Sonar Members Club No.36

月別: 2014年11月

吉例顔見世大歌舞伎(平成二十六年霜月)

2014 NOV 30 16:16:19 pm by 西 牟呂雄

『寿式三番叟』ことぶきしきさんばそう、と読みます。元々は人形浄瑠璃の演目だったのを歌舞伎に移した踊りですね。今回は高麗屋市川染五郎さんと音羽屋尾上松緑さんが見事に舞います。口上で三つの神社の名前が出るのですが、住吉大社・春日大社・伊勢神宮なんですね、これが。出雲贔屓の私としては、さもありなん、そうだろうな、といった所でしょうか。この鮮やかな踊りで『黒』の着物があんなに明るい印象だとは思いませんでしたね、新たな発見です。古典はこういうことがあって止められない。周りの衣装がキンキラの中にあって一際鮮やかな黒の美しいこと。そして早い動き、歌舞伎の舞は飛び上がって『バンッ』と踏む所が華ですな。
 
 しかし次の出し物『井伊大老』ははっきり言って面白くなかった。井伊大老が日本の行く末を案じて懊悩しながら桜田門外で討たれる話なんですが、科白が説教臭くてかなわない。別に歴史の勉強なんかしに来た訳でもないのに見栄もなければ外連もないなんて。あれでやっているのが播磨屋中村吉右衛門さんでなきゃ見られた物じゃない。作を見たらやはり戦後の本だった。こんなのは大河ドラマでやってくれよ。唯一良かったのは吉右衛門さんが言った「彦根に帰りたいなぁ。』の『ぁ。』ぐらいですかね。これやっぱり『ぁ』なんですよ。芸が光るところです。
 
IKYU1s[1]

 それでやっと高麗屋松本幸四郎さんの『熊谷戦記』になります。こちらは人情噺になっていてそれはそれで面白いのですが、源義経に音羽屋・尾上菊五郎さんと御贔屓の高島屋・市川左團次さんが石屋に化けている平宗清になって出てきます。左團次さんの重厚な脇が締まって芝居が進みます。この人SMが趣味だそうで、テレビでも公言しています。こういうところ頭一つ抜けてますね。
 最後に熊谷直実は僧形に身を固めて仏門入りするのですが(これは本当の史実)いかにも苦悩し身悶える演技を花道で続けます。この終わり方、幕を引いて花道の所でだけ演じて見せていました。しょうがないから三味線の人が一人出てきて立って合わせる。熊谷陣屋は見たことがなかったのですが、いつからこんな演出をしているのでしょう。

 ところでオヤジの意見で何だが、若いカブキファンの方に言っておきたい。こういった芝居を見にくるのに上着くらい羽織りなさい。着物の正装で見える綺麗どころも大勢いるのにGパンはないだろう。そういうのは日常でやってくれ。芝居見物はみんなが楽しみにしている『ハレ』の空間で『ケ』ではないんだよ。え?『ハレ』と『ケ』がどう違うかって?もういいや。僕もオッサンになったんだな。

九月大歌舞伎 千穐楽

猿之助四十八撰


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考えないヒント Ⅴ (これは陰謀では)

2014 NOV 28 19:19:49 pm by 西 牟呂雄

 『イラクとシリアにまたがるイスラーム国』『あまりの残虐性にアルカイーダも袂を分かった』『女性・子供を売買する』『欧米人を斬首し映像をネットで公開』『原油を闇商人に売り捌く』『首都をこしらえた』『通貨を発行』『欧米から志願兵続々』これら全て新聞・雑誌の見出しから採った。日本から参戦したい希望者までいるそうじゃないか。アサド政権(シリア)とも対立しその他の反体制勢力ともイラクともイランとも戦争している。ハマスもヒズボラもタリバンも蹴っ飛ばせ、の勢いでサイクス=ピコ秘密協定の破棄まで言い出した。かの秘密協定を潰したいのは分からんでもない、他所から来て勝手に国境を引いたのだ。
 それはそうとして、戦争の大義は単純な宗教対立じゃないだろう。あのバース党やビン・ラーディンが亡霊のように蘇った感じだ。ファールージャの攻防まで戻ってしまった。一体イスラム国は何と戦っているのか。後ろで糸を引いているのは誰だ。原油価格が下がってニンマリしている奴がいるはずだ。

 金利が上がることが俎上に上らなくなってもうどれ位経っただろうか。その間に『戦後最長の景気拡大』と持て囃された時期もあったにも関わらず、だ。ウルトラ逆張りに考えて国債の金利が上がることはもう当面ない!と発想を転換すれば黒田バズーカは100点満点。だが待てよ、金融緩和をしてもしなくても格差は広がる一方だったじゃないか。派遣村ってあったよな。我が逆転の発想で考えるに、ホワイト・カラーの休日が多すぎないか。ITだ何だと言ってみたところで物事の判断の生産性が上がった話は聞いたことが無い。

 いくら何でも東部ウクライナがあれでお咎めなしとはならないだろう。プーチンを本気で怒らせたのはどこのどいつだ。こっそりマレーシア航空機をやった奴はどこに行った。ウクライナの今の政府が清廉潔白かどうか、美人元大統領だって評判悪かったんだよ。ヨーロッパの中心部が実に怪しい。ひょっとしたらスコットランドの独立も誰かがけしかけたのように見えなくも無い。EUの方なんかボロが出まくって危ないじゃないか。100年前だったらとっくに戦争だぞ。火を付けて得をしたのはいったい誰なんだ。

