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カテゴリー: 野球

世紀の対決「イチロー対クレメンス」

2019 MAR 22 22:22:17 pm by 東 賢太郎

昨日、彼の最後の打席を目に焼きつけました。そしてとうとうその時が来る。いったんついたライトの守備から呼び戻され、三塁ベンチの前で総出のハグが出迎える。球場みなが泣いていたのではないでしょうか。

彼を見たのはただ一度だけ、18年前、ヤンキースタジアムの三塁ベンチのすぐ上の席でした。そう、そのときも、彼は昨日の最後のようにライトから軽やかに小走りで戻ってきましたっけ。27才のイチローでした。

ロジャー・クレメンス

2001年、彼が渡米してまだ1か月の頃、開幕間もない4月24日のことでした。あの試合、イチローは僕の頭のなかでは1割ぐらい、関心の9割は1試合20奪三振を2回をやったロジャー・クレメンスにあったのです。その年の最終成績は20勝3敗、自身6度目のサイ・ヤング賞を受賞した伝説の大投手であり、今でも、彼を見られたことは野球の神様に感謝です。

クレメンスに対しイチローはショートゴロ、浅いレフトフライ、セカンドゴロ。打てる気配なし。前に飛ばすのがやっとに見え、体格でもはるかに見劣りするわけですから、「あっ、こりゃぜんぜん話にならないや、1年で終わりだな」と僕は隣の同僚につぶやいたのです。穴があったら入りたい。世紀のおおはずれでありました。

いまになってみて思うことがあります。あのクレメンスの高めのボールは、かつて見た中でも恐怖を覚えるほどの剛球でした。それを見てビビらない、打って手が痺れたに違いないが、どうしてここに来てしまったかなんて心が折れたりしない。それが彼だったのかなあと。いろんなことで何度もぽっきり折れてきた自分は、ああはなれないと思い知りました。

彼は天才だレジェンドだとポジティブな面ばかりが語られますが、ニューヨークでもフロリダでも、いつクビになるかと思ってプレーし、去年からは1年間、マリナーズで試合には出られない契約をして、それでも出る準備だけは怠らなかった。それはそれは孤独で辛かったろうと思います。でも折れない。好きだからできると言ってしまえば簡単ですが、午前零時から1時間半のインタビューを聞いてみて彼も人間なんだとほっとしましたけれど、でもそういうことが淡々とできる人なんだということに強い感銘も受けました。

それから解放されてみて、初めてできること、ひょっとして意外なことが出てくる人でしょう。本当に楽しみですね、それが何かということが。

 

イチローさん、1時間で帰っちゃいますね

 

日ハム・金子の芸術的な快投

2019 MAR 19 20:20:06 pm by 東 賢太郎

アスレチックスの打撃練習風景

日曜日に東京ドームでアスレチックス対日本ハムのプレシーズンゲームを、試合開始2時間前に入場して打撃練習から見ました。メジャーがドームで打つとこうなるのかという凄いホームランの連発でしたが、2年前に神宮の七夕の奇跡で見たカープ・バティスタの左中間の弾丸ライナーの一発のほうが上だな、なんてことも思うのです。試合は5-1のスコアでメジャーの完勝、あんまり見るものがないゲームでしたが、唯一、金子の4イニング9奪三振は美しかった。

先発の有原は157キロでましたがカンカン打たれて4失点です。それより金子の140キロが速く見えた、これぞ野球の謎ですね。縦横に自在に曲がる変化球も速くて空振りがとれ、最後はコーナーぎりぎりのストレートに手がでず見逃しが何度かありました。メジャーを手玉にとったのは見事です。

金子はプロとしては体も細身でフォームに威圧感もなし。一見何でもないピッチャーで、腕の振りも速さを感じないのにキャッチャーミットの音が半端なく、たぶん打席ではすぐ球が手元に来てる感じでしょう。それでコントロールがいいのだから打てるイメージがないです。

選手百人いれば百種類の球があります。僕は常にそれを楽しみに野球場に行くのです。試合前のキャッチボールから真剣に見て、いいなと思った野手は背番号から名前を確認します(投手じゃない、野手です)。河原の草野球だって、中学ぐらいの投手が、遅いけど回転のいい球でミットがパーンと鳴ったりすると、ちょっと高めはいやだななんて思ったりして、バッターの反応が見たくて2イニング見物してしまったり。やってた人ならわかってくれると思うのですが。

バッターの反応。打席に立つのでなければ、それしか判断材料はございません。自分のだけは打席で見られないからマウンドからじっとそれを観察して、その日の調子を知りました。振り遅れてると「今日は行ってるな」と思う。行ってるは投手目線、来てるは打者目線の言葉です。だから反応(特に見逃し方)でいい打者かどうかもわかります。それがいいと、おぬしやるなとなって、胸元を攻めとくかなんて捕手と目くばせしてました。

金子の球は、打者がほとんど想定外という反応。芸術の域ですね、うまいなあとため息つくばかりです。打者は150キロに見えてるだろう。彼ぐらいになると前の球の反応でどこに投げるかが直観的にわかるのではないでしょうか。僕が当たった元プロの投手の、打席に立ってみた印象もそうでした。打てない所ばかりに来るのです。

ケガさえなければ金子は10勝はするでしょう。彼のピッチングはネット裏から初めてみましたが、それだけでも来た甲斐がありました。オリックスはどうしてだしちゃったのかな?もう一つ謎が残りました。

日ハム・金子の芸術的な快投

 

