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株式道場 「Bigger Fool は10年後に現れる」

2018 OCT 30 18:18:54 pm by 東 賢太郎

ユビキタス社会という言葉は証券界では20年前から誰もが知っていた。いずれそんな世の中になるぞということで真剣に調査していたからだ。僕は野村證券金融経済研究所の部長だったころこれに興味があって調べた。それに近いことが昨今はIoTという卑近な言葉となって巷でも知られている。つまり、ドラえもんの世界と思っていた「そんな世の中」がいつの間にか現実になろうとしているのだ。

その調査で「この株が買いだ」という結論は出なかった。産業のイノベーションではあるが効果は一企業ではなく社会全体に及ぶ。社会構造の変化は投資戦略上は難物なのだ。明確に導けた結論はインターネットが生産性を向上させるだろうという予測だったが、それも一企業で明確になるよりGDPや企業セクターというクラスターのデータとして計量化される。企業ごとに計量化されないものは収益予測に落とし込めず、従ってロジカルな株価予測も困難なのである。

ユビキタス(ubiquitous)はラテン語で遍在をあらわす”ubique”の派生語だ。宗教(一神教)における「神」の位置づけを具象化する概念で「あなたと共にどこにもいる」という意味である。別に神でなくともいい、全人類がインターネットでつながって、どこにいようと「そこにある」と全人類が思い込む仮想の場所があたかも現実の社会のように機能する状態がユビキタス社会である。

移動体通信がIoT(Internet of Things、物のインターネット)の物理的ディメンションを拡大し、ついにそこに自動車が加わることになって人々はユビキタス社会の到来を知ることになるだろう。これまで動くのは主にスマホを持った人だったが、クルマとロボットとドローンになって三次元となり、高速性、恣意性、汎用性が格段に増す。技術革新は軍需がドライバーだったが大きな戦争がないこの70年でドライバーは官から民になった。IoTに関わる企業が情報もセキュリティーも握る危険が生じるだろうが、進化を止める方法はない。

今やインターネットに触れない人は確実に減って化石となりつつある(94才の我が父でもできる程度のことだ)。触れた人はユビキタス社会を知り、その一員となる。新技術の出現において最も保守的な(要は頭の固い)層の人がそれになじみ、購入するほど受容するのにほぼone decade(10年)かかるらしい。疑り深い人、新しいものに疎い人がマス(多数派)になるまでの時間だ。野村證券がユビキタスを言い始めてからスマホが本格普及する2013年までたしかに10年ほどかかっている。ちなみにEV(電気自動車)の全面普及は2025年前後になるだろう。

そうなっては困る産業や失業する人も出る。しかし「アマゾンによる死」を救う法律もセーフティネットもない。変わらない、変わりたくない、石橋をたたいても渡らない、安定・安心がモットーという男と結婚を考える女性は知るべきだ、彼は実はリスクテーカーだということを。2010年に息子を連れて行ったヨークの英国国立鉄道博物館(NRM, National Railway Museum)でそれを象徴するものを見た。 ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道 (LNER) の蒸気機関車マラード (Mallard) NO.4468である。

マラード4468号は世界最高速度記録をもつ蒸気機関車としてギネスブックに載っている。時速203キロ の世界記録は1938年7月3日に達成されている。しかし1955年生まれの僕が物心ついたころ、それほど進化していた蒸気機関車は電気で走る新幹線に「時速200キロだ、速いなあ」と話題をさらわれていた。マラードで203キロの驚異の体験した人が、わずか2,30年後にそのマシーンが世の中から消え去るなど想像しただろうか。

我々はそれと同じ大変革期に生まれてきた人類である。考えるべきは「昔の鉄道は石炭で、クルマは石油で動いてたんだよ」と父が子に語る時代が何年後に来るかという予測だけだ。その日にはクルマとロボットと家庭が太陽光で作る電気でつながりスマホがIoTのコントロール端末となって完全ユビキタス社会となっているだろう。だから政府の予算も企業の投資も金融も雇用も、全部そっちへシフトするのである。ヒト・モノ・カネが集まるところに富が集積するのは人類史の鉄則である。そこに居ないで子孫に繁栄を願うというのは、あえてやせた荒野に種を蒔いて生きていきなさいと指導するようなものだ。

受験戦争も大事だが学校でその予測を講義できる先生はまずいないから子供が時代に乗り遅れないよう親が教育してやらねばならない。相続してあげる資産があるなら最も危険な「安定運用」ではなく、相応の割合を完全ユビキタス社会への株式投資に振り向けておくべきなのである。最も保守的な(要は頭の固い)層の人が行動を起こすのにほぼone decade(10年)かかるという統計はとても重要だ。あとでみんなが買いだして株価が上がりだすと安心して大きく買ってさらに株価を押し上げてくれる安定志向の人々のことをbigger foolと呼ぶからだ。

 

(PS)

マラード4468号はイギリスの子供向けのアニメ『機関車トーマスとその仲間達』に「スペンサー」という名で出てきます。ホンモノは消えましたが大事にされてますね。

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