 ついぞ聞かないがアラブの春はどうした。大騒ぎしてカダフィー大佐まで殺ったのにその後何か良くなったのかね。イラクだろうがアフガンだろうがバリバリやった上に『後は選挙でもしなさい。』じゃどうにもならんでしょう。モノには順序があるんだから。9.11があったからアメリカがプッツンするのも無理もないんだが。結果だけで言えば何のためにあんな所まで戦争しに行ったのか。よっぽどおいしい何かがあったとでも、石油なんかないがね。もう誰もアフガンには出ないだろう。因みにアフガンに手を出すとどこでも国ごとおかしくなってソ連なんか崩壊した。
 
 香港で学生を使って騒ぎを起こした黒幕は、共産党と何かの妥協をしたのだろうか。傘もテントも水も食い物も誰かが金出してるに違いない。あれだけの人数と期間だよ。追っ払うリスクとコストを計算して『やれ!』と言ったのは習近平か。或いはどこかで2~3人口無しにされてるのか。あのエリアだったら秘密結社くらいいくらでもあるだろう。もしかしてもう次にどこでやるか決めてたりして・・。中朝国境あたり大丈夫かいな。

 それで最近エイズの話を聞かないし、エボラも収束した訳じゃないだろう。世界中が飽きっぽいはずもなく苦労している人は沢山いるはずなのに、ニュースでさえグルメがどうしたこうしたばかりで日本は平和で結構な限り。選挙は真面目にやりますよ、はい。小保方さんなんか今頃どうしてるのか。あの人アメリカにでも行った方がいいだろうに。
 全然関係ないけどノーベル賞の中村って人、少し『怒り』とか言い過ぎでしょう。そんな話ばかりしてる時のインタヴューの顔が(写真では)下品に見えてますよ。メデタシメデタシ。

 僕はエンジニアではないけれど、福島フィフティーズを尊敬します。反原発はそうなんでしょうが、袋叩き状態には違和感があるね。彼等は今頃『どんなことがあっても安全な原発を作る。』と執念を燃やしているだろう。そう来なくっちゃ、地震はしょっちゅうあるのだから。福島第二も女川も安全だったじゃないか。福島は僕なんかのボランティアは邪魔になるだけだろう。いっそ老後は移住しようか。住めばボランティアとは言われない。

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考えないヒント

考えないヒント Ⅱ

考えないヒント Ⅲ (動物編)

考えないヒント Ⅳ (良く分からないが)


 

選挙期間中に予想される失言 

2014 NOV 27 19:19:09 pm by 西 牟呂雄

選挙期間中に予想される失言を今から予言してみよう。

A財務大臣
「あのね、国の借金なんかインフレが起きたらすーぐチャラになりますよ。ハイパーインフレなんかになったら使ったもん勝ちよ。」

K元総理(現野党)
「ですから、沖縄は独立した方がいいんです。」
H元総理(現野党・立候補せず)
「その通り。日本人のものじゃありません。尖閣も小笠原もです。トラスト・ミー。」

地方創生大臣
「キャンディーズで言えば、総理が蘭ちゃんで、わたくしがミキちゃん。野党はオーディションさえ、通らないのだ。」

E某野党幹事長
「革マル派の献金なんて全然根拠がありません。組合員の浄財ですよ。」

W党首(野党)
「みんなの党は解党して『ワシラの党』とします。イーグルスです。」

H市長(野党共同代表)
「おまえなぁ、勘違いすんな。大阪で勝手なこと言うな。都構想って簡単に言うな、おまえ。みやこ構想なんだよ。」

O党首(野党)
「一人になっても政党助成金を貰うちゅうことだ。『反原発党』でも何でもいい。えっと今党名何だっけ。」

R参議院議員(野党)
「参議院じゃだめなんです!衆議院じゃなきゃいや!」

N元総理
「どじょう党でいいじゃん。」

M前法務大臣
「あれはうちわじゃなくて下敷きです。どっちにしても大したことじゃないでしょう。そんなもんで買収される人いますか?」

元航空幕僚長
「中国や韓国が大反対してるそうじゃないですか。だったらそれは日本にとってはいいことなんでしょう。」

A総理
「定数削減なんて言っても一番反対するのは〇主党ですよ。比例復活を無くせば簡単ですけど党首や元総理が落ちちゃいますから。」

オレ
「石破新党でも作ったら?当選6回クラスはもう大臣のメはないですよ。あの人その昔一回トンヅラ決めてるから又やってもアリじゃね?」

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懐かしいオモチャ

2014 NOV 25 20:20:33 pm by 西 牟呂雄

 僕は子供の頃(小学校の低学年としよう)親から与えられた『熊のプーさん』の本が好きで、その縫いぐるみ人形をせがんで買ってもらって持っていた。しかし本の挿絵にあったようなモノがなかったらしく、実物の僕のプーさんは酷く不細工で周りからバカにされたことを覚えている。
 そういうモノをとっくに愛でなくなった頃にスヌーピーを見て、チビの頃にこれがあればなぁと思った。

 銀行の貯金箱人形というのもあった。コイン(主に10円玉か)を入れて一杯になると下の蓋を開けて取り出すやつ。当時は銀行の数も今より多かったから色んなバージョンがあって、最もお気に入りだったのはどこだか忘れたが桃太郎シリーズだった。桃太郎と犬・猿・雉を2セット持っていた。勿論オニもいて、これは赤鬼と青鬼がちゃんとあった。愛嬌のある顔のこいつらを整列させて将棋のような(当時将棋は知らなかったが)ゲームを考え出して一人で遊んだ。

 僕のいた下町は銭湯の文化だったからお風呂屋さんで遊ぶオモチャも一杯あったが、大体が金魚のできそこない程度のモノで壊れるのも早かった。
 話は変わるが下町の銭湯には彫り物を入れているオッチャンがいっぱいいて、日常の光景だった。別にヤクザじゃなく、とび職(建設作業員だけじゃなくていわゆる町鳶)が入れたのだ。そういう人たちは町奴だからチビだった僕は不動明王(だったかな)や鯉の滝登りなんかの背中をなぞらせてもらった。刺青がヤクザ専門になったのは昭和40年代位からかと思うが。

