株式道場―百年安心年金の怪ー
2014 JUN 3 23:23:43 pm by 東 賢太郎

僕は年金会計の専門家ではないので、年金の所得代替率が2009年時点で50.1%しかなかったことの是非を検証することはできません。それはその数値が今後の我が国の実質経済成長率、労働分配率、出生率など種々の前提条件をどう仮定するかに依存するからです。
現状でわかっているデータは年金給付総額49.8兆円であり、年金保険料が30.2兆円、国からの財政支出が12.9兆円です。ということは、足りない 6.7兆円は積立金が取り崩されているということです。消費増税分の3%でもそれに足りません。それを補うには①さらなる増税②保険料徴収期間の延長③給付開始年齢の引き上げ、以外に策があるとは思えません。
ところが④があるようなのです。それは年金の運用利回りを100年間にわたって4.2%にすることです。政府はそう言っています。
一応30年金融証券の世界で飯を食ってきた人間として書きます。どうせつくならもう少しマシな嘘をつきなさいよということです。
皆さま、銀行預金や国債は絶対に安全と思っておられますか?政府が経済成長率や日経ダウや年金運用利回りを押し上げたり鶴の一声で決めたりできると思っておられるでしょうか?自由主義経済でそんなことは100%あり得ません。
断言します。国債利回り(「リスクフリーレート」と呼びます)が10年で0.6%しかない国の通貨(「円」ですね)で、それを3.6%も上回る運用利回りを1世紀も継続できる人が現れたら、ジョージ・ソロスはおろか、ノーベル経済学賞学者はおろか、人類史に永遠に刻まれる奇跡をおこした全能の神として世界中に巨大神殿が建造されるでしょう。ブッダもキリストもアラーもその前にひれ伏すしかありません。それを正気で言う人の正気を心配しますし、我々金融業界はバカであると愚弄しているのではないかと憤りすら感じるのです。
円ベースでリスクフリーレートを3%上回る利回りを3年続けただけで「運用のプロ」として生きていけます。5年なら「運用をお願いしたい」というお金が黙って数百億円集まります。10年続けられたらイチロー並みの天才として世界プロフェッショナル運用業界の殿堂入りは確実です(そんな人はまだいません)。それを100年???笑うしかありません。
頭脳明晰な官僚がそれを知らないはずはありませんから、④は実はなくて③しかないのが真実だということを賢明な皆さまは覚悟されるべきなのです。だから「自分年金」を作って老後の安定を図るしかありません。何でもかんでも国におまかせできるという幻想は、政治家の票集めと官僚の仕事作りのためでしかないという大人の認識をお持ちになることです。
自分年金とは何か?老後の安心資金を「どう儲けるか」ではなく「どう確保するか」「どう守るか」ということがその意味です。僕はそういう立場でプロとアマのお客様両方から料金をいただいてアドヴァイスをすることを本業としています。SMCでは設立趣旨から株式市場全体のお話しだけにとどめ、個別銘柄の推奨のようなことは差し控えますが、申し上げたいことは非常に明確ですからぜひ文脈からそれを読み取っていただき自分年金作りのご判断のお役にたてていただければ幸いです。
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