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忘れるという美徳

2018 JUL 18 0:00:20 am by 東 賢太郎

ブログにずいぶんとたくさん昔のことを書いてきたが、あかの他人の過去など知りたい人はいないのはわかっている。では何故と思われるかもしれないが、これは備忘録の意味が大いにある。10年程前から、そこから20年あたりをさかのぼった頃のことをけっこう忘れているのに気づいたからだ。

というのも、妻と話していて、フランスのドービルであなたは熱があっただの、サルジニアのホテルでガウンを買っただのときいて、さっぱり覚えてないのである。家にはヨーロッパの置きものや頂きものがそこいらじゅうにあるが、どこで買ったかもらったか、覚えている方が少ないのだから思い出も何もない。

サラリーマンを30余年やって、数えると各所で計1500人ぐらい部下がいたはずであって、それはそれは、実に実に、色んなことがあった。妻には大変申し訳ないことだったが、発熱やガウンに気が回るような余裕はきっとなかったろうし、本当に自分に厳しく生きてきたけれど、そんなに忘れてしまっているということか、そうだったのかと自分をねぎらってやりたい気持ちだ。人生で初めてのことだ。

ビジネスマン多しといって、わがままで、つまりある意味円満な了解事項としてではなく日本の上場企業を役員で3つも移籍させてもらった人は多くないはずだ。そんなことを誰かに教えて、伝えて、残して、という希望、義務感のようなものがひところ強くあって、それがブログを書くエネルギーになっていた時期もあったが、もう不思議とそれもなく、秋空のように晴朗な気持ちであって、全部が心の中では円満に済んだことになった。

忘れるというのはなんと素晴らしいことだろう。悪いことはもちろん、楽しかったことだってもう望んでも得られないのだから、昔を羨やむぐらいなら消えてしまった方がいい。それで困ることも失うものも実は何もないということに気づくのである。お世話になった方々に最善の礼を尽くし、いま周囲にいてくれる人たちと仲良くやって、迷惑にならないように、その皆さんの幸せを考えればいいのだろう。

資産は貯めることに意味があるのではなくて使うことにある。あっさり相続してしまったがそれが僕流の使い方だった。気が軽くなったがでは欲が残ったとすればなんだろう?特にないが、そのうちこれだというのが出てくるだろうか。わからない。過去を忘れてしまうと、いまですらもうその延長線にないのだから、未来など誰がわかろうか。

 

「未来」と呼ばれているものの正体

 

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