世界のうまいもの(その14)《エシェゾー》
2021 OCT 25 21:21:26 pm by 東 賢太郎
フランスのブルゴーニュ地方、ヴォーヌ=ロマネ村周辺に著名な畑がいくつかあるがそのひとつが誰もがご存じのロマネ・コンティだ。その他ラ・ターシュ、ロマネ・サン・ヴィヴァン、エシェゾーも全部がピノ・ノアール種だが値段は10倍ぐらい違う。ちなみに僕はワイン通でも何でもない。酒は飲めないし味もわからない。以上のことはネットにあるソムリエさんなどの記事の受け売りである。
ただ接待で半端でない数の高級ワインを消費はしている。「君ね、彼女の前でいい格好したかったらワインは『一番高い白をもってこい』とソムリエにいいなさい。するとコルトン・シャルルマーニュが出てきて5万円ぐらいですむからね。間違っても赤はだめだよ」なんて下世話なアドバイスはできる。ロマネ・コンティはいまは200万円もしているらしく、赤もってこいといってこれ出されたらアウトだ。
ソムリエさんも「さすがに飲んでない」と正直に書いておられるそれを何度も飲んでいて恐縮だが、日記に書いてもいないところをみると仕事の流れ作業でさしたる感動もなかったと思われる。悲しいものだ。値段はというと、当時は数十万ぐらいだったはずだ。さすがに200万なら野村とはいえ出さないから間違いないだろう。記憶しているのは「自分で買って家で飲んでたエシェゾーとそう変わらん」と思ったことだ、だから書き留めなかったのだ。
バリュー投資家である僕にとって当然のこととして、高いからうまいと思ってる奴は馬鹿だという主義であり、上記アドバイスは彼女も君もそうであればという前提に立っている。逆に200万円とあまり変わらん(少なくとも自分は判別できない)なら3万円ぐらいのエシェゾーは安いよねという結論に至るのである。僕はボルドー派なのでどうでもいいのだが、「ロマネのなんちゃって」で3万円払う気なら年によってはおすすめだよぐらいはいえる。
ここでテロワールの話になる。くりかえすが、エシェゾーはヴォーヌ=ロマネ村周辺のピノ・ノアールであるわけだ。ワインのテーストは基本的にブドウの品種によって決まるが、同じ品種でも畑の地理、地勢、気候、栽培法によって別物になり、そっちのほうをテロワールと呼ぶ。品種によってその影響度合いは違い、ピノ・ノアールやリースリンクは敏感で大きく、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローは少ないそうだ。
ということは僕の舌はブドウの品種以上の領域は判別できていないことになる。これはいい塩梅の素人ではないかと思う。3万円でロマネ・コンティと思いこめたら197万円も得する上に学ぶ金も時間もセーブでき一挙両得であるからだ。ロマネをブラインドで当てられない人が200万円払うよりはずっと賢いお金の使い方と思うのだ。どうもテロワールという概念は株式投資におけるPERに近い気がしてならない。確かに存在はするのだが定義はできない、ワインマーチャントのスプレッドの源泉ではないかと思うのである。
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