Sonar Members Club No.1

カテゴリー: ______ホルスト

ホルスト 組曲「惑星」 作品32

2014 JAN 27 17:17:47 pm by 東 賢太郎

僕が天文学者になりたかった話を書きました。といっても興味の対象は恒星であり、一般に好かれる天文現象の観測、たとえば日食やら流星群を見たりということには関心はないのですが。考える時間軸は億年単位、距離は光年単位で、とても浮世離れしたものが好きです。

英国の作曲家グスタフ・ホルストによるこの曲は、表題がこのようになっていて 科学的なコンテクストはありません。

 

「完成された1916年にはご覧のとおり冥王星は発見されておらず入っていません」というのがこの曲の解説の定番でしたが、どっこい本物の冥王星の方が惑星からはずされてこの組曲が正解になってしまったのは皮肉なものですね。

「惑星」はイギリス音楽では最も有名なもののひとつですが、イギリス音楽というのはなかなかクラシック界ではメジャーになれません。いい曲はたくさんあるのですが・・・。この惑星にしてもフルトヴェングラーやトスカニーニが振るということは想像もできず、どうしてもニッチな印象がついてしまいます。当のイギリスでも初演して以降はあまり評価されずに埋もれていたようです。ではなぜそれが世界的に有名になったかというと、メジャーレーベルであるDeccaにヘルベルト・フォン・カラヤンが移籍して、おそらく英国の会社であるDeccaへのリップサービスとしてこれを録音したかと思いますが、それが世界的に評判になったからのようです。

そのカラヤン指揮ウィーン・フィルのLPが1973年に発売されると日本のクラシック界は大騒ぎになりました。というのは1枚1000円で出たからで、当時LPは2000円の時代でカカラヤン惑星ラヤンのステレオ盤が廉価版というのは衝撃のプライシングだったのです。すぐ売り切れそうで僕も先を争ってチャイコフスキーのバレエ、ブラームス交響曲第1番とこの惑星(右)を買ったものです。当時の興奮がなつかしい。LPは消耗品で盤面の具合、プレスした国籍なんかで音に違いが出て、極端にいえば同じジャケットでも一枚一枚が違う商品でした。だから皆さん愛情をこめて扱っており、どこか所有する喜びというのがあったのですね。今のCDには商品としての個性がない、いわば缶詰でも買ってるみたいなもんでどうも有難味がありません。それで安くなるのはいいのですが、芸術品というのは安くなると中味の価値まで低い感じがしてくるのが困ります。ともあれ2000円というと今ならさしずめ5~6000円ぐらいのイメージでしょうか。その半値でこれが所有できるというのがどんなに嬉しかったかご想像できるでしょうか。

この曲では何といっても4番目の木星が「ジュピター」として平原綾香の歌で有名になりました。民謡調のいい節ですね。ただ全体に音楽的な価値はそれほどでもなく管弦楽も巨大な割には革新的なこともなく、春の祭典より後にできた作品としては陳腐なものと思います。唯一評価しているのは最後の海王星で、EmとG#mの複調が極寒の氷の世界を連想させていいムードです。これはライブで聴くと舞台裏で歌う女性合唱とオケの掛け合いがなかなか面白く、アカペラの声がフェードアウトして消えるというアイデアはうまくいけば演奏効果が非常に高いですね。ジェイムズ・ジャッド指揮の2005年2月12日N響Aプロでの演奏は大変な名演でした。

木星をお聴きください。

次に海王星です。

CDは特に迷う必要もなく、市場に出ているのは皆それなりの腕前の指揮者とオーケストラの物ですからどれでも買って覚えればいいでしょう。あとは好き好きです。僕が好きなのはこれです。

 

ユージン・オーマンディ / フィラデルフィア管弦楽団

惑星この高性能オケの技とパワーが全開、実に凄い演奏がきけます。例えば火星のリズムで、ティンパニをバックに淡々と刻む5拍子が他のどの演奏よりも軽くて弾んでいるのです。ちょっとしたニュアンスなんですがセンスと技術ですね。それでどれだけ音楽の表情が生き生きと変わるか、ワインに例えれば並みのボルドーとペトリュスぐらいの差がありますよ。初心者の方はまず高いほうから飲むのが常道です。それを覚えておいてそういう味でなければ全部安物と思えばいい。安物を何百本飲んで覚えてもペトリュスがうまいというのはわかりません。そういう投資はカネの無駄です。

最後にこちらを。郡山2中のオーケストラによる木星。いやうまいですね、これ。中学生でこれは脱帽です。

 

(こちらもどうぞ)

フレデリック・ディーリアス 「ブリッグの定期市」

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