計ってあげるからこのお箸を蟻さんがいる辺りにこんな風に立ててごらん。するとどういう風にどのくらい運んだか分かりやすいだろう」
と地面に刺してみせた。俄然ピッコロ君の目が輝いている。
それから僕は本を読みながら(ついでにビールも飲んで)10分おきに『はい10分経ったから刺して』と声をかけた。
しかし1時間近くなってもヒョコリ先生が帰ってこない。ピッコロ君が地面に刺している割り箸が5本になった。驚いたことに蟻はこの時点で数メートルも移動しているではないか。一方ピッコロ君の集中力も凄い。冷たいお茶をコップに入れてあげるときに『ずうっとおんなじ蟻さんが運んでるのかい』と聞いても頷きもしない。
と、そこにやっとヒョッコリ先生がきた。
「やあやあやあやあ、お待たせ。チョット込み入っちゃってね。さあ、帰ろう」
するとピッコロ君は困ったような悲しそうな顔になって首を振っている。帰りたくないのか。ここで遊んでいても構わないが、そもそも僕はヒョッコリ先生の家さえわからない。
「この割り箸は残しておいてあげるからまた遊びにおいで。続きはおじさんがやっといてあげる」
と促した。ピッコロ君は名残惜しそうに帰って行った。
ゴルフをやって帰ってくると門の前に小さい子が二人で覗いている。ピッコロ君だ!
「ピッコロ君、どうしたの?おじさんを待ってたの」
ピッコロ君はニコニコしていた。一緒にいるのは同い年くらいの女の子だ。
しまった、『おじさんがやっといてあげる』をコロッと忘れていた!
しょうがない。庭に入れてあげると二人は昨日ピッコロ君が立てた割り箸の列を見に走って行った。子供に向かってはこういう時に嘘をついてはいけない、すぐに見抜くからだ。
「おじさん、きのうピッコロ君が帰った後にビール飲み過ぎて蟻さんの行き先が分かんなくなっちゃったんだよ。ゴメンネ」
ピッコロ君は眉をひそめて割り箸の列の先をジーッと見ている。いたたまれない気分だ。
「お嬢ちゃんはお名前は何ていうの」
「マリリン」
「へー、マリリンっていうんだ」
と、ピッコロ君は僕がほったらかしにした蟻がどこまでいったかを割り箸の列の先まで探そうと地面を見続けた。マリリンちゃんも何にも分からず一緒に見ている。参ったな。どこに行ったか確かめようと奥に行ってしまいそうなので慌てて声を掛けた。
「そうだ。チョコレートあげる。一緒に食べよう」
僕はウィスキー・ロックのつまみに板チョコをかじるのでいつも切らしていない。二人に声を掛けたがキョトンとしている。さあ、おいで、とベランダから家に入ってチョコレートを冷蔵庫から出して来ると不安そうな顔で覗き込んでいた。
「上がっておいで」
と手招きすると、驚いたことに靴のまま入ろうとしたので『あーダメダメ、靴脱いで』と止めた。この子達は一体どういう暮らしをしてるのだ、畳だぞオイ。何考えてんだ、僕の方から外に出てチョコレートを剥いてあげた。
ハッとしたが、この子達は自分の名前(本当かどうか分からないが)以外一言も喋らない。どういうことだろう。可愛らしいのだが、ひょっとするとこの子達は日本語が分からないんじゃないのか。
この前も変態がかわいらしいヴェトナム人の女の子を殺したし、世間の目はオッサンと少年少女の組み合わせに厳しい。しかもああいう事件は何故か田舎でも起きる。ましてや保護者(と思しき)ヒョッコリ先生もいない。だいたいあのオッサンだって何者なのか知らないし、どうしたものか。
そうすると、子供には相手の動揺が直ぐ分かるのか。二人はコッチを見上げてソワソワしだした。そして手を繋いで小走りに出て行こうとするのだ。僕は慌てた。
「おーい、待って」
こういうチビは以外と早い。もう門まで行ってしまってる。必死で声を掛けた。
「又、おいで。友達になろう」
門を出た時にはもう見失っていた。しかし僕はチビちゃん二人の行方よりも大声を上げた自分にビックリしていた。そういえばここにいる限り友達はできない。地元の大学生と付き合いはあるが彼らは彼らの世界があって”友達”にはなれない。せっかくの仲良しを作るチャンスを潰してしまった。
「やあやあやあやあ」
「ウワッ」
ヒョッコリ先生だった。
