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カテゴリー: ______僕の愛聴盤

僕の愛聴盤(5)ゴルシュマンの悲愴

2023 DEC 22 23:23:14 pm by 東 賢太郎

“Music giving peace to me” This wonderful performance is an oasis for me in everyday life. A comfortable chord will heal me. And I appreciate the producer of this channel. The setting “afterglow” after playing is the best directing. Great. Sergiu Celibidache too 🙂 Fashionable and charming performance by Vladimir Golschmann is awesome. After all, YouTube is very attractive. Because it meets such a wonderful performance depending on the search. February 13, 2019 「私にやすらぎを与える音楽」 この素晴らしい演奏は私にとって日常生活でのオアシス 。 心地よい和音が私を癒します。 そして、私はこのチャンネルのプロデューサーに感謝します。 演奏後に設定の「余韻」は、最高の演出です。素晴らしい。Sergiu Celibidache も:) Vladimir Golschmann のオシャレでチャーミングな演奏は最高です。 やはり、YouTubeはとても魅力的です。 検索次第で、このような素晴らしい演奏に出会るのですから。@user-po6ft6mk4d様)

It is sad to see this performance is utterly forgotten. I’m really glad to find your message and your appreciation. Thank you. (東のお返事)

There was a temporary trendy word “escape from crowds in the city … country life”. But, because I am the best to live in the city, it is very comfortable. It is not only on PCs that seek comfortable access. Now, I am seeking an oasis from “TV full of advertisements” … YouTub I found. I appreciate your channel. Thank you. March 5, 2019 かつて、流行り言葉に「都会の雑踏から逃れて…田舎暮らし」がありました。 でも、私は都会で暮らすのが最高、とても快適ですから。 快適なアクセスを求めるのは、PC上だけではありません。 今は、私は、「広告という雑踏で溢れたTV」からオアシスを求めて…見つけたYouTubeといったところです。 あなたのチャンネルに感謝します。ありがとう。 ”(@user-po6ft6mk4d様)

11:57 That Viennese brass! found this gem at my local flea market for $1 in glorious stereo. The one with an atom looking thing with particles orbiting around it.(@douglaskelly1394)

 

この素晴らしい悲愴の価値をわかってくれる人が世界にはいる。嬉しい。(東)

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フランク「ヴァイオリン・ソナタ」再発見

2023 JAN 6 23:23:43 pm by 東 賢太郎

飯より好きな曲なのに気がつくとずいぶんご無沙汰ということがある。友達なら会えばすぐ戻る。ところが音楽の場合は、情熱が冷めたわけではないのに、いざ聴いてみるとまるで疲労して肩こりになったように心が固くなっていて、いまひとつその曲に入り込めずあっさり通り過ぎてしまうことがある。去年12月に東京芸術劇場で聴いたエリアフ・インバル / 都響のフランク交響曲ニ短調がそれだったらどうしようと思っていた。幸い徐々に心にしみ、じわりと漢方薬みたいに効いて感動した。

以来、とても深いフランクの世界をあれこれ渉猟することになって、youtubeには気に入っているペルルミュテールとパレナン四重奏団によるピアノ五重奏曲をアップさせてもらったりした。そして、そうこうしているうち、やっぱりここに帰ってきてしまうのだ。ヴァイオリン・ソナタイ長調である。ブラームス4番を我が命の音楽と書いたが、このソナタは魂に彫り込まれている。これに感動しなくなったら人間をやめてもいいぐらいだ。

レコード、CD はたくさんある。グリュミオー / セボック盤が圧倒的に素晴らしいが、もうひとつ、どうしてこれに気づかなかったのか不分明を恥じるほど揺さぶられた演奏がある。ナージャ・サレルノ・ソネンバーグ / セシル・リカド盤(EMI)である。

ローマ生まれのナージャは父親をなくし8才で母親と米国に移住した。それなりに富裕だったのだろうが、とはいえ母と幼い娘が気楽に安全に入って行けるほど米国社会は甘くない。カーティス音楽院でイヴァン・ガラミアン、ジュリアード音楽院でドロシー・ディレイという著名な教師に付いて学んでいる。才能がないのにコネだけでできるほど甘くないのも米国社会だ。彼女は奔放なスタイルの人で、教育の枠に収まりきれなかったという趣旨のことがバイオに書かれているが、そうだろうか。教師と生徒、感性の違いはあってもヴァイオリンを自在に弾きこなすハイレベルな訓練なくしてこのCDのような演奏ができるはずはなく、むしろ名教師直伝の技術という素材を自分流に使いこなすところまで個性を発揮した、それを教師は喜ばなかったかもしれないが、そこまで飛翔してしまえた彼女の才能を評価すべきだと僕は思う。

