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カテゴリー: 経済

今年の世界経済

2020 JAN 9 20:20:36 pm by 東 賢太郎

今年の世界経済は先読みが難しい。

世界の株式市場が確たる根拠に乏しいながらも高止まりしているのは超低金利環境が安定したからだ。しかしそれはデフレ環境蔓延の裏返しだから高止まりが永続する理由は何もない。デフレは先進国と中国の労働コストの裁定で先進国側から発生しつつあるが、裁定が終わると中国自身の首も絞める。

国内産業では農業、医療、教育に非効率が残るが投資対象として効率的でない。AIがあらゆる業種でドライバーであることは異論ないが、その浸食は既存産業を淘汰して大量の失業者を生むから全国民の幸福を贖うことにはならない。世界の生産性向上が限界的になると成長のドライバーは人口増加となり辺境(低開発国)に投資するしかなくなるが、それも地球規模で見れば裁定である。

裁定とは水が高低で流れることで、やがて止まる。すると成長はない。水が流れ込む低地が成長したと騒ぐだけでパイは大きくならない。地球人口はMAXで産業革命(の余波)による生産性増大は終焉したいま、成長という概念が無意味になりそれを追い求める資本主義も隘路に達したかもしれない。そしてゼロサムゲームはディバイドを押し進め、あらゆる局面、様相の社会不安を呼び起こす。

以上が総論だ。投資目的は「儲ける」ではなく「ロングタームの資産(購買力)保全」になる。地球全体のことだから2,3年で変わらないし米中関係、米国大統領選も大勢を覆すものではない。各論はどうか。安定的キャッシュフロー選好が進む。クレジットリスクとの見合いで優位性あるものに資金が集中する。それを確保して固め、残余リスクはベンチャー投資に充当というのが一計だ。

 

お金は自分で働いてくれる

2019 DEC 30 22:22:18 pm by 東 賢太郎

去年が大凶だっただけに、今年は後半が順調だつたのはありがたい。といって、何をがんばったわけでもない。マージャンでいうならたまたま「流れが良かった」のである。学生時代にヘタのツッパリでよく負けたが、高い手狙いで流れに竿さしてもダメだと悟って会社では負けないことを狙うようにしたら無敵になった。同じ手でゴルフも強くなり、その教訓から仕事も若い頃のように無理矢理なことはしないと決めたのだ。

投資というのは「お金に働いてもらうこと」である。お金は働いて自分で増えてくれる。ところが日本には「不労所得は良くないもの」という江戸時代から連綿と続く農村共同体の倫理観が根強くあって、株式投資などいかがわしいと思っている人が大半だ。実は不労所得がいかんというココロは「働かないと飯が食えんぞ」という戒めであって、だから民謡「会津磐梯山」に小原荘助さんが「朝寝朝酒朝湯が大好きでそれで身上潰した」と登場する。僕もこの歌で親父に「勉強しないとそうなるよ」と諭されたものだ。

しかし、お金も働けるとなると話は違う。いや、自分も働きお金にも働いてもらうのは世界の常識なのだということを僕は証券会社に入ってお金もちのお客様たちから教わった。つまり、増えもしない銀行の預金や郵貯に置いてあるお金は朝寝朝酒朝湯にふけっているというわけである。いい若いもんが働いてないに等しいのであって、不労所得どころか不労無所得なのだ。農村で一番許さないことを農村共同体的精神風土の日本人が黙って見過ごしている矛盾を不思議に思われないだろうか?

矛盾を解く鍵は投資というものの本質に隠れている。投資は実物であれ証券であれリターンを求めるものだが、それはどこから来るのだろう。天から降ってくれば結構だがそんなことはない。食物でも資源でも地球上の富は限られているから、得る人がいれば得られない人が出てくる。従って、投資は本来的に不平等を生むのである。隣の国や村を掠奪できるなら、勝つ側だけに限っていえば、内部に不平等は生まれない。しかし掠奪が許されないという建前になった現代にあって、天からお金が降って来ないのであれば、70億の人間全員がある株を買って全員が幸せになることはあり得ない。この原理によって、全員が平等に幸せであるべき農村共同体の文化とは水と油なのだ。

この文化から生まれた日本人ならではの美徳や強みを僕は誇りに思うが、それは古来の日本人全員が共有したものではない。武力で掠奪できた戦国時代まではそれはなかった。幕藩体制で掠奪がなくなった江戸時代に260年かけて古酒のように醸成された価値観であり、明治維新から152年たつこれからの世に江戸時代のままの価値観で幸せな人生を送れると考えるかどうかは皆さん次第だ。それを問うのが教育だと思うが、文科省がそうすることはない。政治家は国民一人一人の幸福など考えない。国が安泰に治まればそれでいい。それが政治家ひとりひとりの身分の安泰になり、国民のマジョリティが丸く収まる。それに竿さして左遷されたい官僚はいないからだ。

そういう確固たる理由によって、文科省は学校に農村共同体文化を逆撫でするような教育は絶対にさせないだろう。つまり、不平等を生む投資などとんでもない、バクチである、みな平等に働き平等に楽しみ平等に死んでいく、それが日本人の幸せだと説き続けるだろう。それで江戸時代さながらの手法で村が治まり、村の代表である国会議員が失業せずに女王蜂状態で生き長らえ、票田を世襲した二世、三世議員も女王蜂で居続けて皇室並みにディファクトだという世の中が出来上がるのである。働き蜂を慰労して、君らは「上級働き蜂」だとプライドを持たせる場が叙勲から桜を見る会まで序列で周到に用意されている計略は見事だ。