 ビー玉は砂場に山をこしらえて上から固め、少し水をかけて締まらせてから少し溝を掘り、たくさんの玉を転がしていると道ができる。しばらくやって玉道が広がってくると、一緒に遊んでいる子とどれが一番早く転がり落ちてくるか競争して遊んだ。しかしビー玉がどこかへ行っちゃって『なくなっちゃったよ~。』と言って泣き出すのがいたもんだった。そしてそういう砂場には少し年上の(と言っても小学校5年が上限では、要するに10歳以下)オニーチャンがいてその場を仕切っていた。今から考えればオニーチャンは多分同学年の中ではデキが悪くて仲間から相手にされなくてガキを構っていたのではなかろうか。

 子供の頃を思い出していたら、カエルの絵柄が好きだったことに思い至った。薬のマスコット(だったと思う)のカエルが気に入って自分でお絵かきする時はいつも描いていた。クレヨンの緑と青ばかり減って困った記憶がある。高学年になったころは今で言うサイン代わりに名前の下に描いた。一枚も残っていないのは少し残念だ。

 メンコはあまり主流ではなかったが一部には愛好家がいた。しかし僕は負けて取られるばかりなので夢中にはなっていない。これは後にパチンコに凝らなかった事に通ずる。
 神田明神の境内で大勢のガキが周りを取り囲んでいて、真ん中で二人のガキ大将が対決している。芳林小学校と淡路小学校の対決だ。この時僕は学童前だったが近所のイサムちゃんに誘われて明神様まで見に行った。これメンコの勝負だった。下町はどこでも遊ぶ所と働く所と住む所が同じだからよそ者が入るのをいやがる。大人がそうだからガキまで縄張り意識が強く、隣接した小学校は大体仲が悪かった。僕から見れば大男の六年生同士がメンコで戦っていたが途中で『ズルした。』『いや、してない。』のようなモメがはじまりワーッとつかみ合いになって終わった。これは双方負けたとなると引っ込みがつかなくなるため、予定調和的に収束させるためのノウハウだったんじゃないか。ガキはわざわざ大勢大人の居る前でやる。誰かが止めに入る前提だ。だから中学の番長対決は邪魔の入らないようなところを選んでやるようになる。

 不思議とプラモデルとか車のような動くオモチャは好まなかった。理由は不器用だったからだ。そのくせセッカチで思うような形ができなくなると異常な破壊衝動に駆られた。結果的にあまり高いオモチャには触れずに育った。

 忘れてはならないのは『銀玉鉄砲』で、これは一世を風靡した。今のサバイバル・ゲームで使う物より遥かにチャチなバネ式のピストルでゴーグルもしないで二手に分かれて撃ち合う。だが両方でバシバシ撃ち合うだけで勝ち負けに明確なルールが存在せず、しばらくやっていると弾切れになって皆が拾い出すのでちゃんとした競技にはならなかったように思われる。小学生低学年まで盛んにやったか。

 地球ゴマというのもまだあるのだろうか。リングの仲に回転盤が入っていて、バランスを取り易くいろいろな動きができる触れ込みだった。しかしながら僕も周りもそんなことができた奴は一人もいない。あれは大人が遊ぶもんだったのだな、きっと。

 この後引っ越しをして下町から四ッ谷の方に移動する。都会の真ん中の小学校は校庭で野球ができるような広さはない上、コンクリートだ。しょうがないからゴム・ボールを使って正方形の小コートを四つくっつけたテニスまがいのゲームが大流行し、その後はボールを使う野球遊びばかりになっていった。

 ズーッと時間が過ぎて40台になった頃。再開発されてビルだらけになった生家のあたりを歩いた。仕事の関係で秋葉原の近くまで行ったのだ。電気街ばかりが有名だが、立派な高層ビルのところはその昔神田市場で、電気街は小さいバッタ屋が軒を連ねていたもんだった。メイド喫茶なんて無論ない。青物の仲買は午前中しか仕事しないから、午後からはヒマになったアンチャン達が大勢いて、まぁあまり品のいい場所じゃなかった。僕の通った幼稚園はその側にあって、もうとっくに無いだろうとあきらめつつ行って見た。
 すると何と、まだあるではないか。こんな事務所だらけの場所で、と思ったがどうも近隣にはマンションもたくさんあり、そこの子供達が通うことで成り立っているらしい。すっかり嬉しくなって中庭を覗いていると、その姿があまりに非日常だったのか、オバサンが寄ってきて『何か御用ですか。』と聞くではないか。いや、別に怪しい者じゃありません、実は私今から30年以上前にここに通ってたんですよ、あの通称メガネ・トンネルが出来た時にいました、などと自己紹介をした。すると僕の顔を繁々とみていたオバサンが突如『あんたケンチャンなの!』と素っ頓狂な声を出した。ついでに苗字まで思い出してくれた。しかし嬉しいよりも、その頃の手の付けられないガキ振りが脳裏に浮かんでとても恥ずかしかった。

 それから20年も経ったのだからオバサンもご存命かどうか。嗚呼。

古い記憶

狼少年ケン

車というオモチャ

 

欲しかったオモチャ


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グッド・オールド・バンド (ビーチ・ボーイズ)