カープの強さ=アスリート本能の2乗 

2019 MAR 7 1:01:18 am by 東 賢太郎

この時期に勝ち負けは関係ないですが、カープのオープン戦は今年を楽しみにさせてくれます。6か月の長丁場のシーズンです。ケガや不調などからレギュラーだけで年間を戦えない可能性がどの球団にもあって、そのダメージコントロールがどれだけできるかで順位が決まると僕は考えています。

とするといわゆる選手層の厚さの勝負になるのですが、今のカープの野手陣は田中、菊池、鈴木以外は誰を使うか迷うほど力量がハイレベルで拮抗しています。センター、レフトの2席は長野、野間、松山、バティスタ、西川、内野(ファーストとサード)は松山、バティスタに加えて安部、メヒア、小園、曽根が。

数の問題ではありません。カープのキャンプ風景を見ていると、見事に無駄がない。「早打ちトス」など1秒に2球のペースで全力で打ちまくる拷問のような練習です。スケジューリングもグラウンドの部分部分の使い方も合理的で隙がなく、あれを見て他球団を見ると無駄だらけでルーティーンを流してるだけに見えてしまいます。広島流のただごとでない練習量をこなせば、持って生まれた能力の頂点にあるという快感を覚えるだろう、というのは僕にもなんとなく経験的に想像がつくのです。

ランナーズハイ(runner’s high)とはマラソンやジョギングで苦しさを我慢し走り続けるとある時点から逆に快感・恍惚感を覚えることです。カープの選手はそれとおなじで「野球ハイ」の状態になるまで練習させられているのではないかと思うのです。この「ハイ」というのはスポーツだけでなく勉強でもあって、数学など練習しまくって何でも来い状態になると解くのが快感になります。うちのネコは猫じゃらしの捕獲がうまくなると恍惚として目がらんらんとして何度でもやるようになります。これって、人間というより、動物的本能じゃないかと思うのです。

そうなると、今度はその能力を確かめたくなる。野球は9人しか試合に出られないからそこで闘争本能という(これも根源的に、動物的です)ものに着火するのです。闘争本能はどの球団の選手にもあります、プロだからないはずはありません。しかし、カープの選手は「野球ハイ」で恍惚、目がらんらんなうえにそれが乗るのだから、本能✖本能(本能の2乗)の尋常でないモチベーションがあるのではないかと想像します。阪神でだめになった新井が帰ってきて覚醒したのも、そのマルチプル効果がきいたのではないでしょうか。こういう動物的モチベーションというものは、お金や虚栄心という頭脳のモチベーションより断然強いと思うのです。カープが強い道理はそれじゃないでしょうか。

丸選手は2年連続セリーグMVPでゴールデングラブ賞ですから、長野だろうが誰だろうがそれ以下の選手ということであって、つまり丸の抜けた穴を埋められる者はないということです。だから普通のチームなら負の効果しかないですが、カープの場合だけはそうではない可能性があって、「3番とセンターが空いた」という本能に火をつけるおいしい要素が二つも提供され、各々が「二乗のレバレッジ効果」でモチベーションを高めます。つまり丸の件はむしろトータルにはプラスに効くかもしれないと僕は思っています。

例えばホークスの育成選手だった曽根がひょっとして菊池の後釜かという成長ぶり。新人の小園は早や成績も体格も3年目ぐらいの風格に育ってますからすぐに田中を脅かすでしょう。邪推ですが、丸のFA移籍で菊池、田中もいなくなること前提でさらなる本能の火種が生まれている感じすらします。カープで育って試合で実績を出すと、やがて巨人さんが30億円くれる。巨人のドラフトにかかると30億円さんや名前だけのロートルさんが毎年天下ってきて出番が来ない。それならドラフトではまずカープに入りたいという有望株が増えるんじゃないでしょうか。

広島対巨人の戦いとは、「動物的モチベーション」対「お金や虚栄心という頭脳のモチベーション」の戦いと見るならば面白い。ここ2年連続で広島が2桁以上の差をつけてボロ勝ち、巨人はお得意さん状態です。才能はあるが「野球ハイ」未満の状態のチームが、恍惚、目がらんらんなチームと当たれば本能的に怖さを感じると思います。オープン戦初戦、先発の床田がいきなり4者連続三振(丸を含む)はそういうものを巨人選手に与えたと思います、今年もお得意さんなのかなと。監督は誰でも関係ないです。やるのは選手だから。もちろん巨人はそれを知っていて、だから丸をとったのです。

丸が2番打者の巨人打線は繋がりという点では強力ですが丸は近年は2番は打ったことがない。彼はまじめな積み上げ型の選手ですから3番で好きに打たせた方が怖いです。常勝巨人軍プロデュースの「原マジック・ショー」というやらせっぽい劇をドームで演じなくてはならない選手たちは大変と思います。あのムードの中で期待と注目を浴びてアドレナリンが出て「ハイ」になれる長嶋や堀内のようなタイプはショーの主役向きですが、丸は鍛錬を重ねていく王貞治タイプと思うので、あれこれ注文がついて気を遣う2番はどうなんでしょうか。巨人は「丸効果」をうたいますがそれは丸が去年並みに打ってのことです。ベルリン・フィルに君臨した帝王、ヘルベルト・フォン・カラヤンが呼んできてほぼ全滅だったソリストたちみたいにならなければいいのですが。

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広島カープに見る「人を育てる」黄金律

2019 FEB 13 17:17:15 pm by 東 賢太郎

広島カープの紅白戦をTVで見てました。以下、私見です。ショートの小園は評判どおりの逸材でした。守備がうまいのですが、打撃も球の見逃し方がいいです、高校生と思えません、田中広輔がいなければいきなりレギュラーありでしょう。外野の正隨は鈴木誠也なみになるかもしれないですね(よく6位でとれた)、誠也(2位)より上のドラ1だった髙橋大樹と3人でクリーンアップかな。坂倉は會澤翼の後釜、ピカ一の打撃センスです。レフトもいい。3年後ぐらいに原・巨人にもしかしてタナ・タナ・キク・マルでも出現するんだろうけど、若手が旬になるからカープ優位は揺るがないですね。

