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僕が聴いた名演奏家たち(ルドルフ・フィルクシュニー)

2015 JUN 24 22:22:25 pm by 東 賢太郎

Firkusny

ルドルフ・フィルクシュニー (1912-94)はチェコを代表する名ピアニストです。日本ではフィルクスニー(ドイツ語)で知られますが、チェコ語はフィルクシュニーです。あまりご存じない方が多いでしょう。ぜひこれを機に知ってください。彼は、全ピアニストのうち僕が最も好きなひとりであります。

1978年、大学4年の夏休みに1か月ほどバッファロー大学のサマーコースに参加しました。いわゆる語学留学というやつで、本来こんなのは留学とはいいません、ただの遊びです。それでも2度目のアメリカ、初めての東海岸は刺激に満ちていました。

ボストンからサラトガスプリングズを経て、ボストン交響楽団がボストン・ポップスとしてサマーコンサートをやるタングル・ウッドへ。そこで幸いにも小澤征爾さんが振ってルドルフ・フィルクシュニーがソリストのコンサートを聴けました。

芝生にねころんで聴いたモーツァルトのピアノ協奏曲第24番。調律が悪いにもかかわらず、アメリカンなあけっぴろげムードにもかかわらず、きっちり覚えてます。オケだけのプログラム後半は何やったかも忘れてしまったのに。当時から24番は好きだったようでもあり、この演奏でそうなったかもしれません。これがこのブログに書いたコンサートでした。 クラシック徒然草-小澤征爾さんの思い出-

フィルクシュニーは有名なシンフォニエッタを書いたヤナーチェックの弟子というより子供のようにかわいがられた人です。ルドルフ・フィルクスニー – Wikipedia こうして彼のライブを聴けたというのは間接的にではあっても音楽史というものとすこし濃い時間を共有できたような、ありがたい気持ちがいたします。

ライブの24番がそうでしたが、彼のモーツァルトは短調と共振します。幻想曲ハ短調K.475をお聴き下さい。この曲にこれ以上のものを僕は探す気もありません。ここには魔笛とシューベルトの未完成が出てくるのにお気づきですか?

彼がコンチェルトの20番、24番はもちろん、ブログに既述のような深いものを孕んだ25番を愛奏したのはいわば当然の嗜好と思われます。20,24,25!もうこれだけで何が要りましょう。いま書いた6つの傑作。フィルクシュニーは全音楽の座標軸でこの6曲がある「そこ」に位置している音楽家なのです。そうして「そこ」こそが僕が最も共振する場所でもある。このピアニストを尊敬し、彼の録音を愛好するのは鳴っている音ではなく、人間としての相性だと感じます。

そして冬の澄んだ空のような透明なタッチが叙情と完璧にマッチしたブラームスの協奏曲第1番!名手並み居るこの曲の最高の名演の一つであります。

フィルクシュニーのタッチがフランス物に好適でもあるのはピアノ好きには自明でしょう。僕なりに長らくピアノと格闘していまだ自嘲気味の結果しか得ていないドビッシーの「ベルガマスク組曲」。フランス的ではなく東ヨーロッパの感性です。この「メヌエット」の音の綾のほぐし方、オーケストラのような聴感!技巧でどうだとうならせる現代の演奏とは一線を画した格調!「パスピエ」の節度あるペダル、そして感じ切った和声の出し方!チッコリーニとは対極ですが、どちらも多くのことを教えてくれます。

そして最後にこれをご紹介しないわけには参りません。師であるヤナーチェックの「草かげの小径」です。この録音は、音楽を長年かけて内面化しきった人でなければ聴かせようのない至福の時間を約束する演奏の典型です。夭折した娘を送る曲なのですが悲哀はあまり表に立たず、かえってやさしさがあふれることで純化した哀悼の精神をたたえています。美しい和声とヤナーチェック一流の語法で彩られた傑作中の傑作です。フィルクシュニーの表現はスタンダード、珠玉の名品などという月並みな美辞麗句を超越した美としてどこを聴いても耳をそばだてるしかないもの。価値が色褪せることは永遠にないでしょう。

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