2014 NOV 23 20:20:11 pm by 西 牟呂雄

CSのチャンネルを見ていたら『ビーチ・ボーイズ結成50周年記念』のタイトルが目に留まり思わず見てしまった。ウィルソン兄弟も二人死んで残るはブライアンだけなのだが、見始めるとマイク・ラヴやアル・ジャーディンがジイ様になってそのまま出てきたのにはビックリした。曲は例によってのビーチ・サウンドというかおなじみのノリで、得意のファルセット・ハーモニーが美しい。今ではそれなりのファッションだが、その昔はそろいの赤いストライプのボタン・ダウンを着たりしていたっけ。この人達とかベンチャーズになるともう他のスタイルの曲はできないのじゃないか、やってもヘタだったりして。ローリングストーンズを見ていてもそう感じる。キース・リチャードなんかよそのバックをやったら外してしまいそう。例のオープンGチューニングにしてもストーンズ以外ではチョッとね。
 大ヒットしたサーフィンUSAは何故か演奏されなかったのはどうしたことか。
 3兄弟のうち二人が亡くなるのはビージーズのギブ兄弟もそうだったかな。考えて見るとジャクソン5とかノーランズとか昔は子沢山のバンドが結構あって、少子化も世界的な流れなんでしょうかね。
 結成50年は長い長い時間だ。デニスとカールは2000年になる前に亡くなったし、現在もリユニオン以外の活動は分裂している。そう言えばローリング・ストーンズだってブライアン・ジョーンズは死に、ビル・ワイマンやミック・テイラーは脱退した。一時は『六つ目のストーン』とも言われたビリー・プレストンもメンバー入りしなかったが、この時はキースが才能を妬んでイジワルしたという出所不明の噂が立った。ビリーはビートルズの最後のライヴ『ルーフ・トップ・コンサート』でも切れ味のいいピアノを弾いていたが5~6年前に死んでしまった。

 日本で50年近く継続したのは、時々同窓会みたいに出て来るワイルドワンズとタイガースを見るくらいか。彼らもたまに集まって、のノリなので途中がブランクになっている。
 だいぶ前にゴールデン・カップスの再結成記念ドキュメンタリーを見た。メンバーが別のもう一人を紹介していくのだが『あの人薬物中毒でしょ。』『不良だよ。不良。』とか『酒さえ飲まなきゃねえ。』といった話ばかりでさすがにモノホンは違うなと感心した。ファースト・アルバムに参加していたケネス伊藤は志願してヴェトナムに従軍したそうだ。
 そうか、グループ・サウンズ以前には言う所のバンドそのものが日本にそんなに無かったのか・・・。子供の頃コミカル・ソングで大流行りしたクレージーキャッツなんか面白いんだがバンドとしての活動は早くに止めている。ダニー飯田とパラダイス・キング、バッキー白方とアロハ・ハワイアンズ、和田弘とマヒナスターズ、こんな名前がかすかに残るがいまだにやっているのだろうか。
 そのうち現役で50周年を迎えられるのはサザンかな。
 
 何れにせよ半世紀を共にして、しかも同じレパートリーをやり続けることには敬意を表したい。自身の半世紀ということになるとあまりに一貫性が無いため何かを極めることにはなってない。ズーッと同じスタイルで在り続けてはいないわけだ。
 僕がやっていたバンドなんか(四つか五つ。一回しかステージに出なかったのも入れるともっと)チリヂリバラバラで消息が分かるのは3人しかいない。みんなどこへ行ったのだろう、別に会いたくもないが。

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更に追加 解散・選挙 

2014 NOV 20 20:20:47 pm by 西 牟呂雄

 早速駅前で街頭演説が始まった。僕の選挙区のこの人は今一生懸命10年くらい前に活躍したことを喋っている。さすがに政治家だから、オチはその大活躍のノリが今であればどう生きてくるか、と話をまとめるようだ。その後喋る内容はほとんど想像がついたので足は止めなかった。必死なことは分かったよ、でももうバレちゃったからな、あんたのキャラ。
 SMCは極端な政治的主張及びそれに伴う勧誘はご法度なので、僕が誰を支援するか、どの政策を支持するか、は控えておきますが。争点はアベノミクスの成否、消費税実施、集団的自衛権、原発等に意見が交わされるのだろう。
 しかし個別の選挙区で見てしまえば、単に好き嫌いやケンカの延長みたいな所も散見され、あれじゃ投票するほうも困るだろうな、という感無きにしも非ず。例えば大阪。衆議院議員選挙なのに『大阪都構想』がいいか悪いかをがなりたてられても。公明党は消費税増税には3党合意で賛成してるし与党でしょ。これでは維新と公明の意地の選挙で、国政レベルの論点は無いんじゃないの。
 それから沖縄。知事選の結果見りゃ保守系候補は『普天間が恒久化しないようにこれから考えましょう。』というに決まっているので演説聞く必要がなくなってしまう。沖縄の特殊性は到底短い演説で語り尽くせるもんじゃないので『基地反対』ですら争点になりにくい。基本はみんな反対に決まっているからだ。
 凄いのは喜寿庵のある山梨。ここは区割りが変わって一つ減るところに持ってきて現役が5人もいる。比例復活したり参議院に回ってみたり。そしてそれがみんな保守系なのだ。その顔ぶれも世襲あり、松下政経塾あり、官僚出身あり。噂は誰と誰がケンカした、ジミンが公認でモメたからどうした、参議院のドンがこう言った、といった類の話ばかり。それはそれで面白いんですけどね。
 風のある選挙は後になって見ると何だったのか、と考えさせられることが多い。マドンナ旋風というのもあった。小泉チルドレンとか小沢チルドレンとか今では無残なもんでしょう。タレントになっちゃったタイゾーなんて人や大仁田なんかもねぇ。
 やたらとできた『新党 ナニナニ』といったネーミングももはや古い。
 多少不謹慎ではあるが、田母上閣下と西村眞悟が始めた太陽の党に地域ブロックの比例専門に候補を立てたらどうなるか、考えてみた。

