オローラ島での瞑想
2015 JUL 21 0:00:33 am by 東 賢太郎
今回はもうひとつ、一昨年にミクロネシアに設立した会社の定例の株主総会、取締役会も行いました。間に入っているMRA(Micronesia Registration Advisors, Inc.)は米国人経営の政府エージェントであり、ミクロネシアへの補助金援助を打ち切る予定になっている米国が後ろ盾になって海外企業家を誘致し、財政的な独立を援助するスキームとなっています。
そのパワー・バランスの変化に目をつけているのが中国であり、4島の一つヤップ島では大規模なゴルフ場付リゾートホテル開発を進めようとして住民と対立しています。ミサイル戦の時代に入り、グアム以南の太平洋諸島は米国にとって戦略的重要度を失って米軍は退却の方向であるため中国が進出を虎視眈々と狙っていると思われます。太平洋の反対側でニカラグアに運河まで作ろうかという国です。沖縄、尖閣、台湾、フィリピンを超えた外洋に彼らの戦略的視点は移っています。
L社社長とはそういう観点からの問題意識の共有をさせていただいており、お金儲けや節税ということではなく日本のゆかりの地に日本人の手で何ができるかということを常に考えております。電力をはじめとするインフラ整備はその可能性の一つであり、インフラなくして産業はなく、産業なくして雇用も税収もないわけです。満足な教育もなくそれを推進する人材も育ちません。
そのような眼でこの国を観察しますと、国家の基盤やその発展というものが何を必要条件として進むのかが肌で分かります。明治時代の日本国も規模こそ違え同様のプロセスを経て近代国家を形成したのですが現代の日本国のぬるま湯につかってそれを体感するのは困難です。ミクロネシアに3度来てそれを知ったことは僕にとっては事業を超えたモチベーションになりつつあります。
問題は現在のミクロネシアの年配の人々に豊かになろうという意欲が希薄なことで、こればかりは社会システム、教育、労働に対する価値観などに起因した難しい底流です。自給自足で満足な生活を無理に変えることが善ではありません。だからそれをアメリカンなもの、物質文明、消費社会という方向ではなく、日本的なやわらかな共存共栄社会、金銭を仲介しない助け合う社会という方向でより生活の満足度を上げられるというのがいいのではないかと考えます。
そういう考えがふと出てきたのは、今回連れて行ったいただいたオローラ島でしばし休憩しているときのことでした。オローラ島は帝国海軍司令本部があり連合艦隊停泊地であった夏島の東方沖に位置するサンゴ礁の小島であります。
我々が今回宿泊したブルー・ラグーンから小舟で30、40分でこんな色の海になります。
これがオローラ島です。
ごく少人数の宿泊もできますし無人島ではないですが、一周歩いても5分もかからない小島です。電気もガスもWiFiもなし。南洋の孤島というのはいっさいの日常的思考を断ち切る力があります。
ミクロネシアは自然環境からいえばゴルフ場とビーチこそないが一級のリゾートになり得るでしょう。ただ我々日本人には他の国の人とは違った思いがある。なにせ目の前の海には何十隻という日本の艦船やゼロ戦が沈んでいるのです。
南国の潮風で緊張は弛緩するのですが、こんな気候風土の地に巨大な基地を建造した海軍の知恵と努力というものは戦争の是非とはべつなところで日本人の有能さと勤勉さについて強く語りかけるものでした。昭和16年に無謀な戦争に思慮なく突入した責任は問われるべきものですが、思慮なく戦争反対を唱えれば何も起きない平和な国が保てるというものでもないというのはこの地に来て戦争の歴史をみればわかる。
戦争はくり返したくないと叫ぶのは同感なのですが、何も学ばずにそれをくり返すのも甚だいけない。おばあちゃんがこういったと涙を流す女性原理で大国間の国際政治という非情なインテリジェンスの戦いは動かない。怜悧で貪欲な連中のパワー・バランスの中で、軍隊もなしに大国でいられる国が百年後に果たしてあるのだろうかと真剣に思います。カルタゴの運命をたどらないためにも、日本国には徹底した非情なインテリジェンスとそれを形成する情報が必須です。ただのハンタイは無智なのです、無智は国際政治に何の影響力もなく、無力です。
戦争を本当にしたくないなら、誰であれ智恵の形成に向けてパブリックにものを言い、歴史観とコモンセンスをもって参画し、自民党はそれに聞く耳を持つべきであろう。
そういうことを考えるに、この島はとてもいい場なのではないか、そう思いました。
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