お判りだろうか?下級働き蜂に本当のことを教えて賢くなってもらっては困るのだ。学校で共産主義国家だと習った中華人民共和国が、いまやトランプ大統領をビビらせる資本主義国家であったことが判明している。ではなぜ中国は共産主義国家を名乗ってきたのだろう?簡単だ。女王蜂が膨大な数の働き蜂を従えて巣を作るのに好都合な大義だからだ。韓国の反日にも同様の要素がある。それが政治家の身分安泰の保険になり、国民のマジョリティが丸く収まるからである。歴史に学べというが、日本国の農村共同体文化もそれと同じものではないかと疑ってみるべきであり、為政者側である学校が絶対に教えない真実で世界は動いていることを見抜かなくてはいけないということだ。

僕のビジネスが原理的に最大多数の最大幸福に繋がらないことは以上からご賢察いただけよう。「誰でも儲かる株式投資」なんて類いの本は100%ウソである。万人が儲かる株は絶対に存在しないし、仮にそれに近いアイデアがあったとしても、万人がそれに乗っかれば儲からなくなってしまう。だから、他人には教えないのである。それを本にしたり学校で教えるなどというのは、余程の酔狂か自己犠牲精神あふれる人しかできない。なぜなら、そのアイデアを得るには金銭的にも精神的にも多大なコストがかかるからだ。投資には最大公約数として一般化した基本知識がある。それを投資理論と呼び、ウォートンのようなファイナンス系のビジネススクールに行けば習うことができる。だから僕は学校で理路整然と投資理論を教えてあげることはできるが、それは何ら結果を保証するものではない。なぜなら理論化すれば誰でも再現でき、万人が乗っかれば儲からなくなってしまうからだ。むかし家庭教師や塾の教師のバイトをしたが、それは教える僕が100%解けるという前提があった。しかし投資となると自分だって必勝ではないことを意味している。

また、多勢に無勢の民主主義の国で、超マイノリティである僕が有権者の支持を得ることもないから政治を変える力もない。であれば僕は家族と会社を守るため自分の生計だけを考えればいいだろうという結論になるしかない。政治家でない皆さんもそうだ。それには、お金に働いて仕事してもらわない手はない。為政者が国民の安全と幸せを仮に願っているとしても、それは自分と一族郎党だけのためだ。年金も天から降ってくるのではない。お金に働かせて増えてもらわないといけないが、計算上、到底政府が約束した金額にはならない。年末にせちがらい話になるが、自分と一族郎党は自分で守るしかないのである。

 

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大塚家具がヤマダ電機の傘下に入る

2019 DEC 17 23:23:33 pm by 東 賢太郎

大塚家具がヤマダ電機の傘下に入る。このことについて、2015年3月に書いたこのブログを読み返した。

株式道場-大塚家具の経営権争奪戦-

プロクシーファイトで80円に増配したわけだが、算数的に理屈に合わないので不思議に思って書いたブログだ。でも恨みつらみのケンカなら理屈抜きと誰もが思う。実はこのころ、ある上場会社のオーナーが「これが芝居だったらお見事だ、ウチも息子とやってみるか」と冗談を言っておられた。

 

お断り: 弊社ソナー・アドバイザーズ株式会社は(株)大塚家具の株主ではなく、同社株式を現時点では売買の対象としてアドバイスした事実はございません。

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トランプは負けのヘッジに入る

2019 JUL 1 20:20:20 pm by 東 賢太郎

「いや僕はそういう能力がないんで・・・」

というと、たいがい、

「そんなことないでしょう」

という返事が返ってくる。単なるお追従なのだが本当にないからないと言ってるのであってその目的は達していない。

返事した本人は自分にはもっと能力があると信じている。それも誤りなのだが僕はそういうことはそういう類の輩としか話さないし、冒頭の言葉はそういう返事が返ってくるだろうというシチュエーションでしか発しないのだから「いい天気ですね」「さようで」ぐらいのことだ。ただ、ひとつだけある。このバッターはここに投げれば打つだろうなという所に投げて、ああやっぱりねということだ。

交渉力とは観察力のことだ。机上の戦略などそのとおりいく方が珍しい。剣士や棋士ならこう打てばこうくるというのがあるだろうが、僕は剣道、将棋は知らないからバッターでシミュレーションしている。いずれにせよ、不測の反応が出たときに即応できるかどうかが命なことは変わりないと思う。その答えは、おそらく相手を観察することからしか出てこないのである。

G20のような場は首脳同士の出来の程の計りあいであり、諮りあいでもあるだろう。トランプ大統領は実に面白い。5月に畏友がホワイトハウスで彼に謁見した。オーバル・ルームだ。雑談の中で「NYでホテルを買った、トランプ・ホテルの近くだ」と言ったら「知ってる。いつだ?」と聞かれ、答えると返事は「いいところを買った。値上がりしてるぞ」だったそうだ。これを知ればテレビの井戸端会議であるワイドショーは「やっぱり不動産屋だったんですね」でもりあがるだろう。

金正恩との握手。両者ともトランプが落選した場合を視野に入れてる。したくない、させたくない、いつやるの・いまでしょ。あたりまえのことである。いまはトランプを支援するが落ちたらどうでもよく、アメリカ合衆国としてそうではない立場に立ったことにしておかないとその先は生きていけない連中との関係次第でトランプは落ちる可能性があるというトートロジーの事態にある。形勢を見て勝ち組につく関ケ原の小早川秀秋みたいなものだ。だからトランプは究極の勝負手を打ってくる。弱いイランも日韓も脅しまくる。強いロシアと中国は弱みを突いてからエサを撒く。彼のアメリカ・ファーストの底の浅さはあの民主党の看板政策として一世を風靡した泣く子も笑う子供手当のでっかい版にすぎない、米国株が上がればめぐりめぐってそうなるのである。小早川組が誰か、何を見てるか?おわかりだろう、彼の本気度だ。