「なんか”友達がどうした”とか叫んでいたようだが」
「いや、何でもありません。ピッコロ君とマリリンちゃんが遊びに来てたんです」
「誰だい。その変な名前」
「いやっ・・・・この間つれていた子供さんが・・・・」
「ピッコロとマリリンって僕が飼ってる犬の名前だぜ」
先生は笑いながらスタスタ歩いて行ってしまった。
あまりの事に一瞬気が遠くなった。僕は幻視したのだろうか。いや待てよ、もっと聞きたいことがあったのだが飲み込んだ、『あなたはこの世の人なのですか』の質問を。
ヨロヨロと庭に戻れば割り箸はちゃんと立っているではないか。僕は二人と遊んで友達になったのだ。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
おじさんだって前向きに生きる
2017 JUN 7 19:19:27 pm by 西 牟呂雄
物忘れがひどくなってきて、つい最近のことやチョットした約束なんかは直ぐに忘れて不便な事おびただしい。
しかしながら昔の自分の恥ずかしい過去やみっともない事跡だけが大脳皮質にこびりついているのはかなわん。脳科学者というのが最近大勢いるし、IPS細胞も飛躍的に応用範囲が増えるから、大脳のマズい記憶の部分を除去してイヤなことを思い出すようなことがなくなったらどんなにいいだろうか。
昔の仲間四人で集った。
こいつらと集ると『思い出したくもない』ことのオン・パレードだが、周知の事であるだけに話しもギリギリの寸止めで済む、お互い様だからだ。
このメンツ、強いて言えばカタギは昔サラリーマンだった僕一人。他は皆自分でテキトーにそこそこやっている。そしてこの年になれば、だが全員ヤバい入院をしたりして危ないことおびただしい。
一人はインドで犬にかまれて肝臓を患い、もう一人は心筋梗塞で3日程意識不明。僕はと言えばそこはそれ、酒に事故。現在は二人が睡眠障害で睡眠導入剤を使い、残りは時々15分ぐらい寝たりとか昼間フッと寝てしまうような奇怪な状態。泥酔して寝てしまうのと睡眠導入剤で眠りにつくのはどっちが体に悪いかでモメたが結論は出なかった。
何れにせよこの年になると「今更」感が拭えず、今後は誰が生き残るかのサバイバル・マッチになることだけは確認された。そうなると俄然張り切る気になったものの、張り切ってどうする。もう手当たり次第とか、何が何でもといった惨めなマネはできないし、やり直しなんか絶対に間に合わない。
結局どうするかと言えば、もうここまでヒネクレたオジさんは目の前にあることを丁寧やるしかないというドーデモいいオチになったのだ。それではあんまりだと色々話をしていると、どういう風の吹き回しか『これからは感謝の気持ちも込めるべきではないか』という驚くべきマトモな意見に集約される。
この集まりには統計的に3シグマを外れて管理外のオッサン共の他に女性も一人参加していて(これもあんまり中央値ではなさそうだが)上記意見集約は意外だった。
しかしですな、この年で夢のような目標を立てて計画倒れに終わるよりも、どうやったら楽しめるかの方に重きを置いたほうが楽と言えば楽。なにしろいつおかしくなるかは分からないのだから。
いや別にヤル気のある人はやればよろしい。
そして男と女では捉え方に違いがあるらしい、となった。男は過去の栄光にすがり、女はいつでも未来を目指すがアホな目標を立てるような真似はしない。これ私が言ったんじゃない、どっちが優れているという事でもない。ただ話の流れでそうなっただけ。
去年死んだ親友は『引退したらやりたいことのオン・パレード』とうそぶいていた。それが何だったのかは聞かなかったが思い出すたびに煽られるような気がしていた。
『感謝の心』と言っても別にお国や社会に感謝するわけじゃない。人によっては宗教に当たるのかもしれないが我々にはそのカケラもない。強いて言えば『こんなオレ達でも何とかなっているのはやっぱり周りの皆様にでも感謝くらいしといた方がいいのではないか』程度。
感覚的に近いのは映画『イージー・ライダー』のヒッチ・ハイクで拾ったヒッピーがいたコミュ-ンで貧しい食事に捧げる感謝の気持ちだろうか。もっとも彼らは”神”に感謝していたが。