このCDを池袋にあったWaveで買った理由は記憶がない。ひょっとして日本で聴いたのだろうかレコ芸の評が良かったのか、それも覚えてない。CDはそのまま棚に埋もれていたのだから印象が薄かったのだろう。しかし、先ほど何十年ぶりかに取り出して、完全に虜になったのだ。いや、こんなフランクは知らない。グリュミオーの典雅としか言いようのない節度と気品とは違う。そういうものをこの人は求めておらず、そのかわり満ち溢れるような音楽への愛と歌がある。それが打ち震えるヴィヴラートに乗ってぐいぐい迫って来る。楽器はグァルネリの”Miss Beatrice Luytens, ex Cte de Sasserno” とwikiに書かれているが、その音だろうか弾き方だろうか、E線の高音部でもG線のハイポジションのような肉厚の音色である。フランコ・ベルギー派の特徴ともいえ、彼女が意識してそうしたかどうかはともかくフランクにはそぐわしい。

何度この録音をききかえしただろう。Mov1の冒頭主題の慈しみからして尋常でない。いきなりロマンの深い灰色の霧に放りこまれるが、旋律がオクターブ上がると予想もしない妖艶な色香がのってきて熱さが徐々に見えてくる。フレーズの感情の変転につれテンポが大きく揺らぎ、これが見事にツボにはまって心に入りこんでくる。すすり泣くような弱音から激情の嵐へのクレッシェンドで一気に高みに持っていかれると、もういけない。こんなヴァイオリンをいったい誰が弾いただろう。最高音でピッチがほんのわずかだけはずれるが、我関せず肉厚の美音で歌を朗々と歌い、まるで霊に口寄せする巫女のように世界に “入って” しまっている 感じだ。普段はそれで白けてしまう僕だが、なぜだか気にもならない。

ショパンを想起させる激情のMov2も音楽はいったん止まりかけ、Mov3のコーダに近づくや聞こえるか聞こえないかの命懸けのppになる。極限までテンポも落ちる。息をひそめた二人の入魂ぶりは凄まじい。だからMov4の主題が聞こえると、まるでシューマンのライン交響曲の終楽章の出だしみたいにほっとする。あまりに深かった幻想の闇から救い出されたように、慰撫するようにこの主題をpで弾いてくれる。やがて激するとテンポが上がり、最高音に渾身のヴィヴラートがかかり、コーダに向けてぐんぐん加速して曲を閉じる。僕はここのアッチェレランドには否定的で、おそらく初めてきいてそれが気に入らなかったと思う。しかし、これが年の功なのか、二人の20代の女性のパッションに打ちのめされてなのか、ここでは少しも嫌でない。

グリュミオーの禁欲性や翳りがなく、こんなに歌っていいのかと思うほど情熱とロマンにまかせてアクセルをふかしているように聞こえるかもしれないこの演奏を評価しない人も多いだろう。下に貼ったyoutubeのCDジャケットをご覧になれば、自由奔放ぶりにフォーカスして “じゃじゃ馬” と日本で評された路線でEMIも売り出そうとしていた風情が伺えよう(日本の保守的なクラシックファンに売れない写真だ)。しかし、演奏とは楽譜から奏者が汲みとった感情のプレゼンテーションであって、ことその一点に限っていうなら強い主張がないと何のためにそれをやっているのか自体が問われてしまうビジネスのそれとちっとも変わらない。正統派の解釈ではなくとも、奏者の人間性に打たれて納得する。ということはその音楽が秘めていて気がつかなかった大事なものを再発見させてもらったことになる。

この演奏、まるでライブのように彼女たちが一期一会で感じたものの発露であるように聞こえるし、それが魅力であることに異論もない。しかし、実は見事に計算された、いや、計算という言葉が無機的に響くなら、二人の奏者の琴線にふれるという所に達するまで入念に吟味し、試行し、よく考えぬかれたものだろう。そうでなければ達しない深い印象が、つまり偶然の産物なら2度目は得られないそれが何度聞いてもあるのは、この音楽の「歌」という本質に根ざすところまで熟考されているからに相違ない。じゃじゃ馬が気の向くままに好タイムを出したようにきこえるが、造りこまれた完成品である。同曲の前年に発表されたブラームスの第2ソナタをフィルアップしているのも偶然とは思えないように。