投手は霞ヶ浦高卒2年目の遠藤。細身だけどまだ19才。坂倉を空振り三振に取った直球に加えて変化球を磨いたら楽しみです(ぜひぜひ肩ひじだけは気をつけてね)。アドゥワは球威にすごみが出てきましたね、先発で行けそうです。熊本工卒2年目の山口の直球も魅力を感じました。島内颯太郎の速球は即戦力で大瀬良二世でしょう。床田は左の先発で、球威は戻っており期待できそうです、10勝したら4連覇は固いでしょう。

球威といえば、一昨年のプロ初登板でヤクルトをあわやノーヒットノーランだった慶応高、慶応大の矢崎(加藤)が一番でしょう。コントロールさえ良ければ誰も打てないのに去年は一軍登板ゼロ。何をやっとるんだ!と不満があったのがこの日は2回を無安打。低めに行ってましたね。僕は彼を外木場に重ねているので、これが成長の証なら涙が出るほどうれしいのです。一軍投手コーチが佐々岡というのは実に大きいですね、投手王国復活ののろしです。

カープのドラフト戦略は本当にレベルが高いと思います。しかし採るだけではなくシビアな練習を課して熾烈に競争させるところがチーム力成長の真因でしょう。戦力のかき集めではなく内部から(オーガニックな)成長を促す、企業経営もかくあるべしで、そういう会社は利益も株価も成長します。人間はいかなる場面でも競争しないと伸びません。何事も負けが嫌なら相手以上に練習するしかないのです。それをやってOPSが球界一位になった丸は立派だし、一位の穴は誰も埋められません。しかし外野と3番の競争がさらに激化することは総合的に見ればカープのようなチームではむしろプラスに働くと思います。

カープの練習を見るのは無上の喜びです。元気が出ます。目利きが無名選手を発掘して育てる。これは投資の世界でソナーがやっている事とダブります。上場した著名企業を高値で買う巨人、僕のポリシーとは正反対です。だから半世紀もカープを応援してきたのかなと改めて思いました。

 

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長野選手が人的補償で広島に移籍

2019 JAN 8 1:01:20 am by 東 賢太郎

長野選手が丸の人的補償で広島に移籍。これは驚きました。外野は丸、陽、ゲレーロ、長野、亀井、重信。4億円複数年契約のゲレーロを使う必要があり、陽か長野かで落選したとすれば、昨年にマギーをとって村田を落としたのと重なる気もします。実力社会というなら芸能界もそうですが、あちらは64才になっても紅白で歌える。アスリートに円熟という言葉はなく、あるなら旬です。

内海のケースもあったわけですから、プロテクトから外したということは巨人には「未必の故意」(まあそうなってもいいんじゃね、というきもち)があった。旬は過ぎたと判断されたのでしょう。3年浪人するほど惚れた球団のその故意をどう心の中で消化するかですね。いいじゃないですか長野も内海も、これで日本中から大注目されるし、なにくそと活躍すれば一気に全国区で男をあげますね。日本人はそういう人を応援するのです。

一方で、自ら出て行った丸への広島ファンの喪失感よりも、功労者2人を引き抜かれた巨人ファンの心のダメージのほうが大きいでしょう。炭谷と丸への視線も内外で厳しめに変わってくるでしょう。丸はそれをはね返すプレッシャーに耐えなくてはいけませんが、逆に長野は広島では大歓迎されるはずです。カープファンはあったかいし、緒方監督と同郷だし。新井のような立場になって4連覇でもすれば、今やカープは黒字球団だし野球人としては巨人でフェードアウトするより絶対に幸福になれます。大チャンスです、心からおめでとうと言いたい。

経済的なことは忘れてFAが誘因となったトレードと見れば、巨人は

丸佳浩外野手(広島からFA)
炭谷銀仁朗捕手(西武からFA)
中島宏之内野手(オリックス自由契約)
岩隈久志投手(マリナーズ退団)

を得て、重鎮クラスの内海と長野を失った。あんまり成功には見えないですね。

捕手は小林を左打ちの大城と宇佐美が追っていて、去年の印象として大城は他球団ならレギュラー、宇佐美は育てば阿部並の素材ですよ。そこにおじさん阿部も最後は捕手で終えたいなどとわがままいってかぶさってきて、これは紅白歌合戦で大物がトリやりたがるのといっしょ、実に巨人軍的であって若手は本当に不幸です。さらにそこに炭谷って、本音は二人はFA補償で指名されたかったんじゃないか。

中島、岩隈はどうでもいいです。多少はやるだろうが大きな要因ではないです。すると丸と長野のプラスマイナスがポイントですね。才能はいい勝負、長野は5才トシをとってる。ドームの広島戦は熱くなるでしょうね、楽しみです。

 

(PS)

きのう、長野移籍のニュースに興奮さめやらぬ我が家で何げなくついていたTV。日テレジータスの「徳光和夫の週刊ジャイアンツ」がはじまります。

大のジャイアンツファンである女優・中原ひとみがゲストでした(この方、女性にしては凄く詳しい)。話の流れからどうやら丸選手の移籍が決まる前の録画のようだ。中原さん、巨人をほんとに愛してるみたい。そこで一抹の懸念が走り、僕がこう言いました。

「おい、これ、大丈夫か、中原さん長野のファンだったりして」

「録画だからカットできないよ」

「でもまさかね」

なんて盛り上がっていきます。

TV

「巨人の外野は大変ね、丸さんが来てくれたらどうなるんでしょうね」(中原)