皆さん相場がどうなると思われるだろうか。日本株などというものはもはや米国株のデリバティブだ。下がらないし、勝手に下げようもない。日銀のバランスシート担保でもあるから安倍首相謹製の官製相場である。円ドル感応度は高いが為替もドル次第。あらゆる経済理論がワークしないという意味でブラックホールの内部状態であり、すべてトランプ大王様の御意にかかってるという宇宙規模で馬鹿馬鹿しい空前の事態なのだ。利に聡い大王はこれが絶後でもあることを自分だけが知り得るという事実を知っている。不動産ディールで百戦錬磨の彼がその回路を完全オフにして政治ができると考える人は、神のごとき音楽を書いたモーツァルトやベートーベンの作曲が金銭動機だったなどという不浄な説には徹底交戦し、実はそうでしたという証拠が出ようものなら砂漠に顔をうずめて敵を見なかったことにするダチョウか日本国某財務大臣みたいなものだ。下がらないなら安心ではないかと思う方は株には近寄らない方がいい。近来稀に見るつまらない相場だからボラがない。そういう人がビギナーズラックで儲かることもなく、どこかで反転して大損するリスクだけある。素人に毛が生えた程度の投資信託もおんなじだ。大王にあやかって僕はいま不動産の方に注目している。

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日本人の資産運用の偏差値は30台である

2019 JUN 9 19:19:34 pm by 東 賢太郎

5年前にこのブログを書いた。

株式道場―百年安心年金の怪ー

ここに百年安心年金はウソだからダマされるなという趣旨のことを書いた。ウソである論拠も数字で明確に示してある。何人の方が読んだかは知らないが、反響はなかった。きっと誰も重大さがわからなかったのだろうと思って続編を書くのは無駄だからやめた。そうしたら今になって「人生100年時代」という煙幕を目くらましに使って、

百年安心年金はおおウソでした

と政府が発表しておお騒ぎになってる。

なつかしいなあ。むかしむかし、昭和という時代があり、「夢は夜ひらく」(藤圭子)という歌が流行った。

夜咲くネオンは 嘘(ウソ)の花
夜飛ぶ蝶々も 嘘の花
嘘を肴(さかな)に 酒をくみゃ
夢は夜ひらく

永田町寄席は昼からひらく。

 

~♪てけてんてんてんつくてんてん♪~

まずボケがはいる。

「老後は年金ではあきまへん、2000万円必要でっせ~」

そしてツッコミがはいる。

国民民主党の玉木雄一郎代表は党会合で、「『100年安心』が既に崩れていることは間違いない」と政府を批判。「新しい時代に本物の社会制度改革をしなければならない。訴える最大の機会が参院選だ」と争点化する考えを示した(毎日新聞)。

⇒ 既に崩れている?そんなもん5年前からジョークネタだろ!

立憲民主党の福山哲郎幹事長も「いつから2000万円貯蓄をしなければ老後が迎えられなくなったのか。(安倍晋三首相に)国会に出てきて国民に説明していただきたい」と語った(同)。

⇒ 10年前から常識だろ!ボーっと生きてんじゃねーよ!。

客席は爆笑ではなく、失笑の嵐となる。チコちゃんも来ていたのだ。

 

こういう馬鹿な人たちに政治を任せておくことこそ一番先に改革しなければならないことである。資産運用なんて中学・高校はもちろん東大にだって教えられる先生はひとりもいない。マスコミは理解できないから書かない。「百年安心年金」がおかしいと疑問を持たない国民はどんどんたかり体質になり、食いっぱぐれてもクニが何とかしてくれるとまじめに信じている。

でもそんなものは5年前の時点で僕のブログで計算すれば小学5年生でもわかったのである。

残念ながら結論はこうだ。

日本人の資産運用の偏差値は30台である

僕はいまさら世の中に警鐘を鳴らす気もないし、それを教えて商売にしようなんて気はさらにない。最後のひとことになるが、30代以下の人は偏差値50ぐらいにはしとかないと本当に将来大変なことになるよ。

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2年前の相場予想の検証

2019 JAN 22 0:00:13 am by 東 賢太郎

2年ちょっと前、ソナー・アドバイザーズのブログにこう書きました。

これから起きること

以下、ここで予言しておいたことが当たっていたかどうかひとつひとつ検証してみます。書いたのはトランプの大統領当選(2016年11月8日)直後の11月30日でした。青字が実際に起きた結果です。

2016.11.30.
これから起きること
トランプの法人減税と1兆ドルの財政出動はもし本当なら世界のリスクオフを解く可能性がある。世界一高い法人税35%が15%になるだけで米国企業の利益は25%増える。要はそれだけ株価が上がる。

⇐ 株価は25%ではなく40%上がった

ニューヨークダウ平均株価(マル印がコメント時)

カネのばら撒きによるインフレ期待から長期金利は上がる。FRBは狼少年になることなく12月第3週に短期金利を上げるが、リスクオフ資金の過度の需要でバブル価格となっていた長期債から短期債にスイッチがおきバランスされる。

⇐ 長期金利は33%上がった

米国10年国債金利(矢印がコメント時)

短期債に回らず株、不動産に回る資金はまだ織り込んでいない新興国等に回るが最後は日本に来るしかない。日本株は来年上がるが補正予算の規模によっては2万5千円もある。

⇐ 日本株は2万4千円まで上がった

日経平均株価(丸印がコメント時)

トランプの政策には長期的にはドル安の方がいいが、短期的には海外資産買い入れにドル高がプラス。消費回復、税収増のシナリオを煽ってコンフィデンスを高める作戦をとる。(以上がブログ)