北海道  鈴木宗雄の娘(新党大地と相乗り)
東北   田母上閣下
北陸信越 馳浩 (自民から鞍替え)
北関東  小渕優子(自民党離党)
南関東  石原慎太郎(次世代の党と相乗り)
東海   イチロー(引退させる)
近畿   西村眞悟
中国   阿川佐和子(阿川家は広島出身)
四国   草薙強(SMAP引退)
九州・沖縄 福山雅治 (だめなら武田鉄矢)

どうですこのメンバー。セッセと考えたんだけど現職の議員と比べても見劣りしないし仲間割れしそうもなくていいんじゃないか。その昔参議院選挙でスプーツ平和党に投票したことがあったな。アントニオ猪木の『自民党には卍固め。増税には延髄蹴り』に舞い上がって一票を投じてしまった。
 みなさん、投票はマジメにやりましょうね。

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もう一日追加 やったもん勝ち 解散・選挙 

2014 NOV 17 23:23:14 pm by 西 牟呂雄

 選挙をやるそうだ。もはや消費税延期は織り込み済みとして、安倍自民党が勝つのも自明とすると、選挙およびその後の国会では面白い事は何だろうか。
1.橋下徹が出馬して当選するが、江田とすぐにケンカしてまたまた空中分解する。原因は党首討論にどちらが出るか、だったらしい。
2.渡辺喜美と亀井静香は恥を忍んで自民党に復党する。社民党・生活の党は衆議院議員が激減して政党助成金がもらえなくなる。小沢一郎の行き先はなしで無所属。みんなの党は解党後民主に。
3.次世代の党もベテランが落ちて本当に次世代が出て来るがみんな65歳以上。東北ブロックで比例当選した田母上俊男が院内会派を組む。
4.菅直人は比例でも復活できない。しかし相変わらず党大会に出てきては海江田をいじめて代表は岡田克也になる。
5.民間の女性が閣僚になる。議員では危ないとの判断。ちなみに辞任した女大臣のどちらかが落ちる。
6.中・韓が気持ち悪いくらいスリ寄ってくる。
7.年明けTPPが妥結する。
8.株価も1万8千円を飛び越える。
9.安倍総理は来年も靖国参拝をしない。
10.普天間は辺野古に移転させることでこれから新知事と2年協議。すぐに旗は降ろせない。

 でもって来年のワシ等の生活は結構なモノになるという筋立てなのだが、1.の橋下徹の当選は失言一発でかなり危ういことになりゃせんか。この間の在特会との画像を見るとあれでは早口の高校生のガンの飛ばし合いに毛が生えた程度でかなりエグい。特に『オマエナー、政治家に言えよ!立候補しろよ!』は馬脚を現したというかナメてたというか、相手が相手なんだからマスコミ公開なら絵コンテくらい準備してくれよ。
 先のことは分からないというものの、安部総理がオリンピックまでやるのに死角はないか。余程の天災・突発的戦争・自身の健康を除けば、次を狙って後の無くなった手負い獅子が牙を剝くのは誰か。後5~6年も先まで続いたらお呼びでなくなる政治家は我慢できなくなるはずだ。イキのいい一時の橋下みたいなのはどこかにいないか。
 石原慎太郎は古すぎる。その息子は仕事をしないので有名。
 小泉進次郎、いくら何でも若すぎて未知数が大きすぎる。6年後に考えればよろしい。
 谷垣・麻生と色気を出すが『昔の名前で出ています』は安部で打ち止め。
 むしろ300議席の重みが遠心力となって、出世しそこないそうなハネ返りがツベコベ言って自民党を飛び出し、民主党も分裂させて前原誠司を担いだ”ひまわり党”でも造ったらどうかね。枝野と岡田はもういらん。昔小沢がよくやってた手だが、本人もうダメだから代わりに石破でも焚きつけて野田とくっつけるようなフィクサーはおらんか。

なんちゃって。あした直ぐ訂正してお詫びしたりして・・・。

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考えないヒント Ⅳ (良く分からないが)

2014 NOV 16 16:16:42 pm by 西 牟呂雄

気楽に生きるというのはじつに難しい。自分でそう思っている人間は非常に少なく、たまにそう自称する人はそれが滑稽なほどそう見えず、例外なく嫌われ者なことを見れば分かる。

自由人というのは、その建前から他人の自由にも寛容であることが求められる。即ち自由人ばかりの社会は初めから成り立たないのだ。

果たして脳内の化学反応だけが人間の「心」を造るものだろうか。喜ぶと悲しむの二つに関して言えば、ある程度鍛えられる、あるいは人間の営みを通じてしか投影されないのではないか。

金というものは貯めただけでは色はつかない。上品も下品もない。だがケチらずに途方も無く凝ると上品になる。物として残るからだ。
 何も残らないほど何に使うと言うのか。バクチ?酒?女(男)?行為だけにそんなに使えない。のめりこんで借金になるとみっともない結果になり、それは上品な金使いとは言わない。以前に聞いたある芸人の科白に『ウチのお父さん、資産残さないで子孫ばかり残しました』天晴れなり。

ある鉄道事故で『15万人の通勤に影響が出ました。』等と報道することがある。その電車に乗っていた人は全員『今日の私はツイてない。』と思うだろう。しかし15万人の不運など星占いでも四柱推命でも当てることはありえない。ある日人身事故のために電車が大混雑になったが、私は返って『なんてツイているんだろう』と思って見ることにした。この中には遅れることの許されない会議に行く為にヤキモキしている人や予定の飛行機に間に合わなくなりそうな人、更にはトイレを我慢している人などがいるだろう、それに比べてオレは何てツイているのだろうと。それだけで一日中気分は良くなった。まぁそれだけなのだが。

未来の老人の居心地は絶対に明るいものになる予感がしている。アベノミクスの出口戦略が言われているが、そんなモノは考えずに済むのではないか。このまま行くだけで先行しているEU・中国のどちらかが先におかしくなるに決まっている。その時は戦争が起きてしまい、その間高みの見物をしていればいい。現に東ヨーロッパで戦闘が続いているではないか(ウクライナはヨーロッパ)。