「そうですよね、長野なんかどこ守るんでしょうね(余裕の笑い)」(徳光)

ウチ

「カープのセンターです」(爆笑)

TV

「ところで中原さん、誰のファンなんですか?」

「私、イケメン好きなんですのよ、石川君とかいいわね」

「ほお、坂本は?」

「若い人好みのイケメンね」

「小林とか」

「ええ、ちょっと昭和のイケメンって感じ」

「とすると・・・?」

「実はわたくし、長野選手の大ファンなの、ずっと!」

ウチ(激震が走る)

TV(長野の大アップが映る)

 

「やばい、本当に出てしまった」(大爆笑)

 

ここで長野選手の活躍シーンのダイジェスト版が延々と流れTVは大いに盛り上がる。ウチは「よりによって今日これ流すか?」「中原さん、今ごろ寝込んでるね」と、一応東京ドームで見せていただいている身として巨人ファンに同情の気分になっている。

 

週刊ジャイアンツ」は様々な角度から楽しめる素晴らしい番組です。

 

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選手に金を払うのは球団ではなく観客

2018 DEC 23 23:23:44 pm by 東 賢太郎

内海投手のFA人的補償での西武移籍は衝撃でした。そもそも人的補償ってコトバがいやですねえ、補償とは損失を埋め合わせるという意味でふつうは金銭ですがここでは「ヒト」でオッケーですっていちいち「人的」とつけてる。選手を物か奴隷みたいに見ている語感があり不快です。一番ショックだったのはエースを張っていた内海でしょう。しかしTVで観ていた彼の清々としたふるまいは立派ですね。学ぶものがありました。

このニュースでFAで巨人に移籍した丸選手の話題は下火になった感じです。よかったね。「もっと上でやってみたい」は「もっと評価とお金が連動する世界に身を置いてみたい」という意味だと僕なりに解釈をしています。これをプロだから当たり前といってしまっては思考停止なので、少し考えてみます。

まず評価はどうやったら上がるのでしょうか。すべての野球少年のなかで勝ち上がっていくしかありません。頂点はNPBですが野球は日本だけの競技ではありません。メジャーが明らかに頂点です。なぜなら最も高額の報酬がもらえるからです。こう書くと「すぐお金で計るのはいかがなものか」とご批判もありそうですが、シンプルな事実です。なぜなら興行において選手に金を払うのは観客だからです。

たとえば相撲で、お客は十両より横綱や三役の土俵のほうが見たい。だから懸賞の本数も多いのです。客はスターが見たいし、常人にはできない超人的な技能が見たいのであって、それには納得して足を運んで金を払うのです。プロの「評価」とはお客さんにいくら払ってもらえるかで決まるのが本質であって、はえぬき、男気、お世話になってるみたいな球団事情で決まるものではありません。

だから「金満主義の巨人がけしからん」という批判はおかしい。読売巨人軍という会社は35億円出しても諸々を勘案するとペイすると算盤をはじいたから丸選手をとったわけで、なぜペイするかというと、丸選手の直接、間接の貢献で客がたくさん入ると思ったからです。ということは、丸選手は巨人軍の利益を上乗せした金額、つまり35億円以上をお客さんから支払ってもらえる選手だという評価になります。

それがけしからんというならプロ野球という興行がいかんということになってしまいます。そんなことはカープファンも言わないでしょう。つまり、丸の移籍というのは、広島カープ球団は35億を払ったらペイしない。巨人はペイする。だから巨人を選んだ。それだけのことです。それが嫌ならカープ球団はマツダスタジアムの入場チケットを値上げして35億払っても利益が出せるようになればいい。それだけのことです。

僕はチケット代の2割は選手を指名して直接あげられる仕組みにしたらどうかと思います。1万円の席なら8千円はカープ球団に、2千円は毎試合後に投票して活躍した選手にあげる。売上188億円の内100億円がチケット代として20億円が「ふるさと納税」のように選手勘定になる。それで去年の年俸総額と同額です。投手と野手の調整は必要だけど年間通して大活躍すればひとりで10億円もっていくことも可能。金を払うお客が試合を見て「あげたい」というなら当然勝利に貢献度が高いわけで、プロなんだからフェアな仕組みだしモチベーションは凄く上がってチームも強くなると思うのです。

僕は丸を応援したいのですが、一つだけ不満なのは、「もっと評価とお金が連動する世界に身を置いてみたい」というモチベーションがあるという仮定をするならば「メジャーに行きたい」こそが結論になるはずです。巨人に5年もいたらそれはないんでしょう。ということはその仮定は違っていますかね。単に巨人に行きたかったんですかね。

まあ高校生がドラフトで広島に指名されて大成した、しかし、だからといって一生広島に住みたいかどうかは別の話でしょう。エルドレッドは市民に溶けこみ愛されてずっと居たかったかもしれないが、力が落ちれば「ご苦労さん」で戦力外でバイバイだ。そういう世界です。そんなリスクをとっているのだから、リターンが目の前にあればゲットしてあまりにあたりまえでございます。

 

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野村證券・外村副社長からの電話

2018 DEC 10 23:23:02 pm by 東 賢太郎

外村さんと初めて話したのは電話だった。1982年の夏のこと、僕はウォートンに留学する直前で、コロラド大学で1か月の英語研修中だった。勉強に疲れて熟睡していたら、突然のベルの音に飛び起きた。金曜日の朝6時前のことだった。