更に弁護しておこう。フランクはベルギー(ワロン)人でフランスに帰化しているからこの曲をフランス音楽と類型化するのは誤りだ。彼の父はドイツ系、母は生粋のドイツ人で母国語はドイツ語。没頭していたのはワーグナーのトリスタンなのだ(このソナタにも痕跡がある)。秘めているドイツロマン派源流の精神はフランクには根強いのだ。ナージャは思うにそれに共振するテンペラメントの持ち主で、このフランクは数多ある名演奏のうちでも最も「トリスタン寄り」のひとつであり、トリスタン好きの僕が共鳴してしかるべきものだった。ナージャと同い年のセシル・リカドはフィリピン出身だ。米国でラフマニノフをきいたが、ロマン的な音楽への資質は逸品(そうでなければルドルフ・ゼルキンの唯一の弟子にはなれなかったろう)。繊細、強靭を織り交ぜたタッチでナージャに心をぴたりと同期させ、しかもこの音楽に不可欠な格調と知性を加えている。それがあってこそヴァイオリンは自由にファンタジーを羽ばたかせ、静謐な部分では清楚とさえ感じる絶妙の音程に昇華を見せている。

このおふたり、この10年ほど名をきかない。お元気ならいいが。大御所ばかり呼びたがる日本だが、僕としてはこういう魅力ある天才肌のアーティストをぜひ生で聴きたい。

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思い出のレコード(パリ管の3枚)

2022 OCT 18 12:12:26 pm by 東 賢太郎

人間の細胞は3年でほぼ全部が入れ替わるそうです。ということは3年ぶりに会った人は実は「別人」なんですね、物理的には。でも誰もそうは思わない。思えない。なんたって、自分もそうなんですからね。同じことで、僕が応援する広島カープだって選手の顔ぶれを見るともう5年前とほぼ別な球団です。でも応援する。名前、ユニホームは同じだし、理由はいろいろありますが、それは皆さんわかってるのだから錯覚というわけでもない。集団は一個の生き物であり、構成するどの個人の個性でも意思でもないものが宿っている、少なくともそう見える、ということだと思います。

マケラ率いるパリ管弦楽団。結局、今日のサントリーホールのBプロもネットで買ってしまいました。数枚だけ残席があったのを見つけたからもうだめです。「海」の音が不満だったし、ラヴェルP協、火の鳥があきらめきれないしなんてのもあるんですが、それよりも大きな、やっぱり「広島カープ」と同じ衝動がある。つまり、「パリ管」が気になるんです。ひょっとしてもう聞けないかもしれないなんて考えだすと僕は後悔の方が嫌なんで行っちまおうになるタイプです。

なぜか。ブラームス1番、幻想、チャイコフスキー4番という、僕にとって終生の宝になる3つの交響曲をこのオーケストラのレコードで覚えたからです。もちろん同じ奏者は一人もいないけど、それでも初恋の人というのは残るんです。東京にいるのに会いに行かないなんてのは無理。こういう気持ち、ぴったりなのが英語にあるんです。

irresistible

不可抗力だってことです。抵抗する相手は「権力」もありますが「誘惑」の場面で使うことがけっこう多く、日本語なら「たまらないね」ですがそうは言ったもののやめる感じもある。英語は「どうしようもなさ」が強めで、そう意図的に伝える場面で、2次会のシメでラーメン屋の暖簾をくぐる時なんかぴったりです。

3枚のLPレコードを買ったのは高2あたりで、まだどっぷり野球づけだったころです。ベンチャーズの「スーパー・サイケデリックス」というLPがありまして、当時「サイケ」なるドラッグ系アルバムが流行ってました。火をつけたのはStrawberry Fields Foreverですね。ベンチャーズのそれも最初はこの曲で、彼らには珍しく大丈夫かってぐらい原曲に近い。しかしどうもいまいちでがっかりしてました。周囲が浮かれてたピンク・フロイドはまったく趣味があわない。そうこうするうち、レコード屋で見つけてしまったのです。「幻想交響曲」。なんと、クラシックにサイケがあったのか!しかもジャケット(右)が何とも妖しい。完全に騙されました。針を落として何だこれは!となったのです。「火の鳥」もカン違いで買ってガックリだったし受難続きでした。しかし、いま振り返ると、ベルリオーズは阿片自殺を図ったヤク中だったんでジョン・レノンと比べてなんらおかしくない。第5楽章のぶっ飛び具合なんてStrawberryも真っ青、サイケそのものなんです。