・・・・

しっかり当たっていましたが、僕は競馬の予想屋ではありませんからそれはあまり問題ではありません。ポイントはこれを書いた2016年末時点で考えていた仮説が今でも有効かどうかなのです。有効ならまだ使えます。その可能性が50%以上はありそうだというのがこの結論ですね。トランプが何をやりそうかという観察に基づく仮説だったので、彼のやることは本筋ではそう変わらないだろうということでもあります。

この2年の間に英国のEU離脱決議、北朝鮮の核弾頭ミサイル発射事件、米朝首脳会談、、米中貿易摩擦の勃発などお騒がせの政治的事件は数々起きていますし、それを予測することはほぼ不可能ですが、心配せずとも、戦争にさえならなければ政治は株式市場には大きな影響はないのです。経験上、それで下げれば常に買い場であったと申して過言でありません。

僕はマクロは基本的には金利と業績しか見ていません。それ以外の情報はすべてノイズであり、それで下げれば買い、上げれば売り。シンプルなのです。

 

(ご興味ある方はこちらへどうぞ)

大規模金融緩和からの「出口」遠のく

 

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株式道場 「Bigger Fool は10年後に現れる」

2018 OCT 30 18:18:54 pm by 東 賢太郎

ユビキタス社会という言葉は証券界では20年前から誰もが知っていた。いずれそんな世の中になるぞということで真剣に調査していたからだ。僕は野村證券金融経済研究所の部長だったころこれに興味があって調べた。それに近いことが昨今はIoTという卑近な言葉となって巷でも知られている。つまり、ドラえもんの世界と思っていた「そんな世の中」がいつの間にか現実になろうとしているのだ。

その調査で「この株が買いだ」という結論は出なかった。産業のイノベーションではあるが効果は一企業ではなく社会全体に及ぶ。社会構造の変化は投資戦略上は難物なのだ。明確に導けた結論はインターネットが生産性を向上させるだろうという予測だったが、それも一企業で明確になるよりGDPや企業セクターというクラスターのデータとして計量化される。企業ごとに計量化されないものは収益予測に落とし込めず、従ってロジカルな株価予測も困難なのである。

ユビキタス(ubiquitous)はラテン語で遍在をあらわす”ubique”の派生語だ。宗教(一神教)における「神」の位置づけを具象化する概念で「あなたと共にどこにもいる」という意味である。別に神でなくともいい、全人類がインターネットでつながって、どこにいようと「そこにある」と全人類が思い込む仮想の場所があたかも現実の社会のように機能する状態がユビキタス社会である。

移動体通信がIoT(Internet of Things、物のインターネット)の物理的ディメンションを拡大し、ついにそこに自動車が加わることになって人々はユビキタス社会の到来を知ることになるだろう。これまで動くのは主にスマホを持った人だったが、クルマとロボットとドローンになって三次元となり、高速性、恣意性、汎用性が格段に増す。技術革新は軍需がドライバーだったが大きな戦争がないこの70年でドライバーは官から民になった。IoTに関わる企業が情報もセキュリティーも握る危険が生じるだろうが、進化を止める方法はない。

今やインターネットに触れない人は確実に減って化石となりつつある(94才の我が父でもできる程度のことだ)。触れた人はユビキタス社会を知り、その一員となる。新技術の出現において最も保守的な(要は頭の固い)層の人がそれになじみ、購入するほど受容するのにほぼone decade(10年)かかるらしい。疑り深い人、新しいものに疎い人がマス(多数派)になるまでの時間だ。野村證券がユビキタスを言い始めてからスマホが本格普及する2013年までたしかに10年ほどかかっている。ちなみにEV(電気自動車)の全面普及は2025年前後になるだろう。

そうなっては困る産業や失業する人も出る。しかし「アマゾンによる死」を救う法律もセーフティネットもない。変わらない、変わりたくない、石橋をたたいても渡らない、安定・安心がモットーという男と結婚を考える女性は知るべきだ、彼は実はリスクテーカーだということを。2010年に息子を連れて行ったヨークの英国国立鉄道博物館(NRM, National Railway Museum)でそれを象徴するものを見た。 ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道 (LNER) の蒸気機関車マラード (Mallard) NO.4468である。

マラード4468号は世界最高速度記録をもつ蒸気機関車としてギネスブックに載っている。時速203キロ の世界記録は1938年7月3日に達成されている。しかし1955年生まれの僕が物心ついたころ、それほど進化していた蒸気機関車は電気で走る新幹線に「時速200キロだ、速いなあ」と話題をさらわれていた。マラードで203キロの驚異の体験した人が、わずか2,30年後にそのマシーンが世の中から消え去るなど想像しただろうか。

我々はそれと同じ大変革期に生まれてきた人類である。考えるべきは「昔の鉄道は石炭で、クルマは石油で動いてたんだよ」と父が子に語る時代が何年後に来るかという予測だけだ。その日にはクルマとロボットと家庭が太陽光で作る電気でつながりスマホがIoTのコントロール端末となって完全ユビキタス社会となっているだろう。だから政府の予算も企業の投資も金融も雇用も、全部そっちへシフトするのである。ヒト・モノ・カネが集まるところに富が集積するのは人類史の鉄則である。そこに居ないで子孫に繁栄を願うというのは、あえてやせた荒野に種を蒔いて生きていきなさいと指導するようなものだ。