「東くんか、ニューヨークの外村です」「はっ」「きみ、野球やってたよな」「はあ?」「実はなあ、今年から日本企業対抗の野球大会に出ることになったんだ」「はい」「そしたらくじ引きでな、初戦で前年度優勝チームと当たっちゃったんだ」「はっ」「ピッチャーがいなくてね、きみ、明日ニューヨークまで来てくれないか」「ええっ?でも月曜日に試験があって勉強中なんです」

一気に目がさめた。この時、外村さんは米国野村證券の部長であり、コロンビア大学修士で日本人MBAの先駆者のお一人だ。社長は後に東京スター銀行会長、国連MIGA長官、経済企画庁長官、参議院議員を歴任しニューヨーク市名誉市民にもなられた寺澤芳男さんだった。寺澤さんもウォートンMBAで、ニューヨークにご挨拶に行く予定は入っていたが、それは試験を無事終えてのことでまだまだ先だ。なにより、留学が決まったはいいものの英語のヒアリングがぜんぜんだめで気ばかり焦っているような日々だった。しかし、すべては外村さんの次のひとことで決したのだ。

「東くん、試験なんかいいよ、僕が人事部に言っとくから。フライトもホテルも全部こっちで手配しとくからいっさい心配しないで来てくれ」

コロラド大学はボールダーという高橋尚子がトレーニングをした標高1700メートルの高地にある。きいてみると空港のあるデンバーまでタクシーで1時間、デンバーからニューヨークは東京~グァムぐらい離れていて、飛行機で4~5時間かかるらしい。しかも野球なんてもうやってないし、相手は最強の呼び声高い名門「レストラン日本」。大変なことになった。

その日の午後、不安になり友達にお願いして久々に肩慣らしのキャッチボールをした。ボールダーで自転車を買って走り回っていたせいか意外にいい球が行っていてちょっと安心はした。いよいよ土曜日、不安いっぱいで飛行機に乗り午後JFK空港に着くと外村さんが「おお、来たか」と満面の笑顔で出迎えてくださった。これが初対面だった。午後にすぐ全体練習があり、キャッチャーのダンだと紹介されてサインを決めた。俺は2種類しかないよ、直球がグーでカーブがチョキね。簡単だった。フリーバッティングで登板した。ほとんど打たれなかったがアメリカ人のレベルはまあまあだった。監督の外村さんが「東、明日は勝てる気がしてきたぞ」とおっしゃるので「いえ、来たからには絶対に勝ちます」と強がった記憶がある。そう言ったものの自信なんかぜんぜんなく、自分を奮い立たせたかっただけだ。ご自宅で奥様の手料理をいただいて初めて緊張がほぐれたというのが本当のところだった。

いよいよ日曜日だ。試合はマンハッタンとクィーンズの間にあるランドールズ・アイランドで朝8時開始である。こっちがグラウンドに着いたらもうシートノックで汗をかいて余裕で待ち構えていたレストラン日本は、エースは温存してショートが先発だ。初出場でなめられていたのを知ってよ~しやったろうじゃないかとなった。板前さんたちだろうか全員が高校球児みたいな髪型の若い日本人、声出しや動きを見れば明らかに野球経験者で体格もよく、こっちは日米混成のおじさんチームで27才の僕が一番若い。初回、1番にストレートの四球。2番に初球を左中間2塁打。たった5球で1点取られ、天を仰いだ。コロラドから鳴り物入りでやってきてぼろ負けで帰るわけにはいかない。そこから必死でどうなったかあんまり記憶がないが、僕の身上である渾身の高め直球で4番を空振り三振にとったのだけは確かで、なんとか2点で抑えた。

勝因は外村監督の「バントでかき回せ」「野次れ」の攪乱戦法に尽きる。これがなかったら強力打線に打ちくずされていただろう。全員が大声を出してかき回しているうちに徐々に僕のピッチングも好調になって空気が変わってきた。第1打席で三振したので外村監督に「次は必ず打ちます」と宣言し、次の打席でファールだったが左翼にあわやホームランを打ち込んだとき、投手がびびった感じがして四球になり、勝てるかなと初めて思った。そうしたら不思議と相手に守備の考えられないミスも出て、流れは完全にこっちに来た。後半はまったく打たれる気もせずのびのび投げて被安打3、奪三振5で完投し、大番狂わせの11対2で大勝。翌日の日本語新聞の一面トップを飾った。甲子園でいうなら21世紀枠の都立高校が大阪桐蔭でも倒したみたいな騒ぎになった。

後列、右から3人目が僕

午後の飛行機でコロラドに帰ったが外村さんのご指示で持ちきれないぐらいのインスタントラーメンやお米をご褒美にいただき、学校でみんなに配ったら大評判になった。試験のことはからっきし記憶にないが、無事にウォートンへ行けたのだからきっと受かったんだろう。ということはシコシコ勉強なんかしてないで野球でサボって大正解だったわけだ。やれやれこれで大仕事は果たしたと安心したが、それは甘かった。翌週末の2回戦も来いの電話がすぐに鳴り、三菱商事戦だったがまたまたバント作戦でかき回し、10対0の5回コールド、僕は7奪三振でノーヒットノーランを達成した。また勝ったということでこの先がまだ3試合あって、フィラデルフィアからも2度アムトラックに乗って「出征」し、日系企業45チームのビッグトーナメントだったがいちおう準決勝進出を果たした(プロの投手と対決した思い出)。

コロンビア大学ベーカー・フィールドのマウンドに立つ(1982年8月29日)

