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タイガー・ウッズの思い出

2015 MAR 17 21:21:07 pm by 東 賢太郎

久々にゴルフです。左の五十肩は一時よくなったのですが、今度は真上に上げると痛くなってきてどうもいけません。治ったらまた再開したいと思っていますがいつのことやら・・・。

僕らにはしょせん遊びだから、もうできなくっても仕方ないねで諦めればすんでしまう。でもプロが不調になったり故障したりする、それは選手生命の終わりかもしれず、人生をそれに賭けたのだから死を意味するようなものかと想像します。そういう境遇にいるかもしれないメジャーのタイトルホルダーであるデイビッド・デュバルとタイガー・ウッズが気になっています。

2001年の全英オープンはマンチェスターにある1886創立の名門ロイヤル・リザム・ セントアンズで行われました。当時はもう日本に帰国していたのですが米国の運用会社フィデリティ幹部のお招きで渡英し、コンファレンスへの参加ついでにこれを観戦させてもらいました。この大会はマスターズを勝った破竹の勢いのタイガー・ウッズと同2位のデイビッド・デュバルの、まさにその二人の対決と目されていたのです。

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見たのは確か土曜日の3日目でしたが初日から走っていたのはコリン・モンゴメリーです。モンゴメリーはスイスで何度か見ていたので、この時ここぞとばかりに駆けつけたのはT・ウッズのラウンド前の練習でした。どうも微妙にひっかけ気味で、といっても300ヤード先で10ヤードぐらいの話なのですが。ラウンドも何ホールかついて回りましたが結局その球筋が災いしたようで彼は不振で25位ぐらいでのホールアウトでした。

しかしそれでも、スイングスピードの速さ、弾丸みたいに空気を切り裂くティーショットの音、2打目地点で他のプレーヤーを20-30ヤードおいていっている飛距離、もう並みいるトッププロのなかでも別格的な所でやっていてどこか孤高の人という感じすらありました。僕らのやってるゴルフはありゃあビリヤードみたいなもんだ、本当はアスリートの肉体の闘いなんだということがよくわかりました。

ただ僕がもっとも驚いたのはアスリートのしるしであるドライバーやロングアイアンのショットの初速や飛距離ではなく、ナイフのような切れ味でバックスピンがかかって信じられないほど高く舞い上がるバンカー越えの100ヤードちょっとのサンドウェッジ(たぶん)でした。それが少し先に着地して、コロコロと戻ってピンそば1,2ヤードに止まった、その結果に驚いたのではなくて、打ったショットの凄まじいエネルギーに仰天したのです。それは去年に屋久島で目撃した「はやぶさ2号」の打ち上げみたいでした。

それもフルショットではなく、あの距離をコントロールショットでサンドで高く上げて切れ味よく止めるというだけで、もう僕ら程度のゴルファーにはあり得ないショットになります。いえ、そもそもSWでフルに振っても届かないし。こういう異次元の光景を次々と目撃すると何か自分まで少しうまくなったような気がするものです。けっしてそういうことはないのですが・・・。

大会を制したのはサングラスであんちゃん風のデュバルでした。よくあれでコントロールできるなと思うほどの極端なフックグリップで強烈に飛ばしていました。その彼が翌2002年はスイングが滅茶苦茶になってランキング80位ぐらいまで一気に落ちた。最近少し盛り返したと聞きますが、あそこまで一旦落ちての話だから復活ではないでしょう。ああいう個性的なフォームだと維持するのも大変ということなんでしょう、思えばあの全英が彼の最初で最後の輝きだったわけですが、ゴルフというのは怖いゲームです。

たしかその前後で二人は日本に来て太平洋クラブ御殿場コースのマッチプレーで組み、デュバルはボロボロだったが18番でウッズが驚異のチップイン・イーグルを決めて勝ったのでした。あれはTVで見ていて唖然でした。彼が打ったあのグリーンサイドの箇所には記念のプレートが埋められています。そこに立って構えてみるとやや左下がりぎみの打ち上げ!で、100発打ってもまず入らんだろうなあと思うような所であります。

ウッズは父親がスパルタ英才教育で育てた天才です。ゲーム中にどんなアクシデントがあっても動じないようにと池に突き落とされたり、打つ瞬間に耳の後ろでパンと手をたたかれた。星 飛雄馬のゴルフ版という感じです。人間味のある顔つきと、精密機械のようなショットのアンバランスが面白かったですね。有色のマイノリティが伝統的白人世界の帝王となり、バラク・オバマの登場に道を開いたとさえ僕は思っています。

あれからウッズは日の出の勢いで無敵街道を驀進します。彼に勝てる者はもう出ないのではと誰もが思った。だから先日その彼が82を叩いたというニュースを見てしまって、悲しいというか、信じたくないというか、ひとつの時代が終わったんだとため息が出るばかりです。82ははっきりいって当時の僕らですらあんまりうれしくない、79以下=うれしい、80=悔しい、81=今日はもういいや、82=あっそう、というスコアです。僕らが120を叩いたぐらいのショックと推察いたします。

できれば、頑張って復活してほしいと切に思います。世紀の天才があんなことで終わったなどというのはどうも・・・天才に何でも許されるわけではないですが、天才であり続けるコストも高いのだろう、気の毒だなという気持ちもあるのです。しかし、あの彼のショットを思い出すと、頑張ってああなれるという水準の話でないこともよくわかってしまいます。悲しいことです。

 

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Categories:______体験録, ゴルフ

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