無宗教の私は、それでもYMCAの牧師さんの話を聞いたり、禅宗の坊さんの説法を聞いたことぐらいある。一回イスラム教徒にもなってみたいが、どこかに酒を飲んでいいというイスラムの流派はないだろうか。

歴史は繰り返す、というのは嘘だ。歴史に学ばないことは愚か者だ、が正しい。負ける戦争を何回もするような話。

先日集団的自衛権に反対のさる人と話していて『大陸弾道ミサイルが5~6発も打ち込まれたらこれを撃ち落すのは国際的にも当たり前の話だ。』と言ったところ『その後自衛隊が発射国に侵略したらどうするのか。』と反論された。そんなことが在り得ると本気で思っているようなのでバカじゃないかと心配になった。

移民が来たくなる国というのはいい国ではなかろうか。私は移民したい国はないが。

イスラム国というバーチャル国家は制圧した油田の石油をスポット価格で安売りしているそうだ。これ、アメリカを本気にさせるに十分な理由になる。石油が下落するとロシアも中東の産油国も全部敵に回す。

私が子供の頃、今で言う『イジメ』は凄まじかった。中学においてそれはピークを迎え、より悪質になっていった。その割りに登校拒否とか自殺とかは(運良く)聞いたことも無い。高校になって真面目な奴が自殺したことはあったが、噂では恐ろしく高尚な悩みを抱えていたらしく、私はバカでよかったと思った。

長い孤独の末に偶然話した人に対して警戒感を抱くのか、それとも親近感を抱くのか。人が恋しくなるほど(恋愛の話ではない)孤独になったことがない。そう言えば小倉に単身赴任していた頃、雑踏の中に居た時により強い孤独感を感じたものだった。

作法が分からないと恥を掻く、というのは文化の成熟と思う。日本というのは今日世界で最も成熟している国家と考えるが、恥を恥と感じない政治家や新聞はどういうつもりか。しかも未だにそういう人物に投票しそういう新聞を買うのは『表舞台に出してもっと恥をかかせてやろう。』とか『もっとアラ探しをしてやろう。』と考えているのか。

感性を鍛えるとは、何となく『わぁ!』と感動する機会を増やすことではないか。極限状況に身を置くということは普通の一般人には過酷すぎるのでは。戦争から帰ってきて人格が高尚になった兵士など聞いたことが無い。

明るい、楽しい、嬉しい、の反対は、暗い、つまらない、悲しい、ではなく、怖い、つらい、むごい、では。

平和ボケの反対は戦争マニアか、違うだろ。

だいぶ前だが『僕はあなたのように本能だけで生きてるんじゃない。』と言われたが、何のことかわからなかった。

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考えないヒント

考えないヒント Ⅱ

考えないヒント Ⅲ (動物編)

考えないヒント Ⅴ (これは陰謀では)

実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その3)

2014 NOV 13 19:19:41 pm by 西 牟呂雄

 もう年の暮れだ。寒くなってきた。オレはもう一月以上ここで主夫をやっている。ジイチャンはやっぱりボケが進んでいて、どうやら何を育てる訳でもないのに畑を耕すのが仕事だと思い込んでいて毎日セッセとやっている。その間オレは掃除と洗濯をして週に二回買出しに行く。オレの呼び名がアキラの日とハルオの日だった。きのうがハルオの日だったので、又酒その他買出しに行き、ガソリンや洗剤まで買い込んだ。しかしこういう暮らしは食い物以外には金がかからないので、酒代がもっとも大きい支出だ。毎日テレビを見ながら夕方から酒を飲むのだが、ジイチャンは焼酎二杯で酔っ払って寝てしまい、だからほとんどオレが飲んでるようなものだ。オレは元々着替えなんて持ってないから、寒いのでジイチャンの(だと思う)半纏みたいなものを借りたり、野良着のようなセーターを着たりして過ごしている。一度だけ民生委員とかいうのが訪ねて来たのと電話が一本あった。その電話にはジイチャンが出たが、何だか突然『うるさい。ワシは大丈夫だ。』と怒り出して切ってしまった。あれは家族じゃなかったか。そうだとすればボケが進んでいることを心配しないのだろうか。