受験戦争も大事だが学校でその予測を講義できる先生はまずいないから子供が時代に乗り遅れないよう親が教育してやらねばならない。相続してあげる資産があるなら最も危険な「安定運用」ではなく、相応の割合を完全ユビキタス社会への株式投資に振り向けておくべきなのである。最も保守的な(要は頭の固い)層の人が行動を起こすのにほぼone decade(10年)かかるという統計はとても重要だ。あとでみんなが買いだして株価が上がりだすと安心して大きく買ってさらに株価を押し上げてくれる安定志向の人々のことをbigger foolと呼ぶからだ。

 

(PS)

マラード4468号はイギリスの子供向けのアニメ『機関車トーマスとその仲間達』に「スペンサー」という名で出てきます。ホンモノは消えましたが大事にされてますね。

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大人買いCDセットによるクラシック音楽市場の死

2018 AUG 25 22:22:01 pm by 東 賢太郎

アマゾンからマーキュリー・リヴィング・プレゼンス・コレクターズ・エディション3が届きました。アンタール・ドラティ、ポール・パレー、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー、アナトール・フィストラーリという気になる指揮者の1960年前後の録音が中心に53枚組というブロッキーなものです。

それが、昨日の午後にネットで見つけて注文したら今朝に家に届いている。店舗で買って、重たい思いをして持ち帰って一晩で53枚聴けるわけありません。でも、3日もたっての配達だとやや熱が冷めてしまう。翌朝のお届けは絶妙ですね。事務用品通販のアスクルは明日来るが売りでしたが、アマゾンの出現で全商品それが当たり前になってしまいました。

だからほとんどの実店舗型小売りは売上が減少し、米国でついにトイザらスが倒産というショッキングなニュースに至ったのはご記憶に新しいでしょう。残酷なようですが自由主義、資本主義はこういうもの、「アマゾンによる死(Death by Amazon)」は盛者必衰の理の一断面であります。

米投資情報会社ビスポーク・インベストメント・グループが2012年に設定した指数で、アマゾン躍進で負け組になりそうな実店舗型小売業を集めた「アマゾン恐怖銘柄指数」(Bespoke “Death by Amazon” index)の株価パフォーマンスを見ると2016年からの2年間でまさに恐ろしいことになっています。


思えばその昔、石丸電気などでLPレコードをあれこれ迷うのは絶大な楽しみでした。LPレコードは収録されているコンテンツの是非以前に、塩化ヴィニールの表面を擦過する針音が一品ごとに微妙に異なるという是非がありました。だから購買にはレジでの検盤という重要なプロセスがあり、それでも帰宅してターンテーブルに乗せてみないと針音はわからないというリスクは除去できず、さらにコンテンツである演奏が気に入るか否かというダブルのリスクがあったのです。

それをCDが駆逐して電子的読み取り信号が商品となった瞬間に目視による検盤は無意味となりました。「第1のリスク」は除去できたものの擦過がなくなり、購買という行為は均質な工業製品の仕入れと変わらなくなりました。しかしそれでもCDはモノではありました。それが今やEコマースだ。僕らはもはや物体でない「虚像(イメージ)」を紙幣という物体すら介さずにプラスチックのカードに記載されている無機質な数字列と引き換えているのです。

まあここまでは百歩譲って「利便性」の勝利と認めましょう。自由主義、資本主義はこういうものだと。しかし均質な工業製品は品質を落とさずに大量生産が可能で小型化により輸送費も在庫管理費も低下して物体としての製造、小売り単価は劇的に圧縮されます。すると「第2のリスク」である「コンテンツである演奏が気に入るか否か」は大方の購買者にとってリスクではなくなってきます。たかが1枚150円のCDがハズレでも大したことはないからです。

そこまで割り切ってしまった自分でしたが、新品53枚組のケースを開けてみると、しかし、これはなんということだと絶句してしまったのです。ドラティのブラームス交響曲全集がドーンと目に飛び込んで・・・。

ここから53枚目に至るまで、一枚一枚のジャケットに感嘆の声をあげながら中のCDを取り出し、いつくしみ、こんなやつが出てくると狂喜し、

こんなのが出てくるや、これは単品では絶対に買わなかったぞと嘆息するという塩梅でした。

このさまを観ていた家内にはわからないだろうと咄嗟に「子供の時にメンコのセットを買ってもらった時の気持ちだよ」と、我ながらうまいことを言うなと納得の説明をしたのですが、さらにわからなくなったようでした。ところがです、一連の出会いの感動からだんだん覚めてくると、この僕にもわからないことが頭をもたげてくるのです。

ちょっとまてよ、セットはいいが53枚組で8千円?なんだそれは、1枚150円かよ?カラのCDRがそんなもんだったじゃないか、ということはコンテンツはタダのおまけか?何かおかしいぞ、ドラティのブラームス、俺は1万円でもいいぞ、コープランドは5千円でも。

ほんとうです。まったくイラショナル(非合理)なことですが、僕は150円じゃなく1万円、5千円払いたいのです。もしそれで昔の価値観の時代に戻るなら・・・。

2000年ごろ不良債権のバルクセールというのがよくありました。纏め売り、バナナのたたき売りであって、単品では売れないクズ不動産を「オトナ買い」させたい銀行の窮余の一策でした。「53枚組はあれと同じか?そんなにCDは売れないのか?」、危機感が僕の頭をよぎりました。現実に売れ残りのバルクの中に箱根の土地があった。芦ノ湖、プリンスホテルを眼下に望む景観があって、えっ、こんな安くていいのという値段でした。

リゾート地が売れなくなる。業者は資金効率のために売らんかなの姿勢になる。すると売れる市場価格まで値が下がる。すると景観の価値は度外視になるのです。駅近、治安、生活インフラなど万人が気にする要素(地価を決めるハードとしての要素)に比べ趣味性が高い景観は先に無視される要素なのです。CDにおいてコンテンツである音楽は趣味性の要素で、売らんかな姿勢の業者がバルクセールをすれば、値段はハード(工業製品)原価であるCDR1枚の値段まで下がり得るということです。