準決勝で敗れたがそこからが凄かった。決勝戦と3位決定戦はルー・ゲーリックがプレーしたコロンビア大学ベーカー・フィールドで行われたからだ。そんな球場のマウンドに登れるだけで夢見心地で、けっこう普通のグラウンドだなと思ったがアメリカ人の主審のメジャーみたいにド派手なジャッジがかっこよくてミーハー気分でもあった。ベースボールってこんなものなのかと感じたのも宝物のような思い出だ。この試合、まずまずの出来で完投したが、相手投手陣が強力で攪乱戦法がきかず4対2で負けた(被安打2、奪三振5)。思えばこれが人生での最後のマウンドになった。本望だ。甲子園や神宮では投げられなかったけれど、すべてが外村さんのおかげだ。

外村監督が4位の表彰を受ける

残念ながら初陣は優勝で飾れず申しわけなかったが、この翌年、ウォートンで地獄の特訓みたいな勉強に圧倒されていた僕は外村さんがアリゾナ州立大学の投手とハーバードの4番でヤンキースのテスト生になった人を社員に雇ってついに念願の優勝を果たされたときき、おめでとうございますの電話をした。我がことのようにうれしかった。アメリカで仕事する以上は野球で負けられんという心意気には感服するばかり。遊びの精神がなかったら良い仕事なんてできない、こういうことを「たかが遊び」にしない、やるならまじめに勝つぞという精神は、仕事は本業だからさらに勝たなくてはいけないよねという強いスピリットを自然に生むのだ。僕みたいな若僧を委細構わず抜擢して火事場の馬鹿力で仕事をさせてしまう野村のカルチャーも素晴らしいが、それをああいうチャーミングでスマートな方法でやってのけてしまうなんて外村さん以外には誰もできなかった。

大会委員長から「最優秀選手賞」のトロフィーをいただく

試合後の表彰式で4チームの選手がホームベース前に整列した。各監督への賞品授与式が終わって、いよいよ選手一同のお待ちかね、今大会の「Outstanding Player賞」(最優秀選手賞)の発表になった。緊迫したプロ並みの投手戦となってスタンドがかたずをのんだ決勝戦、1-0の完封で優勝した神山投手(甲子園選抜大会で岡山東の平松政次に投げ勝った人)に違いないと誰もが思っていたらマイクで呼ばれたのは僕の名前だった。一瞬あたりがシーンとなる。各チームのエースの方々の経歴は優勝が阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)、2位がヤンキース、3位が読売ジャイアンツで素人は僕だけ。しかも4位だ。何かの間違いだろうとぐずぐずしていたら、その3人の大エースがお前さんだよ早く出てこいと最後尾にいた僕を手招きし、そろって頭上であらん限りの拍手をくださった。ついで周囲からも拍手が響き渡り、あまりの光栄に頭が真っ白、お立ち台(写真)では感涙で何も見えていない。

それもこれも、外村さんの電話からはじまったことだ。このことがその後の長い野村での人生で、海外での証券ビジネスの最前線で、独立して現在に至るまでの厳しい道のりで、どれだけ自信のベースになったか。後に社長として赴任されたロンドンでは直属の上司となり、英国では英国なりにゴルフを何度もご一緒しテニスやクリケットも連れて行っていただいた。国にも人にも文化にも、一切の先入観なく等しく関心を向け、楽しみながらご自分の目で是々非々の判断をしていくという外村さんの柔軟な姿勢は、ビジネスどころか人生においても、今や僕にとって憲法のようなものになっている。

そこからは仕事の上司部下のお付き合いになっていくわけだが、常に陰に日向に気にかけていただき、ときに厳しい目で苦言もいただき、数えたらきりのないご恩と叱咤激励を頂戴してきたが、誤解ないことを願いつつあえて本音を書かせていただくならば、僕から拝見した外村さんの存在は副社長でも上司でもなく、すべてはあのコロラドの朝の電話に始まる野球大会での絆にあった気がする。だから、まず第1にグローバルビジネスの酸いも甘いも知得されなんでも相談できる大先輩であり、第2に、延々とそれだけで盛り上がれる、野村には二人といない野球の同志でもあられたのだ。

きのう、外村さんの旅立ちをお見送りした今も、まだ僕はそのことを受け入れられていない。9月10日にある会合でお会いし、ディナーを隣の席でご一緒したがお元気だった。その折に、どんなきっかけだったか、どういうわけか、不意に全員の前で上述のニューヨーク野球大会の顛末をとうとうと語られ、

「おい、あのときはまだ130キロぐらい出てたよな」

「いえ、そんなには・・・たぶん120ぐらいでしょう・・・」

が最後の会話だった。11月1日にソナーが日経新聞に載ったお知らせをしたら、

東くん
何か新しいことに成功したようですね。おめでとう。
外村

とすぐ返事を下さった。うれしくて、すぐに、

外村さん
ありがとうございます、少しだけ芽がでた気がしますがまだまだです。これからもよろしくお願いします。

とお返しした。これがほんとうに最後だった。この短いメールのやり取りには36年の年輪がかくれている。おい、もっと説明してくれよ、でもよかったなあ、という「おめでとう」だ。でもわかってくださったはずだ。そして、もし説明していたら、外村さんはこうおっしゃっただろうということも僕はわかってしまう。

12月5日の夜、外村さんが逝去される前日に、なんだか理由もきっかけもなく、ふっと思いついてこのブログを書いていた。

寺尾聰「ルビーの指環」

あとになって驚いた。1982年だって?このブログはコロラド大学に向けて成田空港を出発し、外村さんからあの電話をいただく直前の話だったのだ。どこからともなくやって来たなんてことじゃない、あれから36年たってかかってきた、もう一本の電話だったのかもしれない。

外村さん、仕事も人生もあんなにたくさん教わったんですが、野球の話ばかりになってしまうのをお許しください。でも、きっとそれを一番喜んでくださると確信してます。ゆっくりおやすみください。必ずやり遂げてご恩返しをします。