それで何をやるか、については飲み過ぎて結論を誰も覚えてなかった。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」
わかったぞ弓削道鏡
2017 JUN 3 17:17:16 pm by 西 牟呂雄
まァ詮索も何も孝謙天皇と弓削道鏡が強い信頼関係にあったことは事実である。
そして禁断の天武天皇系は孝謙天皇(後の称徳天皇)を持って終わることは以前書いた。天智系と天武系の睨みあいが先ず縦軸にあって、更に藤原仲麻呂と橘諸兄の対立が横軸で重なる。不幸な事に天然痘の流行で藤原四兄弟がいっぺんに死んでしまってから俄然おかしくなったことに気が付いた。
権力争いでナントカの乱がしょっちゅう起こって実に複雑だが、勝ち抜きトーナメントのように潰しあっている間に道鏡は天皇の寵愛を受け、重祚して称徳(しょうとく)天皇となられた頃は現在の平城京跡あたりにあった西宮(さいぐう)で一緒に政務を暮らしていた。
弓削氏はご案内の通り河内がフランチャイズの一族で、何やら”弓”を作っていたとか。モノの本によるとかの物部氏の流れとも言われる。
当時唐から来日した鑑真和上が仏教界にあって道鏡の現役時代と重なっている。また失脚後に流れた下野薬師寺は鑑真和上ゆかりの寺であり、ひょっとすると漢語・サンスクリット語で二人が会話したのではないか等と想像をたくましくしている。少なくとも当時最高のエリートだったはずだ。
で、話は変わって今まで知らなかったが、道鏡には弓削浄人という弟がいて大納言・従二位にまで出世している、勿論コネだ。
こいつが大宰帥(だざいのそつ)という九州長官に任じられた。あの菅原道真が飛ばされてなったのが大宰権帥(だざいごんのそつ)という副官だから、それより偉い。因みにこの職名は名前だけ幕末まで残り、最後の大宰帥はあの官軍・東征大総督だった有栖川熾仁親王だ。
したがって宇佐八幡の神託なんぞ思いのままで、やりたい放題の挙句が兄貴を皇位に就けろというインチキに至ったのだろう。当然のごとく称徳天皇崩御の後は流罪。
気の毒にそのインチキはさすがに評判が悪く、再度神託を請う勅使に任じられたのは天皇側近の女官だった”広虫”という人なのだが、病弱だと言って弟の和気清麻呂を行かせる。想像するにこの時に密かに『道鏡が弟をそそのかしたのだから反対の神託を持ってこい』と含んだのではなかろうか、と仮説を見立ててみた。
結果は当然バツ。すると天皇は怒ってしまい広虫は還俗させられ備後国へ、清麻呂に至っては名前を別部穢麻呂(わけべのきたなまろ)と変えられ大隅国に流される。『きたなまろ』!なんという気持ち悪い音だろう。
僕は小倉にいたことがあるが、足立山という所に御祖神社(妙見社)という神社があった。そこの縁起によれば清麻呂が流される際に足の筋を切られたのだが、小倉の南辺りの温湯で足が直り歩けるようになったという伝説がある。”湯川”という地名が残っていてその辺りの歯医者に通っていたので知った。
別バージョンもあって、途中もう一度宇佐八幡に参ったところ猪三百頭余が現れ清麻呂を支えたのでゆっくりと歩いて行った、というのもあった。
僕は小倉時代に宇佐神宮に行ってその伝説を実感した。
清麻呂が”きたなまろ”にされてそんな目にあっていた頃、天皇と道鏡は弓削寺(由義寺)で仲良く暮らしましたとさ。
そこは場所が分からなかったのだが、八尾市の東弓削遺跡のあたりで遺構と思しき跡が発掘された。平城京の西宮と同格クラスらしい。今年になって七重塔跡と見られる一辺20mの塔基壇が発見されている。
いずれにせよ天武系がオジャンになり男系が守られたことになるのだが、その遥か後年の今日では皇統の問題は解決されていない。退位の方向で議論が進むが、この問題はまさか投票で決めるわけにはいかない。
学者だ有識者だで議論すべきことなのかも正直分からない。
そんなときこそ秘かに陛下の御意向を聞くことはできないものか、忖度などという非礼ではなく。
「ソナー・メンバーズ・クラブのHPは ソナー・メンバーズ・クラブ
をクリックして下さい。」