それは購買者としてはむしろ有難いことです。しかし、マクロ現象として長期的な目で見るならば危機をはらんでいます。53枚組のどの1枚だってLPの頃は1500円はしていた。インフレを加えると10分の1超に至る価格破壊が「第2のリスク」を軽減してはくれます。しかし、その背景で由々しきことが進行しています。購買者は選択の安心と引き換えに鑑賞への集中力を無意識に放棄しているということです。まあ安いから聞いてみようか、1枚150円のCDがハズレでも大したことはないや。10倍のお金で買った場合とは集中力はおのずと違います。それが常態化すると人間は徐々に不要となった能力を失うのは進化の歴史が証明しています。

供給者側でも、アダムのジゼルの程度のクオリティの音楽、つまりたいして売れそうもないコンテンツを当代一人者のフィストラーリのような演奏家、最新鋭の録音システムでコストをかけて商品化しようというインセンティブは著しく低減するでしょう。英Deccaがヘルベルト・フォン・カラヤン / ウィーン・フィルを起用したジゼルは1分当たりの(音楽の価値)÷(製造者原価)の値が最も低い録音だろうと思われ、収録した1961年あたりにクラシック音楽ソフト市場の数値のボトムがあった可能性が高いと考えております。

需給の両サイドでの質の低下は確実に文化を変質に追い込みます。経済学のわかる人は本稿の趣旨である「アマゾンによる死(Death by Amazon)」との類似性を見抜かれるでしょう。大人買いCDセットはクラシック音楽ソフト市場の断末魔になりかねないのです。

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重かったビル・ゲイツの言葉

2018 MAR 17 2:02:09 am by 東 賢太郎

当時はこんな感じだった

1997年2月のダボス会議で、時の寵児だったビル・ゲイツが1000人ぐらいのホールでスピーチをした。まだインターネットが普及しはじめのころだったが皆が席を争って殺到し、やっとのことで予約が取れて会場に入れたという超人気ぶりだった。昨日のことのように鮮明に覚えているのは理由がある。「これまではどの国に生まれたかで生涯所得が決まりましたが、これからは何を学んだかで決まります」という言葉があったからだ。これは僕にとってアインシュタインの「 重力波」に匹敵する重大な予言であった。

先進国に生まれただけで開発国よりは年収は得られたし、学歴があればさらにそうだった。しかし、これからの時代は開発国に生まれても学ぶもの次第で億万長者になれるし、先進国に生まれても良い暮らしの保証はないよ。学んだものが時代に合わなければ名門校を全優で卒業しても年収アップにはつながらないよ。ゲイツの言った「何を学んだかで決まる」とはそういう意味であり、彼はそこで「これから学ぶべきものはITだ」と明言したのである。ちなみに彼はハーバード大学数学科を中退している。

あれから20年。世界はまさに予言どおりにそうなっているが、彼が「生涯所得」を良い暮らしのベンチマークにしたのは、「もし人間の幸福指数というものがあるならそれが最大変数だろう」(それだけではないが、必要条件だ)というきわめて自由主義的、資本主義的かつアメリカンな考え方であるから異論ある方もおられるだろう。素人がいくら音楽を勉強しても一文の足しにもならないが、それでも幸福指数を高めてくれることは僕自身も納得している。

しかし、彼の言葉は謙虚に聞くに足る。なにせピーク時の年収が1兆6,635億円(時給46億円)、総資産9兆円の人の言葉だ。彼の信条を習得してその1万分の1でもいいからご利益にあずかれば、あなたの年収は1億6,635万円だ。そんなのいらん、清貧に生きるのが人生だという方はこの先はお読みにならなくてもいいと思う。

ウォートンスクールに留学するにあたって「ビジネススクール」とは何か調べてみた。MBA(経営学修士)という学位を与える、経営の専門家になるための教育機関という建てつけの大学院であり、メディカルスクールが医者の、ロースクールが法曹のそれであるのとパラレルと思われた。当時27才の僕にとって経営とは想像の対象だからその専門家がどういう存在かは空想の領域だった。

経営の専門家は医師、法曹のように育成できるという概念は、経営は「技法」であるという前提がないと成り立たない。その上に、人間やイデオロギーを細分化(いわば因数分解)し、客観的で普遍な構造を追求する思想が重なる。それは「構造主義」に近似すると僕は理解した。つまり、技法は技術の集大成であって、高度に複雑な技法も技術レベルでは客観性、普遍性があり、そこに還元してしまえばマスターできるという意味で医学、法学と同次元の構造を見て取っているのだろうと思われた。

それが正しいかどうかは置くとして、実際に2年学んだ経験から次のことは言える。ピアノ演奏(技法)は運指(技術)に立脚するが、24の調の音階運指を訓練すればピアノは少しは弾けるという程度の類似性において構造主義はワークしうる、つまり、「経営はそれを構成する技術に因数分解して教室で教えることができる」ということだ。そう納得したと同時に、次の疑念を抱いたことも併記しなくてはならない。そもそも「経営は技法なのだろうか」ということだ。

ビジネススクールは経営学を教える学校ではない。ビジネスを「学」の対象にするほどの構造性はおそらく認めておらず、技法は技術の集大成ではあるが、技法は経験からしか学べない部分も包含している高次の概念であると前提していることは、経営学(マネジメント)は科目として、つまり技術の一つとして教えていることから明確にわかる。ビジネスは医学や法学と同次元で教育はできるが学問ではないという立場であり、これに僕は100%同意する。