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広島カープは来年も勝つ

2018 DEC 3 23:23:03 pm by 東 賢太郎

広島カープにとってFAは受難の歴史だ。大好きだった江藤、川口が、それも巨人に盗られるとなってどれだけ憤慨したか。だから今回の丸騒動で彼のグッズがユニホームからサインボールまで「売り気配」になったのもよくわかる。

あれから年月を経て、いまの気持ちをというと、野球人としての丸の思い切りを見守ってあげたいのが半分、カープの奮起を楽しみにしたいが半分だ。

前々回のブログを書いていて、なぜ僕が幼くしてカープファンになり、54年もそれであり続けたかわかった。「10倍になる株」探しが生来のライフワークだからだ。タナキクマル、誠也、松山、中崎、会澤、西川、屋台骨のセンターライン・クローザー・クリーンアップにドラ1はひとりもいない。みな「10倍になった株」なのだ。これぞ僕にとって魅力の源泉だったし、これからも変わってほしくない。FAで「すっ高値の株」をつかんで大損するなど、僕の美学からは最も恥ずかしいことである。

丸が出て行ってもこの「目利き力」が健在ならまったく問題ない。若い芽を見つけ育てて大輪の花を咲かす。こんな夢のある球団はない。芽は良いのにほとんど枯らしている巨人は常勝というノルマで集客を運命づけられた球団だからそれができない。だから今回はヒールになってでも丸が欲しかった。広島はたたけば全国でスタンディングオベーションしてくれる大物悪役が現れて、むしろラッキーと思ったらいい。

丸は悪役にしてほしくない。というのは巨人の提示内容は彼が一度しかない人生でのリスクテークを促すに足るものだったと思うからだ。プロである以上、残留したとしても、毎年やることはいっしょである。ぎりぎりの努力を重ねた選手だからどこでやろうと同じという割り切りがあったと思う。ならば野球に集中できる環境が大事であり、そこを巨人は担保したということではないかと愚考する。

田中は原監督、菅野の東海大相模だし、菊池、誠也、岡田、中村祐太は東京出身、会澤も茨城だ。丸の選択の影響がないとはいえないだろうし、黒田、新井が盛り上げてくれたカープ愛だがそれだけでは難しいというのが今回の教訓でもある。私事で恐縮だが僕も入社すぐ大阪に配属になって、今も第2の故郷、仕事の原点と感謝の思いが非常に強いが、終生そこに住むかどうかは別だ。

カープの「10倍になる株」探しは続くと信じるし、ドミニカ共和国に作った日本球界史上初のアカデミーなど、その育成システムは真の意味で堂々たるグローバル戦略だ。おためごかしの海外進出ではなく、少ない資金で最大の結果を得ようという血のにじむような努力、まさに僕らが野村證券で営々とやってきた「地に足の着いた、真にリターンのある海外戦略」である。徹底的に応援したい。

 

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究極の二刀流「ベートーべンの交響曲は1番から9番まで」(!)。

2018 NOV 28 0:00:45 am by 東 賢太郎

最近聴いているのは、ショパンのピアノ協奏曲1番と2番。ラフマニノフのピアノ協奏曲2番、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲、ベートーべンの交響曲は1番から9番まで……。

こう言った人がいる。彼は日々のことをきちんとノートに記録する勉強家でまじめな青年であり、それだけでなく、スポーツマンで野球も上手だ。だからこの言葉はとても僕の心にささった。

僕はクラシックと猫がバロメーターのところがあって、どんな人でも「猫好きです」と言われると好きになってしまう困った人間だ。殺人犯が実は猫を飼っていたなどときくとつらい。クラシックもそうで、誰であれ好きと聞けば話しをして見ようかなとなる。

この人があげたショパンのピアノ協奏曲1番と2番。ラフマニノフのピアノ協奏曲2番、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲、ぜんぶ名曲である。しかし、ぜひ会って見たいと思ったのはそれが理由ではない、

ベートーべンの交響曲は1番から9番まで……。

と語ったところがズシンと響いた。これでわかった、この人は本物のクラシック・リスナー、インテリだ。

この言葉の主は広島カープの丸佳浩選手である。セリーグの2年連続MVPであり、FA宣言をして巨人、ロッテが熱烈ラブコールしているあの丸だ。彼が登場曲にラフマニノフの2番を使ったことがあることは聞いていた。選手はもちろん球場ぜんぶでもそれが何かわかった人はほんの一部だったろう。それだけでもレアだが、ベートーべンの交響曲1番から9番までは凄すぎる、東大のクラスメートでも、あの当時に9曲全部知ってる人はいなかったろう。

丸選手に巨人が5年で30億、ロッテが4年で20億と監督手形を提示したと報道されている。巨人で単年6億だとエース菅野を上回り、生え抜きのスターで選手会長の坂本の倍ほどにもなる。原監督の三期目の初陣を優勝で飾るにはFA補強も大事だが、目の上のたんこぶであるカープの弱体化も目論みたい。丸の獲得はプラマイで効く劇薬なのだ。だから巨人は丸がロッテに行っても目的の半分は達成で、値段を吊り上げてロッテをあおり、それについて来れないカープ残留の道さえ封じれば成功なのである。

ここで丸が残留を決めれば丸は広島で黒田なみの英雄だろう。将来の監督候補にもなるだろう。丸の個人の幸福だけでない。やがてFAの俎上に登るであろう菊池、田中、會澤、大瀬良、鈴木誠也らの判断にも処遇にもプラスの影響があるから効果は絶大だ。すべてのカープファンがそう願っているのは当然のことだ。しかしご家庭の事情があるかもしれないし、自分だけの幸せで人生を決める男ではないようにも感じる。そしてプロ野球選手の評価は男気ではなく、まぎれもなく、お金なのである。