 あと二日で大晦日、きょうのオレはヒトシになっている。例によって掃除洗濯に精を出していると、表に車が泊まった気配がした。『あら、なんで車があるのかしら。』と喋り声が聞こえてきて、玄関がガラガラ開けられた。マズいことにオレが這いつくばって雑巾がけをしている時で、女の人と目が合った。相当ビックリされた。
「あの!どちらの方ですか!」
「あー、ワタシ斉藤さんに頼まれて掃除と洗濯にお助けに来てるんですが・・・。」
「エッ、おとうさんったらそんなことしてたの。どうも申し訳ありません。おとうさんはどこですか。」
「畑に行ってますよ。」
そうかこのオバサンは娘なのか。しかし『申し訳ありません』等と口では言っているがオレを見る目つきは実に胡散臭そうな視線だった。そりゃそうだろう。実家に帰ってみたら見たことも無いオッサンが何故だか雑巾がけをしてりゃ誰でも驚く。オバサンは畑に呼びに行ったのか、出て行った。
 ところが、その直後に家の前で猛烈な怒鳴りあいが聞こえてきた。オバサンとジイチャンが喧嘩を始めたのだ。
「だっておとうさん、もうろくが進んでるじゃないの!あんなの家に入れて!」
「うるさい!ヒトシには頼んで来てもらってるんだ!ワシはどこへも行かんぞ!」
「そんなこと言ってもやって行けないでしょう。」
「ヒトシは泊り込みでやってくれてるんだ!」
「なんですって!赤の他人を泊まらせているの!」
オイオイ、随分ヤバい話じゃないか。暫くいるのにジイチャン娘がいるなんて一回も言わなかったじゃないか。息子だ甥だ、あと籠原の知り合いに・・・。
 これは恐ろしいことに巻き込まれないうちにオサラバしたほうがお互いの為じゃないだろうか。たった一つの荷物の旅行カバンを出してきて荷作りした(何にも無いに等しいが)。するとそこへ怒鳴り合っていたジイチャンとオバサンが上がってきた。ジイチャンは荷物をまとめているオレを見て
「ヒトシ!なにやってんだ。」
と大声を出した。
「イヤ、何かいちゃまずいんじゃないの。」
オバサンはオレを疑わしそうに見て聞いてきた。
「あなた一体誰なんです?」
「ヒトシと言います。」
「どこのヒトシさんなんですか。」
ハッとした。オレはもう何日も自分の名前を使っておらず、ジイチャンの呼びかけにヘイヘイと返事をするばかりだったから、名乗りを上げるときの本名を一瞬忘れていた。マズいぞ、マズい。
「イヤー、実は通りすがりの者なんですけど、畑を少し手伝ったのが縁でチョットおとうさんの面倒を見たんです。怪しい者じゃないんですが(十分怪しいか)。」
「あたしはこの斉藤の娘です。ウチのお父さんもモウロクしてますんで、時々変ですからあんまり」
「うるさい!モウロクはしてるがボケてはおらんぞ!ちゃんとヒトシと二人で暮らしてる!」
「ヒトシさんは何をしている人なんですか。」
「ハァー、余生をボランティアに・・・・。その・・・。」
「どうせ畑と言っても遊んでるようなものですし、もうここを引き払ってお父さんにも一緒に住んでもらおうと思ってるんです。」
「いやだ!」
びっくりするような大声だった。ジイチャンの叫び声だった。
「そんなこと言ったっていつまでも一人じゃ困るでしょ!酔っ払ってどうにかなっちゃったらどうなると思ってるの。ウチの人もいいって言ってくれてるんだから。それともこのヒトシって人に騙されてるんじゃないでしょうね。」
「ちょっと待ってくれ。オレは何にもしてないぞ!言われたとおりにしてるだけだ。第一騙して何を持って行けってんだ。」
「本当かしら。」
「うるさーい!もう帰れ!出てけ!」
「あーそうですか。せっかく一緒に住もうって言ってやったのに。」
「じょうだんじゃねぇ。誰が住むか。ここがワシのウチだー!」

結局オバサンは出て行った。オレは為す術もなく参った。
「さぁて、ヒトシ。焼酎でもやるか。」
「エッ、うん。まぁ。」
早速一緒に飲みだすのだがいつもよりジイチャンもオレもペースが速い。速い上に盛り上がらない。
「なぁジイチャン、家族がいるんだろ(ガブッ)。」
「いや、いないよ(ゴクリ)。」
「でも昼間のオバサン自分は娘だって言ってたぜ(ガブガブ)。そうなんだろ。」
「いや、違うな(ズルッ)。」
「でもなあ、昼間はジイチャンいきなり怒り出したけど、モノには潮時ってもんもあるぜ(ガブリ)。」
「ワシは知らん。はよう飲め(ジュルッ)。」
「ジイチャンって幾つなんだ。」
「でもアンタが来てくれて楽しかったよ。」
ジイチャンはもう半分眠そうになっている。しょうがないから布団を敷いてやった。今日オレが干してやった。
「タノシイって、そりゃ毎日飲んで楽しいか。」
「ワシも久しぶりに仕事に身が入ったよ。」
「ガハハ、仕事ったって・・・。まっいいか。」
待てよ、潮時。オレもいつまでもここには居られないだろう。昼間のオバサンだって今頃大騒ぎをしているに違いない。まさかとは思うが、なにかあったらオレが疑われるのは間違いない。考えて見ればこの界隈でオレの本名を知っている人はいないじゃないか。不安になって思わず聞いた。
「オレは誰だっけ。」
「楽しかったよ。」
ジイチャンは泣いていた。これだけボケが入っても、泣くという感情表現ができる内は立派な人間であることに変わりはない。二人でガバガバ飲みながら、ジイチャンもオレも別れの時が来たことを悟ったのだ。
「楽しかったよ。ヒーン、ヒーン。」
と言いながらジイチャンは寝てしまった。明日の朝早く、声をかけずにオレは出て行こう。それだけのことだ。さよならジイチャン。オレも楽しかった(と思う)。

ー15年後ー

 ところで、オレはなんという名前だったのだろう。もう誰も声をかけてこなくなったので名前で呼ばれることが長いことない。ここに連れてこられて身の回りの面倒を見てもらっているのだが、来た時には何も持っていなかった。そしてずっと誰かを待っている気がしているのだが。ずっと昔、そう15年くらい前に、今では思い出せない場所で見知らぬ年上の人と仲良く楽しく暮らした記憶がかすかにある。 
 アレ!むこうから来るのは誰だろう。待てよ、オレじゃないのか?