経営学者ピーター・ドラッカーは自らの組織論、経営論をオーケストラと指揮者の関係に例えたが、奏者の腕(生産性)が高い前提で良い演奏(効率向上)をさせる経営(指揮)を教えているのであって、多くの人が勘違いしているように彼は名指揮者になる秘策を教えているわけではない。彼の著作を誇らしげに書棚に並べる経営者がいるが、そんな無駄金を使うこと自体生産性の低い経営者だとその本には書いてある。

かたやビジネススクールはそうした学問的、合理主義的なアプローチを頭で理解したうえで、夜中12時まで図書館にこもって半分も読破できないほどの地獄の特訓みたいな膨大なアサインメント(宿題)を毎日こなし、教室では完璧でなくても皆がなるほどと思う議論をその場ででっちあげるご都合主義にいたるまで、CEOになれば直面するしうまく切り抜けねばならないであろうあらゆるプレッシャーやシチュエーションの仮想体験を経験主義の精神で肉づけをする場だ。平たく言うなら、教室ではなく道場である。

ということは「経営は技法なのだろうか」という本質的な問いに対して、教室で教科書的に論じることはナンセンスである。実際に名経営者に接して、道場で剣道の乱取りを見る目線で結論を出すのが筋なのである。僕のころ「伝説の経営者」の神棚に並んでいたのはフォードのCEOを解雇されぼろぼろだったクライスラーCEOに転身して立て直したリー・アイアコッカ、そしてGEのCEOとして売上高を5.2倍、純利益を8.4倍に伸ばし、世界有数の株式時価総額を誇る巨大複合企業に育て上げたジャック・ウエルチだった。

ド迫力のおっさんだったウエルチ

僕は幸運なことにビル・ゲイツの出てきた97年のダボス会議の場で、その神様ジャック・ウエルチのブレックファスト・ミーティングに参加する機会を得た。最前列の丸テーブルに陣取ったら、自らの白熱したスピーチに興奮したウエルチが壇上からしゃべりながらおりてきて真横で熱弁をふるいだし、唾が飛んできて朝食は断念する羽目になった。そこでびびっと体で感じたのだ。ああ、このおっさん、自説に没入してテコでも動かん、それを弁舌と迫力で納得させるカリスマ親父だなと。

そんなのは因数分解などできない。教えられない。音大で棒の振り方だけ教えればフルトヴェングラーやチェリビダッケみたいな指揮者が出てくるわけではないのだ。ウエルチはドラッカーの信奉者だが、自説を立てる段に役立ったかもしれないがそれを実行させたのは彼の強烈な人間力だと思う。終了後に出口で参加者を握手で見送るウエルチに挨拶したら「おおノムラか、**はどうしてる?」と会社の先輩の名が即座に出て驚いた。心底びっくりした僕は彼のことを絶対に忘れない。ドラッカーの経営学もビジネススクールもこういう大事なことは教えてくれないのだ。

その同じダボス会議の場で、「生涯所得は何を学んだかで決まる」「それはITだ」というビル・ゲイツの言葉が水と油ほど異質に響いたのをご想像いただけるだろうか?こんなことを言う経営者が出てきたのか!目からうろこだった。カリスマ、人間力なんかではない、むしろ学校で教えられるもの、だれでも学べばできることだ。しかし、大事なのは習うことでなく、関心を持って自ら学ぶことだ。だから実はそれは「オタク」のすすめなのである。ゲイツは僕と同じ1955年生まれだ。思えばこの辺の世代から日本でもオタクが現れだしたし自分もそのはしくれであった。

僕は法律はつまらなくて勉強しなかったからゲイツみたいに退学しても良かった。オタク的に学んだのは株式投資であり何の専門家かと問われればそれだ。そしてそれが生涯所得を決めたというならそうだ。ウエルチのカリスマ、人間力は魅力があったし自分もそういうものを身に着けたいとは思うがそれで食えるわけではない。四六時中株のことを考えていて飽きないのだからそれで食ったほうが健康にもいい。「ITだ」と言われればそうだったかもと思うが、株ほどの興味はないからやっても成功しなかったのではないか。

最後に、僕の目を覚ましてくれたビル・ゲイツに賛辞を贈ろう。彼の予言を重力波の計測のごとく体現した人物は僕らより16才若い、EVを牽引するテスラ社の創業オーナー、イーロン・マスクだ。彼は決して先進国ではない南アフリカ共和国の出身だ(どこの国に生まれたかは関係ない)。10才のときにコンピュータを買い、プログラミングを独学し、12才で商業ソフトウェアであるBlasterを販売する。幼少にしてITオタクであり、商人であったのだ(何を学んだかで生涯収入は決まる。それはITだ)。そして彼の現在の総資産は205億ドル(2兆3千億円)なのである。

 

しかし予言のすばらしさの要諦はそれではない。マスクが共同創業者として起業した最初の会社、ペイパルがオンライン決済という金融に関わるサービス会社であったことだ。NASDAQ 上場の時価総額1兆円企業である(本社は前ブログのサン・ホセにある)。その彼が電気自動車メーカー、テスラという畑違いの創業に関わって、一度も黒字がないのに60兆円の企業にしてしまう。サービス業から製造業、金融から自動車。一見するとクロスオーバーなキャリアに見えるが、それらはITオタクという横糸で結ばれているのであってそうではない。それが宇宙輸送ビジネスになろうと、これまた同じことだ。ゲイツの予言の凄みを僕はここに感じるのだ。