この幻想とブラ1はシャルル・ミュンシュがオケ創設時のパリ管を振った演奏でどちらも代表盤とされてます。しかしブラ1も真価を知ったのは後に出たフルトヴェングラー盤で、このレコードでおおっと思ったのは曲でなく盤の色が赤くて透明なことなんです(笑)。当時、雑誌のオマケなんかについてくるソノシートというふにゃふにゃの下敷きみたいなレコードがありまして、それも赤で透明で、その連想もあって音質の心配をしましたね。特に差は感じませんがそのせいか赤盤はすぐ消えてしまったんでこれと幻想はけっこうレアかもしれない。美品だし子孫がメルカリに出す危険がありますね。

チャイコフスキー4番は35才の小澤征爾の指揮です。5番はオーマンディ盤を買いましたが、パリ管というのに惹かれたのを覚えてます。しかしまだ高2です。フランス音楽にすら目覚めてないのにどうしてパリ管を知ってたのか覚えてませんが、5番より先に買ってるので4番(たぶん第3楽章)に興味があったこと、ジャケットが珍しい練習風景の写真で無用にパリやロシアに紐づけせず小澤にフォーカスしていて録音がよさそうだという印象を持ったことはあった気がします。彼がシカゴを振った春の祭典を買ったのもこのころ。当時の僕はそんなものでした。

パリ留学中の娘はパリ管はノーチャンスらしいですがオペラ座でフィガロを聞くらしい。うーん、そうか。ここで出てくる言葉が “irresistible” なんです。

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僕の愛聴盤(3)オーマンディーのシベリウス2番

2021 JAN 2 2:02:30 am by 東 賢太郎

皆様、あけましておめでとうございます。

まだ初詣も行ってませんが明日は少し余裕ができます。お正月も変わりましたね、店も開いてるし、子供のころ元旦は時間的にも空間的にも日常と遮断されたエアポケットのように感じていましたが、もはや単なる1月の1日かもしれませんね。

シベリウスの2番を久々に大音量で聴きました。きのうupしたセゲルスタム/デンマーク放送響盤は大河の如き悠然たる演奏ですが、今日は年の初めということで、原点に返って、高3の時に買って曲を覚えたオーマンディ/フィラデルフィア管(CBS盤)です。

オーマンディー盤

僕の高校時代に出ていた「栄光のフィラデルフィア・サウンド」シリーズのLP1500円で廉価版(1000円)と定価盤(2000円)の中間で、おカネがなかったので何枚も買いました。当時の装置では録音がけばけばしく感じましたが、どれもスタンダードの演奏で2番もこれで覚えてよかったと思います。のちにドイツ勤務時代にフランクフルトのVirgin recordでCDバージョンを買いました。94,5年です。

CD(9.99マルクのラベルあり)

これはオーストリア・プレスで音がいい。いまの装置で鳴らした音は肉厚で素晴らしく、完全に引き込まれてしまいました。歌うだけではだんだん抑えられなくなり、アップライト・ピアノで合奏に参加。このオケはほぼ440ヘルツでぴったり合うのです。刑事コロンボのテーマのお終いが同じ音列で第1楽章にあることを発見、そうか、マンシーニもこれを弾いてたか。しかしフィラデルフィア管弦楽団と協演とはなんという贅沢だろう!最後の和音が消えしばし動けず、あまりの感動に涙がぼろぼろ出て家族を驚かせました。

今年はシベリウスとブルックナーでこれをやろう。

それにしても、1月6日にワシントンで何がおこるのか?トランプ大統領は休暇を急遽切り上げてDCに戻りました。憲法遵守で大人しく振舞ってきたが、フリンが日本の米軍基地に来ている噂もある。ウクライナの国会議員が裏金をマネロンしてバイデンの口座に振り込んだ証拠をあげました。バイデンは反ロシア派ずぶずぶで、潰してウクライナを併合したいプーチンとディールした可能性がある。息子はハニトラで恥ずかしい写真をネットでばらまかれてる。バイデンは即死ですね。フランクフルトで軍に拘束されたCIA長官ハスペルは司法取引で吐いたようなので証拠は上がってる。戒厳令を出すなら狙いはオバマでしょう。暴動の恐れありです。そこまでするのか、南シナ海で中国とドンパチの方に行くのか?そうなれば日本の一部政治家とマスコミはひとたまりもないだろう。訳アリでこれをぜんぜん報道できない本邦メディアは王手飛車取りでもう死んでますね。

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僕の愛聴盤(2)

2020 SEP 27 13:13:23 pm by 東 賢太郎

 ラヴェル 舞踊音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)(ピエール・ブーレーズ / ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団)