おしまい

実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その1)

実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その2)


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実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その2)

2014 NOV 11 20:20:40 pm by 西 牟呂雄

 きょうは朝から雨が降っている。ジイチャンとの不思議な共同生活が10日も続いている。その間ジイチャンがオレを呼ぶ名前はユズル⇒タケシ⇒アキラ⇒ユタカ⇒ヒトシ⇒ツヨシ⇒ハルオと毎日変わった。どうなることかと思っていたらそれ以上は増えず、不思議なもので一週間経つとまたこれらのどれかに戻る。知り合いや親戚の甥っ子の名前の様だが、過去の話を全くしないので一体何の素性なのかは分からない。
 ジイチャンの所にはどこかから分けてもらったのか、自分で食べる分の米だけはたんまりあるようで、朝起きるともう米を研いで炊飯器でその日のメシを炊いている。漬物と海苔くらいで朝メシを済ます頃に、その日の呼び名で呼ぶ。きょうはアキラだった。
「なあ、アキラ。きょうは雨だから畑ができん。郵便局に行かないか。」
これはすぐ気が付いたのだが、ジイチャンは畑を耕すだけで何かを植えるとか種をまくようなことはやっていないのだ。やり方を忘れてしまったのか、秋口から耕して春に備えているのか。しかし、いつもオレにエンジンを掛けさせ、同じ所を2往復するだけだ。
「郵便局って手紙でも出すのかい。」
「アキラは何にもしらねーな。年金が振り込まれてるんだよ。取りに行くんだ。」
「ジイチャン年金払ってたのか。えれーな。」
 これがボケだったら門前払いされるだろうと思いながら、ジイチャンを車にのせた。すると角に来れば『そこ、右行ってまっすぐ。』とか『左に寄せて。』と的確な指示。嘗ては運転していたのだろう。村の郵便局に着いた。ジイチャンはヒョコヒョコ入っていった。
 しばらく車で待っていると、ジイチャンは封筒を持って、局員に付き添われて出てきた。本当に年金を引き出してたのだ。ところがその局員が車まで一緒に来てオレの顔を覗き込むのだ。
「アキラさんですか?」
「あー、はい。」
今から考えればこの一瞬の躊躇はマズかった。
「あなたはこの斉藤さんの何ですか?」
「斉藤(今まで名前を知らなかった)!あぁ、介護です。」
「かいご?斉藤さん介護申請してるんですか?」
「オニーチャン、アキラはボランティアでやってくれてんだ。しんぺーないって。」
「アッそうなんですか・・・。それじゃ斉藤さんお気をつけて。」
局員は実に怪しげな視線を送って来たが、無視して車を出した。
「アキラ、おめーダメだな。あんなときにオドオドしたら疑われるだろ。ちゃんと東京にいる甥のアキラです、って言わなくちゃ。」
「・・・・うん(そんな話初めて聞いた)。・・・・。それはいいけどちょっとコンビニ寄って少し栄養のあるもんと焼酎でも買おうよ。」
「あーいいよ。こっちだ。」
ジイチャンは慣れた感じで方向を指示する。すると村外れにちゃんとそれらしいコンビニがあった。ジイチャンは焼酎パックを5本買い、オレは缶ビールやコロッケ、カップ麺、野菜パックを買った。ほとんど漬物とメシばかり食べていたので肉が食いたかったからハムとチーズも買った。結構な量になったら、ジイチャンが払おうとするではないか。
「オイオイ、ジイチャン。金はオレが払うよ。タダで泊まってんだから。」
「なーにが、アキラ!きょうは金いっぱい持ってんだから。」
万札を出してお釣りを貰っている。計算はできるんだ。気になるので車の中で聞いて見た。
「なぁ、ジイチャン。普段は買い物なんかどうしてるんだ。」
「エッ、いつもアキラが乗せてってくれるじゃねーか。」
ダメだこりゃ。
 その日はジイチャンが仕事だと思ってる耕運機の往復はアメでできないから(本気を出せばできるだろうが)オレは日中ズーッと掃除をした。風呂もトイレもだ。それで夕方から又焼酎だ。久しぶりのビールが胃に染みた。

「朝だよー。」
の声で起こされた。八時か。
「おはよー、ジイチャン。きょうはオレ誰なんだ。」
「トボケるでない。まだボケてねー。ユタカだろ。わーかってんだから。」
「はいはい。」
「ワシはちょっと畑行って来るからメシ食ってろ。」
きょうは見事な晴れ、初冬だからインディアン・サマーのようだ。そのせいかジイチャンは張り切って出て行ったので、オレはメシを食い一服し、布団を干して洗濯機を回した。昔は大家族だったんだろう、布団は沢山あって長いこと使わなかったようだ。何か布団がかわいそうな気がして片っ端から引きずり出してみんな縁側に並べて干した。
「斉藤さーん。ゴメン下さい。」
オヤ、誰か来たのか。オレしかいない。
「はい。斎藤のジイチャンは畑に出てますが。」
「あなた、どなたですか。」
「アッワタシ東京の甥のユタカですが。」
「あら、甥子さんが東京にいるなんて聞いてないですよ。きのう郵便局に斎藤さんと来た人ですよね。」
「あれは僕じゃありません。斎藤さんの知り合いのアキラ(オレだけど)って人ですよ。」
「別の人ですか。郵便局が『見たことの無い怪しいやつと斎藤さんがお金を下ろして行った。』って通報があったんできたんですがね。あたし民生委員なんです。」
「それは大丈夫でしょう。あいつは(オレのことだけど)大丈夫です。あ、ジイチャン帰って来た。ジイチャン、この人アキラ(くどいようだがオレのことだ)のこと怪しいやつだってさ。」
「アキラ、そりゃ見た目はマトモではなーいがね。」
「そうかい、普通だろ(だってオレの事なんだぞ)。」
「いや、あれは確かにヤバい所もある。ところでユタカ、耕運機が壊れてんだが、チョット見てくれ。」
「あーいいよ。じゃ民生委員さん、大丈夫ですから。」
「はい、斎藤さん少しおかしいときもあるから悪いサギにでも合ってないか心配で来たんです。こんな親切な甥子さんがいるなら・・。でももう10年以上ひとりだったけど。」
オバサンは首を振りながら出て行った。あの郵便局員の奴、オレをサギとでも思ったのか。ジイチャンと畑に行って、また直ぐ掛かるエンジンを掛けてやった。

つづく

実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その1)

実験ショート小説 アルツハルマゲドン Ⅱ(その3)


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