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68才の誕生日に思ったこと

2023 FEB 5 2:02:01 am by 東 賢太郎

68になった。まず毛筆を習って上達した家内が書を、そして息子が小田急線の昔の写真集をプレゼントしてくれた。ありがたい。家内安全がなにより。それ以上に望むことはない。家族を守るために仕事をする意識は特にはないが、僕が自分を満足させるためにやっていれば自動的にそうなることは間違いない。

自分を満足させるというのは簡単ではない。興味ないことは一切やらないから、興味のある我が仕事は仕事でなく趣味である。40年やったこれで本気になれば負けるということはない。その気になるかどうかだけであり、それには満足して元気に生きていることが必要だ。その原動力は好奇心である。

「自分を突き動かすのは結局、人生に対する好奇心なんだよね」

石原慎太郎はこう言ったが、僕は、

「好奇心とは、結局、自分に対する好奇心でしかない」

と思って今日まで突き動かされてきた。同じことかどうかは知らないが、多分違うだろう。

ブログを読み返すと昔のことばかり。これが自分らしい姿だと思う。高校時代から俺は何ができるのかと悩み、もがき、満足せず、やっては道端に捨ててきた。振り返るとその遠景が見える。もう関係ない残骸ではあるが思い入れはある。それを見て次は何かと思いをはせる。これを半世紀ずっとやっている。

生きることは何らかの夢をめざすことでなく、降りかかる難題を懸命にさばくだけで精一杯だった。そうしないと一人前でなく、生み育ててくれた両親に恩返しできないと思ってきたからだ。そしてそれは去年の5月に、すべて終わった。

ということはもう振り返る必要もない。勤めは果たしたからそれに悩む必要もない。ひとつだけ満足なのは、こうして見るに、難題をさばくことに懸命だったという一点において自分は絶対に逃げずにぶれのない人生を送ってきたことだ。

年末にパニック障害になった。こんなものを背負って生きていくのも嫌だなと思っていたら、神山先生の薬であっさり治ってしまった。なぜかいつもこうして運が救ってくれる。効いたのは薬なのだが、先生の所へ行こうとなった経緯は運でしかない。

あとどれだけ体が元気かわからないが、名実ともに余生に過ぎない。僕は他人にどう見られるかは全然興味ない。だから権力も権威も名誉もいらない。そういうものはすべからく他人の目を気にする人々の必須アイテムだが、死ぬときは誰も一人だ。道端に捨てるしかない。捨てるものを求めるための人生は空しい。

捨ててきたものはもう戻らない。つまり過去は虚無だ。未来は知り得ないからこれも虚無だ。ということは現在しかない。いま楽しい、嬉しい、おいしい、きれいだ、そういうものだけでいい。誠に自分勝手の現世礼賛、ぱっぱらぱーに聞こえるが、誰にとっても実は人生はそういうものではないだろうか。

なぜなら、覚えてるのはその当時にあった「現在」だけだ。その時に思い出していた過去や、夢見ていた未来は記憶にない。残るのはそれが「現実」となった時だけだ。最後にそれがたくさんあれば幸せな人生だったとなる。だから、そういうものをいかにたくさん味わえるかだけを考えて生きればいいのではないか。

動物はまさにそうだ。明日や昨日はない。だから虚無に惑わされたり怯えたりということはない。あるのは今、それも食うことと生殖だけだ。動物並みが良いというのではない。しかし、過去や未来にこだわるのはいいがそうこうしているうちに現在の喜びを忘れ、動物より不幸な人生になってる人はいないだろうか。

例えば、俺は動物でいいよ、食うことと生殖だけで満足だとしよう。そのためにはお金が必要だから仕事する。食事と生殖より仕事する時間の方が絶対に長い。だから死ぬ前になって思い出すと働きづめの人生だった。権力も権威も名誉も実はお金の為でした。あれ、動物でいいよどころか動物以下だとならないか。

僕はお金にも働いてもらう。そうならないことを願って。しかし、それが過ぎて自分で使えないほどの金額を稼ぐのに人生を捧げる気はまったくない。音楽鑑賞しても1円のカネにもならないが仕事より多い時間をかけて生きてきた。動物はこういうことはしないからそれ以下ということはない。これで足りる。

社会のために何かするということもあったろう。石原氏は議員や都知事をやって偉かった。しかし明らかに僕にはそういう才能も関心もないからそういうことに時間を使うのは不幸だ。やりたい人はたくさんいる。免罪符として税金を払って、僕は自分が好きで満足することに100%時間を使う社会的自由はあろう。

そのことでいえば僕がモーツァルトが素晴らしいと書いても彼の音楽がどうなるわけでもなく、傑作は傑作であり、結局は彼の音楽が気持ちよくしてくれ、そうなる自分に満足しているのであって、実は自分が可愛いだけだ。そうなるように生んでくれた両親とその自由をくれた家族に感謝し、大事と思ってるだけだ。

こういう人に老後という言葉はない。死ぬまでこれだ。誠に自分勝手の現世礼賛だがそれ以外の何物でもないのだから仕方ない。自由な時代に生まれて良かったと思うし、日本国に感謝する。しかしこれは国のため命を懸けて戦い、散っていった先人のお陰なのだ。それを忘れてこれをするのは人の道に反する。

政治にああだこうだ言うのは国が道を誤らぬために必要だ。それを生業にしてお金を稼がないと不幸だという人でもいないよりはましだ。ただしその連中を含めてこう思う。先人を忘れるなら国民は全員キリシタンになればいい。守るふりだけして安寧を貪る君側の奸をのさばらせれば日本はなくなる。

僕の物凄く幅の狭い関心事の上位に鉄道、野球、猫、天文、クラシック、ミステリー、資産運用がくる。早い順だ。この7つが増えることは多分ない。ということは余生は子供に戻ってこの砂場の中で遊ぶことになるだろう。

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