この奇跡のようなダフニス全曲はyoutubeで世界のファンと最もシェアしたかったひとつだ。ところがアップするとすぐ消されてしまい、懲りずにあげた2度目はしばらく残ったがまた消されてしまった。著作権を侵害して商売する気は全くないが、権利のない者がどう言い訳しても仕方ない。ブーレーズ音源はいまだ商品価値が高い証明でもある、そりゃそうだ、かくも神品なんだから。中古のLPを探すかCDをお買いください。

 

1度目のアップですぐ、

「すばらしい!今日の朝食が何だったか忘れてる私が、40年前のこの録音のことははっきりと思い出せるのです」

とコメントを下さったのは、まさにこのダフニス録音で1番を吹いているニューヨーク・フィルの首席ホルン奏者、ジョン・チェルミナーロ氏(http://John Cerminaro – Wikipedia)だった。NYPOでラインスドルフ、メータ、ブーレーズ、後にロス・フィルに移籍してジュリーニ、プレヴィンの下で首席を務めた世界的奏者だ。

John Cerminaro氏

Fascinating! I can’t remember today’s breakfast, yet vividly recall this recording over 40 yrs. ago! It shot off the charts like a meteor, lots of awards (Grand Prix du Disque, etc.) & won Andrew Kazdin & CBS records “Best of Kind” status nearly overnight. One of my own joys: At $2.50 per second (w/106 musicians) i only needed one take for all the touchy stuff..the lonely opening solo at 1:06, or that 3-octave lip-slur to high-C at 13:99..notorious for multiple takes, but could see Pierre & Andy beaming in the booth during replays! One horn player can single-handedly carry a session into double-digit overtime. Even so, my luck held for all our 1970’s hit parade discs! Cheers to anyone left from the ol’ glory days! Ciao & shalom… JC

意訳

この40年前の録音は発表されてあっという間に流星みたいに数々の賞を総なめにしました。私が個人的に嬉しかったことですが、この曲はホルンに著名なソロの難所があり、撮り直しで10分以上も食うのがざらです。106人の奏者を雇っての録音経費は1秒で2ドル50セントもかかりますが、幸いに私は一発でうまくいき、ブースでリプレイを聴いていたブーレーズとカズディン(CBSのプロデューサー)が微笑んでいるのが見えました。私の幸運は70年代(訳者注・ブーレーズ時代である)のヒットパレードディスクの録音でずっと続いてくれました。

チェルミナーロ氏のビデオ。

 

次に、やはり1度目にこう書いてくださったSacred Tarot氏。

Nobody conducted Daphnis et Chloe like Boulez. I was lucky enough to hear him conduct it twice in concert, first with The London Symphony Orchestra and London Philharmonic Choir, and secondly with the BBC Symphony Orchestra, Chorus and Singers. I remember reading an interview with him where he was asked about his career highlights. The first he mentioned was making this recording with the New York Philharmonic. If I could only have one recording of Daphnis; my favourite piece of music, it would without question be this one .

インタビューで「ご自身の(指揮者としての)キャリアの頂点は?」と尋ねられたブーレーズは、「複数あるがニューヨーク・フィルとのダフニス録音の頃がその最初のものだ」と答えたとある。「ダフニスを彼のように振れる者は他にいない」Tarot氏のご説に同感だ。ちなみに、僕の「最高のダフニス」は94年にブーレーズがベルリン・フィルを振ったものだ。彼の顔を右横から見おろす位置の席で、同年のカルロス・クライバーのブラームス4番のちょうど反対側だった。あんまり良い席ではなかったがオケのすべての音を味わい尽くした、というのはフィールハーモニーが音響のよいホールであることもあったが、なにより演奏の質が、もしライブ録音したらCBS盤に遜色ないほど細部にわたって ”完璧” だったからだ。

今になってその理由がわかったように思う。チェルミナーロ氏のようなワールドクラスの凄腕プレーヤー達がブーレーズの耳と指揮に心服し、しかも録音が商業的に成功してしまうことを知っていたからモチベーションも高かったのだろう。「ミスしない」ことのプライドを氏はコストにひっかけて説明され、プロだから当然と思われてしまうかもしれないが、一流二流の差はミスしないことだと僕は思う。スポーツでも将棋でも料理でも受験でも仕事でも、「ワタシ失敗しないので」の外科医でもなんでもそうだ。106人の一流奏者がその緊張感とモチベーションでやれば立派な成果は自ずとついてくるだろう。心の底から深い満足と興奮を得たのが忘れ難い。残念ながら、あれが人生ベストになるだろう。

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僕の愛聴盤(1)

2020 SEP 26 0:00:36 am by 東 賢太郎

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