テスラ モデルX

ガソリンエンジンとトランスミッションのいらないEVは日立やパナソニックが電化製品として作ってヤマダ電機で売れる。IOT時代は商品の方がITを基軸にクロスオーバーする時代であり、自動車が「家電」になればそれもそこに組み込まれる。子供でも分かる、それだけのことだ。1997年にビル・ゲイツがそれを見越していたかは定かでない。おそらく、彼はムーアの法則のような原理的観察による直感を語ったのではないかと推察するが、天才の脳内は測りがたい。ともあれ、原理と経験と直感から常に未来を予測し、予言をし、適中させること以外に大きなビジネスで成功する道はない。そして、多くの天才たちの予言・適中の蓋然性を吟味・分析して、少額の資金による事業参加を行うことこそが株式投資の本質なのだということも若い皆さんは覚えておいた方がよい。

 

株式道場-未来を原理思考しない日本人-

 

 

 

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平昌オリンピックと株式時価総額

2018 FEB 13 17:17:01 pm by 東 賢太郎

グーグル・アナリティクスでブログ閲覧の統計値が出てきます。僕のブログは毎日千人ぐらいが読んで(少なくともどれかを開いて)くださっていて、その6割が男性です。ところが年齢層が意外でした。ご訪問くださる過半数(55%)が44歳以下で、もともとターゲット層と考えていた55歳以上は25%しかないのです。

むしろ18~34歳が35%で上回っており、しかもそのうち自分の子供より若い18~24歳が20%近い。何となく自分の世代に向けて書いていましたが、それでこれというのはどういうことなんでしょうか。今時の中高年だからITリテラシーだけの影響とも思えませんし、サンプル数は137万だから統計としては有意だろうし、けっこう世代別に関心がある層の所在を反映していると思うのです。いずれにせよ、僕の当初の目論見は外れたということであります。

18~24歳といえば、メジャーにチャレンジするプロ野球の大谷選手、そしてたったいま平昌オリンピックで世界に挑戦している若人たちの世代でしょう。子供と話してもその世代とはギャップがあるし、どういう興味で読んでくれているのかまではさっぱりわかりませんが、とにかく有難いことで、未来の日本を背負う世代とつながれるというのは昭和30年生まれのオジサンとしてはうれしいことに感じるのです。

大谷選手といえば、先日TVのインタビューで「年男ですが、その年齢でのメジャー挑戦でお感じになることは?」ときかれ、にっこりと「特にありません」。これいいですねえ。僕も新入社員のときTVで「今年の新人は『泳げ鯛焼きクン型』だそうですがいかがですか?」と振られて「僕はちがいます」と答えて白けさせて申し訳なかった前科があるんで、好きだなあ大谷さん。彼は「くだらないこと聞くな」という顔しないところが大人でかっこいいですね。

きのう平昌オリンピックでスピードスケートの高木美帆さん、ジャンプの高梨沙羅さん、男子モーグルの原大智のさんのメダル獲得を見て感じるものがありました。何事であれ日本で3位でもただ事じゃないのに世界ですからね、もう想像もつかないことです。それも世界に放映されて日の丸を背負っての一発勝負でね。あっぱれの一言です。

高梨さん、2本目スタートの瞬間、いい顔してましたね。ハラ座ってるな凄いなあ。でもルンビもアルトハウスも顔が負けてない。最高峰の戦いでの立派なメダルです。高木さん、表彰台で金じゃないのが悔しかった、その言葉、次は勝つ人ですね、オランダ人(とにかく男女ともでかいよ)を抑えての銀は痛快でした。原さん、すぐ前に滑った金メダルの奴が物凄かった、自分は未勝利なのにそれ見ても失敗する気がしなかった、見てる方もそう思いました、大物だね、素晴らしい。

ジャンプで2本とも追い風で、誰が見てもその不運で9位だった伊藤有希さん。4年間頑張って悔しかったのに、あなたインタビューで風のせいにしませんでしたね。大変にあっぱれです。幸田露伴(知らないだろうがエライ人)が言ってます、「大きな成功を遂げた人は、失敗を人のせいにするのではなく自分のせいにするという傾向が強い」。僕は知ってる、運はそういう人にだけ寄ってくるのです。次はいけるよ。

若い選手の皆さんに元気をもらいながら、あったかいリビングでぬくぬくと皆さんの活躍を見せてもらいながら、昭和の我が世代がいま日本国に何を残したのかつらつら考えます。オリンピック出たわけじゃないし、貢献したことといえば早朝から深夜までモーレツ社員やって経済成長に参加したぐらいでしょう。だから日本の企業の規模や収益力にほんのかけらほどが遺産として残ってるかもしれないということになりますね。

それを見るなら代表企業の時価総額(全株式を買った金額)を比べる、それがグローバルスタンダードなんです。ご覧ください。以下、カッコ内が現在のそれ、単位は「兆円」です。

アップル(80)、アルファベット(グーグルの親、75)、マイクロソフト(68)、アマゾン(65)、フェースブック(42)以上米国

対して中国はテンセント(50)、韓国はサムスン電子(30)

かたや我が国はトヨタ(24)、ソフトバンク(10)

これが我が世代が残したもの。残念です。こんなのに甘んじてていいのかな?

メダリストになった高木さん、高梨さん、原さん、あなたたちは企業ならば時価総額60~70兆円の所にいるということですよ。ほんとうにすごいことです。

その昔のこと、我が国は「経済一流、政治三流」といわれました。ところがご覧のとおりその経済だってだんだん三流になりつつあるのです。我々のような元戦士はもう終戦モードで、過去の栄華を懐かしむだけ。どうせあと20年も生きないし、貯めた小金を食いつぶしてあの世いきなんでございます。どうしたらいいかって、我々の成功体験なんか屁の役にも立ちませんよ、それは皆さんがご自分の頭で考えぬいて、臆せずにあれこれやってみるしかありません。

 

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