きっと丸も悩んでいるだろうがファンも複雑だ。なぜなら丸の今季の成績評価が並大抵ではないからだ。彼の実績で驚くべきは本塁打数でも打率でもない、OPSだ。メジャーで新人王の大谷がベーブルース以来と騒がれたが、丸のOPSもベーブルース並みの群を抜いたハイスコアで異常値ともいえる偏差値80ぐらいだ。もろに得点力に関係する指標であるからカープ3連覇の原動力であったことは統計的に明白であって、巨人の提示額ぐらいはまったく納得である。

しかし僕はロッテファンでもある。巨人ならあきらめるがカープとの争奪戦となってしまうと断腸の思いでとても困るのだ。もし関東に戻ることが前提ならロッテに来てくれればマリンスタジアムに応援に行くし、どこかでお会いする機会が作れるかもしれないからうれしいが。ベートーベンの7番と言わなかった丸選手に大変関心があるし、同じ二刀流でも文武両道のそれの究極であって、心からの敬意をお伝えもしたいという気持ちがある。

プロ野球選手でピアノを弾く人はいたが、ベートーベンの2番や8番を楽しむ人は一人もいないと思う。丸くん、人生一度の決断だ、どこで活躍しようと貴君なら立派に野球人生をまっとうすると信じるし、ご決断を徹底的に応援します。

 

クラシック徒然草-カープの丸選手とクラシック-

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カープ丸選手のFA移籍について

2018 NOV 18 19:19:37 pm by 東 賢太郎

FA宣言したカープの丸の去就が注目されている。カープファンとしては複雑だがここまで努力した丸を応援してやりたいし、何人も主力選手を引き抜かれても強くなるシステムを確立したカープ球団の経営努力も応援したい。

まずFA制度についてひとこと。僕はドラフトという制度は基本的人権である職業選択の自由を侵害する憲法違反だと考えている。プロ志望届を出してNPBで働く資格を得るのはいい。それでNPBと契約して給料をもらうなら何の問題もない。どの球団に所属するかは新人の赴任地の振り分けに過ぎないからだ。

ところが実態は契約するのは球団であり、NPBは単なる業界団体なんです、12社どこに就職できるかは会社がくじ引きで決めますというのだ。全社の処遇が一律ならまだしも、本店所在地も初任給も出世や退職後の人生航路の期待値もぜんぜんちがう。このリスクを一方的に選手に取らせる仕組みは、どこから選択権が選手から球団に移るのか理論的に明確でない。

NPBは戦力の均衡を図って興行を盛り立てたいからくじ引きという偶然性の要素を求める。それが嫌なら選手はプロ野球はあきらめるしかないという別個の不均衡を生む。かような場合は経済的な補完手段しかないのが通常である。例えばドラフト会議の場において、その枠組みの中で、競合した選手は契約金をオークションにするのだ。根尾選手、巨人が3億円で落札!という風に。

かつてはそれを裏でこそこそやっていた。それでできたドラフトだろうという声も出よう。しかし3億円払ってもポスティングでメジャーに売れば20億円入るから金を借りてでも投資しようという球団もあろう。それを堂々と表でやれということ。すれば選手は職業選択の自由は放棄しても経済的に報われるからフェアだ。要するに「セリ」はいかんというなら「くじ引き」はどうなんだ、目くそ鼻くそじゃないの?という意見である。

FAという制度は、「セリ」をしないドラフトの不均衡を時間差で金銭的に解決するものだ。子供のセリはいかんが大人になればいいだろうというわけのわからないものともいえる。戦力の均衡を図るNPBの意図に反するが、球団の経営力の差で「均衡化」に反旗を翻す余地は残そう(まあ巨人のためだが)、そして選手の基本的人権を尊重したということにもしようというおためごかしだが。であるからして、選手は誰に気兼ねなく金銭重視でFA権を行使してよいという結論になるのだ。

カープファンとしては丸がそうしては困る。しかし僕は「理」で突き詰めた結論に感情で逆らわない人間だ。丸は巨人、ロッテに行ってよい(もしアフターケアを入れて最高条件ならばだが)。カープはお金でなく男気スピリットで帰って来た黒田、新井という求心力で3連覇した。それを中心で支えた丸はもう十分にいい仕事をしたし、球団は丸の引き留めで従来のポリシーを変えるリスクを冒すべきでない。丸が抜けても必ずあとは育てる実績があるが、スピリットというものは変質すると容易に元に戻らないからそのリスクは巨大なのである。

私事で恐縮だが、今になって自分の来た人生航路を振り返ると、野村をやめた2004年に他社からオファーが3つ来て、つい「他球団の評価を聞いてみたい」と魔がさした。あのとき野村では若手の台頭で居場所がなくなってきており、君が必要だという声は甘く響いた。それに乗ってしまった決断がどうだったのか、残る道を選ばなかったのだから知りようがないが、まだ選手で行けると思ったので東証1部上場企業役員の肩書だった2つはお断りして部長のオファーをとった。だから金銭ではなく仕事をとった。

丸選手は迷うだろうなと思う。でも僕らと違いプロ野球選手の実働年数は少ない。年金もない。実績なんて済んだことであって、力が落ちればご苦労さんで戦力外通告だ。だから金銭的価値での評価を絶対に優先すべきと思う。新井は居場所がなかったし黒田はすでに超富裕層だったのだ。男気は関係ない。お金は天から降っては来ません。男は稼いでなんぼの世界でプライドをかけて戦っているのです。君が必要だという甘い声は無視。金があればそこから先はどうにでもなる。もちろんカープも含めてドライにクールに条件だけで決められたらいい。

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